ゲーム名 : 3年B組金八先生 伝説の教壇に立て!
メーカー : チュンソフト
ジャンル : ロールプレイドラマ
10点満点中 : 5点 (★★★★★☆☆☆☆☆)

〜コメント〜

同名のドラマを題材としたアドベンチャーゲーム。金八先生が入院した為代理教師として3年B組の担任にな り生徒たちの悩みや問題を解決させていくのが目的。

ゲーム化に当り実写ではなくアニメ絵を起用していますが、ジブリアニメ「猫の恩返し」の製作スタッフが 関ったアニメ絵なので、普段アニメや漫画と距離を置いている人にも馴染み易い絵柄ですし、ドラマの雰囲 気を壊していないので、この試みは成功していると言えるでしょう。
また、単にアニメ絵だけではなく、ゲーム中にはアニメーションがよく流れます。PSで発売された「やるド ラ」シリーズに類似していると言えば分りやすいかな。

しかし、やるドラやサウンドノベルのような選択肢によってストーリーが分岐すると言う方式ではなく、一 本道のストーリーの途中に発生する問題から一つしかない正解の選択を導き出すだけの、ただ単に展開を 眺めているだけのゲームと呼べるかどうか微妙な内容なのが実態。MAP画面で話に関係ある人物を選べば よいだけで、関係ない人物に話し掛けるのはストーリー進行上まったくの無駄な行為。ゲーム中に入手した 問題解決カードも正解は一つしかなく、間違えるとバッドエンドに一直線。結果効率重視の単調な作業ゲー ムと化してしまっています。
そのくせシステム面が不親切で、一日の最初しかセーブできないし、ゲーム中やり直そうにもロードもソフ トリセットもありません。一々バッドエンディングを見た後タイトル画面まで待たなければならなく非常に 面倒です。

ところで上記に「眺めているだけ」と書きましたが、今作の主人公、存在意義が非常に薄く無個性過 ぎて返って感情移入しくい。その為話を第三者的立場で見ている錯覚を感じてしまいます。それどころか副 担任のはずのりん子先生の方がよっぽど担任らしい、と言うか、りん子先生が主人公に見えます。3年B組担 任として、そして主人公として、もう少しばかり自己主張をしてほしかった。

そうとなるとストーリーの面白さで引っ張っていくしかないのですがそのストーリーも今一つ。
テレビドラマの金八先生は昔のシリーズしか見ていないので余りどうこう言える立場ではないのですが、確 か金八先生は大げさな演出より日常的なリアリティを重視して作っていると聞いたことがあります。また同 様の作品として「中学生日記」のような何処にでも有り触れた少年少女の悩み、葛藤などの問題を描いたド ラマがありますが、上記の通り今作のストーリーには前者のリアリティや後者の中学生独特の若さ(青臭さ) が活かされていない。またそれ以前に学校生活を送っているのに授業風景や学校行事が全然出てこない。

第一話と第二話の不登校問題は学園モノの出だしとして無難でしたが、第三話の沖縄修学旅行では高峰の教 師としあるまじき言動と、主人公何処かで聞いたのまるで重みの無い説得に簡単に意見をひっくり返す呆気 なさに呆れ(意地を張っていただけで助けに行く口実を探していただけなのかもしれませんが、事態が事態だ けに意地張ってる場合じゃないでしょうに)、
第四話ではアイドル中学生などと普通の学校では見られない特殊事例を持ち出すは、第五話に至っては教 師と中学生3人だけでNASAもビックリな高性能ロケットを短期間で作り上げ、宇宙まで飛ばしてしまうリアル もクソもへったくれもない超非現実な展開が繰り広げられるなど、疑問に思う登場人物や話ばかり。
第6話の転校生の話で盛り返したと思ったら第七話の体育祭の話はパロディー一直線。面白いと言えば面白い のですが、他の話に比べ明らかに浮いてます。
第八話は思春期の感情の暴走を上手く表現いてましたが、塩見のりん子先生に対する態度が体育祭の時と全 然違い矛盾している。
本作最大の見せ場の第九話と第十話は学園モノからサスペンスに大変貌。推理モノを見ているような錯覚を 憶えグイグイと話に引きつけられて面白かったのですが、はたしてこれが金八なのかと思うと「そりゃ違う だろ」と言わざるを得ません。

打って変わって2週目、3週目で出現する、鉄ちゃんの恋、連弾、僕と犬の楽園、キネマ狂想曲などは、相変 わらず学園ドラマから脱線しかけているものの、この年頃の感情を上手く表現していて正に青春っぽく微笑まし い話で良かった(勝手にしやがれは微妙)。1周目の卒業式では感情をこみ上げてくるものは特になかったので すが、2週目3週目の卒業式には流石にじ〜んと来るものがありました。

正直、最初は一週目の途中(5話ぐらい)で既にやる気なし状態でした。話はつまらないし面倒だし、飽きた。 先走って感情任せにレビューを書き殴り、今作を売ろうと思っていました。しかし、せめて一度はクリアし ないとな、と考え直し、プレイし直した結果1週目中盤以降から徐々に話が面白くなっていき、最終的に銀の しおりまで行きました。
ですが今作を見直そうとは思っていません。システム面での不備もそうですが、上記の通りこのゲームのメ インとなるストーリーを誉める事ができない。2週目以降のサービス精神旺盛さは結構なのですが、肝心の一 週目に非現実的なトンデモ話が多すぎる他、各話の繋がりに矛盾が目立ちます。これがどうしても納得いき ません。オリジナルの学園モノならここまで不満をぶちまけたりはしませんし、まだ納得もいきますが、は たして今作に「金八先生」を名乗る必要性がはたしてあったのでしょうか?
そして決定的なのが、今作は「ゲーム」である必要性が無い事です。同社のサウンドノベルは一見文字を読 んで行くだけのゲーム性の薄い内容と思われがちですが、選択肢によってまるで違うストーリーに分岐して いくのは「ゲーム」だからこそ出来た訳です。(選択肢を間違うとバットエンド一直線になる「街」も、 バットエンドルート用にシナリオと演出が用意されていますし、またザッピング機能が物語全体を大きく影響するなど、 「ゲームというメディアでしか表現できない作品」でした。)
では今作はどうでしょう?問題解決カードは数あれど行き着 く先はたった一つの結末しかありません。終始物語を見ているだけなのです。これならテレビアニメとして 視聴した方が純粋に楽しめるのではないでしょうか。自分は「ゲーム」を遊びたかった訳で「擬似アニメ」 を見たい訳ではなかったのです。

既存のジャンルに囚われないようとするチュンソフトの実験作として見れば評価はできますが、不満な点が 多く、総合的に考えればこの点数が妥当だと思います。

同視するのもどうかと思いますが、言ってしまえばギャルゲー同様、話とキャラに魅力を感じるか否かで評 価が大きく変わってきます。選択肢が無い分やや劣ってしまう部分もあるかもしれません。
万人にお薦めできるかと言われれば、否。遊ぶ人を選ぶゲームだと思いますよ。


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