バクタプール
ダルバール広場
  Bhaktapur Durbar Square



バクタプール・ダルバール広場
ケダルナート寺院(左)とゴピナート寺院(右)
 

 
 カトマンズから東へ12キロ。丘の上にある古都バクタプール。15世紀から18世紀マッラ3王朝並立時代、ここは一つの首都として栄えた。 
 今なお古い町並みが残り、その中を歩くと一瞬過去にタイムスリップしたかの印象を受ける。ベルナルド・ベルトルッチ(1941〜)が映画「リトル・ブッダ」 (1993年仏・英)を撮影するにあたって、若き日のシッダールタが過ごした町のロケ地に選んだのは、このバクタプールだった。
 バクタプールへの観光客はそう多くなく、カトマンズの喧騒と比べ、静かで落ち着いて過ごすことができる。 
   



西側バス停近くのシティ・ゲート
 


 バクタプールへはカトマンズからバスで30分ほど。バスは西側のバス停に止まる。
   



グヒャ池
 


 バクタプール市街のメインゲートへ向かう道のすぐ北側にはグヒャ池(Guhya Pokari)というため池がある。そういった場所や、商店街を眺めながら10分ほど歩くと、 メインゲートが見えてくる。
     



バクタプール市街へのメインゲート
 


 さて、バクタプールでは悪名高き文化財保護基金750ルピー(または10ドル)を徴収される。通常のものは1週間有効だが、パスポートのコピーと顔写真2枚を出して ゲート入ってすぐ左にあるオフィスで手続きを取れば1年間延長できる。
 正直言って、そんな大金払うのはバカバカしい。しかしながら、カトマンズやパタンのダルバール広場のチェック・ポストと比べて、ここのチェックは徹底している。ここを素通りしようとすれば、相当の 確率で呼び止められる。しかし、安心していい。チェックが厳しいのはこのメインゲート、西のバス停のすぐ南の門(通称ライオンゲート)など数箇所だけで、まったくチェックのいない場所も多い。
 ライオン門にたどり着く前に、どこでもいいから路地を右折しよう。すぐに市街の中に入ってしまう。以前、母親が和服を着てバクタプールを訪ねた時も、この方法でまったく咎められなかった。

 ただ、注意して欲しいのは、タクシーで行った場合、運転手がメインゲートの前まで連れて行ってくれることがある。そうすると、係員がすぐに近くまで寄ってきて、逃れにくくなってしまう。だから僕はタクシーで行くときは「バクタプール病院」または「赤十字オフィス」まで行ってもらうことにしている。そうすれば、西のバス停のすぐ近くに降ろしてもらえるから、どこからでも自由にバクタプール市街へ入ることができる。
  



たとえばこんな路地を曲がる
 

◆エロチック象寺院(Erotic Elephant Temple)



エロチック象寺院
 


 メインゲートを入る前に、1箇所チェックしておきたい寺院がある。メインゲートからもと来た道を100メートル戻って突き当たったところにある小さなシヴァ・パルバティ寺院。通称エロチック象寺院である。
 この寺院の特徴は、その壁に彫られたエロチックな彫刻だが、面白いことに、それがすべて動物の交合図なのである。しかも、動物本来の姿ではなく、すべて正常位なのが面白い。寺院の通称の由来となったゾウのものももちろんある。
   
 


ゾウの交合図

   
     こちらはライオン?           亀の69…と思ったら首が取れただけ
 


 エロチックな彫刻のある寺院はネパールには多いが、ここはネパール人の遊び心が感じられて面白い。
  



シヴァ寺院
この左手の路地からバクタプール市街に入ることができる
 


 エロチック象寺院のすぐ左にはもう一つのシヴァ寺院があるが、こちらは特に特徴も無い。この寺院を横目にそのまま左の路地から入っていけば、入場料を払わずにバクタプール市街に入ることができる。
  
◆ウグラチャンディ像&ウグラバイラブ像(Ugrachandi and Ugrabhairab)



中学校入り口
ウグラチャンディ像とウグラバイラブ像がある
 


 メインゲートをくぐり、すぐ北側の建物は中学校になっている。この中学校の門の両脇に立っている彫像は、ウグラチャンディとウグラバイラブである。
    



ウグラチャンディ像
 



ウグラバイラブ像
 


 
向かって左がウグラチャンディで、これはヒンズー教の最高神シヴァの妃パルヴァティの化身。18本の手にはそれぞれ宗教的な象徴を持っている。
 右側がウグラバイラブでこちらはシヴァ神の化身。12本の手を持っている。
  
◆チャール・ダム(Char Dam)

 ダルバール広場の西端には4つの寺院があり、「チャール・ダム(4つの住居)」と呼ばれている。「ロンリー・プラネット」のガイドブックには「あまり特徴のない寺院がいくつもある」と書いてあるが、それはさすがに言いすぎ。
    



ラメショール寺院
 


 門から一番近いのがラメショール寺院(Rameshwor Temple)。シヴァ神を祀っているが、壁がなくオープンなのが特徴。
  



バドリナート寺院
 


 その奥にあるのがバドリナート寺院(Badrinath Temple)。こちらはラメショール寺院と違って閉ざされている。ヴィシュヌ神とナラヤン神を祀っている。
  



ゴピナート寺院
 


 その2つの寺院の手前にある大きな二重屋根の寺院がゴピナート寺院(Gopinath Temple)。こちらはクリシュナ神を祀っている。
   



ケダルナート寺院
 


 他の3つの寺院から少し東に外れたところにシカラ様式のケダルナート寺院(Kedarnath Temple)がある。シヴァ神を祀った寺院で、1674年ジタミットラ・マッラ王(在位1673〜96)によって建てられた。
  
◆旧王宮(Royal Palace)



旧王宮
左にゴールデン・ゲート、右が55窓の宮殿
 


 バクタプールの旧王宮は広場の北側である。バクタプールの初代ヤクシャ・マッラ王(在位1428〜82)が建て、その後主にブパンディラ・マッラ王(在位1696〜1722)が増築した。1934年の大地震で大きな被害を受けた後、復元されたが、往時ほどの美しさは残っていないという。
  



国立アート・ギャラリー入り口
 


 旧王宮の西側は現在国立アート・ギャラリーとなっている。
   


ハヌマーン像
 


ナラシンハ像
 

 ギャラリーの入り口の両側にはハヌマーン像とナラシンハ像が建っている。これらの像は1698年に作られたものという。
  



ゴールデン・ゲート
  


 旧王宮の入り口はゴールデン・ゲートと呼ばれる立派な門になっている。ブパンディラ・マッラ王が建設を開始し、その後ランジット・マッラ王(在位1722〜69)の1754年に完成した。
  
  



ゴールデン・ゲートの破風
 


 ゴールデン・ゲートは彫刻もすばらしいが、特に門の上のトーラン(破風)が、凝っている。一番てっぺんにはガルーダが見える。そして正面の4つの顔で10本腕の女神がタレジュ・バワニ。マッラ王朝の守護神である。
   
  

  

55窓の宮殿
 


 ゴールデン・ゲートのある建物は、55窓の宮殿(55Window Palace)と呼ばれる。ゴールデン・ゲートと同じく1754年の完成。本当に窓が55あるのかどうかは、数えたわけではないので不明だが。

 続いて、ゴールデン・ゲートから中に入ってみよう。
  
  



 


 ゴールデン・ゲートから入ると、中庭に通じる細い道がある。
 しばらく進むと、タレジュ・チョークへの入り口が左側に見えるが、ここはヒンズー教徒以外立ち入り禁止。写真撮影も禁止であり。そこで、そのまままっすぐ貯水池ナーグ・ポカリ(Nag Pokhari)へ進む。
  
  



ナーグ・ポカリ
   

  
 ナーグとは蛇のこと。なるほど、池のほとりと中央にコブラが頭をもたげている。どうやら、男性器と女性器の象徴だと思われる。
  



ナーグ・ポカリの蛇口
 

    
 ナーグ・ポカリに水を注ぐ蛇口が、なかなか変わっている。ワニがヒツジを咥えたもの。このワニ、マクサルという名前の悪魔なのだそうだ。
  
◆ブパティンドラ・マッラ王の石柱(King Bhupatindra Malla's Column)  



ブパティンドラ・マッラ王の石柱
  


 ゴールデン・ゲートの正面にはブパティンドラ・マッラ王を記念した石柱が建っている。ブパティンドラ王はバクタプール・マッラ王朝11代目で、王宮や、ニャタポラ寺院を建設するなど、文化的にも大きな影響を与えている。
   



ブパティンドラ・マッラ王像
  

◆ヴァツァラ・デヴィ寺院(Vatsala Devi Temple)



ヴァツァラ・デヴィ寺院(中央)
  

   
 ブパティンドラ・マッラ王の石柱のすぐ横にある石の三角の建物が、ヴァツァラ・デヴィ寺院。1672年にジャガット・プラカス・マッラ王(在位1644〜73)によって建てられた。
  



タレジュの鐘
 


 正面にある大きな鐘がタレジュの鐘(Tareju Bell)。1737年にジャヤランジット・マッラ王によって作られたもの。
   



吠える犬の鐘
  


 また、側面にはもう一つ小さな鐘があるが、こちらは“吠える犬の鐘”と呼ばれている。ブパティンドラ・マッラ王が夢に見た悪い予兆を覆すために作ったそうで、鳴らすと犬が吠えると言われているそうだ。
   
◆パシュパティナート寺院(Pashupatinath Temple)



パシュパティナート寺院
 


 ヴァツァラ・デヴィ寺院の裏にある寺がパシュパティナート寺院。カトマンズに同じ名前のがあるが、ここは15世紀にヤクシャ・マッラ王がそれを模して作ったもの。
  
◆チャシリン・マンダップ(Chyasilin Mandap)



チャシリン・マンダップ
 

   
 パシュパティナート寺院のすぐ北側に小さな貯水池がある。なかなか凝った作りの貯水池として見ごたえがある。この貯水池のすぐ横に建っているのがチャシリン・マンダップである。
    



チャシリン・マンダップ横の貯水池
 


 チャシリン・マンダップは17世紀にジタミトラ・マッラ王(在位1673〜96)が旅人と巡礼者のための宿として建てたもの。1934年の大地震で全壊。その後、元の建物の材料を使って建て直された。
 以前は建物の上からダルバール広場を見渡すことができたようだが、現在は上へ登る階段は閉ざされている。
   
◆シッディ・ラクシュミ寺院(Siddhi Laxmi Temple)



シッディ・ラクシュミ寺院
 

    
 チャシリン・マンダップから東のほうにはまた別の広場があるが、そこの入り口の左側にシッディ・ラクシュミ寺院がある。
 この寺院は17世紀に建てられたもので、石段の両脇には人間や動物の像が建っている。
    



ヴァツァラ寺院
 

   
 シッディ・ラクシュミ寺院の裏の赤いレンガの建物は、ヴァツァラ寺院(Vatsala Temple)だが、扉が閉まっているのでどんな寺かよくわからない。
  



2匹の獅子
 


 そして、2つの寺院の横には、広場の中央を向いて2匹の獅子が建っている。
  
◆ファシデガ寺院(Fasi Dega Temple)



ファシデガ寺院
 


 広場の北側には白いファシデガ寺院が建つ。ここはシヴァ神を本尊としている。石段にはゾウと獅子と牛が建っている。

   



獅子像とファシデガ寺院
 

◆タドゥンチェン・バハール(Tadhunchen Bahal)

 広場の南側にある横に細長い建物はもともとはダラムサラ(巡礼宿)であった。その左脇の道を南に下っていくと、右側にタドゥンチェン・バハールの入り口が見える。
  



タドゥンチェン・バハール入り口
 


 このバハールの東側の壁にある彫刻に注目して欲しい。なんと地獄の責め苦が描かれている。例えば、蛇に巻きつかれた男。ヤットコで舌を抜かれている男。頭を両側から山羊の頭に押し付けられている男…恐ろしいというよりどことなくユーモラスに感じられる。
    


  


様々な地獄絵図
 


 このバハールを出て南に少し行った商店の前には、リンガが建っていた。男性器の象徴が、こんな往来の真っ只中にあっていいものだろうか(笑)
  



シヴァ・リンガ
 


 この道を再び北に上って広場に戻り、次はダルバール広場の北を見ていくことにしたい。
  
◆バラク・ガネーシュ(Balakhu Ganesh)



バラク・ガネーシュ
 


 ファシデガ寺院の右側の細い道を北に向って進むと、すぐに道の真ん中に小さな祠堂が見えてくる。ガネーシュ神を祀るバラク・ガネーシュである。なんでもこのガネーシュにお祈りする と、なくしたものが出てくるらしい。
  



本尊のガネーシュ像
 

◆ビシュヌ寺院(Vishnu Temple)



ビシュヌ寺院入り口
 


 バルク・ガネーシュから北へさらに進む。しばらく行くと、左手に2頭の獅子と塔の上のガルーダ像が建つビシュヌ寺院の入り口が見える。ここは、現在では小学校として利用されている。寺院が学校として利用されているのはここネパールでは多いが、寺子屋みたいな感じだろうか。
   



境内は小学校として利用されている
 

◆マハカリ寺院(Mahakali Temple)



北のシティ・ゲート
 


 さらにそのまま十字路を渡り北のほうへずっと進むと、市街への出入り口となる北側の門が見え、右手に料金所がある。
 そのまま通り過ぎて大通りに出たら右へ向う。やがて、丘の上にマハカリ寺院が見えてくる。
  



マハカリ寺院
 

    
 マハカリ寺院の入り口は、色鮮やかで華やかな感じだが、中に入るとずいぶんと薄汚れた印象。
    



マハカリ寺院境内
 

 
 しかしこのマハカリ寺院、伝統のある寺院らしく、僕の同僚の姉はここで結婚式をあげたそうである。
  
◆マハラクシュミ寺院(Mahalakshmi Temple)



マハラクシュミ寺院
 


 マハカリ寺院からもとの道に戻ってしばらく進み、右に曲がるとバクタプール市街へ戻る。料金所のところを左に曲がって東に進む。しばらくすると広場にある小さなマハラクシュミ寺院が見えてくる。
  
◆ナーグ・ポカリ(Nag Pokhari)



ナーグ・ポカリ
 


 マハカリ寺院の前の道を今度は南へ向う。すると左手に2つの寺院と白いシカラ様式の建築が見えるが、ここには貯水池ナーグ・ポカリがある。
   



池からはコブラが頭を出している
 

 
 ナーグとは蛇の意味で、「蛇池」とでも訳せる。その名の通り、池の真ん中から一匹のコブラが頭を出している。
 また、ナーグ・ポカリの周りでは染めた毛糸を乾かす光景が見られる。
  



毛糸を乾かす光景
 

◆プラシャンナシル・マハビハール(Prashan Nashil Maha Bihar)



ガネーシュ祠堂
 

 
 ナーグ・ポカリのすぐ北側の道を東に向い、次の道で左折し、しばらく北へ行くと小さなガネーシュ祠堂がある。
  



プラシャン・ナシル・マハビハールへの入り口
 


 このガネーシュ祠堂の10メートルほど手前にある入り口から入ると、チャイティヤなどのある中庭がある。
   



こうした中庭をいくつか過ぎる
 


 こうした中庭をいくつか過ぎて奥へ進むと、左手に白い柱のあるプラシャン・ナシル・マハビハールの入り口が見える。
   



プラシャン・ナシル・マハビハール
 


 このプラシャン・ナシル・マハビハールは落ち着いた感じの仏教寺院である。
  



プラシャン・ナシル・マハビハール
 


 ガネーシュ祠堂のあたりで道を教えてくれたおじさんがいた(上の写真のいくつかに写っている)。頼みもしないのに、先立ってどんどん案内をしてくれる…と思ったら案の定チップを要求された。もとよりこっちが頼んだわけではないので、何度も「ありがとう」を連呼して逃げてきた。
   
◆クワタンドウ・ポカリ(Kwathandau Pokhari)



クワタンドウ・ポカリ
 


 プラシャン・ナシル・マハビハールから出てまた東に向かい、小さな神殿の所を左に曲がると、クワタンドウ・ポカリの広場に出る。
  



クワタンドウ・ポカリ
 


 クワタンドウ・ポカリの南東には小さなナワドゥルガー寺院(Nawa Durga Temple)がある。ここはタントラ密教の寺院で、かつては生け贄の儀式も行われたとか…。
  



ナワドゥルガー寺院
 

 
 このままナワドゥルガー寺院のすぐ裏の道を進んでいくと、しばらくして少し大きな道に出る。この道が、バクタプール市街の東西を走る道路で、右(西)に行けば、タチュパル・トールを経てトウマディ・トールへ出る。左側はすぐ先に東側のシティ・ゲートである。これで、バクタプール市街を縦断したことになる。
  



東シティ・ゲート
 

(2008年10月25日)


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