テンプターズ句集
  2005.8.22-


デパ地下の松屋に並ぶ初秋刀魚  葉芹
こぼれ萩喧々諤々辞書でひく  葉芹
月の雫帯胸高にしめた頃  葉芹
票田を雨台風が駆け抜ける  葉芹
白待ちの大三元よ秋の蝉  葉芹

蝉に鳴く縄張りがあり松と杉  義郎
泣きじゃくる子に冷たかり白い萩  義郎
ピザ届け萩乱し去るバイク音  義郎
目の高さに晩年を鳴き急ぐ蝉  義郎
休耕田集めしコスモスパークとか  義郎
大西日大落日へ急ぎけり  義郎

鎌ヶ谷市立五本松小蝉時雨   鎌谷
アンサンブル.ポーコに酔いて萩の花   鎌谷

うどん屋の黄ばんだメニュー花松藻  珠子
萩咲いて夫の革靴娘のミュール  珠子
減量のハードル高し小鳥来る  珠子
田を継がぬ子らばかり秋風となる  珠子
浴衣帯言葉の尾から大人びる  珠子

核心をさらりとかわし萩揺れる 眞喜恵

文豪の愛でし松籟少し秋  きよこ
隠れ家の限定メニュー萩の庭  きよこ
高坏を下垂れる葡萄の実りかな  きよこ
群れとんぼ高田の馬場へ塾通い  きよこ

サーファ―を吐き出す波頭新松子  餡子
縄電車くぐりしあとのこぼれ萩  餡子
秋うらら高山家へと嫁入りす  餡子
美田など無し新小豆ぐつぐつと  餡子
逝く秋や隣の少女大人びる  餡子

松井田を過ぎて霧雨匂う夜  とこりん
乱れ萩二度目の恋はあるがまま  とこりん

鰻重は松で面目躍如たり  登季
句碑なぞる指先萩の風の中  登季
蕪村句碑萩の風きて嬲りけり  登季
新涼や高田馬場の古本屋  登季
新涼や銀座田屋の絹のシャツ  登季
奈良坂を行けば秋光東大寺  登季
大寺の回廊秋の風を賜ぶ  登季

秋天の大看板にぢといふ字  天気

松韻に擦れたるのど熱帯夜   ざんくろー
ウトナイ湖空の憐れむ萩の妻   ざんくろー
高音の身の疎さなる秋簾   ざんくろー
小躍りたる赤とんぼかな茄子田楽   ざんくろー
敬老の日の目の大きさ笑う熊   ざんくろー


「夏休みの宿題」句集  2005.8.15-

絵に描いたよな好々爺盆の月  義郎
虫幽か汚れし非常食の文字  義郎
工場の騒音圏に弱気な蝉  義郎
飯抜きの採血を待つ今朝の秋  義郎

絵日記の白紙が続き夜の蝉  餡子
文楽のおんなの嗚咽秋めきぬ  餡子
盆の月高し閉鎖の鉄工所  餡子
採算のうまくとれない都市の蝉  餡子
百日紅盛ん犬にも問診票  餡子

枕絵の枕に蝿のとまりけり  天気
だまし絵の呉羽化学にふと白雨  天気
俳人に駄文の多し百日紅  天気
そのをんな道路工事の音がする  天気

雲は秋きいちのぬり絵原画展  珠子
短文の返事長文蝉時雨  珠子
工房の読めぬ看板蝉時雨  珠子
グランドの土採る敗者雲の峰  珠子
白粉花こぼれ訪問入浴車  珠子

岩絵具匁で買って二日月  葉芹
繭色の恋文秋のメリとハリ  葉芹
小細工はいらぬ糸瓜とモディリアニ  葉芹
ウエストの採寸のうぜんぼたぼたと  葉芹
S子のこと不問に付してソーダ水  葉芹

佐津間芋文子と富美子間違えて   鎌谷
千葉工大出身の蝉そして蟻   鎌谷
Cafe Rosaのアイスクリーム採血後    鎌谷

浮世絵の女が使う秋団扇  登季
落し文便りがないは無事だとか  登季
炎昼の頭上乱調工事音  登季
採光の丸窓月が降ってくる  登季
星の恋問わず語りの夜が明けて  登季

届かない絵馬もある打ち上げ花火   ざんくろー
石文の濡れているかな蝉時雨   ざんくろー
ひぐらしの啼きしきるのみ工作員   ざんくろー
鯖雲の異様に近い採掘場   ざんくろー
宵闇に身過ぎを求む問題集   ざんくろー

宝物たりしぬり絵の復刻ソーダー水  きよこ
蝉声の滲みいるばかり採集籠  きよこ
問い1をとばして問い2蝉時雨  きよこ
悶絶の設問数多蝉の穴  きよこ

問題のひとつが解けて蝉の殻  とこりん
過冷房高層ビルの絵画展  とこりん
文金のかつらぐらぐら夏の風邪  とこりん
工作の粘土を千切る残暑かな  とこりん
八月の途中採用丸き文字  とこりん

隠し絵の白粉花の匂い立つ  眞喜恵
取消しの効かない呪文秋気澄む  眞喜恵


「郵政民営化」句集  2005.8.8-


寝化粧というものもあり秋立ちぬ  葉芹
8月やどうなる郵政民営化  葉芹
口語化の民事訴訟法晩夏  葉芹
みんみん蝉家政婦見たとか見ないとか  葉芹
夕焼けもちょぴり詰めて郵パック  葉芹

つぎの世は何に化身す大南瓜  餡子
秋暑し営業用の顔仕舞う  餡子
儚きは野菊の如き民子なり  餡子
安政の大獄化して暑き秋  餡子
凌霄や一服中の郵便夫  餡子

絵日記にお化けを描いて夏休み  登季
営倉の小窓他国の月明かり  登季
和紙を貼る手帳晩夏の民芸店  登季
郵便の封を切る手に晩夏光  登季

炎昼に剥がれはじめる化けの皮  眞喜恵

百合蝶と化してヘルメットがきつい  天気
カンナ愛づ呉羽化学をさらに愛づ  天気
房総へ文化相対主義の犬  天気
営団がメトロとなりぬ夏の月   天気
銀漢に情報漏洩して土民  天気
肩にくる文化文政期の螢  天気
郵便局長さんはパイナップル頭  天気

炎天の頭を巡る化学式   きよこ

ほのぼのと露地にへちまの化粧水  義郎
営業に不向きの男多汗症  義郎
噛み合わぬ民と官新さんま焼く  義郎
熱気満つ映像の市政報告会  義郎
熱中症の郵便切手販売機  義郎

蝉の羽化神前に息整える  珠子
水煙や営々として蟻の列  珠子
湖の際まで民家今朝の秋  珠子
政治家になるなら離婚秋暑し  珠子

大蚯蚓三日三晩のお化け文字  とこりん
押されゆく市営プールの動く水  とこりん
はしごする庄屋魚民秋の風  とこりん

少子化の大須を流る天の川   ざんくろー
営みの火のやわらかさ新豆腐   ざんくろー
民煙とつながる天の川のある   ざんくろー
流星の果てに気付かぬ政   ざんくろー
田舎から残暑を詰めた郵パック   ざんくろー


「快速通過待」句集  2005.8.1-

快活をよそおう握手夏薔薇  義郎
快速の止まらぬ駅の扇風機  義郎
九分通り忘れし過去や書を曝す  義郎
五時過ぎのアリバイが無い熱帯夜  義郎
子の帰り待つ一鉢の胡瓜揉み  義郎

夏の闇快傑黒頭巾参上  餡子
速攻のあとの後悔西瓜割る  餡子
何事も普通がよろし冷し酒  餡子
濾過されて大脳白し熱帯夜  餡子
空蝉や待ち続けるという試練  餡子

夏の夜の快速電車で深眠り  登季
速球を打つ少年の暑い夏  登季
寿司食いに目白通りのゼブラゾーン  登季
過ぎしことなど芙蓉花咲きはじむ  登季
待っている便り残暑の風ゆるく  登季

風死して快晴登山口目指す  珠子
裸子の逃げ出す速さ飛行雲  珠子
大西日断って通しの生節  珠子
冷え過ぎのビール一気にもう動かぬ  珠子
鼻の汗拭かせてプリマ出番待つ  珠子

鳥かごに快楽不退の夏日影   ざんくろー
速読のような夕立口ごもる   ざんくろー
愛人の部屋へと通う大西日   ざんくろー
過ぎたるは夢か現か熱帯夜   ざんくろー
夕焼ける歩行者天国待ちぼうけ   ざんくろー

快食の夏痩せ知らずニートかな  きよこ
二倍速で呼び戻す過去夏の月  きよこ
通行止め辻闊歩する祭り足袋  きよこ
文通の友の晩年走馬灯  きよこ

軽快に飛び込んでおりプールの子  とこりん
炎昼を来てぱらぱらと速記本  とこりん
さるすべり隣の猫が通い詰め  とこりん
過ちと知りつつ渡る夏の川  とこりん

光速をとびきてやすむ黒揚羽  天気
蜂さかる通天閣を揺らしつつ  天気

頑張らぬ日と決め朝焼け快い  葉芹
てんと虫飛んで淋しさ加速する  葉芹
花氷プレーン・オムレツ通の弁  葉芹
月見草過去には過去の息遣い  葉芹
待宵草涙の訳を理解する  葉芹


「イタリア村」句集  2005.7.25-

百舌絶叫す定位置にインク壷  葉芹
岩燕塩味うすいピスタチオ  葉芹
アマリリス苦悶しているハ短調  葉芹
一過性の鬱よ午睡のアイマスク  葉芹
斑猫に付いて付かれて村薄暮  葉芹

火蛾舞ひて墜ちてインリン・オブ・ジョイ・トイ  天気
沙羅に風イの字を映すテレビジョン  天気
タイ五泊六日の旅へあぶらむし  天気
台風一過ざわざわざわとリンパ腺  天気
アメリカがぜんぜん見えぬ立ち泳ぎ  天気
草ぼうぼう人ぼうぼうと俳句村  天気

夏雲や地球飛び出すイルカショウ  義郎
少年は生意気盛りジキタリス  義郎
ガリバーの履くイタリー製登山靴  義郎
アメリカ帰りの一年生夏休み  義郎
蝉も鳴かぬ区画整理の済んだ村  義郎

夏の夜のモノクロ映画にイヴモンタン  登季
夏夕火を入れ直すタンシチュー  登季
リストラの男ベンチで三尺寝  登季
昼寝の子アンデルセンを聞き眠る  登季
合併の村から村へ虹の橋  登季

まずビールネクタイの端ポケットに  珠子
タイフーン上陸間近カツカレー  珠子
ポンポンダリア気まぐれの風が出る  珠子
夏の月疾うに弾き手のないピアノ  珠子
蝉時雨村の境が藩境  珠子

夕立やインスタントの味噌を溶く  眞喜恵
さくさくとタロ芋揚げて雲の峰  眞喜恵
地下街をサンバのリズム蝿が飛ぶ  眞喜恵
告白はアイスキャンデー溶けぬまに 眞喜恵

体内のタイマー狂う昼寝覚  餡子
立てかけしギター鳴り出す熱帯夜  餡子
教頭の頭上の蠅取りリボン捩じれ  餡子
アイラインなどしっかりと入れ鰻食ぶ  餡子
村を出てまた村に入る蝉時雨  餡子

朝涼やイスラム教徒の友がいる   きよこ
娘の髪に編み込むリボン藍の浴衣  きよこ
村長を兼ねる住職山法師  きよこ

夏野菜サラダオイルのぎーらぎら  とこりん
掘り起すタイムカプセル夏深し  とこりん
汗を拭くリングサイドの挑戦者  とこりん
アメリカンコーヒー冷めて夜の秋  とこりん
村人のその1その2夏芝居  とこりん

てんと虫道はいらないイスタンブール   ざんくろー
タロットの愚者が逆さに半夏生   ざんくろー
ポリバケツ溢るる台風一過かな   ざんくろー
夏痩せのアキレス腱は硬くなる   ざんくろー
他人事のうなぎのようなアイライン   ざんくろー
喜雨の中渦巻き色のダムの村   ざんくろー


「受給者番号」句集  2005.7.18-

取り箸と受け皿ようよう梅雨明ける  葉芹
まあ飲み給えさりげなく土用入り  葉芹
初蝉やくらやみ坂の死者生者  葉芹
モノクロのジェームス・ディーン夏本番  葉芹
号泣の後の西日とズッキーニ  葉芹

求愛もめっきり減って大昼寝  登季
大盛りの氷あずきを受け口で  登季
給食は鮭缶おじや雲の峰  登季
前世は女武者です火取虫  登季
番長と呼ばれしころや西瓜割る  登季
号令をかけて昼寝へ保育園  登季

鰻の日注文受付票に染み  珠子
雲の峰夜間給水制限に  珠子
調子者のあだ名ピノキオ梅雨明ける  珠子
カサブランカ二番煎じのサスペンス  珠子
水打って屋号伊勢屋の串団子  珠子

右耳と肩に受話器や熱帯夜   ざんくろー
不変真如給料明細夏日影   ざんくろー
求愛やマッチでつける花火なり   ざんくろー

受け口の洗濯ばさみ盛夏くる  天気
ああ受付に香水の香がふたつ  天気
給食のバナナぎったんばったんこ  天気
号令に蝉が鳴きやむ町工場  天気

受けて立つ構え麦藁帽目深か  義郎
憤死せし走者へ拍手雲の峰  義郎
さぁー結びの一番そろそろ冷奴  義郎
元一佐の号令響く夏祭り  義郎

受け持ちの先生の文字雲の峰  とこりん
病院の給湯温度土用波  とこりん
梅雨明けを知らず女の後継者  とこりん
日の盛り受付番号点滅す  とこりん
俳号の変更通知蝉鳴けり  とこりん

台風を宿命としてうけとめる  久子
給わりし命いつまで蛍の夜  久子
賢者にはなれぬ諍い後の西瓜  久子
夏の宵番犬として夫がいる  久子
禅寺に起床号令夏の霧  久子

墓参り砂溜まりたる名刺受け  餡子
鰻食ぶ給料袋に紙一枚  餡子
枇杷啜るここは房州長者町  餡子
番地持つ海あり雲の峰崩れ  餡子
失念の暗証番号街灼くる  餡子


「旨酒探求会」句集  2005.7.11-


大西日ポストに訪ねた旨のメモ  珠子
茄子の馬酒の強さを娘に譲り  珠子
家を出る糸口探す蛍の夜  珠子
求肥入り餡蜜が出て締めとなる  珠子
白南風や教会見える方に下車  珠子

栓を抜く趣旨など要らぬ端居かな  義郎
昼酒をだらだらと飲む過冷房  義郎
蝙蝠の基地に少年探偵団  義郎
店頭に「求むスタッフ」梅雨明ける  義郎
冷酒がめあて県産品の試食会  義郎

短夜をサルサ踊って宗旨替え  葉芹
酒樽に箍(たが)するすると揚花火  葉芹
求愛の鳥の仕草や巴里祭  葉芹
雨の巷逆探知して夏鴉  葉芹
パラソルの軽い会釈は人違い  葉芹

梅雨ぐもり旨い話と肉の汁  とこりん
冷酒のあとの餡蜜あみだくじ  とこりん
求職の定番スーツ油照  とこりん
緑陰を出て読み違う探と深  とこりん
祭り終え集会場の長き膳  とこりん

旨い酒うまい肴と梅雨籠り  登季
地酒買う祇園祭の帰り道  登季
句会後の国士無双という冷酒  登季
しろむくげ地べたで酌みし旨い酒  登季
深入りは禁物青い薔薇が咲く  登季
白日傘意味深長な笑い顔  登季
会いたくて笑顔の人の白いシャツ  登季
眼が合えばそれも縁や心太  登季

旨酒よりも両手ですくう岩清水  久子
忘れたいことがあるから冷酒酌む  久子
炎天の街手探りで行く異国  久子
求愛の鳩の行進梅雨明ける  久子
夏の夜の夢で逢いたい人に会う  久子

鮎を焼く旨味は塩の振り加減  餡子
立ち呑みの父いる酒屋夕薄暑  餡子
探り合う互いのこころ水中花  餡子
夏野にて探し求めしものに逢う  餡子
会則は「酒好き」とのみ木槿咲く  餡子


「投手陣充実」句集  2005.7.4-

雨樋に不純が浮かぶ梅雨投下   ざんくろー
遠花火見ている手提げ袋かな   ざんくろー
蚊遣香丑三つに詠む魔法陣   ざんくろー
転んでも笑うひまわり充電中   ざんくろー
立ちくらむ砂丘の虚実立葵   ざんくろー

敗戦処理投手の出番夜の蟻  義郎
風鈴の舌手話の口よく動き  義郎
充電のすんだ順から落ちる柿  義郎
実のなる木実のならない木梅雨さなか  義郎
白百合に無実と言えぬわけがある  義郎

ぶつぎれの夢あり実梅落ちたまま  とこりん

水に浮く実物大の膝小僧   マイル
投げにくき西瓜は棒で割られけり   マイル
手がかりはかまきりの貌とも言へる  マイル

梅雨あけて五体投地の核家族   天気
大海の青のにじみて檸檬の実   天気


「逆引広辞苑」句集  2005.6.27-

東武線逆井(さかさい)駅も梅雨茫々  餡子
強引な夏に毀れていく右脳  餡子
空梅雨や広島カープはやはりビリ  餡子

旱梅雨逆さまにしてビンを振る  眞喜恵
根元から引き抜く雑草梅雨晴間  眞喜恵

逆転打ビールの泡を甲で拭く  珠子
枇杷啜り署内切っての生き字引  珠子
ふるさとのだだっ広さに帰省かな  珠子
茶席辞す泰山木の花あまた  珠子
神宮外苑花火大会雨天順延  珠子

逆らうか乗るか揚羽に野辺の風  葉芹
白扇や流れて引声(いんぜい)阿弥陀経  葉芹
捨てられぬげんのしょうこと広口瓶  葉芹
世辞耳に紫陽花越しの海を見る  葉芹
水中花真赤焼肉好好苑  葉芹

逆転の人生もなく青葉濃し  登季
引く手あまたに鬱となる濃紫陽花  登季

アベックの逆へ逆へと蛍の火  義郎
引き返す雷神レジがややこしい  義郎
広く暗くこわくて泣きし迎え火や  義郎
梅雨寒とポケットの電子辞書が言う  義郎

逆さまのままのキャンバス夏の川  とこりん

逆立ちの臍より梅雨の明けにけり  天気


「熱田神宮祭」句集  2005.6.20-

お煮しめの大皿祭り客を待つ  登季
守宮きて親しむことも徒食の身  登季

青嵐マルセリーノを抱く司祭  餡子
朽ち果てしお宮の祠樟茂る  餡子
紙縒巻く神官の指夏めける  餡子
青田風女が零す国言葉  餡子
熱愛する人あり開く水中花  餡子
熱しやすく冷めやすき性蛍飛ぶ  餡子

祭笛金の鬢髪ほつるまま  珠子
椎の花跡を継がんか宮大工  珠子
神隠し伝説消えて清水かな  珠子
青田風おばあ百歳越したとな  珠子
万緑や余熱くすぶるラストシーン  珠子

夕立来てお祭騒ぎとなりにけり  義郎
奥宮に狐出そうな夏の霧  義郎
神隠しと出会う気でいる梅雨の闇  義郎
よそよそしい青田の中の麦畑  義郎
不可解な調理器の熱梅雨旱  義郎

そしてまた守宮降る夜のしづかなり  天気

境内から遠富士今年陰祭  葉芹
夏至夕べ宮古上布のよろけ縞  葉芹
大層な神話に翳り大南風  葉芹
卯の花腐し丹田は臍の下  葉芹
未央柳いっぱい知恵熱出している  葉芹

麦秋を 迎える夏至の 暑さかな  昇平

田クンがいた小学5年生最後尾  勝之

夏祭鯛焼きの愛分かち合ふ   ざんくろー
おはぐろや木槌の乾く宮大工   ざんくろー
山蟻の抜け道に沿う神通川   ざんくろー
水田に張り付いている魚心   ざんくろー
二心の微熱が続く枇杷たわわ   ざんくろー


「細腕繁盛記」句集  2005.6.13-

恋の行方委細省略梅雨に入る  餡子
腕時計に縁無き日々や心太  餡子
腕白が腕白のパパ雲の峰  餡子
確執の捩れ捻れて山繁る  餡子
白南風や犬にも女盛りあり  餡子
戸籍簿に以下記載ナシ実梅落つ  餡子

ピッチャーはルーキー細き眉に汗  珠子
腕章の男ハンサム梅雨晴間  珠子
夏の月背表紙剥げた「紅繁縷」  珠子
じゃがいもの花真っ盛り父病むに  珠子
夏雲や記憶の底のけんけんぱ  珠子

詳細に恋を語って梅雨の夜  登季
覚えなき腕に痣あり梅雨湿り  登季

細ごまと仕来りどおり夏座敷  義郎
細君と呼べぬ二の腕アッパッパ  義郎
繁閑の中吉と出し梅雨入りかな  義郎
大皿に小さく盛りし夏料理  義郎
一瞬の記憶喪失合歓の花  義郎

日盛りに汚した指の仔細かな  葉芹
腕に縒りかけて素描のさくらんぼ  葉芹
奪う愛待つ愛青葉繁るなか  葉芹
どくだみの地下茎盛ん二重唱  葉芹
酔った口調の記憶の亡夫は河鹿  葉芹

細道や仰臥の夏猫三匹目   ゆら
夏野菜山盛り腕に赤き筋   ゆら
繁雑な机鼠色汗倍加   ゆら
雨音やガリア戦記を籐椅子で   ゆら

梅雨寒や破り捨てたる明細書  とこりん
濃紫陽花姉には勝てぬ腕相撲  とこりん
街路樹の繁みばっさりアイスティー  とこりん
盛り上げる人の背中や蠅を打つ  とこりん
六月の暗記暗算細き眉   とこりん

白南風や亜細亜大学法学部   天気
二の腕を夜汽車とまがう熱帯夜  天気


「歓天喜地する」句集  2005.6.6-

歓びを分かち合う仲アマリリス  登季
天の機嫌良きにと願う田植えかな  登季
サッカー勝利喜びの汗ひかる  登季
地を這うか跳ぶか危うき梅雨の蝶  登季

バンザイの大歓声や駅薄暑  餡子
冷え過ぎのビール天敵は息子かも  餡子
バンコクの歓喜薇煮詰まって  餡子
水金地火木土天冥海夏来る  餡子

花合歓や農継がぬ子ら育て来て  珠子
花南天古紙回収の声巡る  珠子
万緑や親善試合のキックオフ  珠子
朝ぼらけ草刈る音の心地よし  珠子
枇杷すする事のついでに聞く訃報  珠子

蛇を打擲せしヒーローへの歓声ぞ  義郎
グラウンドに白線引けばはや炎天  義郎
あじさいの初めの色は喜色なり  義郎
地獄耳のもたらす噂蝉の声  義郎
よろず屋を占拠する登山靴一行  義郎

麦秋は 青葉若葉の 影になり  昇平

花合歓やチンパンジーが手を叩く  天気

すぐ消えて歓楽街の青蜥蜴  葉芹
メロンソーダ今日は朝から上天気  葉芹
人の世の悲喜劇揚羽何処より  葉芹
焼き菓子の店は半地下若葉雨  葉芹
想定のうちするすると蜘蛛の糸  葉芹


時計句集  2005.5.30-

五月闇そおっと外す腕まくら  餡子
掛け算のコンマ彷徨く薄暑かな  餡子
茶柱の立たぬ五月の誕生日  餡子
腹芸の百面相や風薫る  餡子
花時計3のあたりに日日草  餡子

敏腕と持ち上げまずは大ジョッキ  珠子
青葉風抜け掛軸の「知足(たるをしる)」  珠子
卯の花や歌人生家に太柱  珠子
万緑や腹を痛めた子らの乱  珠子
風鈴や時計回りに酒注がれ  珠子

夏シャツを退化せし腕から通す  義郎
あじさいの不安は掛算七の列  義郎
茶柱も平等に立ち花菖蒲  義郎
迷惑な蛙の腹式発声法  義郎
猿山の午後五時はちょっと汗臭い  義郎

トルソーの腕を組む夢シャボン玉  きよこ
夏までに腕力脚力俳句力  きよこ

陽が沈む青岬では腕を組む  登季
やり掛けの刺繍真紅の薔薇が咲く  登季
腹芸に完敗鰹捌かれて  登季
時差ぼけの眼が開く時計草  登季

大夕焼悪戯の子の腕時計  葉芹
掛時計は電波時計よ花菖蒲  葉芹
いつ消えた柱時計と藍浴衣  葉芹
レゲエなど片腹痛し水中花  葉芹
水時計日時計まくわ瓜冷えて  葉芹

籐枕腕立てふせは過去のこと   ゆら
バナナ熟れ猫行き過ぎて秒針音   ゆら

二の腕のぜんぶ向日葵畑かな  天気
掛け算のさなかへ夏の波がくる  天気


「原生林地熱」句集  2005.5.23-

街青葉原語で歌うシューベルト  珠子
きっかけは河原撫子旅に出る  珠子
薔薇剪って次は男に生まれたし  珠子
青林檎少女の視線すぐ逃げる  珠子
初浴衣裾に強気の生地が出る  珠子
天寿とか余熱で蒸らす泥鰌鍋  珠子

初夏の原っぱらっぱラッパ吹く  餡子
聖五月生活習慣病あまた  餡子
六月の林に消えたままの父  餡子
絵の馬が地平へ駆け抜け青葉騒  餡子

原因となり結果となって薔薇赤し  義郎
紙のように枇杷薄く剥き人生論  義郎
揚羽とぶ森林浴の椅子テーブル  義郎
望郷の詩人の住みし蟻地獄  義郎
梅雨晴れや熱海まで夕映えを見に  義郎

原っぱの原風景に竹馬が  登季
生家なしちちははもなし余花の村  登季
握る掌の温み葉桜の林抜け  登季
地ビールは那須高原の銀河系  登季
熱弁の人とベンチに青葉風  登季

夏浅くわが脳に飼う原馬(ウルブフエルト)  光
翰林がだらだら集い生ビール   光
地の涯にゴルゴダの丘夏の雲   光
春の闇蜂起の後の地下水道   光
つばくらめ地を擦る初任小学校   光
地熱集二句組にいて麦の秋   光

洗剤の原液希釈して若葉  葉芹
生ビール小満の日と言われても  葉芹
無骨にもビルの林立夕薄暑  葉芹
青葉騒ぐるりと地球儀を回す  葉芹
言わずもがな頭寒足熱さみだるる  葉芹

酒うまし 雲間輝(ひかり)て やらづ雨め  昇平

色褪せし原色図鑑夕薄暑  きよこ
生半な身のうちの毒芥子白し  きよこ
林立のビルの凸凹夏兆す  きよこ

ありんこの寝顔見たくて地の穴へ   ゆら

夕闇をぷうんとうなる電熱器  天気


「人手足時代」句集  2005.5.16-

老鶯の正調に啼き人黙す  義郎
外人に値切られているバラの市  義郎
いたわられ来て滴りを手に受けぬ  義郎
猿人に似し二足歩行柿の花  義郎
蜂の子を食べた時からずーっと鬱  義郎
十薬だって日の目を見たい時がある  義郎
スペインに住む三代目栗の花  義郎

人いきれ最終電車に枇杷抱いて  珠子
胡瓜の手男ばかりの貸し農園  珠子
窓若葉蛸足配線うたたねす  珠子
桐の花時には母の声聞きに  珠子
糊代はいつもひらがな心太  珠子

隣人と一緒に老いて柿若葉  きよこ
畏まる手足薄暑の薬草園  きよこ
夏足袋のこはぜを堅く裾さばく  きよこ
いま時分の花の中なる父祖の墓  きよこ

薫風や掌で包み込む赤子の手  餡子
居酒屋の木の下足札夏来る  餡子
母が年若く言う時虹立てる  餡子
代返の昔ありけり新樹光  餡子

南風にそよぐ人体模型かな  天気

バラ崩る近頃少し人嫌い  葉芹
打つ手なし生れ日に聴くジャズピアノ  葉芹
げんのしょうこ男の素足なぜ白い  葉芹
時雨煮の生姜が利いて多佳子の忌  葉芹
若葉雨わけがわからぬ幾何・代数  葉芹

心太人のこころは解きがたき  登季
人に逢う夏手袋を外さずに  登季
畳踏む裸足自由という時間  登季
花茣蓙も古りて手のうち読まれおり  登季
夏暖簾手で分け入りて馴染顔  登季
香水の人哀愁を隠さずに  登季
孫の手が背中に届く夕薄暑  登季
芥子の花時空に惑う恋心  登季
浄瑠璃の大夫二代目夏羽織  登季

麦酒手にふらつく初老午後1時   ゆら
人みしり草むしりで目をそらす癖   ゆら


「晴好雨奇」句集  2005.5.9-

五月晴背面跳びのバー上がる  珠子
好奇心旺盛なれど祭嫌い  珠子
鼻折れしブリキの如雨露夏来る  珠子
奇蹄目サイ科シロサイ雲の峰  珠子

晴れ晴れと峰道に立つバナナパフェ   振り子

ひらひらと晴海通りの金魚かな  天気
快晴微風道にびつしりフラミンゴ  天気
好天のまくわうり割るダマスクス  天気

五月晴犬の人語に振り返る  きよこ
好物を取り分け春の長寿箸  きよこ

晴女と言われて久し単帯  葉芹 
来る来ない好きよ嫌いよ芥子の花  葉芹 
沈黙が膨らんでいる雨のリラ  葉芹
人として生まれた奇跡麦畑  葉芹

晴天のファスナーが開き夏来る  餡子
晩年も好事魔多し風薫る  餡子
晴耕は無し雨読のみ初鰹  餡子
若葉光家族揃って奇数好き  餡子
観音に鬱預けいて青時雨  餡子

晴れわたる水母が水になるやうな     マイル
最期の洗濯機が好きなめくぢり      マイル

牢晴の薄暮荷風の下駄の音   光
好色一代女に茅花流しかな   光
傘雨忌の老人あさき夢も見ず  光
雪崩音遠しルパンに奇巌城   光
晴好雨奇ふるさとの春闌に   光

鯉のぼり雨にだらりを恥じている   ゆら
納豆の奇数のパックアマリリス   ゆら


黄金週間句集  2005.5.2-

春陰の棚田伯父叔母とうに亡し  葉芹
愚鈍に生きて渓谷の青時雨  葉芹
新緑の尾根さよならを言いに来て  葉芹
気圧って何鯉のぼり尾を垂らす  葉芹
枕から水平線へ続く初夏  葉芹

風吹いて風のかたちに青棚田  天気
渓谷にすみれはけむるばかりなり  天気

八畳ほどの棚田に蛙の数家族  義郎
海丸し棚田千枚水を張る  義郎
渓谷の底にて浚う春のなごり  義郎
小気味よき上州訛り尾根は雪  義郎
宅配で届く薫風一気圧  義郎
燕反転故郷は水平線の先  義郎
水平線の向こうにも海蜜柑咲く  義郎

思い出の瑠璃なす棚田春深む  きよこ
人声にかぶく渓谷蜂一匹  きよこ
英彦山(ひこさん)の尾根の弾力囀りぬ  きよこ
母の日の誰か不機嫌低気圧  きよこ
律儀かな水平線へ鯵干さる  きよこ

はつなつの棚田千枚空の青  珠子
渓谷に橋たわみ雪解水しぶく  珠子
尾根に月かすかに藤の花匂う  珠子
低気圧割拠新じゃが煮転がす  珠子
はつなつの白帆水平線霞む  珠子

春暁や棚田の深き息遣い  餡子
渓谷てふ地球の皺も夏めける  餡子
山小屋の見えいて遠し尾根に夏  餡子
初燕水平線を遠ざける  餡子


「自由旅宣言」句集  2005.4.25-

観自在菩薩の寝息春の闇  餡子
春の雷人を恋うるに理由など  餡子
新緑や本も薬も持たぬ旅  餡子
色褪せし関白宣言若葉風  餡子
葉桜や駅より消えし伝言板  餡子

柳萌ゆ墓碑に刻みし文字自由  義郎
柳に跳ぶわけ(理由)知りたくてカト群れる  義郎
末路という旅の終りや虹二重  義郎
新緑の宣伝写真に句も一句  義郎
失言を羞じてる白牡丹今朝は  義郎

自転車を呑み込んで桜蕊降る  珠子
遅桜無住の寺に由来書  珠子
旅果ての地酒の試飲山笑う  珠子
夫からの独立宣言風光る  珠子
挨拶の方言温し花筵  珠子

青葉騒飾りになりし自在鉤  きよこ
文学碑の由来尋ねる花は葉に  きよこ
買い換える旅鞄春陽眩しくて  きよこ
晩年の自由宣言ひこばゆる  きよこ
言い訳の囀る背中爪を切る  きよこ

二輪草群れてお笑い自虐ネタ  葉芹 
由なし事理科教室の春灯し  葉芹
晩春の小さな軋み旅装解く  葉芹
花盗むは罪にならぬと宣えり  葉芹
酔わされて酔って言問橋おぼろ  葉芹 

全自動麻雀卓にみどりの日  天気
緑陰を尻がはみだす街宣車  天気

自画像の瞳大きめ若葉風  眞喜恵


「山川海空林」句集  2005.4.18-

コピーの山花の口紅つけて繰る  きよこ
春の川耳目盗まる午睡刻  きよこ
海の幸矩形の籠で届く春  きよこ
川幅に空を流して花菜風  きよこ
疎林過ぐ春の音色は細かくて  きよこ

山ひとつ曳きずりてゆく蚯蚓かな  天気

大文字山笑う窓おから炊く   ゆら
白鳥(しらとり)といて春川は雨の中   ゆら
山鳩の羽ばたかず空も見ぬ春   ゆら

坪庭に姥捨山の桜散る  勝之

だんまりの口紅を赤花山葵   ざんくろー
川底にフレンチキッス春茜   ざんくろー
羊水の海を横切る風青し   ざんくろー
空もある海もあるから春である   ざんくろー
林から像の足踏み土恋し   ざんくろー

芽吹山に集まれ打楽器・管楽器  葉芹
メロンパン屋かげろいながら川原まで  葉芹
身ほとりのおぼろに紛れ海坊主  葉芹
呟いて色即是空花が舞う  葉芹
林中も濡れているらし啄木忌  葉芹

山荘に今日ひと気あり蟻の列  義郎
桜さくら海を見たくて川へ散る  義郎
八重桜の鬱に染まって濁る空  義郎

修験者の山に万本花明り  珠子
曼荼羅の花の静けさ川奔る  珠子
まほろばの花びら海へ向かうらし  珠子
初燕平山郁夫の空蒼し  珠子
花林檎いつか出会いし道に出る  珠子

春の夜のボレロが山にさしかかる  宙虫
春の川同じ仲間とうたう歌  宙虫
大海の波を聞くため芹伸びる  宙虫
踊子草夢がかたちとなる時空  宙虫
林さんの餃子が焦げつく春の宵  宙虫

山並みのとぎれ途切れに花闌ける  眞喜恵
川下に風吹いてきて花一片  眞喜恵
海水の川さかのぼる春の暮  眞喜恵


飲み物句集  2005.4.11-

新緑や朝の紅茶を濃くいれて  登季
花疲れ紅茶カップは古伊万里で  登季
花疲れミルク色した入浴剤  登季
春昼や緑茶に鹿の子菓子添えて  登季
春暁のコーヒー苦き夢続く  登季

酒飲めぬ酒席一気に花が散る  葉芹
四月の雨紅茶葉しばし踊らせて  葉芹
自販機からごとんと春のミルクティー  葉芹 
大朝寝目覚めはコーヒーより緑茶  葉芹 
旅支度コーヒー・ルンバと春風と  葉芹 

花冷えや紅茶パックの糸がとれ  餡子
吹き寄せるミルクの薄膜春の地震  餡子
うららけし緑地と緑茶見間違う  餡子
初めての夜明けのコーヒー若葉騒  餡子
春はあけぼのの誓い酒を断つ  餡子

缶紅茶四葉クローバ探す目に  きよこ
花眠らす雨飲み残すミルク割り  きよこ
花の旅好きなコーヒー断ちしまま  きよこ
所望する緑茶のおかわり桃満開  きよこ
捨て犬に汲み置く水や花の駅  きよこ

紅茶缶ふれば音する桜ちる  天気
桜散るミルクとふ名の男娼に  天気

つばめ飛ぶ紅茶の椅子がとても華奢  義郎
花粉症のせいでヨーグルトになるミルク  義郎
コーヒーを緑茶に代えて夏時間  義郎
初蝶やマスターの淹れた濃いコーヒー  義郎
飲み物割り勘塩分控えめ花の雨  義郎

ズル休み紅茶に落ちる花の陰   ざんくろー
母が居てミルクの匂う春の風邪   ざんくろー
かげろいや緑茶の湯気に微笑み泣く   ざんくろー
舌にある珈琲に伊賀訛りある   ざんくろー
忘れたくないこと増える花見酒   ざんくろー

ひとり分紅茶葉二杯桜ちる  珠子
緑茶濃しこれより桜奥千本  珠子
飛花落花舌に忘れるミルク飴  珠子
花の雨コーヒー砕く髭店主  珠子
缶コーヒー花ひとひらを追ってみる  珠子

仰向けの目にさくら散る紅茶の香   ゆら
春の雨さんぽにミルクとコッペパン   ゆら
飲み交わすコーヒー甘き春の夕   ゆら
父母の呼ぶ声だ緑茶とさくら餅   ゆら
春の朝置いてきぼりの緑茶かな   ゆら
うららかな日の服装はソーダ水   ゆら

春落葉紅茶をくるくるまわす歌  宙虫
花冷えのミルクキャンディー噛んじゃった  宙虫
春の雲冷めた緑茶と野に眠る  宙虫
春の闇コーヒーメーカーから落ちるもの  宙虫

春暁や広がっていく紅茶の葉  眞喜恵


「遠近乱視眼鏡」句集   2005.4.4-


麻痺のわが半身探す遠霞  義郎
遠ざかりまた近づきし雪解川  義郎
乱暴にレモンをしぼる泣きたくて  義郎
満開の視野控えめに柳の芽  義郎
陽炎に取り巻かれけり鼻眼鏡  義郎

遠方より来る友もなし花の雨  葉芹 
近況がいつしか愚痴に花の友  葉芹 
わたしの目遠・近・乱視ヒアシンス  葉芹
遺伝子は長命型か鼻眼鏡  葉芹

遠足の朝に巻かるる卵焼き  勝之
近隣の桜集めてちんとんしゃん  勝之
乱浮する夜桜の道を帰り来ぬ  勝之
視界にはあの世もありて桜橋  勝之

ポピーゆら遠く駆け寄る逝きし犬   きよこ
遠慮がちに√を解きし目借時  きよこ
近海に人魚も賞むる夜の桜  きよこ
乱視もて何れさくらかももあんず  きよこ
チューリップチワワの視界拡がりぬ  きよこ
指眼鏡の焦点あわず花ミモザ  きよこ

遠方にずんべらぼうの桜かな  天気
遠くまで泳げぬ春の金魚かな  天気
花の夜のなんともいへぬ至近距離  天気

日々待たる胸に開きて遠櫻  登季
近松の泣かせどころへかぎろえり  登季
腕組めば土手の道へと花乱舞  登季
花を見る視線違えて土手の道  登季
飲みすぎて眼鏡忘れる花の宿  登季

筆立てて遠近さぐる三月尽  餡子
花万朶三日で終わる妻の乱  餡子
貴方しか視野にはいらぬ朧の夜  餡子

遠桜母に端切れの溜まる箱  珠子
初桜まずは酒瓶近寄せて  珠子
乱れ飛ぶ異動の噂花の雲  珠子
子の視野に父母失せず入学す  珠子
眼鏡なき聖者の遺影花万朶  珠子

人が人呼ぶ街の話や畦を塗る  宙虫
竹の秋からねじれはじめる近未来  宙虫
木蓮がこわれる波乱のあるじゃんけん  宙虫
ワイドテレビの視覚のなかの花菜畑  宙虫
めがねなくしてつまづく隣の筍や  宙虫

蒲公英の絮が遠吠え熨斗袋   ざんくろー
胎動の春の闇へと近づけり   ざんくろー
乱痴気の国会議員亀鳴けり   ざんくろー
可視光に色づく桜晴れのち曇   ざんくろー
眼鏡橋ひどく赤らむ春の雨   ざんくろー


乗物句集  2005.3.28-

次の世は花の筏の船頭に  きよこ
雑載に乗り越すバスや花菜風  きよこ
子供武者も乗り込む電車蔵の町  きよこ
飛行機が綯い交ぜてゆく花の声  きよこ
萬霊の守る駕籠にて花の三界へ  きよこ

廃船の舳先押し上げて春潮  珠子
朧夜の玩具のバスに猿の客  珠子
花粉症マスク居眠る終電車  珠子
教壇へ紙の飛行機卒業す  珠子

風の蝶風船爆弾は死語か  葉芹
母子草気になるオムニバスの二話  葉芹
花冷えの横浜馬車道電車道  葉芹
不時着の紙飛行機はさくらの辺  葉芹
弥生尽遠い記憶の乳母車  葉芹

風船のへのへのもへに髭を足す  天気
花の夜を蒲鉾板の船きたり  天気
四月来たりバスガス爆発と唱えれば  天気
三界の桜つらぬく電車かな  天気

よく見れば宇宙船かも春の星  とこりん
囀やバストパットを二・三枚  とこりん
春日和飛行機雲に尻尾あり  とこりん
似たような駅と電車と春の月  とこりん

鳥雲に「科学」の付録のぽんぽん船  宙虫
ゆきやなぎ散るバスガールのいる場末  宙虫
乗り越した銀の電車がゆく春野  宙虫
紙飛行機の届かぬ空の白木蓮  宙虫
誰かが起こす動く歩道の春の風  宙虫

つかれてはいのちへりゆくかみふう船  餡子
紫木蓮今日を限りの路線バス  餡子
花万朶お客のいない縄電車  餡子
春暁や紙飛行機の翼濡れ  餡子
花吹雪く錆びるにまかすオートバイ  餡子

ハーレイの相乗り桜吹雪浴ぶ  登季
春の山その横腹にモトクロス  登季
春の空アクロバットの雲を曳く  登季
零戦の海の藻屑と桜花  登季
春風を手で掻き回す一輪車  登季

騙し船男と女別け隔て   ざんくろー
キャンバスの桜がまばら繰返す   ざんくろー
終点の路面電車へたびら雪   ざんくろー
飛行機のない景色かな牛蛙   ざんくろー
菜の花の震えしメリーゴーランド   ざんくろー

万愚節太平洋に出る小船  眞喜恵
終点のバス停までは花三分  眞喜恵


「天気環状線」句集  2005.3.21-

百千鳥壁画の天使手にラッパ  葉芹
ライバルは気障ブランコの揺れ止まぬ  葉芹
愛こめて花菜呼吸器循環器  葉芹 
罪状は雑駁畑の葱坊主  葉芹 

逝きし犬天窓に来る春の宵  きよこ
気分は天女春風を翻す  きよこ
オーケーの環両腕で作る花の昼  きよこ
ほろ酔いの春月行きの西武線  きよこ

来ない来る来ない天道虫くるり  珠子
春愁という湿気あり生あくび  珠子
花こぶし循環バスが折り返す  珠子
罪状は家事できぬこと山笑う  珠子
菜の花や妖怪駅に零番線  珠子

さくら咲く天文学の書を買へば   天気
木蓮の吸気と呼気のあわひなる  天気

ふらここや反っくり返る天邪鬼   とこりん
値下がりの株価気ままに蛙鳴く   とこりん
逝く春の埴輪に耳環さがりおり  とこりん
すんなりと白状をして卒業す  とこりん
矢印の太き直線春疾風   とこりん

モノクロの天地総子の引く口紅   宙虫
紙飛行機黄砂の気流に届かない  宙虫
金環蝕見えるチャペルの茗荷竹   宙虫

春の野に図々しくいる天が紅   ざんくろー
どこにある一人静の低気圧   ざんくろー
子午環の胸いたきことなし給う   ざんくろー
罪状はつくづくし狩り取る性根   ざんくろー
母の手の結婚線が朧影   ざんくろー

天丼の衣さくさく囀れり  眞喜恵


「国破山河在」句集  2005.3.14-

第二言語が犬語の国木の芽道   きよこ
行き先は地図の破れ目木の芽張る   きよこ
一片は幹に添い散る山桜   きよこ
モーツァルトの春風破るハ短調   きよこ
蓬もち老母の泣く場所在るやなし   きよこ

蕗のとう南の国からお嫁さん  珠子
海苔袋破いて春の風邪三日  珠子
山笑い毎朝増えるヨーグルト  珠子
青銅の河童のお皿杉花粉  珠子
牡丹雪溶けて在来線ホーム  珠子

某国にテポドンの屹つ日永かな  天気
水仙に遠く発破の音のせり  天気
おむすびがまつしろ春の山にゐて  天気
菜種河豚の頃となりけり失恋す  天気

春の雲国歌歌うか歌わぬか   葉芹
微調整きかぬ春山破戒僧   葉芹
山椿満座は妙にしんとして   葉芹
合の手を河内音頭へ春障子   葉芹
所在なげにほうれん草が暮れ残る 葉芹

蕗味噌や愛国論が姦しい  登季
残雪や屋号書かれた破れ傘  登季
連山は雪信玄の頭陀袋  登季

わがままがいて春宵の国内線 とこりん
身の内のかすかな破裂春の夜 とこりん
山合いの鶏卵ごろり遅日かな  とこりん
河口からサンバのリズム蝶生まる  とこりん
花粉飛ぶまだ空っぽの駐在所  とこりん

木の芽張るお国訛りの消えし夫  餡子
梅満開破りしメモをつなぎ読む  餡子
乗り降りの誰も無き駅山笑う  餡子

春の野に足跡や葦原の国   ざんくろー
黄ばみたる恋文破る春の雷   ざんくろー
種芋に日の沈みゆく相の山   ざんくろー
河跡湖の祈りのこわね春の霧   ざんくろー
御在所のカモシカが啼く春の宵   ざんくろー

黄砂来る国の画数足りぬまま  宙虫
パンジーが破調でゆれる問屋街  宙虫
深々と末黒野をゆく登山靴  宙虫
大河を塗るけして濃くない春の色  宙虫
在中の家族写真やはこべ咲く  宙虫


「好評発売中」句集   2005.3.7-

木の芽雨亡夫の好みしポロネーズ   葉芹
評決の行方目刺が反っている   葉芹
桜餅抱き人形の目が不評   葉芹
春発信タンゴはモンテカルロの夜   葉芹
競売の家の沈丁咲き続く   葉芹
夢の途中蝶には蝶の円舞曲   葉芹

北開くニーハオの字が深入りす   ざんくろー
春蘭や三時に毒突く評論家   ざんくろー

好きな句を唱えて春の呪文とす    きよこ
評判のがんも小ぶりに街は春   きよこ
思慕伝える発信春の亥の刻   きよこ
売れ残る仔犬の値札冴え返る   きよこ
木の芽張る揃わぬ和音練習中   きよこ

好日やけむりのやうに菫咲く  天気
草かぐはし句評にいつも嘘すこし  天気
百発のうち数発は花の種  天気

啓蟄の好きにさせとく臍の位置  珠子
酔漢の風評ふふふ山笑う  珠子
卒業歌明日東京へ発つという  珠子
受け売りの年金問題鳥帰る  珠子
ふるさとの有象も無象も雪の中  珠子

啓蟄やぺ・ヨンジュンの声が好き  餡子
此の書評不評悪評鳥帰る  餡子
諍いの発端は内裏雛の位置  餡子
三月十日文学全集売りに出す  餡子
唇に最中の皮付け余寒かな   餡子

駄目押しをされ三月の嗜好品  とこりん
きっちりと分けおり春の評価額  とこりん
発港の汽笛が響く春の空   とこりん
園芸も灯油も売って大型店  とこりん

スイトピー好みし君が何故夫  ゆら


「田島魚問屋」句集    2005.2.28-

斟酌は田畑以外浅き春   きよこ
標とする半島隠す春の雪   きよこ
魚店の捌く水音春兆す  きよこ
麗らかやドックフードに魚味  きよこ
浅春の禅問答は犬の勝ち  きよこ
春雪に惑う晩年の屋台骨  きよこ

母秘伝の木の芽田楽・蕪蒸し   葉芹
雛祭前夜の大島紬かな  葉芹
春しぐれ古刹にありて木魚の座   葉芹
遠霞魚の餌となる魚   葉芹
徒花も不問に付して雛あられ   葉芹
相部屋のS子の本音花菜風   葉芹

丹田に力を入れつ卒業歌  珠子
列島の腹にひねもす春の雪  珠子
終雪や空揚げとなる深海魚  珠子
意思問えば返事「べつにぃ」春の雪  珠子
射的屋にガラスの引き戸春の雪  珠子

田楽のおこげをしゃぶる春の月   ざんくろー

口笛の高音掠れ紫雲英の田  餡子

花粉飛ぶ芝から田町芝浦へ  天気
走り根はどこまで雨の島根まで  天気
魚影濃し春夕焼のあのあたり  天気
蝶に問ふ秩父の雲のいろかたち  天気
三月の八百屋にまるいものいろいろ  天気

田楽の味噌がこぼれて梅の昼  登季
島の春船着くたびに晴れわたる  登季
桃の日の魚は頭ごと盛られ  登季


「長寿世界一」句集  2005.2.21-


パソコンと館長の距離春の川  とこりん
切れそうな電池の寿命山笑う  とこりん
浮世絵の男と女犬ふぐり  とこりん
地球儀の世界一周初音聞く  とこりん

別れ雪備長炭があかあかと  葉芹
春雨を遣らずの雨と座長言い  葉芹
無量寿は梵語椿に日当たりて 葉芹
又の世も女ぽっかり春の月  葉芹
請い願う安楽世界落椿  葉芹
また一つ罪のない嘘おぼろ月  葉芹

夕長し扉の螺子が馬鹿になる  珠子
母の寿命雛の寿命冴え返る  珠子
菜の花の煮浸しこの世忙しくて  珠子
うららかや千葉界隈のグルメ地図  珠子
一服のお茶に一礼古雛  珠子

冬銀河長距離夜行列車啼く   ざんくろー
姫辛夷いびきの主の恵比寿顔   ざんくろー
寒椿一つずつ世を捨てるのね   ざんくろー
恋猫の視界遮る恋の風   ざんくろー
陽炎のつやつやすべる一青窈   ざんくろー

長嶋のサインに高値花粉症  餡子
宿題は寿限無の暗記春浅し  餡子
あの世への出入り口かもシャボン玉  餡子
世界地図四隅から裂け春満月  餡子
てにをはの一字を敲く朧の夜  餡子
一碧楼一葉一茶一輪草   餡子

梅八分大家族の頃のちらし寿司  きよこ
ものの芽に出会うあの世への曲がり角  きよこ
ご長命の座主様確と春の月  きよこ
半開の欅の蔵戸春一番   きよこ
西行の視界へ一気に春の雪  きよこ

梅咲くと世間の噂そこここに  登季
界隈の和菓子屋桜餅を売る  登季
春一番誰かが呼んでいるような  登季

梅の枝にゴム長靴の啼きにけり  天気
寿がきやの一歩手前の雪解かな  天気
菜の花の絶望的にハ長調  天気
綿雪を眠る世界は資本主義  天気
亀鳴いてまた世界観てな科白  天気
結界に置く食虫花買うて来し  天気
一端は霞みておりぬ糸電話  天気
啓蟄や一味の穴をじっと見る  天気


「東武線全駅」句集  2005.2.14-

日脚伸ぶ東京通勤圏に住み  珠子
色褪せた武具の綴じ紐梅三分  珠子
夏みかん提げて白線まで下がる  珠子
浅春の「火の鳥」全巻括る紐  珠子
菜の花のおまけ菜の花道の駅  珠子

真東に雪片流れゆく身軽   ざんくろー
鞠つきや林武の春がある   ざんくろー
春の風動線の影落としけり   ざんくろー
卜全の掌迷わず春はたく   ざんくろー

春浅し日東紅茶の缶に錆  餡子
壷焼きやもう聞き飽きた武勇伝  餡子
線細き少年春の海に向く  餡子
分校の世界全図に雪崩来る  餡子
千葉駅を出て千葉パルコ雪催い  餡子

陽水が笑ふ花粉は東西   ゆら
雨の午後山須臾咲く武道具店   ゆら
春時雨破線波線波紋呼ぶ   ゆら
全員でぶらんこを漕ぎ夜傾ぐ  ゆら

武州から博多水洟すすりおり  とこりん
学校の正門鬼門朝の東風  とこりん
電線がたるむ建国記念の日  とこりん
如月の全力疾走コードレス  とこりん
駅員の制帽目深韮炒め  とこりん

恋猫をあつめて怖し東山    振り子
焼野原武君だけかくれてゐる   振り子

東京が霞むサラダがまず置かれ  天気
梅の木の虚を武骨に咲きにけり  天気
路線図の一線北へ花木の芽  天気
淡雪に纏わるビルの全裸かな  天気
駅弁の蒲鉾はんぶんほどの春  天気

滔滔と春の飛行機北東(うしとら)へ   マイル
武器かたく眠りて春は極まれり      マイル
アネモネを全てと思ふ鎖骨かな    マイル
春や支線にコントラバスが入りたる    マイル

合鍵のそれぞれ雪が雨になる  葉芹

北東に針路変更涅槃西風  眞喜恵
春光や落武者潜む木の辺り  眞喜恵
早咲きの桜路線図を見直す  眞喜恵


「開封後密閉」句集  2005.2.7-

開運の神頼みして春立つ日  登季
梅開く予感かすかに封を切る  登季
卒業の子へ封を切るセイロン茶  登季
国後が見えて流氷動き出す  登季

雛開く術後の包帯解くように  珠子
封切れば飛び出す春の旅案内  珠子
サッカーの勝利のその後冴え返る  珠子
春立てり寝癖の後ろ撫でて出る  珠子
過密都市東京に春がためらう  珠子
閉業のその後ミモザの花たわわ  珠子

捨てられず歯ブラシ開きたる月日   ざんくろー
帯封の新札におう春の風   ざんくろー
春の雨後脚で蹴るショーモデル   ざんくろー
綿密に年金貯金水涸れる   ざんくろー
幽閉の書架に恋文冬館   ざんくろー

黄門が頷きサバ缶開く寒夜   ゆら
封緘がべちゃり粉雪ふりかける   ゆら
春色のポーチ小指に密着す   ゆら
窓開けてアルキ愛デスになる二月  ゆら
水仙のビッグマウスが閉まらない  ゆら

三脚を開くミモザを泣かせても    振り子
陸封に似て春風の真つ向よ      振り子

青青とショール開けばももんが飛ぶ  マイル
チューリップ開脚前転いたしけり   マイル
封をしてジャムとどけたる春の宵   マイル
癌封じ呑んで三寒四温かな     マイル


「指名手配書」句集  2005.1.31-

メール打つ親指逸る春隣  珠子
日脚伸ぶ役職氏名首に下げ  珠子
寒気団指紋ざらつく男の手  珠子
寒気団居座る気配鍋が噴く  珠子
立春の棚に教科書パンにジャム  珠子

息白し眼鏡に付いた指紋あり   ざんくろー
豹の檻重荷とならぬ名残雪   ざんくろー
雪の夜の必要経費手羽喰らう   ざんくろー
後ろ手の定かに頼る黄水仙   ざんくろー
勾配を登りきりたる冬銀河   ざんくろー
早梅のひときわピンク家庭医書   ざんくろー

観音の足の指反る春の闇  登季
大寒の風名物の馬刺かな  登季
手を組んだ記憶枯野へ突き刺さる  登季
晩年の赤い手帳も寒の明け  登季

遠雪崩指ぬきの母やはらかに    振り子
名張におばさん名古屋におぢさん梅三分   振り子

くすり指春は遠しとくすり指  マイル
くすり指それはカムイとみんな呼ぶ    マイル
空缶に指さし込んで春の泥   マイル
名刹の闇をふくらむ霜柱   マイル
寒銀河あすも手首に脈はかる   マイル
かるかん配り父とも母ともちがふ冬   マイル
伝書鳩でるでる出汁に花かつを   マイル

窓は枯野車内販売で買う馬刺  宙虫
聞けずにいる忘れた名前虎落笛  宙虫
手裏剣がどこかに刺さる冬銀河  宙虫
少しだけ二月を銀座に配備する  宙虫
白梅の湾にひらめの手配書き  宙虫

配属は海から山へ豆を撒く  とこりん
手袋の片手が踏まれゆく銀座  とこりん
この町の名物男寒鴉  とこりん
きさらぎや窓に指紋が残る夜  とこりん


「治国平天下」句集  2005.1.24-

壁抜けて隣の演歌寒湯治  珠子
大落暉国道一本枯野断つ  珠子
平凡な講義うっすら雪積もる  珠子
実南天父より先に死ねぬ母  珠子
下味は醤油少々日脚伸ぶ  珠子

くちびるの治癒してのちの早春賦  天気
如月の鏡の国でシャンプーす  天気
冬麗の平均台に乗りて落つ  天気
マスクの人くる天国の話しに  天気

不戦問う霜が世界を治めけり   ざんくろー
国境に溶け込んでいる冬茜   ざんくろー
平積みの冬をひとつずつ退かす   ざんくろー
天竺へ抜け道となる冬銀河   ざんくろー
天草の海に刻むる濃きクルス   ざんくろー
冬日向開けっ放しの天動説   ざんくろー
葉牡丹の中に迷いて九段下   ざんくろー

千本の桜続きて海に散る  泉
島の寺桜開きて参りけり  泉
満開の桜に白き夜空かな  泉
散る桜明日の我が身は知らねども  泉
渋滞はいつもと同じ桜咲く  泉
満開の桜見上げて墓参かな  泉
冬の宴去り行く人の未練かな  泉
風邪ひきの脈拍強く指を打つ  泉
風邪ひきの辛さを語る眼かな  泉

跳ね上がる上司のサイン冬薔薇  とこりん
どら猫がのっそり風邪が治らない  とこりん
平らげるジャンボステーキ雪焼す  とこりん
一月の国歌斉唱女帝論  とこりん
大嚔嚊天下と人が言う  とこりん
地下鉄の回路を辿り味付海苔  とこりん

いでたちは国定忠治捨て案山子  登季
餅つきに明治生まれも加わりぬ  登季
買い初めに買う明治屋のコンビーフ  登季
軒氷柱名をなさずしてお国入り  登季
平静に話すつもりでごまめ噛む  登季
書初は天下泰平大書に  登季
初句会天気師匠の胸を借る  登季
一月の下旬というに新年会  登季

万国旗ぞろぞろ出でて哀しい丘   マイル
明治屋に来て春の泥落としけり    マイル

完治したはずの足裏冴え返る  眞喜恵
海国の川の流れや虎落笛  眞喜恵
平仮名のやさしさがすき日脚伸ぶ  眞喜恵
天気図にため息かける雪しまき  眞喜恵
告白の下書き続く春近し  眞喜恵
下書きに埋もれゆく恋冴え返る  眞喜恵


「持久力向上」句集  2005.1.17-

月曜の持ち物検査風冴ゆる  とこりん
永久歯数えなおして枯芭蕉  とこりん
大寒や力道山の平手打ち  とこりん
上向きの鼻は誰似か餡ころ餅  とこりん

隠し持つピアスの小箱雪となる  珠子
久方の指切りげんまん雪だるま  珠子
冬の大三角肩の力抜けよ  珠子
真っ向から褒める男の黒セーター  珠子
セーターの男爪切るメモの上  珠子

包丁を持ち鮟鱇の腹を刺す   ざんくろー
悠久の星明かり満つ年籠   ざんくろー
応力の加わる冬の角速度   ざんくろー
室咲が向こうの空を確かめる   ざんくろー
春を待つ音が轟き最上川   ざんくろー

ぽんかんの気持ちになって歩いている  天気
永久にペリカンである睦月かな  天気
シーソーの支点が軋む春隣り  天気
チェシャ猫の冬の日向によろめけり  天気

ペコちゃんの鼻も上向き春を待つ ユキ
あてもなく大根を擂る力一杯  ユキ

冬すみれ見てきて象の矜持かな   振り子
永久が顔も名前も呼ぶであらうか   振り子

水道の上に垂れたる物を読む   マイル
憲法が向日性の化粧して    マイル
みぞれになるよ君は盥持つたまま    マイル
ここに永久ここにかりそめ蝋梅咲く   マイル
冬草や自力でゆけるところまで     マイル

軽いもの持ってよろけつ雪野ゆく  登季
煮凝や久し振りなる兄の家  登季
風花に力を抜いて紛れこむ  登季
上方へ向う開帳冬の旅  登季
逆転の上下関係寒波くる  登季
振り子さんお久し振りです寒見舞  登季
所持金もなく人日をうたた寝す  登季

持駒の次々に出る黄水仙  眞喜恵
永久の隅っこにある寒椿  眞喜恵
大寒の力がはいる奥歯ある  眞喜恵
冬日向斜め読みする返却日  眞喜恵


「松竹梅鶴亀」句集  2005.1.10-

鰻重を松にして女正月   登季
松過ぎの疾風のごとし月日過ぐ  登季
竹光の試し斬りには冬林檎  登季
参道で買う梅柄のちゃんちゃんこ  登季
鶴翔てば風も従う湖の上  登季
歌麿の女の首が熊穴に 登季
亀甲の模様が好み掛布団  登季

松取れて米屋に変わり餅レシピ  珠子
東京のすぐ止む雪に竹撓う  珠子
梅一輪脇に歳時記電子辞書  珠子
雪催い鶴を折る間の待ち時間  珠子
寒の月亀の子束子乾ききる  珠子

松過の松の枝先待ちぼうけ  とこりん
寒の入竹竿売りが素通りす  とこりん
おにぎりの梅鮭おかか初旅に  とこりん
鶴瓶が行く一月の港町  とこりん
締めなおす亀甲結び寒椿  とこりん

門松の残るや靴の塚があり   ざんくろー
小春日にこころを覗く竹輪   ざんくろー
人日の飲み屋で啜る梅茶漬け   ざんくろー
初田鶴を一羽に入れて千羽鶴   ざんくろー
亀山に雪の降る夜は眠れない   ざんくろー

月の松の走り根にてころぶ  天気
初夢の富士に竹輪が浮いている  天気
梅干の種かりこりと夜半の雪  天気
胸ぐらにカルタの鶴を遊ばせる  天気
人麿の歌ながながし山眠る  天気
こひなたを亀迷い来て誕生日  天気

松脂の指にべっとりどんど焚く 眞喜恵
竹馬の後戻りすることはなし  眞喜恵
蝋梅や息吹きかけた手を当てる  眞喜恵
鶴嘴に付着する土春遠し  眞喜恵
土壁に亀裂ちょこっと冬木の芽  眞喜恵


「啓明学園前」句集  2005.1.3-



三日はや一筆啓上日に一句  珠子
明細書メールに添付事務始め  珠子
マスクして農学部卒納税課  珠子
春遠し動物園に猿ばかり  珠子
初春や笑う赤子に前歯二本  珠子
前垂れの粉雪払い男立つ  珠子

拝啓の上でこっくり置炬燵  ユキ
置炬燵頬にうっすら拝啓と  ユキ
拝啓のあと悶々と煮るおでん  ユキ
待つ女の明暗映す初鏡  ユキ
寒稽古阿吽の呼吸学びけり  ユキ
礼節とユーモア学ぶ寒稽古  ユキ
公園を赤いマフラー駆けてゆく  ユキ
冬帽子床屋の前を行ったり来たり  ユキ

谷啓の歩調で初日へとむかう  天気
年明けて臍おどろくべき深さ  天気
学ならず喉で悶えし雑煮餅  天気
雅叙園へ雲のだらだら坂を行く  天気
山眠る立ち小便の真ん前に  天気
すやすやと前頭葉の海鼠めく  天気

人に生まれ望まれたのか年が明く   ざんくろー
論点の冬木なしたるレトリック   ざんくろー
拝啓あなたに届かぬ年賀状   ざんくろー
夕闇の明るく照らす枯芒   ざんくろー
学び舎の崩れた壁や黄水仙   ざんくろー
サバンナに動物園の果て枯野   ざんくろー
人日やリスの前歯が欠け落ちる   ざんくろー

佐田啓二の笑顔を真似て初鏡  登季
明るい日明るくない日三箇日  登季
学ちゃんのインテリジェント獏枕  登季
枯園へ自動改札抜けてゆく  登季
前歯から日暮れはじまる寒の入り  登季

初詣透き通りたる御神酒かな  泉
手に注ぐ水清らかに初詣  泉
参道の露店静かに初詣  泉
根を張りて力蓄へ冬木立  泉
参道の静けさ厳し冬木立  泉
行きずりに声かけられて焚火かな  泉
息白く背中丸めて早出かな  泉
夕暮に黒く浮びて冬木立  泉


「変身願望論」句集  2004.12.27-

褞袍着て変換キーを叩く指  とこりん
型紙の身頃両袖雪が降る  とこりん
願うように祈るように雪が降る  とこりん
望郷や明日は消えゆく雪の花  とこりん

極月のいよいよ過ぐる声変わり   ざんくろー
闇鍋や身辺整理する女   ざんくろー
降り出した雪解ける間の願い事   ざんくろー
人に生まれ望まれたのか年が明く   ざんくろー
論点の冬木なしたるレトリック   ざんくろー

留守の部屋炬燵静かに変態す  勝之

咳き込みて変装ばれる捜査官  ユキ
狐着て身の程を知る銀座かな  ユキ
ポトフ煮て願うは彼の笑顔だけ  ユキ

まばたきのサ変活用ぼたん雪  天気

変身は白いマフラー巻いただけ  珠子
腰痛は身から出た錆雪となる  珠子
夕霙入学願書に本籍地  珠子

冬夕焼刻々変る湖の色  登季
年の瀬の身代り不動御拭い  登季
白梅や天神さまへ願掛に  登季
大年の望遠鏡を未来へと  登季
紅白の是非論除夜の鐘を聞く  登季

冬天の日付変更線超える  眞喜恵


「一字含千里」句集  2004.12.20-

冬つばき「麦」で一番こわい顔  天気
字余りを一字削って冬至風呂  天気
冬木の芽なにを含んでいるのやら  天気
クリスマス千のあかりとなる海鼠  天気

煙突の一輪挿しぬ冬ひまわり   ざんくろー
字余りの師走を無駄に過ごしけり   ざんくろー
夜を明かす含み笑いの柚子浮かべ   ざんくろー
冬菊の千切っては捨て案内状   ざんくろー
天狼の傍ら里見八犬伝   ざんくろー

一品の料理を選ぶ冬至かな   ユキ
ため息を含むカフェオレ冬の空   ユキ
冬銀河千里を翔けよ我が想い   ユキ
肩並べ字幕追いつつ玉子酒   ユキ

柚子風呂の柚子の一つが離れだす  とこりん
鼻風邪や当てずっぽうに文字合わせ  とこりん
蕪汁女の含み笑いかな  とこりん
写真屋に飾りし写真千歳飴  とこりん
里いもが好きあの人もだーい好き  とこりん

柚子一つ浮かべて昔その昔  珠子
冬の月撥ねの崩れた父の文字  珠子
懐かしのメロディ凍豆腐煮含める  珠子
頷けば済むこと大根千六本  珠子

一本の大根持て余し夕支度  勝之
凩のやけにのの字に吹きやがる  勝之
ちんちんと薬罐の説法含蓄あり  勝之

木枯や一番先にきて座る  登季
一粒を口に含んで山葡萄  登季
一村を貫きてくる冬の川  登季
字余りの言い訳けきょうも日向ぼこ  登季
冬の陽のすぐ翳りだす千枚田  登季
冬の雨含んで届く喪のはがき  登季
数え日や千手観音に逢いたくて  登季
冬紅葉千の日矢差す色極む  登季
クリスマス彼との距離は三千里  登季
観客に振る舞い酒も里神楽  登季

冬至の日見え隠れする棘一つ  眞喜恵
冬銀河文字化けをしたラブレター  眞喜恵


「所持品検査」句集  2004.12.13-

冬北斗見つけて児童相談所  とこりん
持参金使い果たして冬木立  とこりん
手品師かそれとも詐欺師冬の坂  とこりん
極月の検問車から大男  とこりん
コートの襟立てておとり捜査官  とこりん

短日や所構えのような旅  仁
荒稲を持清まり和稲を持斎はる  仁
双六の品川宿でまた遊ぶ  仁
大品経六百巻や雪の谷  仁
検番の窓ほろほろと都鳥  仁
狐火や鏡花に夜行巡査の死  仁

短日や所ジョージの言うガチョーン  勝之
持ち金の重きに転ぶ冬の坂  勝之
品のよい野良猫ですね鮭の皮  勝之
HIV検査終え放尿す  勝之

冬ざるる終の栖の所沢  登季
持ち寄りのお菜さまざま初炬燵  登季
持て余す仕事を捨てる冬の川  登季

生活の随所にぼたん雪とける  天気
岡持のぎいこと揺れて冬の雲  天気
世界一品行方正なる海鼠  天気
検品済み牡蠣のトロ箱蹴ってバス  天気
みのむしの査定中にて光りおり  天気

極月や所信も所存も無く肥満  餡子
極月や体内の澱持ち歩く  餡子
極月や並んでもらう試供品  餡子
極月や貝殻に入れた検査物  餡子

現住所夫に同じ牡蠣啜る  珠子
病室に持ち込む噂冬薔薇  珠子
魚屋の粗品のタオル年詰まる  珠子
枯葉鳴り検診結果のAからC  珠子

木枯らしや自分の居場所探してる   ざんくろー
冬木立残る手札にババを持つ   ざんくろー
新品の靴が師走を駆けていく   ざんくろー
検品差異満開に咲く寒椿   ざんくろー
隠密の査問に出掛け冬薔薇   ざんくろー

旅支度所によっては雪を踏む  眞喜恵


「風神門上巻」句集  2004.12.6-

風吹いて虫眼鏡で焼く蟻の群れ  勝之
ちちんぷい神さんと飲む熱燗である  勝之
門前の置き石となりて猫眠る  勝之
買い物は上着来てるけど下パジャマ  勝之
巻貝の穴からのぞく冬の街  勝之

耳掻きをさし込む角度風冴ゆる  珠子
熨斗袋から樋口一葉神帰月  珠子
鉄の門手袋片方引っ掛けて  珠子

鼻風邪のふたり同時にまみむめも  天気
寝坊したでこに神棚からぽんかん  天気
門衛のしわぶく先に農学部  天気
上向きに寝ぬれば海鼠またたきぬ  天気
極月や右に渦巻く洗濯機  天気

短日や風紀委員のスカート丈   ざんくろー
寒に入る空き巣狙いの神頼み   ざんくろー
南天の実を揺らしけり門司の風   ざんくろー
ためと云う上下あべこべ冬紅葉   ざんくろー
枯し野の巻き軸にする世間音   ざんくろー

風聞は射手座の男事始  とこりん
重き扉を押して神父の冬帽子  とこりん
クリスマスリース門前払い食う  とこりん
太文字の上様山に雪がない  とこりん
巻髪の毛先が揺れて聖夜の灯  とこりん

鴨寄りて風の噂を確かめる  登季
冬の野で別れたままの風来坊  登季
山の神機嫌良き日は懐手  登季
冬帽が覗く鬼門の穴二つ  登季
上州の空っ風に乗る雪の片  登季

風荒き日やコトコトと煮る大根  餡子
神様に許しを乞うている寒夜  餡子
裏門の先は枯れ原歯が疼く  餡子
小春日の上田に病みし友を訪う  餡子
左巻く旋毛が二つ冬温し  餡子


「野次馬根性」句集  2004.11.29-



湯豆腐をくちゃくちゃ噛むなこの野郎  勝之
次からはいい子でいます冬の鵙  勝之
熱燗やイワンの馬鹿も極まれり  勝之
根菜の転がるままの象舎かな  勝之
侘助が兄の性癖聴いている  勝之

野っ原にパンの耳撒き小春かな  珠子
冴ゆる星次回へ続くサスペンス  珠子
曲屋の昔馬小屋雪予報  珠子
前言撤回困難大根千六本  珠子
冬薔薇性懲りもなき楽天家  珠子

四十五度に御虎子の刺さる枯野かな  天気
次の間に灯ともしまえの木瓜の花  天気
黄落の以後詳細は次号待て  天気
からつぽの錻力の馬穴冬銀河  天気
手かざして平方根の果てに鶴  天気
蓑虫をぶらさげアルカリ性の空  天気

冬景の一片として野に立てり  餡子
次郎寝て太郎も眠り雪の村  餡子
馬の居ぬ厩雨から雪になる  餡子
大根煮るそして行けぬと書く返事  餡子
熱燗や女性の欄に○をする  餡子

人を見てため息ばかり野は枯るる   ざんくろー
次ページの冬野をめくり明日を待つ   ざんくろー
初霜がゴミの山なり馬耳東風   ざんくろー
根をおろし続ける雲や吉良忌なり   ざんくろー
昨日から冬眠中の性である   ざんくろー

綿虫が飛び野晒しの粗大ゴミ  とこりん
今生は兎次の世は雑草  とこりん
冬の空外れ馬券を八つ裂きに  とこりん
愛想笑いや根腐れのシクラメン  とこりん
初霜や中性脂肪増えている  とこりん

平野から平野に渡る冬銀河  眞喜恵


「日本庭園風」句集  2004.11.22-


小春日のかばの肛門みてしまふ  天気
冬枯れの菩提樹一本のひなた  天気
庭枯るるピアノレッスン後の紅茶  天気
枯園に三次元からすの羽音  天気
あばらばしゃばしゃとひらけば北の風  天気

釣銭の新札勤労感謝の日  珠子
象の鼻飛び出す絵本クリスマス  珠子
山茶花やちゃんばら遊びの庭箒  珠子
泣いて勝つ園児の喧嘩空っ風  珠子
虎落笛瘡蓋剥がす終い風呂  珠子

毛糸玉ころがって来て誕生日  とこりん
落ち葉掃く嫌いな本と好きな本  とこりん
人形の片足?げて冬の庭  とこりん
急行に乗って冬日の動物園  とこりん
熊手売る揃いのはっぴ夜の風  とこりん

日向ぼこ顎が鳴るほど欠伸して  登季
この日々を大事に木守柿落ちる  登季
大根を一本料理煮て擂って  登季
一本の紅葉に染まる散歩道  登季
山茶花の庭へ人寄るティタイム  登季
一日を庭に冬陽のほしいまま  登季
園長の髭から冬の虹がたつ  登季
公園の指定席には赤ゲット  登季
公園は東西なべて菊花展  登季

前方より冬日にわかに翳りくる  勝之
本日はお日柄もよく泥鰌鍋  勝之
箱庭にゴジラを置いて鼻すする  勝之
公園の隅にひっそりカンナビス  勝之
干し布団今夜は風の匂いして  勝之

日暮里の和音をつづる冬の雨   ざんくろー
山茶花の白や本陣駅で降り   ざんくろー
庭先の撮影現場冬紅葉   ざんくろー
寒林の向こうに見える動物園   ざんくろー
空風の浮気心にハラハラして   ざんくろー

短日の句読点なく打つメール  眞喜恵
絵本から飛び出す小人冬温し  眞喜恵
山茶花や人工的な庭に居る  眞喜恵


「放置自転輪」句集  2004.11.15-



放課後の職員室や冬日射す   とこりん
放任主義雨に濡れてる柿落葉   とこりん
髪置きの抱かれしままに紅をさす   とこりん
小春日や泥んこ遊びの中の自我  とこりん
初冬やガターにボール転がりぬ  とこりん
焼き鳥の串先焦げて転記洩れ  とこりん
知恵の輪の最後のひと輪冬の海  とこりん

放埒な女でいたい霧の夜   餡子
十階の小春日和に母を置く  餡子
冬銀河解き放たれて自在なり  餡子
鉛筆を転がしている冬の夜  餡子
冬来る起承転まで済みし生  餡子
一車両枯野まで来て踞る  餡子
エンゼルの置き忘れた輪冬木立  餡子

刻み葱放って日曜気まま丼  珠子
遠野よりイーゼルに置く冬景色  珠子
年賀欠礼近況のみ自筆  珠子
毛糸玉転がる先のごろ寝かな  珠子
冬の雨最終電車に定の位置  珠子
菊大輪御籤の運の片結び  珠子

放電の空ありダチュラねむく咲く  天気
朝寒や猫のお膳に水を置く  天気
蛇穴に入る自走式駐車場  天気
おんどりの公転軌道面ひえる  天気
芒野が回転ドアで裏返る  天気
寒林の鳥のあかるさ土星の輪  天気

あばら二本折れているらし放ったまま  勝之
枕辺に猫の記憶を置いて寝る  勝之
自我少し肥大し布団にくるまれり  勝之
綿虫や転居届けを出しにゆけ  勝之
くるくると枯れ枝に吊る男かな  勝之

奔放に生きる夕日の枯葎   ミミタン
晩冬や又読み直す置手紙   ミミタン

放り出す家事半日は日向ぼこ  登季
白菜漬け置いて出掛ける冬の旅  登季
障子張り上手くいかずに自暴自棄  登季
冬晴れや声を繋ぎてボール放る  登季
木枯の転送先を書きとめる  登季
輪になって鮟鱇鍋を吹いている  登季

玄関の父の放屁か冬に入る   ざんくろー
白チョークから冬に入る倒置法   ざんくろー
自転する安藤美姫や冬に入る   ざんくろー
冬に入る転がっている夕の灯の   ざんくろー
メビウスの輪っかの出口冬に入る   ざんくろー

野放しの心そろそろ冬支度  眞喜恵
置き忘れ多き網棚冬帽子  眞喜恵
自画像の深き青い目冬銀河  眞喜恵



「成人病検診」句集  2004.11.8-

成功の秘密ささやく枯芙蓉  登季
成功の秘訣落葉を掃き寄せる  登季
恋人は猫背銀河を渡り行く  登季
一病を大事に畳み冬籠る  登季
綿虫や検問所から抜けてゆく  登季
検診の脈連れ立って枯野人  登季

紅葉見は成り行き任せ梅むすび  珠子
初冠雪人伝に知る散骨葬  珠子
この先は小児病棟ポインセチア  珠子
検温の朝が戻ってちゃんちゃんこ 珠子
紙貼って臨時休診夕紅葉  珠子

神は留守母の想いの成就す  勝之
人並みと見栄張り納豆掻き混ぜる  勝之
病知り金魚静かに泡を吐く  勝之
冬の朝検便容器の蓋がない  勝之
今頃は雪に埋もれし診療所  勝之

綿蟲とおなじ成分にて夜明け  天気
そらいろのそら人の目と秋刀魚の目  天気
陽に病みて飛蝗は胸を反らしをり  天気
恋人は英検二級やらイナゴ  天気
触診の指紋に雪の降りはじむ  天気
鳥渡る集団検診後の地平  天気

歳問はば平成生れ筆冴ゆる   痾窮
人格の及ばぬ辺り針供養   痾窮
病因が布団の脇で笑つてる  痾窮
陽性の検査結果や懐手    痾窮
聴診器持ちて裸と云ふ遊び  痾窮

俯いた美男葛に同歩成り   ざんくろー
カンタータ異邦人なる曼珠沙華   ざんくろー
病室の夕べとなるや桃の花   ざんくろー
ガン検診ツアーや梨を齧りけり   ざんくろー
降り月診察台の闇が来る   ざんくろー

晩成と言われ続けて冬に入る   餡子
この男人参嫌い人嫌い   餡子
病室に白き日の射し冬の蝶   餡子
検札の車掌真新しき冬帽   餡子
婚姻色魚に現れ診療所   餡子

成金や届かぬ位置にかりんの実   とこりん
人事異動カーブミラーに冬の蝶   とこりん
病室のカーテンレール冬灯   とこりん
検事来て正面に置く革手帳   とこりん
診察券増えて初冬のバスを待つ  とこりん

銀杏黄葉祈願成就の絵馬掛る  眞喜恵
人混みに紛れ込みたし冬の蝶  眞喜恵
万両や臆病風に吹かれけり  眞喜恵
車検日が近づいてきて冬を知る  眞喜恵
山眠る項目多き問診表  眞喜恵


「着色料使用」句集  2004.11.1-

冬帽子試着親には似ぬ寡黙  珠子
山の色野の色天変地異続く  珠子
独り居の一皿料理文化の日  珠子
使い捨てカイロを腰にプリマドンナ  珠子
用済みの案山子はただの棒二本  珠子

ナフタリンの匂い吸い込みセーター着る  勝之
銀杏の色を愛でつつもう一杯  勝之

小春日の着眼点を変えてみる  眞喜恵
極楽へ金色堂の紅葉散る  眞喜恵
文化の日香辛料の並ぶ棚  眞喜恵
草紅葉音なく天使舞降りる  眞喜恵
秋の日の画用紙一面赤黄色  眞喜恵

末枯れや嫁入り前の肌着なり  ざんくろー
蕎麦の花本数足りぬ色鉛筆  ざんくろー
黄ばみたる子規忌に馴染む顔料なり  ざんくろー
有休の使い切れずに色なき風  ざんくろー
高西風に突っ立っている用務員   ざんくろー

馬肥ゆる懺悔促す試着室  登季
容色はそこそこ秋の婚すすむ  登季
秋色の濃淡ウインドショッピング  登季
使用前使用後という栗南瓜  登季

着外の選手に罵声冬来る  とこりん
色鳥や血液型の相性度   とこりん
折込のエステ料金山粧う   とこりん
使わない鋏とミシン冬支度   とこりん
用意ドン残菊匂うところまで   とこりん

夜つぴいて木の実着地の音しきり  天気
秋鯖の色をいっそのこと叙情   天気
芋を煮るたしかどこそこ料理だか  天気
海鼠めくビルの二階の大使館  天気
未使用の夢がまだあり浮寝鳥  天気


「見物人多数」句集  2004.10.25-

長き夜の見出しをつける写真集  眞喜恵
塀沿いに魔物の影あり十三夜  眞喜恵
冬近し乾いた指に指人形  眞喜恵

露見せし嘘には触れず赤のまま  義郎
娘に諭す煮物のコツやふかし藷  義郎
身に入むや人見絹枝の足袋はだし  義郎
短日や追いかけきれぬ多チャンネル  義郎
数学の得意な子連れ日向ぼこ  義郎

松茸や見切り品とはいうものの  珠子
石榴裂け物はためしの太極拳  珠子
菊人形揺れて遠くに震度六  珠子
粧う山数多隔てて震度六  珠子
郷愁のかけら拡散数珠の玉  珠子

螻蛄鳴けり蒼穹の穢土見聞録   ざんくろー
物置に月明かりだけさしこみて   ざんくろー
秋の海忘れぬ間人の四畳半   ざんくろー
同時テロ多発となりぬ装う山   ざんくろー
垂乳根の母が公孫樹や数あまた   ざんくろー

黄落期ショーウィンドーを見て歩く  とこりん
スーパーの見習い期間そぞろ寒    とこりん
辻褄を合わせ夜寒の静物画    とこりん
十月の端物が増えて恙無し    とこりん
冬近し京人形の紅き頬    とこりん
すれちがう元恋人と照紅葉   とこりん
情報過多あっちこっちと貼るカイロ  とこりん
さいころの偶数奇数おでんの具  とこりん

月まんまる見るべきものは見尽くして  登季
草紅葉見果てぬ夢の泣きぼくろ  登季
物騒なはなし林檎に蜜がある  登季
草虱人恋うごとく縋りつく  登季
火鉢置き老人の部屋らしくなる  登季
多分としか言わない息子青蜜柑  登季
数の子が自己主張する口の中  登季

満月がテレビ体操見て跳ねる  天気
くわつくわつと物見遊山の鴨の列  天気
林檎熟る人を愛すること不思議  天気
霧匂ふ夜や恒星の多産多死  天気
冬光はそも数学のたたずまい  天気


「三馬鹿大将」句集  2004.10.18-

十三夜柱の角で掻く背中  餡子
それもまた良し木犀に雨三日  餡子
三行半そろそろ来るか菊膾  餡子

駅出でて急く人ばかり十三夜  珠子
日に三度食べて洗ってそぞろ寒  珠子
盗み読む絵馬の横書き銀杏散る  珠子
秋収め馬鹿面踊りの首に皺  珠子
信楽の狸大小濁酒  珠子
長き夜の回り将棋の駒止まる  珠子

三男は腕白虫をポケットに  登季
三本の指に入ると龍田姫  登
マロン菓子高田馬場の喫茶店  登季
大の字に寝て青空の下にいる  登季
大好きな芋のあれこれ煮て焼いて  登季

野良猫を三匹育て石榴笑む  義郎
馬医者は死語休耕田秋桜  義郎
夜道まで菊の匂いと馬鹿笑い  義郎
大工にも定年ありて菊咲かす  義郎

三振を告げるジェスチャーそぞろ寒  眞喜恵
木の実降る鞍馬天狗の高き鼻  眞喜恵

雲は秋サンドイッチは三角に  天気
秋光にくびれて馬の首の艶  天気
秋の薔薇鹿爪らしき花器にあり  天気
大袈裟な法衣が来たり通夜の雨  天気
白秋や神田将門塚に雨  天気


「海老フライ単品」句集  2004.10.11-

旅の果目が慣れてゆく月の海  珠子
長き夜の逆引きの辞書目から老ゆ  珠子
雨ばかり新胡麻跳ねるフライパン  珠子
天高く単子葉類ガマ科ガマ  珠子
秋野菜品薄ぶらりと男寄る  珠子

海へ行く行かない朝の金木犀  登季
酒滾々養老の滝薄紅葉  登季
老いらくのなにもない秋おけら鳴く  登季
白秋や背を押されつつ老支度  登季
松茸のフライ美味いという噂  登季
昼食はとうふライスで蜜柑剥く  登季
簡単なことで涙が秋夕  登季
単純な男が笑う星月夜  登季

秋海棠咲きパーマ屋に男客  餡子
海越えてスーパーマン逝く体育の日  餡子
秋風や皿の絵の海老ひげ動く  餡子
秋深し旅の終わりの海老フライ  餡子
単線のすれ違う駅柿をもぐ  餡子
返品のきかぬわたくし紅葉見る  餡子

海市のたたまれてゆく午後三時  勝之
老いてなを背中が烏賊の馬場正平  勝之
右クロス打ち抜く海老原フライ級  勝之
単三の尻から生えるえのき茸  勝之

海見える見えないの賭け露千草  義郎
老いては子に従う朝の牡蠣フライ  義郎
鵙一声片手に重きフライパン  義郎

海洋深層水アジアのはずれの栗おこわ  宙虫
ころがった老人いこいの家のむかご  宙虫
フライングの気配が重い秋の蟻  宙虫

カタログの商品番号栗おこわ  とこりん
紅葉や地図と単車と革ジャンと  とこりん
体育の日フライドチキンの骨しゃぶる  とこりん
秋の灯がぼんやりビルの老朽化  とこりん
ぶどう酒を飲み干し海が見える窓  とこりん

秋風や死海の塩のふたふくろ  天気
石榴のごとし老人ふいに怒る  天気
秋風といふ名の空気凡フライ  天気
コスモスは試験に出ない英単語  天気
みちみちに品性卑しからぬ桃  天気


「密入国家族」句集  2004.10.4-

秘密だよ指切りをする秋の空  眞喜恵
入力の一語の重み稲実る  眞喜恵
秋冷や水で固めた砂の国  眞喜恵
家守る父と母の背柿熟す  眞喜恵

月夜茸の秘密は内角の高目  義郎
秘密基地から鳳仙花飛ばしけり  義郎
無月かな入用嵩む演歌好き  義郎
何もかも厭秋風の出入口  義郎
佐渡確と見ゆ国上山秋風裡  義郎
秋暮れて確かむべくも無き生家  義郎
暴走族卒フリーター稲を刈る  義郎

忌中札のみの密葬露の玉  珠子
初冠雪かって母屋に密造酒  珠子
念入りに洗ってからの零余子飯  珠子
秋うらら罅の入った椀包み  珠子
国訛捨てて榠櫨の匂い嗅ぐ  珠子
長男に生まれて家といわし雲  珠子
木犀の風吸い込んでながら族  珠子

「蜜の味」小さく鳴らし秋刀魚焼く  勝之
入口と出口の違うシャツを脱ぐ  勝之
目薬をさしつつ国歌口ずさむ  勝之
新米をもろうて温し家の中   勝之

どんぐりのころりと秘密基地の跡  餡子
月雲に入るまた母のさがしもの  餡子
青年の国家を語る細き指  餡子
家捨てるほどの恋捨て木の実降る  餡子
一族とわかる鼻梁や菊日和  餡子

どんぐりとどんぐり秘密耳は二個  なむ
烏瓜入道相国なる機密  なむ

密造酒試飲かそけき虫の声  登季

かくれんぼが密着している秋夕焼け  宙虫
まだ濡れて棚田に入るちちろ虫  宙虫
小石蹴り国にたんこぶ秋の雲  宙虫
イエイエ娘が家主なんですかねたたき  宙虫
秋祭りタケノコ族が輪に入る  宙虫

ジャネット・リー逝く密会は霧ならず  天気
蛇穴に入間くんだりからエホバ  天気
悠久のふとんの国に秋落暉  天気
黄のポプラ家裁のそばの小間物屋  天気
スー族の人が来たからきのこ鍋  天気


「済州島観光」句集  2004.9.27-

さやけしや一気に済ます家事雑事  餡子
浮く鴨も州に居る鴨も初の鴨  餡子
秋色や島陰に入る手漕ぎ舟  餡子
天高し南の島へ桂逝く   餡子
観音の裏千年の冷えに会う  餡子
秋光を集めて太き川曲がる  餡子

絆創膏貼れば済む傷そぞろ寒  珠子
色初めし温州みかん旅心  珠子
秋蝶のもつれ島まで小舟出る  珠子
芝居観て小暗い街の濁酒  珠子
遠山の峰ゆるやかや稲光  珠子

勘定を済ませてからの鉦叩  登季
ひとことで済む別れです芒の穂  登季
台風圏九州あたり北上す  登季
わが武州見るべきものは曼珠沙華  登季
午後からは武州河原で芋煮会  登季
天の川下り島まで漕ぎ通す  登季
島で見る満月海に光満つ  登季
観音の千手が持てり秋扇  登季
秋晴や観覧車から手を振って  登季
素肌から光沢消えて幾歳月  登季
蜉蝣や光源氏の胸あたり  登季

用済みの案山子をそっと寝せにけり  義郎
槍を持つ案山子や上州新田の庄  義郎
島唄の調子ややずれ雨月なる  義郎
口割らぬ石榴を観察処分とす  義郎
逆光のすすきを分けて釣り装束  義郎

ぽんと押す「済」のスタンプ竹の春  眞喜恵
栗爆ぜて流されるまま三角州  眞喜恵
星月夜海賊船の目指す島  眞喜恵
野分跡富士正面に観光船  眞喜恵
赤い羽根改札口に光射す  眞喜恵

秋鯖の焦げ目直らぬ上州弁  とこりん
返済日過ぎて花野の只中に  とこりん
晩秋の半島越ゆるレース鳩  とこりん
天高し観光バスの出入口  とこりん
仏壇の観音開き暮の秋   とこりん

椎の実を拾って済ます晩御飯  勝之
州境越えて異国の月を見る  勝之

つきづきの返済梨の実で済まぬ   天気
九州に頭ぶつけて秋の蝿  天気
豪州は春おほごゑで安全点呼  天気
蜻蛉きて離島ツアーがよいと言ふ  天気
こほろぎが死生観言ふから潰す  天気
秋光の滲みて骨までなまけもの  天気


「薬事法無視」句集  2004.9.20-

薬喰いたまにはしたし空は秋  勝之
静脈にクスリ打ち込み高き空  勝之
事おこす一瞬前の案山子かな  勝之
法事客帰った後の大あくび  勝之
忍法は木の葉隠れとおでん喰う  勝之
無花果の一果を鳥に残しおき  勝之
無理無体言い散らかして宴あと  勝之

秋彼岸煎薬の渋濃き湯呑み  餡子
秋暑し薬缶頭の叔父が来る  餡子
百薬の効き目試さん新酒酌む  餡子
其処此処に夏の疲れか薬散乱  餡子
長き夜息子は三語で事足れり  餡子
法師蝉婚姻届にも捨て印  餡子
虚栗三無主義など忘れられ  餡子
秋寒や国士無双で上がる夢  餡子
無視という仕打ち林檎に刃を入れる  餡子

秋の蚊の長いキス跡薬塗る  登季
薬売り紙風船を秋の荷に  登季
百薬の長を新酒で賜われり  登季
長き夜の一錠で足る睡眠薬  登季
辛辣な事を言われて長き夜  登季
事なかれ主義に徹して濁酒  登季
大法螺を聞き飽きている仏法僧  登季
法被着て交通整理秋祭  登季
秋野菜はさんでしまう料理法  登季
父の膝近くに置きて濁酒  登季

目薬を差し秋天を遠ざける  義郎
事実など知らずばすむと藷掘りに  義郎
萩を見てそっと引き返した事情  義郎
法学部駐車場空(から)猫じゃらし  義郎
乱れ萩の合法的な乱れ方  義郎
無花果の腐乱が止まずあるじ病む  義郎
無花果を皮ごと食らう惜敗や  義郎
始末書で済む信号無視秋曇り  義郎
九月尽からすの視野にわれ一人  義郎
二学期の視力検定用しゃもじ  義郎

向精神薬溢れしこの世芋嵐  和
御鳥喰の神事はじまる秋の浪  和
西行法師入滅のあと薄紅葉  和
一日百円で暮らす方法芋嵐  和
無味の霧流れ薔薇族廃刊す  和
岩倉具視に権妻ありし暮の秋  和

散薬の五臓六腑に溶ける秋  眞喜恵
秋晴や止事無きに靴磨く  眞喜恵
法の網潜り抜けると薄原  眞喜恵

秋灯指輪外した薬指  珠子
上弦の月薬包紙折って鶴  珠子
秘すほどの事もなけれど月に逢う  珠子
萩の門辞して法衣の裾正す  珠子
ラジオから東京ブギウギ無月なり  珠子
秋風の入口だけの父の視野  珠子

丸薬で握力つける秋の空  宙虫
吾亦紅させば分厚い事例集  宙虫
安眠法のゆきつくところ彼岸花  宙虫
アンモナイトに無知が座ってすいっちょん  宙虫
秋雲のこわれるところまで凝視  宙虫

あくるたび薬袋は蛍のにほひ  天気
胃のどこにここに良夜の粉薬  天気
芋を曳く若い判事と検事かな  天気
秋風裡あくびも法螺も辛辣も  天気
いちぢくを描いて無題と言はれても  天気
天高しむすめてづまの透視術  天気


「鉱石ラジオ対芭蕉」句集  2004.9.13-

鉱物見本盗みヒヤリとポケットの底  勝之
石振り上げても秋の空  勝之
六曜のラジオぼそぼそ京の秋  勝之

秋彼岸ほとけは鉱専出の山師  義郎
蜩が執拗に石になれと泣く  義郎
ラジオぶつぶつアトリエに描きかけの秋  義郎
新米が炊けたと対岸へ手真似  義郎
対角に夜なべの妻がいて酔えず  義郎
やわらかな秋の海背に芭蕉句碑  義郎

萩揺れて昔鉱夫の伯父の訃報  珠子
ラジオから天気概況栗爆ぜる  珠子
石榴裂けあたり障りのない話  珠子
秋高し双眼鏡を対岸に  珠子
破芭蕉石垣高き島の家  珠子

ふるさとは炭鉱の町秋時雨  登季
鉱石のごとき頭や枯蟷螂  登季
墓石から墓石へ古都は秋時雨  登季
句碑なぞる石の感触萩の風  登季
ラジオから天皇の声初あらし  登季
尋ね人探すラジオに虫の声  登季
対の皿一枚割れて秋荒む  登季
秋冷や従兄は対面恐怖症  登季
芭蕉句碑秋の風きて嬲りけり  登季

廃鉱の傾ぐ煙突鳥渡る  眞喜恵
石垣の隙間を狙う猫じゃらし  眞喜恵
秋麗分解掃除するラジオ  眞喜恵
対局の勝敗の鍵野分晴  眞喜恵

地球というー鉱石やちちろ鳴く  餡子
またひとつ鉱炉閉じられ秋夕焼  餡子
新秋の石にほどよき温みあり  餡子
長き夜の苛立ちラジオの周波数  餡子
走り来て対角線に折れる秋  餡子
木曽殿に守(も)られし芭蕉秋深し  餡子
寺の門低く設え破芭蕉   餡子   義仲寺にて

バスを待つ鉱住あとの式部の実  宙虫
秋風の届かぬ闇に鍾乳石  宙虫
島は秋島のニュースのないラジオ  宙虫
対戦型ゲームが洩れる月泥棒  宙虫
彼岸花の故郷に芭蕉来なかった  宙虫

炭鉱と思ふ秋思の鼻の穴  天気
秋光や石屋に石の寝てをりぬ  天気
秋日や石屋の寝ぬる石の上  天気
秋の日のひたと石屋の石の上  天気
秋日傘ラジオのなかを遠ざかる  天気
ちちろ這ふ新旧漢字対照表  天気
生活苦を大笑ひして破芭蕉  天気


「屋台骨崩落」句集  2004.9.6-

鰻屋の金魚を見染め連れ帰る  勝之
齢十八御茶屋じゃ出花でも金魚  勝之
台風の目の中にいて安眠す  勝之
骨上げは朝日の中で水匂う  勝之
角砂糖崩れる前のひとあがき  勝之

本陣は廃屋萩の風通る  登季
大台に乗る娘です秋なすび  登季
台本の悪女書割は曼殊沙華  登季
宵闇の露台恋めくものの息  登季
ぐらぐらと土台が揺らぎ秋刀魚焼く  登季
骨っぽい男案山子のふりをして  登季
鮎の骨抜く技家の秘伝とす  登季
骨酒に酔えば秋思が寄りて来し  登季
骨董の壷に溢るる秋の海  登季
泣き崩れ化粧崩れて酔芙蓉  登季
崩壊を取り繕って秋の野へ  登季
掌に掬えば落ちる水の秋  登季
茫々と落魄の身を秋の野へ  登季
剥落の絵馬触れ合って秋の声  登季

屋敷神までの遠出や母小春  義郎
木槿咲く寺子屋風の英語塾  義郎
台風逸れ手ぶらのわれに鳩寄り来  義郎
高台にぬきんでし栗・柿・石榴  義郎
形なすビルの骨格鳥渡る  義郎
秋夕焼オカリナを吹く無骨な眼  義郎
痩せ中州すぐ行き止まり崩れ簗  義郎
天道虫発たせむとして落としけり  義郎
蜘蛛の囲を脱け出せぬ蜘蛛落としてやる  義郎

郁子通草わが息子というわからず屋  珠子
昼ちちろ理科実験台にこぼれ蝋  珠子
傘の骨接いだ過ぎし日胡桃割る  珠子
新豆腐崩れて帰宅ばらばらに  珠子
落ち林檎齧って俄かイタリア語  珠子

宵闇の猫の目光る屋根伝い  眞喜恵
石榴裂けドラマ仕立ての捨て台詞  眞喜恵

秋深し八百屋の跡に英語塾  餡子
屋号にて呼び合う漁師鰯雲  餡子
壊されし屋上遊園白き秋   餡子
台詞無く見つめ合うシーン秋の浜  餡子
秋の浜台本に無き人の来る  餡子
人の来て台無しとなる秋の恋  餡子
秋麗や骨の形を褒められる  餡子(旧作)
喉に骨ご飯丸呑みする秋夜  餡子
風入れてあばら骨鳴る長き夜  餡子
煮崩れし南瓜水上勉の死  餡子
崩壊の鉄工場に大き月  餡子
崩れては又積むケルン天高し  餡子
新涼や取り落とすもの多くなり  餡子
深秋の湖底に眠る一村落  餡子

颱風や屋根と女は飛びたがる  痾窮
颱風の何がなんだか捨て台詞  痾窮
颱風の貝殻骨や恋の音  痾窮
颱風の崩れかかるを打擲す  痾窮
颱風に落し蓋して煮詰れり  痾窮
崩れ落つ老骨 颱風の屋台  痾窮

秋風にぶん屋が耳毛自慢する  宙虫
秋の雲動悸とぎれぬ踏み台昇降  宙虫
はちすの実背骨をひとつ入れ替えて  宙虫
秋の雨崩れた棚田の石を積む  宙虫
栗落ちる休耕田に道があり  宙虫

さいか屋のマネキンの手に小鳥来る  天気
金魚屋の水なる月を掬びけり  天気
台東区上野に蚯蚓号泣す  天気
秋風や女はやがて台形に  天気
秋晴れの電車に沈む尾てい骨  天気
生きてくぞ秋刀魚の骨の指すほうへ  天気
つまりその人格崩壊後のコスモス  天気
秋色や化粧が落ちて顔が出る  天気


「上下反転眼鏡」句集  2004.8.30-

秋兆す湖上を動くものの影  義郎
怪鳥飛ぶいちじく盗み食う頭上  義郎
湯上りやなまめくものに花すすき  義郎
柿たわわ田の字田の字の城下町  義郎
容赦なき反論容赦なき西日  義郎
転がってすぐ静止する花梨の実  義郎
木洩れ日や眼鏡の奥に秋思の瞳  義郎

上を向いて歩いた末よしおまねき  勝之
下ネタを山盛りにして八月尽  勝之

葭芦の談議に笑い水の上  登季
訣別の手紙の上を蟻走る  登季
父さんの下着乾かず秋風裡  登季
下々の暮らし縁下ちちろ鳴く  登季
地の下の暮らし豊かに蟻地獄  登季
橋の下から拾われて思草  登季
反対の意見ばかりで秋団扇  登季
反り返る蟷螂思索深まりぬ  登季
宵闇へ反骨の歩が遠ざかる  登季
黒眼鏡女の思意を隠しかね  登季
一日を眼鏡探して秋暮れる  登季
転々と眠れぬ夜のちちろ虫  登季
反対だ言われて怯む男郎花  登季
失恋の飛蝗黙って転居する  登季
新涼やいつもどうりに眼鏡拭く  登季

上り月どこぞで皿の割れる音  餡子
新涼や下戸の家系に嫁入りす  餡子
秋の風鈴安保反対は死語か  餡子
逆転の一打秋天を突き抜ける  餡子
天眼鏡磨く手相見秋灯し  餡子
黒紙を焼いた夏の日虫眼鏡  餡子
引き出しに遺品の眼鏡八月尽  餡子

朽ち舟の上に朽ち網八月尽  珠子
上下線同時発着鱗雲  珠子
鯖雲や潮の匂いに途中下車  珠子
秋の野にシャツ脱ぎ捨てて反抗期  珠子
虫の恋自転車篭に泥軍手  珠子
ヨン様の銀縁眼鏡良夜なり  珠子
長き夜の眼鏡曇らす味噌ラーメン  珠子

台風の屋上から跳ぶドーピング  宙虫
下記のとおり九月の沁みが浮いてます  宙虫
反対車線に葛がこぼれる人工湖  宙虫
青あけび転石注意の国有林  宙虫
きちきちばった飛んで眼鏡の高見盛   宙虫

飛び上がるトランポリンの花野まで  眞喜恵
消え残る下書きの文字鰯雲  眞喜恵
秋暑し映しきれない反射鏡  眞喜恵
所在なく転がる空缶稲の秋  眞喜恵

上等やないか外見りゃ蒼い月  痾窮
下半身には別の人月の宮  痾窮
反則切符すける月まで逃げたろか  痾窮
かぐや姫転居届も出さぬまま  痾窮
月よりの使者の役目で丸眼鏡  痾窮
上になり眼鏡に映る月見てる  痾窮
月の夜は御身の下で満ちさせて  痾窮

屋上にいろんな匂ひ鰯雲   紫野
靴下を脱いでそはそは後の月   紫野
蓑虫ぶらり造反の影ありて   紫野
団栗の転々成層圏の見ゆ   紫野
露けくて眼鏡をはずしゐる夜かな   紫野

秋霖やパジャマは上下お揃ひに  天気
地下鉄の全燈消えて檸檬の実  天気
五反田の地層に群れてアキアカネ   天気
新月を転がすごとく眠らばや  天気
さやけしやめがねの隅に雨が降る  天気


「少年女装癖」句集  2004.8.23-

少将は美男槿垣の内  夢季
少年の網取り逃がす夕やんま  夢季
荒野来て女が手折る鬼あざみ  夢季
女の手かげろう払うとき撓う  夢季
秋蝉の仰向けになる悪い癖  夢季
少年の之よりのこと稲雀  夢季
啄木鳥や勝手な女ですけれど  夢季
之よりは白装束で夕化粧  夢季
つまべにの種を勝手に飛ばす癖  夢季

手帳から祖母の没年鰯雲  珠子
新涼や少年猫を撫でて出る  珠子
湖に向く小道途切れて女郎蜘蛛  珠子
包装の手順も一度八月尽  珠子
秋風に乗って現れ虚言癖  珠子

許しおく少しの嘘や遠かなかな  餡子
年甲斐も無き恋キャベツをざく切りに  餡子
夕焼けや輪を跳ぶ少女の赤い靴  餡子
菩薩のみ座して無住寺山装う  餡子
酒癖も癖毛も父似鶏頭花  餡子

女郎花風速計の軽き音  まきえっと
きつ過ぎる包装の紐鳳仙花  まきえっと

でこぼこの東京多少は秋の風  宙虫
百年分のキャビアを掬う青北風や  宙虫
豊後路の女の手形が残る月  宙虫
洋装店の店主のあくび桐は実に  宙虫
鼻毛抜く癖は出さずに檸檬しぼる  宙虫

漬け茄子に醤油を少し垂らす癖  義郎
少年に還る入り口蝉の穴  義郎
少女から鮒酢匂う湖西線  義郎
汗のシャツずしりと重し旅装解く  義郎
目深にかぶる癖LLの夏帽子  義郎

少年は姉さんが好き望の月  痾窮 
十六夜や年齢詐称許されよ  痾窮
佳き人とゐて宵闇の女です  痾窮
こんな夜は装ひて跳ぶ月兎  痾窮
満月に吼える癖ある私です  痾窮

一菜に塩少々と秋の風  天気
年金をあてにしてゐる秋の蠅  天気
うつそみの女と暮らし秋の蝉  天気
どんぐりの降るや少年女装癖  天気
礼装のゆるい靴下蚯蚓鳴く  天気

きのふより少し老いたる風の色   紫野
中年となりてゑのころぐさの道   紫野
少女らの毛穴より霧たちのぼる   紫野
秋の夜を装甲車にて迎え撃つ   紫野
白地図に消えぬ折り癖鶴わたる   紫野

少量の悪意ありたりスパイスに  勝之
戌年の女に追われ逃げ落ちぬ  勝之
女来てあたり一面焼け野原  勝之
装いをただして立つや酔芙蓉  勝之
ちちろ鳴く癖になりそな唐辛子  勝之


「化石発掘隊」句集  2004.8.16-

新酒酌む化学反応して媚薬  登季
ガングロがお化け屋敷に消えて秋  登季
カッと裂け石榴は何を言わんとす  登季
あいまいな甘さ石榴は内向性  登季
曼珠沙華恋の発火と消火まで  登季
発端はあなた別れは野分中  登季
掘り下げて分析尽きぬ夜長人  登季
隊列を乱した蟻の村八分  登季
隊長は女撫子ジャパンです  登季
先発隊秋の湖へと走りだす  登季

花野来て愛は化石となるを知る  餡子
秋風や退化していく脳の音  餡子
化粧瓶逆さに振って今朝の秋  餡子
石蹴って怒り収める晩夏かな  餡子
里の湯のレモン石けんちちろ虫  餡子
諍いの発端は背の草じらみ  餡子
井戸掘りの櫓組まれし秋の天  餡子
陸海空隊員急募蝉時雨  餡子
隊長が破れアテネの空高し  餡子

兄寡黙弟饒舌蜻蛉羽化  珠子
沓脱ぎ石越えて西瓜の種着地  珠子
汗の首沈め低反発枕  珠子
掘削機無人川越えて百日紅  珠子
新涼の森ブレーメンの音楽隊  珠子

かまつかやぞっとする老いの厚化粧  ニコラス
風化せし恋の残骸大昼寝  ニコラス
緑陰に醒めたる石として二時間  ニコラス
白桃と呼べない尻の発達度  ニコラス
冷酒が寝酒万年床を足で掘り  ニコラス
発掘リストに載せたい今日の鰯雲  ニコラス
炎昼の自衛隊官舎檻の中  ニコラス
特攻隊くずれが負い目踊り抜く  ニコラス

ひまわりは女に化ける館かな  勝之
弁当をつかう石工の脇匂う  勝之
夏雲に発破仕掛けに行ってくら  勝之
宇治金時掘っても掘っても餡がでぬ  勝之
四畳半隊長として奴喰う  勝之

老けるとは化(ふ)けることかな髪洗う  痾窮
香水の化学反応とんで恋  痾窮
僕胡瓜君漬物石深みかも  痾窮
化野を恋の化石のサングラス  痾窮
積込んだ[発]あの辺り山眠る  痾窮
夜なべしてくどくどくどと墓穴掘る  痾窮
穴惑無帰還桃源先遣隊  痾窮

細分化されゆく空地鰯雲  まきえっと
秋暑し化学の鬼の角折れる  まきえっと
石橋を叩ききる恋曼珠沙華  まきえっと
夏の果て蒸発皿に残る塩  まきえっと
ここ掘れと犬の前足台風過  まきえっと

たこ焼きの化石発掘して短夜  天気
隊列にアリクイ混じり盆踊り  天気


「性格不一致」句集  2004.8.9-

「十代の性典」を観にいった夏休み  登季
相性の悪い人とも踊りの輪  登季
格段の違いそれぞれ墓囲う  登季
格安の焼酎憂さを忘れいる  登季
不良という死語に生き秋めきぬ  登季
不意にくる秋雷強く手を繋ぐ  登季
つまべにに触れて一つの実を弾く  登季
ままごとの皿に一片つまくれなゐ  登季
鳳仙花一つの過去が見えてくる  登季
致死量をふところにして花野まで  登季

日焼けして優性遺伝の長い爪  珠子
ライオンの風格へたる熱帯夜  珠子
赤カンナこの先私道駐車不可  珠子

相性が良くない蝉とうちの猫  ニコラス
白斑性夏枯れ慢性渋滞路  ニコラス
格式は苗字帯刀蝉しぐれ  ニコラス
柿たわわ当主不在の長屋門  ニコラス
風鈴や賢弟愚兄まず一局  ニコラス
親の好みが一致しつづく夏の恋  ニコラス

甚平着て氏も素性も知らぬ振り  餡子
秋風や性悪女という噂  餡子
尻叩き西瓜の人格見極める  餡子
密会は格子模様のサンドレス  餡子
秋暑し不二家のぺこちゃん拉致される  餡子
一+一が苦悩の始まり連れトンボ  餡子
致死量の雲を呑み込み秋の海  餡子

どうしても生まれついての性格破綻者  勝之
一の字から火ともり始む東山  勝之

リバウンドしちゃった性懲りもなく焼く秋刀魚  宙虫
メロン割るための格言ふりかざす  宙虫
青柿の落ちて不服を並べだす  宙虫
鶏頭の一部落丁した日記  宙虫
深夜の五輪到る所に蟻がいる  宙虫

性善を信じて蝿の打たれたる 痾窮
格式の高きを蠅の無礼講  痾窮
告口も成らず不倫の壁の蠅  痾窮
性格不一致金蠅銀蠅五月蝿  痾窮
蝿の死のほか語る事なき一日  痾窮
致し方なく冬蝿の歩きけり  痾窮

慣性の地軸にからむ夜の蝉  天気
格さんがにかっと笑ふ夜の秋  天気
愛なき日かなぶんの操縦不能  天気
一番はイチロー芋の葉が揺れる  天気
右頬に蝉のゆばりや風致地区  天気


「御座敷小唄」句集  2004.8.2-

帰省子に御無沙汰という雨あられ  登季
暑いから御身大事にあらかしこ  登季
寝ころべば空が傾く夏座敷  登季
座布団が一枚で足る昼寝かな  登季
大風呂敷広げて包む満月を  登季
この敷居跨がせないぞ蟻の列  登季
枝豆や父の小言の止む気配  登季
夏果ての野へ鼻唄で出掛けよう  登季

馬の尻客引く御者の蝿叩き  珠子
扇風機ゆるゆる正座から異論  珠子
敷居越え蟻が蟻引く父の家  珠子
膝小僧ぶつかったふり納涼舟  珠子
ねんねんの唄に眠らず原爆忌  珠子

緑陰のベンチ葵の御紋欲し  ニコラス
うすものの裾気がかりな座る位置  ニコラス
一畳を敷き畳屋の三尺寝  ニコラス
敷居際から混んでくる夏座敷  ニコラス
莫大小という字が読めず棒アイス  ニコラス
炎天を来て小銭入れぶちまける  ニコラス
独酌の端唄満月まで三日  ニコラス
虫鳴りを潜め鼻歌だけ残る  ニコラス

盂蘭盆や父の十八番の御座敷小唄  勝之
奥座敷白木みのるの昼寝かな  勝之
唄ならばねじりはちまき手はスリスリ  勝之

三郎も四郎もセルで御座候  なむ

御詠歌の鈴チリリンと夏果てる  餡子
八月や座敷わらしのおかっぱ頭  餡子
風呂敷の結び目固し秋隣り  餡子
小数の加減乗除に泣きし夏  餡子 三鬼
暑も寒も鍋も瓶にもある大小  餡子
君が代を唄う?唄わぬ?原爆忌  餡子
数え唄どこかが抜けて原爆忌  餡子

御在所に寄り添うだけの入道雲  ざんくろー
生臭い夕立あとの地に座る  ざんくろー
砕石の敷きつめられし青葡萄  ざんくろー
小刻みにかどわかす風麦畑  ざんくろー
夾竹桃ひとりの雨に唄えない  ざんくろー

薔薇湯にて見覚えのある御一行  宙虫
座布団を積んでとらえる夏の星  宙虫
夜の雷人型の皺浮く敷布  宙虫
かまきりと小指で契る男かな  宙虫
雑踏のどこかに唄子の夏帽子  宙虫

御母堂は日傘ななめに今し方  天気
双子座でA型だれも訊いてない  天気
敷島や川を流れてゆく御虎子  天気
虹を見む小便小僧うつうつと  天気
蜜豆に溺れ御座敷小人かな  天気
先生が真夏に唄ふ春の歌  天気
白南風や低く唄ふに耳を立て  天気


「前方不注意」句集  2004.7.26-

使用前使用後変化無く炎暑  餡子
方針も方策も捨て大昼寝  餡子
雲の峰男の行方見失う  餡子
短夜の家計簿に使途不明金  餡子
夜の噴水不揃いになりやがて止む  餡子
朱の注記入りし古本夜の秋  餡子
注意書き多き眠剤夏の果  餡子
出尽くした意見西日の会議室  餡子
結末は意外な方へ泥鰌鍋  餡子

前屈み作業が苦手草茂る  登季
不透明な明日金魚が眼を閉じる  登季

ボケすでに始まる虹の前と後  ニコラス
日焼けしてまだ解けず君の方程式  ニコラス
蝉時雨前方後円資料館  ニコラス
日傘一回転不審の目を残し  ニコラス
美女にあるまじき不注意日焼け痕  ニコラス
雷神の意図読みきれずもう一合  ニコラス
端居して意外な腰の丸みかな  ニコラス

マスクメロン前触れもなく夫の母  珠子
三伏の語学学校駅の前  珠子
夏落暉妻の領分行方不明  珠子
熱帯夜玩具のひよこ不意に鳴く  珠子
注文の復唱夏季限定パスタ  珠子
紐撓む祭提灯寄付任意  珠子

後ろ前間違えてはくブリーフや  勝之
方角を知らせる淡き昼の月  勝之
不燃ゴミとして炎帝の下  勝之
荒井注に憑依されそな夕立来る  勝之
意識下に必ず置いておく紅い蟹  勝之

避暑前方不注意不倫鈍我馬著  なむ
不意に注ぐ方形包茎以前系  なむ
不如意棒悉現前的注入方  なむ
注目の方位意馬心猿の不動前  なむ
不眠六方婚意の前に傾注す  なむ
前注ぐ方から不意に乳房かな  なむ
相方の注視面前不同意牌  なむ

月明かり頼りに咲きぬ沙羅の花  ざんくろー
太陽と見間違うほど蛍なり  ざんくろー
今年もまた子よりも高い花人参  ざんくろー
木苺に気付かぬままに試運転  ざんくろー
食道を登る蟻なり人知れず  ざんくろー
花石榴お前と呼ばれほくそ笑む  ざんくろー
石楠花や手付かずにある方眼紙  ざんくろー
草いきれ今日の私は不浄です  ざんくろー
食道に素麺注ぐ夏日なり  ざんくろー
夕顔のこっそり咲きぬ意気地なし  ざんくろー

駅前に銅像のある劫暑かな  紫野
方式の違ふかぎあな青葉木菟  紫野
緑蔭に入りて不思議なこと思ふ  紫野
万緑や水槽に水注ぎたす  紫野
意味のあることばのごとくバナナ食ふ  紫野

くちなはをごしごし洗ふ午前かな   振り子
夏河原稀に方言よどみたる     振り子
不明なれど蚊取線香燃えつきぬ    振り子
傘持つて不意に白桃重くなる   振り子
青青と灼けた河川に水注ぐ    振り子
無意識に夜中を歩くあぶら蝉   振り子

前向きに生きむと金魚ひるがへる  天気
母親が小松方正似で西日  天気
陽光をでこぼこにして不如帰  天気
こがねむし不二家の前ですっころぶ  天気
蝉時雨ぴたりとやんで荒井注  天気
ひかみなり不随意筋に消え残る   天気
このところ前方不注意のとんぼ  天気


「明太子試食」句集  2004.7.19-

噴水に来て人声の明るかり   紫野
瀧しぶき浴びて明るくなりにけり  紫野
手のひらに夕凪生まる太極拳  紫野
籐椅子の揺れて子音の鼾かな  紫野
寝冷えして試写会場をいでにけり  紫野
家族みなちがふもの食ふ夏休  紫野
横着な脇腹かくすアロハシャツ  紫野

明け番の弁当包み雲の峰  珠子
心太小津映画には笠智衆  珠子
おそるべき赤子の笑顔心太  珠子・三鬼
炎昼の火照り遺伝子醗酵す  珠子
かき氷循環バスの椅子軋む  珠子
蝉時雨歩行補助機の父の試歩  珠子
ワードエクセル夜食の冷えた水羊羹  珠子

明日のこと言いだしかねてトマト切る   登季
太い指太箸持って冷奴  登季
土用三郎硝子戸越しの吉凶  登季
酷暑に耐う明太子のスパゲッティ  登季
妻の座の試練を抜けて西瓜食ぶ  登季
着色の金魚絵本が濡れており  登季
肉饅頭食み出すままにノースリーブ  登季
給食の肉じゃが崩れ雲の峰  登季
試みに言ってみたけど団扇風  登季

過ぎて行く明るい未来蝉時雨   痾窮
蛍はね水子なんだよ太陽の   痾窮
子の彼とコンビニに遭ふ熱帯夜   痾窮
試されて居るのは愛か夏料理   痾窮
粗食断酒禁欲四萬六千日の悪夢   痾窮
かき氷気不味さピンと一気食ひ   痾窮
LLの香水すっぽり試着室   痾窮

夜の海遠き明かりは戦火かな  勝之
ひそやかに蟷螂の腹太りたり  勝之
子抱けば鉄錆の匂いして夏夕焼け  勝之
炎天に佇むおいら試験管ベイビー  勝之
明太子試着してあせも悪化する  勝之
昼寝覚め畳の上の軟着陸  勝之
アロハ着ておどるは昨夜の盆踊り  勝之

お茶挽きの芸者駒子の胡瓜もみ  康成

子子子子子子子子子子の子子子の子子  餡子
試験管洗う西日の科学室  餡子
鰻食ぶそして気まぐれダイエット  餡子

夏書して唐宋元明清ごころ  なむ
太明も太ゴジもある蝉の声  なむ
子袋も寝袋も容れ茂らしむ  なむ
帰省して食ふ寝る着るを試歩とする  なむ
試食へと供す水着の試着かな  なむ
甚平着て試す三食昼寝つき  なむ
着脱の試技女子以外食中り  なむ
食紅の着水を見る試験管  なむ
羅を着せて食材試験場  なむ

遺伝子の組換えのなき土用の日  まきえっと
炎天や食べ放題のビタミンA  まきえっと

明暗の岐路ぶらさがる蛇の殻  ニコラス
仮眠して合歓太陽を見失う   ニコラス
孔子より老子が好きと羽抜鳥   ニコラス
涼風や子のしつらいし予約席   ニコラス
蛍袋試しに覗く兵隊蟻  ニコラス
試験紙の判定はシロ恋の汗  ニコラス
麻服を着てタイ料理食べにゆく  ニコラス

子午線のカンナはことに明るかり    振り子
蝉鳴くや黒き太古の震へして   振り子
しんしんと扇子をつかふ抱擁あと   振り子
試みに花火の門を開け放す   振り子
夏の夜の主食は長いものばかり   振り子
夏霧のなかライターの着火音   振り子

海の日の電車に乗れば西明石  天気
かきごほり明治はさほど遠くない  天気
俳人の好きなかなけり心太  天気
ゆふがほの螺子のゆるみてをりにけり  天気
子規さまの寝床に運ぶ焼鰻  天気
試技三度までは許され竹婦人  天気
河童忌のがたりと揺れる食堂車  天気
おんまからぎゃあ食パンの黴そはか  天気
しら焼きを食って麻布のさまがはり  天気
世界の中心でアロハ試着   天気
明太子試食してのち大夕焼  天気