Mauser Luger P08 "Wehrmacht"
モーゼル・ルガーP08 ヴェアマハト
全長:222mm
重量:870g
口径&装弾数:9x19mmパラベラム弾 8発

 Mauser Luger P08 は1908年にドイツ陸軍が制式拳銃として採用した軍用銃である。開発から実に100年近く経つ「古式銃」なのだが、ガンマニアの間では未だに絶大な人気を誇る名銃だ。

 時に1890年。米国にて「トグルアクション」と呼ばれる新しい給弾方式を採用した一挺の大型拳銃が開発された。しかし構造上の欠陥と高コストが災いしたのか、この銃が軍に採用されることはなかった。
 これに目を付けたのが後に「銃器界の天才」と呼ばれる事になる「ゲオルグ・ルガー」その人である。彼はこの銃を再設計して欠陥を見直すと共に、破壊力の大きい「9x19mmパラベラム弾」を採用。威力、命中精度、コスト共に同時代の銃を遙かに上回る傑作銃の開発に成功した。
 この銃はドイツ海軍に持ち込まれ、ドイツ海軍の制式拳銃として採用された。後に陸軍でも制式拳銃として認められ、ドイツ全軍に行き渡ることになる。1908年「ルガーP08」が生まれた瞬間だった。
 やがて第一大戦が勃発すると、実戦の中でルガーの優秀性が証明されることとなった。ルガーは敵味方を問わず、広くその名を知られるようになったのである。
 第一次大戦がドイツの敗北に終わり、ベルサイユ講和条約によって課せられた天文学的な賠償金によりドイツ経済が崩壊すると、ルガーの供給は途絶えてしまう。この頃にはルガーの名前は世界的に広まっていたので、供給の途絶えたルガーは途端にプレミア化した。
 時は流れて1930年代。ドイツ軍の再軍備と共にルガーの大量生産が再開された。この頃には誰もが第二次大戦の勃発を予想していたのだが、案の定1939年、ドイツ軍の電撃作戦と共に戦争が始まる。第二次大戦では「ワルサーP38」という銃が制式拳銃として採用されていたのだが、多くの将兵は実戦に裏打ちされたルガーの性能を知っていたので、ルガーを愛用する者も多かった。
 さて、それを聞いて色めき立ったのが"世界のガンマニア"たるアメリカ人達である。彼等にとってはプレミア化したルガーを手に入れて国に持って帰る絶好の機会だったので、ルガーは一躍「おみやげナンバー1」の座に据えられたのだ。第二次大戦が終わって相当数のルガーがアメリカ国内に出回ると、ガンマニア達の間だけ無く、美術品としてもルガーの価値が再評価される事となった。このためルガーはますますプレミア化し、現在では安い物でも数十万円、高い物になると数千万円から億単位の値段が付くなど、ほとんど伝説と化している。
 ルガーは非常に生産期間が長いので、時代や場所によっては外見に多少の差異が見られる。上図のモデルは第二次大戦中に大量生産された陸軍用の物で、オリジナルと比べるとトグル部分が鋭角的なのが特徴。ちなみに「ルガーマニア」達は、こういった他とは違うルガーを集めるのが大好きなので、上図の銃なら平気で数百万円の値段が付いてしまう。

 余談だが、あらゆる戦線から銃を持ち帰ったアメリカ人がただ一挺だけ、興味を示さなかった銃がある。それは旧日本軍の制式拳銃「南部十四式」で「当たらない。すぐ壊れる。とにかくよく暴発する」と、性能の劣悪さで悪名を轟かせていた。このためアメリカ人は「こんな銃、自殺する時にしか使えない」としてゴミ屑扱い。誰からも目を向けられる事無く忘れられていった、悲しい銃だったという……。