M1921 Thompson "Tommy Gun"
M1921トンプソン・トミーガン

 トンプソン・サブマシンガンこと「トミーガン」は、アメリカで1918年に開発された民間の短機関銃である。
 トミーガンは当初、第一次世界大戦への投入へ向けて開発され、軍用銃として通用するよう頑強に作られていたのだが、実戦投入前に大戦が終わってしまった為に、トミーガンは民間用として再設計され販売される事になった。
 しかし時はまだ1920年代。警官でさえ拳銃か散弾銃しか持っていない時代に、毎分1000発を連射できる軍用サブマシンガンが民間に流通してしまったのだから、トミーガンの普及は治安の悪化にストレートに拍車をかける事態となった。また、時は折りしも悪名高い「禁酒法」の時代であった。アメリカ国内でアルコールを販売する事は禁止された為、マフィアが不法にアルコールを密輸、または密造し、莫大な利益をあげる事になったのだ。
 この時、マフィアがこぞって装備したのがこのトミーガンであった。トミーガン1挺の火力は拳銃のそれとは比較にならない程強力だ。その結果、マフィアを取り締まる警官隊ではトミーガンに応戦できず、アメリカ中でトミーガンによる警官殺しが相次ぎ、社会問題になった。
 特にカナダと国境を接し、アルコールを密輸しやすい場所に位置していたシカゴでは、マフィアと警官隊との壮絶な死闘が繰り広げられ、双方に多数の死者が出る事態となった。
 トミーガンの発射音はタイプライターのそれと酷似しており、また発射速度が異常に高く、まるでタイプしているような様から、トミーガンは「シカゴ・タイプライター」の名前で悪名を轟かせる事になったのだ。トミーガンはその後も生産が続けられ、第二次大戦初期では軍用銃として再設計されてM1928A1となり、その後M1A1トンプソンとして連合軍で広く使用される事になった。