朝。
 まだ肌寒い、初春の朝。
 薄暗い土蔵の中で、俺――――衛宮士郎は目を覚ました。

「ん……また眠っちまったのか……」
 目をこする。
 桜がかけてくれたのだろうか、暖かい毛布が俺の体を覆っていた。
 日課である魔術の鍛錬中に、どうやらいつものように寝入ってしまったらしい。
 相変わらず、いやになるぐらいの半人前。いつまでも成長しない自分が情けない。
 ライダーは「作り物の肉体ですから、しばらくはしょうがありません」なんてフォローをしてくれたが、あれからもう二年―――体にはようやく慣れたというのに、いっこうに魔術の腕が上がらない。最近では、魔術の才能無いのかなあ……と、落ち込むことも多い。
「まあ、気長に行くか……」
 あせったところで意味は無い。
 俺は、俺の選んだ道を行くだけだ。




 聖杯戦争。
 そう呼ばれた戦いが終わって、すでに二年もの月日が流れていた。

 冬木の町を舞台に繰り広げられたその争いに、俺はマスターの一人として参加した。
 きっかけは偶然―――あるいは奇跡だった。
 この土蔵の中でのセイバーとの出会い。
 そして、セイバーや遠坂とともに戦った日々。
 その中で……俺は一人の少女のために戦おうと決心する。

 間桐桜。
 俺のすぐ隣にいた少女。
 ずっと一緒にいた少女。
 そして、その苦悩に気づいてあげることが出来なかった少女。

 桜が背負った物の重みに気づいたとき、俺は―――正義の味方としてではなく、ただ、彼女のためだけに戦おうと誓った。

 激しい戦いの中、俺は多くのものを失い、ほんの少しの希望を得た。
 後悔はしない。
 得たものは少なくても、そのたった一つのものが俺の心を満たしてくれた。

「悪いな……切嗣おやじ

 なんとはなしにそう呟き、俺は土蔵をあとにした。



「おはようございます、士郎」
 眼鏡をかけた目の覚めるような美女、ライダーが俺を見つけて挨拶してくる。
「ああ、おはようライダー」
 挨拶を返しながら、居間へと続く廊下を歩く。
「最近からだの状態はどうだ?」
 サーヴァントである彼女は、その体を維持するために、多大な魔力を必要とする
「問題ありません、士郎」
「そうか」
「はい、サクラもずいぶん慣れてきたようですし、それに……」
 俺の顔を見つめてなぜか頬を染めた。
「…………?」
 よくわからんが……まあいいか。
 それにしてもライダーは美人だなあ。桜とは違う色気がある。
 そういえば、最近、ライダーとベッドを共にする夢を、なぜか良く見る。桜というものがありながら、自分にはそんな欲求があるのかと情けなくなるが、でもまあ、夢の中でのことだから桜も許してくれるだろう。

 そんなことを考えながら居間に入る。
 そこに一人の少女が座っていた。
「おはようございます、シロウ」
「おはよう、セイバー」
 俺はいつも通り挨拶を返した。
 セイバーのいる食卓。
 聖杯戦争当時からなにひとつ変わらない光景。
 途中いろいろあったけど、彼女は今ここにこうしているのだから、かつての事なんか気にしない。
 髪が妙に色あせていたり、肌がやけに蒼白かったり、場違いな黒い鎧を着込んでいたり、死んだ魚のような瞳をしていても、気にしない。気にしないったら気にしない。

 俺とライダーはそれぞれ席に着く。
 いつもの場所、いつもの風景。
 キッチンから朝餉の香りが漂ってくる。
 桜が朝食の準備をしているのだろう。
 昔なら俺もすぐさま手伝いに行くところなのだが、最近はそんなつもりはさらさら無くなった。つうか無理。

 廊下のほうからふたつの気配。
 ぎいぃぃぃ、と、ありえない音を上げてふすまが開いた。
「ほうほう、みな早いの」
 皺くちゃの爺さんが呵々と笑う。
 さすが臓硯爺さん。なんともいえぬ嫌な笑いだ。そこら辺の普通の爺さんじゃ、これの真似は到底できまい。何しろ年季が違う。二百年だ。
「おはようございます、臓硯爺さん。あなたも相変わらず早いですね」
「ほほ、早起きだけが爺の得意じゃからの」
 台詞だけは好々爺そのものだが、空洞みたいな瞳の中に光る眼球が、その台詞をすべて無駄にしている。自分の祖父には絶対したくないタイプだ。まあ、すでに手遅れだが。

 臓硯爺さんがのろのろと居間に入り、自分の席に着く。
 なぜか俺の隣だ。めっちゃ嫌だ。
 ついでにその背後に浮かぶ白い髑髏。ぎぎぎぎ、とこれまた嫌な笑い声を上げながら漂っているのは、アサシン(二代目)さん。こっちのほうは、友達にしたくないサーヴァント、ナンバーワンだ。勿論ぶっちぎりで。

 そんなこんなで、全員そろった。
 朝の平和な食卓。
 俺たちが必死で勝ち取った未来。
 そして――――その象徴たる少女が料理を持って居間にやってきた。



「おはようございまっす、先輩♪」

 微妙にハイテンションで桜が来た。

「……おはよう、桜」
 とりあえずそう答えよう、うん。
 桜は桜のままだった。なにひとつ変化など無い。
 ちょっとばかり服のセンスが悪くなって、それを頭からすっぽりかぶっているだけだ……きっと。
 その服が真っ黒で血のような赤に縁取られていて帯みたいにひらひらしていても気にするようなことではないのだ……多分。
 足や手や顔がいっさい見えない―――というか無い?―――のは、きっと照れくさくて隠しているのだろう。ほら、アラブとかそっちのほうにそういう習慣あるじゃん。

「今日の朝はあ、ちょっとふんぱっつしっちゃいましたあ♪」

 ………………
 そう言って桜はお盆をテーブルに置く。
 というかどうやって持ってきたんだ? そのひらひらは手の代わりなのか?
 言動も動き方も存在もふわふわした桜は、俺たちの前にいそいそと皿を置いていく。うん、やっぱこのひらひらが手だ。同時に五つぐらいの皿持ってるし。

 皿の上にはたっぷりの料理。
 桜の料理の腕はもはや俺を凌駕している。だからこの料理はとってもうまそうに……
「今日のメニューはあ、蟲の塩焼きにい蟲の照り焼きい、生きのいい蟲が入ったんでえ、それをお刺身にしてえ、あとそれに蟲の子の味噌汁をつけてえ、それからそれから……」
 ……ちっとも見えないのはなぜだろう。つうかこの刺身鮮度よすぎ。動いてるぞ、そりゃもうぴちぴちと。

「これは素晴らしい」
 ってセイバー……美味しそうにそんなもん食べるな!
 おまえの食いしん坊は黒くなっても直んないのか!
「ほうほう、さすがにわしの孫じゃのお……。蟲料理を作らせたら世界一じゃ」
 爺バカを存分に発揮する臓硯(もはや呼び捨て)が舌鼓を打つ。
 そんなもんの世界一になって嬉しいのか!? 嬉しいのか!?(リピート)

 微妙に壊れ始めた食卓。
 つうか俺の頭。
 毎朝、毎朝、繰り返しているんだから、いい加減慣れないものかと……思うわけが無く、ただただ漫然と神経を麻痺させていくだけだ。

 ぐちゃぐちゃびちびち、と、朝食の席では絶対に聞きたくない音が響き渡る。
 嫌な朝の食卓。
 そんな中で俺と意を共にする二人のサーヴァント。
 ライダーとアサシン(二代目)さんは眼前の料理に手をつけようとしなかった。
 サーヴァントはマスターの魔力をその糧とする。ゆえに料理から栄養を取る必要など無い。セイバー(黒)みたいな食い意地のはったサーヴァントならまだしも、普通のサーヴァントなら、こんな料理など口にせずとも、現界するになんら支障は無いのだ。まあもっとも、二人が箸を取らないのは、それとは全然別の理由からだろうが……

 俺も出来ることなら最後まで彼らとともにありたい。
 だが―――俺の目の前には黒い影のような桜がいる。
「先輩♪ たあっくさん、食べてくださいっね♪」
 そう言って自慢の蟲料理をずずっと差し出す。
 ちなみに、俺の目の前というのは言葉どおりの意味であって、桜は料理が並んだテーブルの上に、プカプカと浮いていた。いや、もうはっきりと言おう。これはほんとに桜か?
 みもふたも無い疑問。現在の俺の存在を根底からくつがえす、だが誰もが考えるであろう疑問。
 しかし、その答えを出す時間が、俺には与えられなかった。
「このお刺身なんかあ、ほんっとに鮮度がよくってえ♪」
「……ああ、そうだね」
 見たらわかります。動いてますもん。
「あのな……桜(?)」
「なあんですかあ、先輩♪」
 おバカな女子高生を相手にしているみたいで、非常に疲れる。
 だが怯むわけには行かない。俺のすべての矜持をかけても! これを食すわけには……っ!!
「この刺身なんだけどな……」
「はああぁあぁぁいいぃ?」
 ……こわいっす。
 というかどっから声出してんですか?
「いや、最近、腹の調子が悪くて……、こういった生ものは……」
「ぴっちぴちでっす♪」
「……いやだから、今はこういうものはちょっと……」
「先輩……」
「食べるのは無理かなあ……なんて」
「せぇんぱあぁいぃ……」
「いや……そんな、心霊テープの女みたいな声出されても……」
せえぇぇえんんぱあぁぁぁいいぃぃぃ…………っっっ!!!
「はい、食べます……」
 俺の矜持は木っ端微塵に砕け散りました。
 だって怖いんだもん。

 とはいえ、箸の間でぴちぴちと動く蟲君は、圧倒的な恐怖を俺に与えてくるわけで。これを口にしたら、俺が俺でなくなるような……いや、その前に死ぬか……
 どうする、士郎?
 どうすれば生き残ることが出来る?
 ふと……アイツの言葉を思い出す。


   ――――ならば、せめてイメージしろ。
   現実では敵わない相手ならば、想像の中で勝て。
   自身が勝てないのなら、勝てるものを幻想しろ。
   ―――所詮。おまえに出来ることなど、
       それぐらいしかないのだから――――


 ああ、そうだな。
 俺たちの敵は他人ではなく、常に己の中にある。
 そうだろう……アーチャー……

 でもな、想像の中でも勝てず、勝てるものをイメージすることすら出来ないんだ……今の俺には……っ!
 どうすりゃいい……っ!

 そいつは―――強烈な向かい風に立ち向かいながら―――鋼のような声で言った。

    ――――あきらめろ――――

 と。



 アーチャー――――――――っっっっっ!!!!!!


 心の中の絶叫とともに、俺の意識は暗闇に落ちた。







 目を覚ます。
 吐き気がする。
 頭がくらくらする。

 額に冷たい感触。
 眼前には眼鏡をかけた絶世の美女がいた。
「ライダー……っ!!」
 俺はあわてて飛び起きた。
「だいじょうぶですか……? 士郎」
 心配そうに俺を見つめてくれる。普段の俺なら、萌えの気持ちが一気にあふれてくるのだろうが、今は違う。
「教えてくれ……っ! ライダー……っ!」
「し、士郎……」
「俺は……俺は……耐えられなかったのか? あれを……あれを、食べちまったのか? 頼む、教えてくれ……っ!」
「士郎……。それは……私の口からは言えない……」
「ラ、ライダー……」
 目の前が一気に暗くなる。
 今の俺の気持ちをどう表現すればいいのだろう。さしずめ絶望か? い、いやすぎる……
「食べてないと……うそだと……うそだと言ってよライダー……っ!!!」
 とりあえず、アメリカの少年のように叫んでみた。


「士郎……」
 悲しみに色取られながらライダーが口を開く。
「絶望にうちひしがれているところ、申し訳ありませんが……、サクラから伝言を預かっています」
 びくうっっ!
 と。
 俺の体が震えても、誰も俺を責めることは出来まい、きっと。
「で、伝言……?」
 ついでに声も震えていた。
「はい。食後の休憩が終わったら、一緒に散歩に行きましょう……と」
 食後の休憩?
 気絶させられたのがか?
「こ……断ることは…………勿論出来ないよな……」
 ライダーの顔が曇る。
「申し訳ありません。いくら士郎の頼みでも……それだけは……」
「いや、いい。わかってる……わかってるんだ」
 なんかこう、すべてを悟った修行僧のような気分だ。
「―――私も……ギルガメッシュのように食べられたくはありませんから……」
 あのうわさに聞いた、英雄王の無残な最期。
 桜にぱくっと食べられた金ぴか。
 うん、おれもやだ。
「もう……おそらく、サクラは玄関で待っていると思います」
「―――そうか。わかった、俺……行ってくるよ」
 悲壮感をたっぷりと漂わせながら、俺は言った。
 それに……
「はい……、お気をつけて……」
 夫を戦地に送り出す妻のような声で、ライダーが答えてくれた。
 大丈夫。
 俺は絶対に――――帰ってくる……っ!!!

 って、散歩に行くのに、何でこんな命がけなんだよ……




 玄関まで行くと、桜が楽しげに浮かんでいた。
「先輩♪ おっそいです♪」
「ああ、ごめん、桜」
 俺はいろんなものから目をそらしながら答える。
 現実逃避のスキルは、俺が生きていくためにもっとも必要な能力だ。
 それを存分に発揮しながら、俺は靴を履いた。
「さあっ♪ 行っきましょう、先輩♪」
 そう言って桜は外へと出ていった。
 
 しばしの沈黙。
「…………」
 俺は無言で、閉まったままの引き戸を、ガラガラ、と開けた。
 俺は人間だから、開けなきゃ出られないからな、うん。


 外へ出る。
 穏やかな風。
 雲ひとつ無い晴天。
 暖かくなりつつある空気。
 冬木の土地は確実に春の到来を告げている。

 それなのに……

「せんぱっい♪」

 なぜ、あそこだけは、どんよりとした瘴気につつまれているのだろう。

「ああ、今行くよ、桜」
 手(?)をひらひらと振っている桜のもとへ俺は行く。
「ひさしぶっりですね、先輩と一緒にお出かけするの♪」
「そうだったっけ?」
「そっうでっすよ♪」
 そうですか。
 記憶にございません。
「うっふふ……♪」
 楽しげな声で、桜はぺらぺらの手(?)を腕に絡ませてきた。
「…………」
 これを振り払うことは出来ないのだろう。きっと。

「くすくすっと歌ってゴーゴー♪」

「…………」

 やっぱ帰っちゃ駄目っすか?



 俺は桜に手を引かれながら歩く。
 深山町。
 俺が十年以上暮らす町。
 この時間なら、俺たち以外の町の人間も普通はいるはずだ。普通ならな。

 だが誰もいない。
 交差点に出ても、人っ子ひとりいない。犬もいない。猫もいない。
 いるのは俺たちだけ。
 聞こえるのは俺たちの足音だけ。……正確には俺の足音だけ。隣のやつは足無いしね。浮いてるし。

 商店街に出る。
「なんか食べるか、桜?」
「いっらないでっす。さっき食べたばかりじゃなっいですか」
 微妙に怒っているようだ。語尾に♪がついていない。
「……そうか」
 俺はそろそろ、人間が食べるべき物を口にしたいのだが……
 しかし、結局はそれも無理のようだ。俺たちの気配を敏感に感じて、周囲の店のシャッターがいっせいに閉まる。その間、約十五秒。さすがだ。二年という月日は、異界のものへの対処法というやつを、町の人間たちが身につけるに、十分な時間だったということだ。
 その中に俺も含まれていることが、若干の寂しさを感じさせるが……

 俺たちは仕方が無いので近くの公園に行く。間違っても新都に行くような真似はしない。どんな惨劇が待っているか想像に難くないしな。



 小さな公園。
 イリヤとの思い出の公園。
 懐かしい、かつての記憶。
 今はそれが闇に侵食されている。

 俺たちはそこにいた。
 ベンチに座りながら愚にもつかないようなことを俺たちは話す。
 公園での逢瀬。恋人同士なら当たり前の光景、微笑ましい風景。
 でも周囲には誰もいない。当然だ。俺もこんなやつらが公園にいたら、速攻で逃げるだろう。もう、ためらうことなく。
「先輩っ♪」
 そうとう嬉しいのだろう。桜が俺の周りをぐるぐると回っている。
「はっはっは……、桜、ちょっと落ち着けよ」
 渇いた笑い。
「でもおぉ、先輩と一緒だからうっれしっくて♪」
「はっはっは……、しょうがないやつだなあ」
 めっちゃ棒読み。だって怖いし。

「あっ……! そういえば先輩」
 ひゅうん、と、桜が回転をやめた。俺が座っているベンチの横に、ずぶずぶと沈む。
 ……せめて座ってくれと思うのは、俺の間違った願いなのだろうか?
「姉さんのことなんですけど……」
「遠坂の?」
 懐かしい名前。
 かつて憧れていた女性。
 聖杯戦争をともに戦った彼女は、高校を卒業後、魔術師の最高学府であるロンドンの時計塔へと渡った。優秀な魔術師である彼女は、魔術師として正式に時計塔へと招かれたのだ。けっして、なにかから逃げるように海を渡ったわけじゃない。多分、きっと、おそらく……

「で、遠坂がどうしたんだ……」
「はっい、春休みを利用して、一度こっちに戻ってくる予定だったんですけど……」
 ああ、そういえば、そんなこと言ってたっけ。

 遠坂と別れた時を思い出す。
 彼女は恐怖に引きつった顔で最後に俺に言った。

「一年……なんとか意識を保っていて……士郎。時計塔で、必ずあれを消し去る方法を見つけてくるから……っ!」

 珍しく、切羽詰ったようにそう言ってた。
 そうか、あれからもう一年か……

「姉さん……なんかいろいろあって、こっちに戻ってこれないって…………♪」

「―――そうか」
 衝撃の事実。
 俺は遠坂に見捨てられたことを悟った。
 しかし、俺に彼女を恨む気持ちはこれっぽっちも無い。
 平然とそれを受け入れた。

 ―――仕方ないさ、遠坂。これは……そんな簡単に消え去ってくれるようなやつじゃない。おまえはなにも悪くないんだ。

 ここにはいない彼女に、優しく囁きかける。

「きっと姉さん、私と先輩が仲良くしてるの、見たくなっいんですよ♪」
「はっはっは……、そうかもな」
 違うけどな。


 嬉しげな桜。
 ふと。
 俺は、彼女に尋ねなければいけない事―――遠坂が帰ってきていたら、きっと彼女が尋ねていただろう事を思い出す。なんでかわからないけど。







「桜、幸せか?」
「――――はい♪」
 満面の笑顔は、文句のつけようが無かった。

 ………………………………………

 ………………………………

 ………………………

 ………………

 …………

 ……







 ――――って、顔無いじゃんっ―――っ!!!



 そんな、俺の心の叫びが、冬木の町にこだました。ような気がした。

 じゃん。





  次回予告

    ついに耐え切れず、桜から逃げ出した士郎。
    海を渡り、ロンドンにいる遠坂凛のもとへと転がり込む。
    迷惑がりながらも、どこか嬉しげな遠坂。
    だが―――そんなことを、やつが許すはずも無く……

   次回
    たとえばこんな結末……第二話
    〜時計塔の惨劇〜

   ご期待ください。

   いや、うそですけど……



おわり



あとがき

初めてのギャグ作品。コンセプトは黒桜エンド。
ギャグに……なってんのかなあ、これ。
とりあえずいろいろ壊れてるけど。
桜ファンの人、ごめんなさい。
臓硯爺さんをもうちょっと活躍させたかったな。