ブラウン・バニー
<Sue's eye>
どうりで賛否両論だったわけです、こいつは。
まぁあたしもその真偽の程を確かめたかったのと、
自分はどう感じるかが楽しみで観に行ったって部分も大きいんだけど。

好きか嫌いかで表すなら、あたしは、好きです。
まず、人や物のたてる音がそのままふんだんに使われているところが好き。
もともと、紙袋から買ってきた雑貨を取り出す音とか、
木の床を革靴で歩く音とか、食器を机に並べる音とか、
そういう音をそのまま使ってる映像ってのに弱くて。
BGMの派手な映像も好きなんですけどね、それとはまた別に。
日常と映像がつながっている感じがするからかなぁ。

それから、「人」に焦点をあてて物語が進んで行くところが好き。
事件やイベントやストーリー性に重きを置いた作品ではなく、
「人」の心理面、特に「自分自身ですら持て余してしまう自分」が、映像という形で表現されている。
ギャロ演じる主人公・バドの戸惑いや自尊心や気持ちが、
時に乱暴に、時に繊細にスクリーンに浮かび上がってきて、その度に胸に何かが響く。

花の名前を持つ女の子たちが登場するのも好きだ。
ささやかながらもとってもCuteな設定じゃないですか。

思い切り問題になった後半の性描写については、
「そんな騒ぎ立てるほどひどくはないだろ。」てのがあたしの素直な感想。
確かに、モザイクが必要だったシーンはやり過ぎ感がなきにしもあらずだけれども、
別に過剰にめくじら立てるほどではないと思うし、
ギャロ本人も、女を侮蔑しようとかカゲキを狙おうとか
そういう意図でもってあの場面を用いたわけではないと思います。
恋愛やラブシーンに美しさを求める人からしたら許せない映像なのかもしれないが、
そもそも実際の恋愛場面って基本的に動物的で本能的なものでしょう、
そこから言えばあの流れは自然だったんじゃないかな、と。

…全体をまとめると、この作品は、
ギャロ演じるバドと似た部分を自分に自覚している人か、
孤独感ややりきれなさと、自尊心とのジレンマを抱えている人、
そういう感覚的な部分を深く考え過ぎる傾向のある人には、
それなりに染み入る映画だと思います。
誰かが「魂に刻まれた愛の傷」と、この映画をコメントしていたけど、
観終わった後、「そのコメント、わかる!」と感じちゃった人は結構多いはず…。

あたしは、バドの、臆病さとプライドの高さ、
どうしても許せない感情と、それでも相手を求める気持ち、
それから自己嫌悪と突発的な前向き気分(その後また後悔する)
に、非常に共鳴してしまったので、
誰かに気軽に薦める気はないけど個人的にこの映画は「良かった」と、言えます。
物凄く個人的な意見を挙げると、
よしもとばななや江國香織の感覚小説を読んだ後の気分と、
この映画を観終わった時の気分がすごく良く似てました。




<Sue's mark>
 ★★★☆☆

<Cast>
バド ・・・・・・・ ヴィンセント・ギャロ
ディジー ・・・ クロエ・セヴィニー

  監督・プロデューサー・衣装・美術・
  脚本・撮影・編集…ヴィンセント・ギャロ