くつろぎ温泉。

本当は、青森に行く予定だった。
ねぶた祭りに
ハネトで参加しようと企んでいたのだ。
ところが、諸事情が重なり、急遽、日々の疲れを癒すため、
温泉へ行こう!という話になった。

行き先は、福島県の山奥、「不動湯温泉」。
戦後すぐに建てられた
レトロな宿と、
渓谷を少し下った所にある
野天風呂が名物らしい。
ひなびた風情、そして、
あまり(というか全く)整備されていない温泉に心奪われ、
ろくに行き方や位置すら確認しないまま、すぐに宿に予約を入れた。

後から分かったのだけど、実は湯治場として名高い秘湯で、
1933年には村光太郎・智恵子夫妻も泊まりに来ていたらしい。

青春18切符
(夏休みの旅のお約束!)を買い、8/5、朝6:45に上野駅に集合。
青森や京都に鈍行で行くのに比べれば、福島なんて
おちゃのこさいさい
乗り継ぎをうまくすれば
5・6時間で着くのだ。
2時過ぎには福島駅へ到着、まずはバスで
土湯温泉へ向かう。
どうも、そこから更に徒歩で
へ入っていくとのこと。
山奥、ということは、当然商店も近くにはないだろうと予測し、
クッキーやらポテトチップスやら、ぐうたらするための必需品をごてごて購入した。
バスはだいたい1時間に1本、いつもこういうパターンでは乗り遅れるあたし達だが、
今回も御多分に漏れず、かなりギリギリでバスに乗車した。

終点の土湯温泉でバスを降り、すぐ近くの観光案内所で不動湯温泉への行き方を聞く。
案内のおばさんは、「まさかヒールなんて履いてないわよね?」と念を押した上で、
ここから山の入口まで
10分、そこから山を登ること約40分で、不動湯温泉に着く、と教えてくれた。
そんなにハードとは思ってもいなかったので、ちょっとびっくりしたものの、
おちおちしてると日が暮れるので、えっちらおっちら教えられた道を歩き始めた。
土湯温泉郷は、しっぽり温泉町のスタンダードといった印象。
ここらの宿でも十分だったんじゃ、なんて邪な思考は熱い陽射しに溶かしてしまおう。

山の入口。 うっそうと…。 たたずむとこんな感じ

山の入口までも登り坂だったのに、山自体も(当然)登り坂で、
10分位登ったところで、汗は背中をつたうわ息は切れるわ日には焼けるわ虫には襲われるわ、
ほんとにこんなんで温泉に辿り着けるのか、と結構本気で心配になった。
と、こんな看板が前方に…↓

        うぅうぅーーん
もっと心配になってきたぞ。
なんだこの
ボロボロの看板。
いつからここに立ってるんだ。
お化け屋敷への案内板みたいじゃないか。

そして、お約束というか懲りないというか、
あたし達は不動湯温泉への入口となる小さな脇道を見過ごしてしまい、
無駄に山をへいこら登って疲弊した挙句、やっとこさ勘違いに気がついて来た道を後戻りした。
もうそれだけで
くたくたになり、宿に荷物を置いてから観光しようなんて計画があったらウンザリするところだが、
ありがたいことになにしろ山奥、自然を楽しむ以外には煩わしい物は何もなく、
蝉の鳴き声をBGMに、淡々とと宿への小道を突き進んだ。

←宿へと続く小道。
かろうじて整備されている。
気を抜くと蜘蛛が道を横断して巣を張る。


宿の玄関。→
手前の飲泉場には
ラムネが冷やしてあって、
涼しげな雰囲気。

「いらっしゃ〜い、暑かったでしょう、お疲れ様〜。」と、笑顔で迎えてくれる宿の女将。
気張った友禅の着物なんか着てなくて、サッパリした服装が好印象。

ぎしぎし鳴る廊下を通って、
勾配の急な階段を上ったところがあたし達の部屋。
窓から見える景色も気持ちいい緑で、
部屋は6畳と4畳半の2部屋つきだった。
クーラーなんて無粋なモンは見当たらず、
ただ扇風機が1台、隅の方に置いてあるだけ。

荷物を降ろす、窓を開ける、お茶を飲む、そして、
「うっしゃ!ひとっぷろ行くぞー!!」

温泉ですからね。
っていうか温泉
しかないですからね。
しかも今回の旅の目的はただ1つ、
「温泉、そしてぐうたら」

この不動湯温泉には、内風呂・外風呂合わせて5つお風呂があって、
婦人専用が3つ、混浴が2つ。
どれもそれぞれ効能の違う天然温泉になっている。

←これは桧風呂、「羽衣の湯」。
無色透明で、肌の当たりも柔らかく、
熱い湯殿とぬるめの湯殿、2つに分かれてて入り心地抜群だった。

お風呂から出ると、そろそろ夕飯時。
あたし、基本的には和風旅館とかで出されるちょっと懐石っぽい和食って苦手なんだよね。
しかもこのお宿は鯉料理が売りだったから、「鯉か…。」って内心不安だったの。
でも、鯉の刺身も鯉のすまし汁も、想像を裏切って普通に美味しかった。
初めて食べたよ鯉なんて…。

宿の飼い猫、トラちゃんが何処からかやって来て、
じぃーっとあたし達の夕飯を見つめてくる。
鯉の刺身を一口だけ分けてあげた。
アユだかイワナだかの塩焼きにも手を出そうとしたので、
そこはきっちり「くぉら!!」っと叱った。
ふにゃっ!」と跳びずさって、
トラちゃんは名残惜しそうに部屋から出て行った。

夕飯の後は早速残りのお風呂を巡ることに。
どれもこれも
古さがいい味出してる素敵な温泉で、疲れが滲み出ていく感じが体感(?)できた。
浴室の隅には天然水が湧き出していて、体が火照ったらきぃんと
冷たい水をすくって飲める。
思い出すだけでも気持ちいい。
ほの暗い電球も、俗世を忘れさせてくれる異界作りに一役買ってました。

内風呂も凄くいいんだけど、やっぱり
メインは外の野天風呂。
でも、そこに到達するには、「長寿階段」と呼ばれる長〜い階段を下って、
そこから更に山道を少し下らなきゃいけない。

長い階段を下って… 山道を下って… やっと脱衣所に到着。

湯殿のある方は
真っ暗だから、何にも見えないの。
(多分明るくすると虫が来ちゃうんだろう。山奥だから巨大な我とか多いしね。)
1人だったらちょっと怖くて泣くかも…熊とか出そうな雰囲気だしさぁ。
しかぁし!
お湯加減は最高、肌が
すべすべする感じで、暗いながらも確認してみると、どうやら薄い乳白色の硫黄泉。
ちょっとのぼせたな、と思ったら、浴槽の縁の岩に腰掛けて風に身をまかせてみる。
さらさらと
谷川のせせらぎも聞こえてきて、ほんと、都会が白昼夢のように感じちゃう。
夜はあまりに暗くて写メなんて撮れる状況じゃなかったので、
次の日の朝に、再び入浴するついでに撮ってきました。


<上段>
左:長寿階段
真ん中:風呂に続く山道
右:脱衣所からの景色

<下段>
左:湯船からの眺め
右:湯船

お風呂から出て部屋に戻ろうとしたら、寝巻き姿の女将と廊下でバッタリ。
「お風呂入ってきた?24時間開けてあるから、好きな時にどうぞ♪」と、相変わらず笑顔。
「私も下のお風呂に入りたいんだけどねぇ、住んでると、どうしても面倒くさくなってねぇ、ほほほほ。」
と笑いながら、自動販売機で瓶に入った牛乳を買い、内湯のひとつへ入って行った。
ナイトキャップ被ってたよ…女将、それはいささか飾らなさすぎじゃ(笑)!

風呂上りはやっぱ牛乳でしょ!
…って事で、女将同様自販機で牛乳を購入。
旅の友は
ノーマル牛乳
あたしは
フルーツ牛乳を買った。
部屋に戻ってごきゅごきゅ飲む。
くぅうーっ!たまらんのぅ!!

ところでこの日、お風呂にシャワーが無かったから湯船のお湯を
ですくって髪洗ったんだけど、
いまだかつてないほど
サラッサラしっっとりになった!!
首や肩に触れる髪の感触が、いつもとは違いすぎて我ながら戸惑ってしまう。
それも東京戻って普通に髪洗ったらすっかり元に戻っちゃったけどね…(泣)。

温泉恐るべし!!!

夜はつらつらと、布団に入ってごろごろしながら
よもやま話
山奥のせいか、陽が落ちると一気に気温が下がって涼しくなる。
なぁ〜んにもしない、を、しよう、って広告を昔見た気がするけど、まさにそんな感じの1泊2日だった。

次の日は、登りとは比べ物にならないほど楽に山を下り、土湯温泉卿をふらついた。
こんにゃくアイスを食しながら散歩。
大きな川の側では、魚を獲ろうと裸足で走り回る男の子たちが沢山いた。
その男の子たちの近くで、獲った魚を焼いているお兄さんかお父さんらしき人たちも。
あたし達に気づいた男の子の1人が、
ねえちゃん!魚買わない?うまいよ!!」と声をかけてきたのだが、
あいにくもうすぐバスが来る所だったので丁重に辞退した。

不動湯温泉、マジでイチオシ!です!!
家に帰ってから何気なくネットで検索かけたら、やたらと秘湯コーナーが引っかかってウケました。





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