いまさらながら佐山哲郎『じたん』はおもしろい
浮御堂でおなじみのなむさんの句集。1年半前の上梓で旧聞に属しますが、
やはり面白いので、抜粋をさせていただきます。
佐山哲郎句集『事譚』(西田書店2001年8月)より

黒南風や生まれも育ちも魔法瓶
父疾うに喰はれて蜘蛛の赤ん坊
てのひらが先に燃えだす烏蝶
ウルトラマンを脱ぎ捨てて俺栗の花
やや夏目雅子恋しい歩道橋
この回も野茂の四死球百日紅
確かこの冷やし中華のやうな寺
おにぎりはおかか九月のゆるい風
屈葬のをとこ飽いたり竈馬
でこぼこの闇にぶつかる火の粉かな
無人機の裏はくらやみ冬の蠅
さよならをどつさり貰ひ味噌饂飩
新庄がぴよんと跳んだぜ牡蠣フライ
如月の靴屋に靴の死んだふり
蟻穴を出て見覚えのない財布
むにやむにやと花散るところ地蔵堂
抽出しに王冠百個蝌蚪の紐
花曇り和菓子に乳首ありやがる
遅日このパスタ天使の男性器

わたくし儀一身上の土手青む
たなぼたの人生ですが木の芽和へ
店ぢゆうが他人の空似白子干
ぢやあどんな人生なんだ夏の雲
前世は四角いトマトごつつんこ
濃紫陽花うけくち四十五度を雨
空耳の耳から抜けてゆく泥鰌
白玉や死んだ友みなどんぶらこ
髭の濃い人生でした簾巻く
ずゐずゐずつころばし初老性秋思
あんたがた何処死後何処さ蚯蚓鳴く
それよりも深夜南瓜に逢ふのです
鍋ぢゆうがおじやそちらはどなたさま
地底ですか地底ですねと火事の客
海苔巻きの海苔の裏から冬の旅
バリカンの切れがあやしい神の留守
かりふらわー奥歯に一番近い居間
受話器からおじやこぼれる理屈です
わつと泣くこと許されず冬日向

百年を目隠し鬼のまま花野
次の世の俺の炬燵が満員だ

ラテンの血引く少年のちやんちやんこ
湯豆腐や昭和一桁まだ子ども
さんずゐに尼と書くべき水温む
海も好き噴水も好きつてなこころ
石蹴りのちよんと進んで震災忌


と、ここまで抜き書きして、だが、現在すでに、なむさんは、さらなるというか
別のというか、つまり今は今の面白さを句にされていることを私たちは知っている。
たとえば、「月天第六號」(2002年)掲載の20句から何句か。

誰がために亀鳴くあめりか暗殺史
巣籠りや関節技でくる女
花筵ここは一服盛るところ
捨てられた仔猫の匂ひする同士
ドレミファのファの隙間から青葉風
夏空へ手紙「わをん」のボタン押す
いまのそれ誤爆ですがな暮の秋
遺産から二百十日を引いた崖


この感じだと来年あたりには第2句集が拝めそうと私は思っております。
2002年12月29日 天気 記