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 皆心を一にして奉るべし。これ最期の詞なり。
 
 故右大将軍(頼朝)朝敵を征罰し、関東を
 
 
 草創してより以降、官位と云ひ俸禄と云ひ、  
 
 其の恩既に山岳よりも高く、溟渤よりも深し。  
 
 報謝の志これ浅からんや。而るに今逆臣の  
 
 讒に依り非義の綸旨を下さる。名を惜しむの
 
 族は、早く秀康・胤義等を討取り三代将軍  
 
 (実朝)の遺跡を全うすべし。但し院中に  
 
 参らんと欲する者は、只今申し切るべし。  



  出典 : 吾妻鏡


  作者 : 北条政子

  
  解説 :
   この言葉は承久の乱の際に朝廷から北条義時討伐の
   院宣が出され、動揺する御家人に対して、北条政子が
   演説したもので、鎌倉方が承久の乱に勝利する原動力
   となったものです。鎌倉の御所に集まった御家人(将軍と
   主従関係を結んだ武士)たちは、この言葉を聞いて
   感激して涙を流し、京都へのぼり朝廷の軍と戦う決意を
   したそうです。北条政子は、北条家の覇権確立のために
   我が子や孫を排斥したという一面もあるため、私は以前
   より色々と思うところがあります。でもこの名演説はとても
   大好きです。現代語訳をするとこんな感じでしょうか?

   「みなさん、心を一つにして聞いてください。これは私の
   最後の言葉です。頼朝殿が朝敵(木曽義仲や平氏の
   こと)を滅ぼし関東に武士の政権を創ってからあなた方の
   官位は上がり収入もずいぶん増えましたね。平家に仕えて
   いた時には犬のように召し使われていたあなたたちでしたが、
   今日では京都へ行って無理に働かされることもなく、
   幸福な生活をおくれるようになりましたよね。それもこれも
   すべては頼朝殿のお陰です。そしてその恩は山よりも高く
   海よりも深いのです。しかし、今その恩を忘れて天皇や
   上皇をだまし、私達を滅ぼそうとしている者があらわれ
   ました。名を惜しむ者は藤原秀康・三浦胤義(二人とも
   朝廷側についた有力武士)らを討ち取り、三代将軍
   (実朝)の恩に報いて下さい。もしこの中に朝廷側に
   つこうと言う者がいるのなら、まずこの私を殺し、鎌倉中を
   焼きつくしてから京都へ行きなさい」