Tachi - Dai Katana
太刀・陣太刀

 太刀とは鎌倉〜室町前期(1185〜1400)にかけて日本で用いられていた、日本刀のバリエーションの一種である。正確には一般的なイメージの日本刀、つまり打刀の原型となる。
 いわゆる日本刀と呼ばれる刀剣の起源は平安時代と言われている。中国大陸で細身・直刃の剣が発展したのとは異なり、日本では独自の形状、つまり反りを持った刀が作られた。当時の日本は世界有数の良質の鉄の産地である共に非常に高い製鋼技術を有しており、高温の溶鉱炉や燃料となる薪に不自由しなかった点が刀剣の開発に非常に強く作用したと考えられている。(それに日本人特有の完璧主義も上手く働いたのだろう) それら技術の結晶とも言うべき代物が太刀、つまり日本刀である。試しに太刀を1200年当時の欧州の刀剣と比較してみると、耐久性、保存性、そして美しさが別次元である事に気付くだろう。1200年当時の欧州の刀剣はほとんどが現在では使い物にならないか錆で見るに耐えない代物ばかりである反面、太刀は現在でも全く機能性と美しさを損なうことなく現存しているからである。
 太刀と打刀の違いは多々あるのだが、簡潔に言うと太刀は打刀よりも長く重く、より反りが激しい点が特徴である。長い物で150cm、重量3〜4kg、反りが2.5cm程で、柄巻や柄頭に独特の装飾が見受けられる。また打刀は着物の帯にさして刃を上にして携帯するのとは異なり、太刀は帯に吊るして刃を下に向けて携帯するなど細部が異なる。
 太刀は室町時代前期までは戦場の主役であったものの、槍による集団戦法の確立や、より携帯性が高い打刀の開発等の要因により次第に廃れ、戦国時代にはほとんど使われなくなった。その後、太刀は陣太刀と名前を変え主に装飾用の刀として扱われた。また江戸時代には打刀に太刀の拵えを装着する太刀拵えと呼ばれる装飾が流行するなど、その後も太刀は生産され続けた。無論、今日でも刀剣商で太刀を買い求めることが可能だ。有名どころとしては「備前長船長光」が挙げられる。国宝の重要刀剣で、大体お値段500万円〜1000万円と言った所だ。ちなみに何故かアメリカに一振り存在しているのを筆者は目撃している。