Hartsfield tanto

Hartsfield tanto
ハーツフィールド短刀
全長:305mm

 「歴史上で最もよく切れる刃物」を作る事は、現代の技術からすればそう難しい事ではないと言う。刀身に適した材質の選定も、適切な熱処理も、姿形さえも、全て単純な計算によって割り出せるというのだ。
 しかし世界の刀匠達は口を揃えて「計算で作られた刃物は刃物にあらず」と言う。どんなに無骨で切れ味が悪くても、心が込められていない刃は、ただの「道具」であり「剣」ではないと言うのだ。
 そんな現代の刀匠達の中に「刃物を極めた男」が一人居る。「ブレイドマスター」の名を持つ「Phill Hartsfield フィル=ハーツフィールド」その人だ。

 ハーツフィールドは1977年にカスタムナイフメイカーとして業界に参入した。しかし経験不足の彼ではアメリカ市場で通用するナイフを作れず、実際、初期の作品はほとんど売れなかった。
 低迷の折、彼が注目したのが日本刀だった。1980年代の居合道ブームで日本刀の存在を知った彼は、その性能の素晴らしさに感動したという。そこで彼は日本刀に用いられている技術をナイフにも持ち込めないものかと思案し、幾つかの試作品を作り出した。
 試みは大成功した。日本刀の刀身とデザインを持つ新鋭的なナイフとして注目を集めた上、ナイフとは思えない凄まじい切れ味が注目を浴びたのだ。「美しく鋭く、堅くて力強いナイフ」という究極的な刃物を作り出したハーツフィールドは、成功への第一歩を歩み始めたのだった。
 彼は徹底的に日本刀にこだわった。なぜ日本刀はよく切れるのかを研究し、材質から製造方法に至るまで、ありとあらゆる事を調べ上げた。
 そうして得た知識を自身の作品に反映させた彼は「Kozuka」「Kwaiken」「Long Aikuchi」「Yoroi toosi」などの「現代的日本刀ナイフ」とも言うべき斬新なナイフを作り出したのである。
 コンセプト、デザイン、切れ味、その全てがアメリカ市場のみならず世界的に注目されたが、彼を知る者達からすれば当然の評価であった。ハーツフィールドの作品は余りにも新鋭的で斬新的なのだ。……それまでのナイフ市場をひっくり返すほどに!
 そして、評価を不動のものにしたのがハーツフィールド自身の刃物に対する意気込みだった。常に努力を惜しまず、自分が作り出したものには永久的に責任を持つという彼のスタイルは多くのファンを生み出した。
 そして今。20年の経験を持つハーツフィールドは「ブレイドマスター」として刀匠達の頂点に立つに至っている。

 左図のナイフは「Tanto:短刀」モデルと呼ばれるもの。一見して日本刀にしか見えないが、全長30cmのナイフなのである。
 他にも革製のケースに入れて首から吊り下げる「Kwaiken:懐刀」モデルや、プロが試斬で使う「Katana:刀」モデルなど、彼の作品は終始一貫して日本刀スタイルを貫いている。
 個人で日本に輸入するのは難しいが、興味のある方は氏のホームページでオーダーしてみるといいだろう。


ハーツフィールド氏のホームページ
http://www.phillhartsfield.com/index.html

画像及び文章参考「No101.ナイフマガジン」