電撃! 激坂調査隊が行く

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●番外編1 武尊ヒルクライムの巻き●

国内最大斜度への挑戦! 武尊ヒルクライム参戦記

第2ヒートゴール前。20%超の激坂を登る  11月の5日、6日に群馬県片品村で開催された武尊(ほたか)ヒルクライムに出場しました。

 武尊ヒルクライムは、紅葉の武尊高原でおこなわれるヒルクライムレースです。

 2日めのコースに勾配が20%以上の場所があり、ロードの自転車レースでは、国内最大斜度といわれています。

 この激坂に挑戦しようとレースにエントリー。  果たして、足を着かずに完走なるか?
 ●1 初めての自転車レース―激坂ヒルクライムレースへの挑戦!●

@ 挑戦的なフレーズが気にかかる
 「国内最大斜度への挑戦はヒルクライマーの醍醐味です。君は、走りきれるか! 最大斜度20%!」というフレーズが以前から気になっていた。自転車雑誌に載っていた武尊(ほたか)ヒルクライムの参加募集の広告だ。
 武尊ヒルクライムは群馬県片品村、武尊高原で開催されるヒルクライムレースである。今年で9回め。レースは2日間にわたっておこなわれる。2日めのコースのゴール前100メートルの勾配が20%以上ある。ロードの自転車レースでは、国内最大の斜度という。この国内最大斜度という点が登り好きのサイクリストたちの間で評判らしい。最後の激坂を足を着かずに登りきることを目的に、このレースに参加する人も多いと聞く。
 武尊ヒルクライムは、タイムや順位を競うだけでなく、激坂を登りきれるかという他の自転車レースとは一味違った趣向をも合わせ持つ大会なのである。

A 国内最大斜度の激坂を体感してみたい
 私の普段のサイクリングは、周りの景色を見ながらゆっくり走ることが多い。自転車で旧い峠道を探索したり、旧街道をたどってみたり、峠からの展望を楽しんだりといったことが好きなのである。よって、早く走ることを目的とした競技的な走り方とは無縁の走り方をしている。
 今回、武尊ヒルクライムに参加するにあたってもタイムや順位は、はなから意識しておらず(たとえ意識したとしても結果はたかが知れている)、うわさに聞く国内最大斜度の激坂が一体どれほどのものなのか、それを体感してみるつもりで参加を決めたのであった。
 とはいえ、タイムや順位に全く関心がないわけでもない。トライアスロンやデュアスロンには以前に何度か参加した経験があるが、純粋な自転車レースに参加するのは初めてである。いまの自分の走力がどの程度のものかという点にも多少の関心があった。
 だが、いきなり一般のロードレースに出るのは無理がある。どちらかといえば、下るよりも登るほうが好きである。自転車レースに参加するならヒルクライムにしようと以前から思っていたのだった。

 ●2 武尊ヒルクライムについて―ライドオンでの完走率は40%●

@ 紅葉の高原で開催されるヒルクライムレース
 武尊ヒルクライムについて簡単に紹介しよう。開催日は11月の5日、6日の2日間。場所は群馬県片品村の武尊高原。距離約8キロのヒルクライムレースである。
武尊高原、黄葉したカラマツ林。  レース当日の武尊高原はちょうど紅葉が見頃。木の種類や場所によっては散り始めているところもある。総じて紅葉は最盛期、もしくはそれをやや過ぎたかなという状態であった。宿泊したペンションのご主人の話では、今年は10月が暖かかったため、例年に比べて色がよくないという。赤い色が少なく、鮮明さが足りないらしい。

  片品村は群馬県の北部にある。北は新潟県や福島県、東は栃木県と接する。村内を通る国道120号線で金精峠を越えると、日光に至る。片品村といえば、尾瀬の湿原が有名。他には上州武尊山、丸沼などがある。景勝地に恵まれた自然豊かな村である。
 武尊高原は片品村の中央よりやや西よりに位置する。上州武尊山の東麓に広がる。標高は900メートルから1400メートルほど。夏はテニスやキャンプ、冬はスキーを目的に訪れる人が多く、典型的な高原リゾート地である。武尊山の東側の登山口でもある。そのため、民宿やペンションが多い。
 最近はサッカーやフットサルが人気なようで、ペンション村には、テニスコートの他にサッカー・フットサルのグランドもところどころに見られた。

A 手作り感あふれる大会
 いまの時期は、夏のスポーツ・秋の行楽シーズンが一段落し、冬のスキーシーズンを目前にして、ちょうど合間の時期にあたるようである。宿泊客を迎えるペンション側にとってはシーズンオフになるらしい。私たちが宿泊したペンションに他の宿泊客はいなかった。ほぼ貸切の状態であった。
 武尊ヒルクライムは、10軒のペンション経営者が共同で企画・運営している。宿泊客の少ない時期に、より多くの人に武尊高原に来てもらおうという趣旨で始められたという。
 参加人数は80人程度。自治体や大手の自転車関連メーカー、イベントの企画会社などが開催する大会とは違って、手作り感あふれるほのぼのとした雰囲気の大会との印象を持った。
 大会を運営していたあるペンション経営者の方に、コースもいいし、紅葉もきれいだし、もう少し宣伝して参加人数を増やすつもりはないのかと問うと、「いやー、これくらいがちょうどいいんだよね。」という肩の力を抜いた答えが返ってきた。

B コースはきつい。注目は第2ヒートの激坂
 レースコースは、こうしたほのぼのとした雰囲気とは対照的に、本格的なヒルクライムコースになっていて、かなりきつい。
 第1ヒートと呼ばれる1日めのコースは、ペンション村の入口をスタートし、東俣(ひがしまた)駐車場にゴールする距離8.1キロ、標高差470メートルのコース。標高差を距離で割った平均の勾配は5.8%。
 2日めの第2ヒートは、スタートから3キロ弱は第1ヒートと同じ道、途中で分かれ、武尊牧場内を登って、牧場の頂上にあるキャンプ場にゴールする。距離は7.5キロ、標高差600メートル、平均勾配8.0%。第2ヒートのゴール直前が特に急で、勾配が22%もある。ここがロードのヒルクライムレースで国内最大斜度といわれている部分である。
 両日共通の、コース前半の道は、塗川(武尊渓谷)に沿った2車線の舗装道路。登り基調だが、若干のアップダウンがあり、勾配は比較的緩やか。見通しのよい道で、急なカーブはない。
第1ヒートの林道。  第1ヒートは分岐の逢瀬橋を右へ進む。ここからは道幅1.5車線程度の舗装の林道(左の写真)を行く。林道に入ると勾配はややきつくなる。小刻みなカーブも多くなる。東俣沢という小さな沢をさかのぼりながら進む。沢の右岸の斜面に、沢を高巻くような感じで造られた道。コースの終盤、駐車場の1キロほど手前からは勾配がややなだらかになる。
 ゴールの東俣駐車場は武尊山への登山口になっている。レース当日も登山者のものと思われる車が10台程度停められていた。


C 第2ヒート、昨年のライドオン完走率は40%
 第2ヒートは、分岐の橋を左へ。武尊牧場の駐車場(ここが大会の受付と表彰式の会場)の下を通り、牧場の敷地内へ入る。武尊牧場は片品村営の牧場で、冬はスキー場になる。レースコースは牧場の作業用の舗装路だ。
 この道は、冬の間はスキー場の管理用道路としても使われているようだ。一般の車両は進入禁止で、普段はゲートが閉じられている。ゲートの看板に、観光や牧場の散策には駐車場に車を停めて、歩くかリフトを利用するようにという旨の注意書きがある。
 牧場内の急斜面をくねくねと登る。当然、勾配はきつい。頂上に近づくと、路面はアスファルトからコンクリート舗装へと変わる。このコンクリート舗装の部分が激坂になっている。
 大会パンフレットによれば、大会が始まった頃、この激坂のライドオン(足を着かずに自転車に乗ったまま)での完走率は10〜15%であったという。最近は、フロントにコンパクトギアを使用するなど、激坂対策をこうずる参加者が増え、昨年の完走率は40%程度になったとか。今年見た感じでは、7〜8割の人は降りずに乗ったまま登っていたように思う。

 ●3 第1ヒート―紅葉の武尊高原を登る●

@ レース前に観光気分で牧場を散策
 レース当日は午前10時の受付時間よりもだいぶ早めに会場に着いた。駐車場はまばら。晴天である。抜けるような青空が広がっている。綿菓子を少しだけつまみ取ったような白く薄い雲が切れ切れに上空を流れてゆく。風が強く、雲の流れが速い。駐車場を取り囲む山々の木々は黄色や橙色に染まっている。
 スタートは午後の1時。受付を済ませ、自転車も組み終えたが、スタートまでまだ2時間半もある。天気はいいし、紅葉はきれいだし、これからレースに臨むという緊張感は自分のなかにまるで感じられない。すっかり観光気分で武尊牧場の散策へと繰り出した。
牧場の羊たち。 スキー場らしくドーム状の屋根のある階段を登ると、牧場を下から見上げる場所に出た。季節外れの牧場には牛はいなかった。人かげもなく、閑散としている。
 考えてみれば牛がいないのは当然で、この牧場は、夏の暑い時期に平地の酪農家から乳牛を預かり、その牛たちを放牧するための場所なのだ。涼しくなれば、牛たちは持ち主のところへ帰る。
 牧場は、雪が降るとスキー場に変わる。リフトがあるが、いまは運転を止めている。売店も閉じられている。空中に静止したまま動かずいるリフトは、どことなくさみしげだ。広い草地の斜面に羊が4頭だけいた。

A みんなアップを始めている。少々焦る
 牧場から駐車場に戻ってみると、参加者の車は増え、多くの選手がすでにアップを始めていた。ローラーを踏んでいる人が目立つ。他には駐車場の前の坂道を登り降りする人など。ローラーを踏む人は、車の横にローラー台を置いて、車と平行な位置でペダルを漕ぐ。そのため、多くの人が、まるで申し合わせたかのように同じ方向を向き、一列に並んでペダルを漕いでいるように見える。見ようによっては、かなり非日常的な光景である。
 これらの光景を目の当たりし、少しばかり焦った。のんきに牧場の紅葉をながめたり、羊が草を食む様子を写真におさめるなどしている場合ではなかった。急いで着替えを済ませ、私も他の選手にならい、駐車場の中をちょろちょろ走って、形ばかりのアップをした。
 スタート地点は、駐車場から3キロほど下ったみやげ物屋の前である。スタート地点までどれくらい時間がかかるかわからなかったので、早めに駐車場を出た。枯れ葉の舞う渓流沿いの舗装路を快適に下る。時おり風が強まると、針のように細いカラマツの葉がサラサラと音をたてながらヘルメットの上に降り注いだ。
 レースではこの道を再び登り返すことになる。横目に見る武尊渓谷の紅葉は本当に美しく、レースで息を切らしながら通り過ぎてしまうのが惜しい、ゆっくりツーリングでもしたい、そんな思いにかられる。

B ストート直後から遅れる
第1ヒート、スタート風景。  第1ヒートはクラス別の一斉スタートとなる。まず、ゼッケン番号で50番までの40歳代までの選手がスタートし、その5分後に50歳以上、女性、MTBの選手がスタートする。
 参加人数が少ないためか、スタート前の雰囲気は和やかな感じで、グループで参加している人たちは、フレームやパーツの話など自転車談義に花を咲かせている。それらの話になんとなく耳を傾けているうちにいつの間にかスタート。

 スタートからいきなり出遅れた。見る見るうちに集団から離される。ロードレースのペースって最初から速いんだな。今日のコースの距離は8キロ弱。ヒルクライムとはいえ、ロードレースの距離としては短いほうだろう。前半は勾配も緩く、そのためトップクラスの選手たちにとっては最初からスプリント勝負的な展開になるのだろう。
 スタート前、ローラー上でもがく選手を見ながら、あんなに追い込んで本番で疲れてしまわないのだろうか、などと思っていたのだが、多くの選手たちがレース前にかなり入念なアップをしていた理由がわかったような気がする。はじめから飛ばすので、スタート時までに心拍数を高めておく必要があるのだ。
 そんなことを考えているうちに先頭集団ははるか前方。すでに視界から消えかかっている。一緒に走っていた集団からも遅れ気味になる。道が登りに転じるたびに前の選手から離れ、スタート2キロ過ぎあたりで早くも完全に一人旅の状態になってしまった。後方にはもはや数人しかいない様子である。

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