Molotov Cocktail
Molotov Cocktail - モロトフ・カクテル (火炎瓶&煙幕弾 )

 モロトフ・カクテルとは火炎瓶の別名である。第二次大戦中にロシア赤軍が対戦車用の武器として使用した火炎瓶に端を発する武器であり、今日ではテロや暴動の代名詞とも言える存在だ。

 ナチスドイツが対ロシア攻略戦であるバルバロッサ作戦を発動したその時、ロシア全土ではスターリンによる粛清と恐怖政治が吹き荒れ、国内にはおよそ軍隊と呼べる組織が存在しなかった。(有能な軍人は皆、既に処刑されていた。その数およそ30万人) スターリンにとっては青天の霹靂ともいえるバルバロッサ作戦の初戦、ドイツ軍は戦車隊を筆頭に電撃作戦を展開。疾風のごとき勢いで首都モスクワへと肉薄した。

 この状況下でスターリンと赤軍幹部が下した命令は「子供から年寄りまで皆、火炎瓶持って敵戦車に突撃しろ。一歩でも退いたら後ろから撃つから。祖国のために死ぬのと反共産主義者として死ぬのとどっちがいい?」という人海戦術であった。老人から子供まで、全ての市民がライフル一丁、火炎瓶一本を持ってドイツ戦車隊に突撃するという狂気の作戦が採られ、数百万人の犠牲を出しながら、ロシア赤軍は首都の防衛に成功。反撃作戦に移るのである。

 このような最低最悪の作戦を取ったロシア赤軍だが、それでも対戦車装備の不足は何ともし難かった。戦車のような化物相手では、人間など肉塊に過ぎない。しかしその肉塊が爆薬を手にした時、人は恐るべき自爆兵器と化すのだ。

 一口に火炎瓶と言っても、幾つかの種類がある。

 一つは対戦車兵器としての火炎瓶。ガソリン、ダイナマイト、白燐、マグネシウム化合物を混ぜた混合液をボトルに詰め、点火プラグを用いて起爆する。非常に強力であり、即席の爆薬として使用できるが、使用者は100%死ぬという自爆兵器である。

 二つ目は火炎を撒き散らし、戦車のエンジンルームを焼き殺す燃焼兵器としての火炎瓶。揮発性の高い軽油や高濃度のアルコールに直接、着火する。ボトルの口に火の付いた布を押し込め着火する事も出来るが、自爆の恐れのある危険極まりない武器である。事実、お隣の韓国では労災デモ等で火炎瓶が(今でも)盛んに使用されているが、自爆・他殺を含めて多くの死者が出ている。

 そして三つ目が煙幕弾。ベンゼン、水、ラテックスゴムをフラスコに詰め、使用時に口を開ける。フラスコ内部の混合物は酸素と化学反応を起こし、その場に煙幕を展開するのだ。これに青酸カリを加えた毒ガス兵器等も作られ、第二次大戦の末期にはドイツ軍で使用された。

 モロトフ・カクテルは現在でもデモやテロ行為で使用され続けている。(何と言っても製造が楽な為である) 日本では過去の安保闘争時代に共産党とそのシンパ、特に赤軍派が火炎瓶を好んで使用し、多数の人間が犠牲になった。その為、火炎瓶の使用及び製造を制限する法律が制定され、現在の日本では火炎瓶を作る/所持する事は違法である。