波の唄ー海の勇者を悼む       

  第二高等学校ー1934年12月28日ー松島湾の鬼と化せる若者に献ぐ
               
伴奏:TAKECHANバンド

1、海鳴遠く        また近く               
  荒磯にとよむ      潮烟り
  天津日影も       見えわかぬ
  けふぞ帰漕の      ラストコース

2、師走の海は       荒しとや
  世の常ならば      謂はましも
  わが命重し       何ぞ退かむ
  いで乗りこえよ     波涛の山

3、健児一つに       結びては
  何かはあらむ      浪しぶき
  まなじり決し      唇ひきて
  腕に節くれ       櫂を執る

4、さらばと出づる     野蒜港
  健児がけふの      門途ぞと
  見送るものゝ      ありとてか
  ただ砂山の       磯千鳥

5、雪雲低き        松島湾
  五體の血潮       凍りはて
  オールは紅に      染まれども
  ラストヘビーの     三十本

6、ゴオと発せる      舵手が
  つたえし声は      激しきも
  死なば諸共       健児等が
  涙に温む        胸のうち

7、あゝ海ひろし      太平洋
  健児が櫂は       揃へども
  吹雪に狂ふ       浪がしら
  木の葉と飛べる     わが艇よ

8、ただ陸添ひに      舵を執れ
  大高森は        わが前を
  右に左に        上を下
  心鎮めて        櫂を執れ

9、咄ー海さけぬ      天堕ちぬ
  わが艇去れり      櫂飛べり
  いざ父母よ       師よ友よ
  さらばわが事      終んぬぞ

10、嗚呼 千秋の       わが恨み
  聴けわが僚友よ     この故に
  海を惧るな       わが海を
  櫂を放つな       覇の櫂を

11、嵐はいづこ      捨小舟
  僚友よ、この愧ぢ    雪げかし
  白龍波を        縫ふあらば
  海豚となりて      守りなむ

12、御空に星は      瞬きて
  雪も消えいる      浪の穂に
  はつかに泛ぶ      松島や
  十の御魂よ       今やすら 
*繰り返し