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---実施例--- ヒートポンプとその応用

アクアメイト沼南 全電化システムの採用


■キーワード/福祉施設/歩行プール/熱回収給湯機/夜間電力利用/ヒートポンプ

1、 はじめに

アクアメイト沼南
写真-1 建物外観
アクアメイト沼南は、温水プールによるリハビリを積極的に取り入れ、効果的な機能回復訓練を行うことができる施設として、福山市水呑町に建設された。
ディサービスセンター(定員50人)に歩行プールが併設されており、通所メンバーや隣接する老人保健施設グループホームの入居者も本施設を利用できる。
一般的に、同じ酸素消費量の運動でも、水中歩行は陸上歩行に比べて、
1)腹式呼吸になる
2)心拍数の増加が少ない
3)血圧の上昇が少ない     
など、心肺に問題のある人でも運動がしやすいという利点がある。
さらに水中運動は、
1)浮力があり、関節にやさしい
2)水温が脂肪の燃焼を容易にする
3)水の抵抗が筋力をアップさせる  
などのメリットがあり、高齢者のリハビリには最適である。
設備面では、保守・点検ならびにランニングコストの面から「全電力システム」(熱源・電化厨房)を提案し、氷蓄熱システム・給湯熱回収・深夜電力、加温プールシステムを採用している。

2、 建物概要

名  称 アクアメイト沼南
所 在 地 福山市水呑町字大谷3311−1
敷地面積 1、849.91m2
建築面積 1、084.33m2
延床面積 1、616.88m2
構  造 鉄骨造
階  数 地上2階
工  期 平成14年9月〜平成15年4月

3、 設備概要

空気熱源ヒートポンプPAC(氷ビルマル) 45kwx1基
                 56kwx1基
氷蓄熱   蓄熱容量 851MJ (67.2 USRT)x1基
972MJ (76.8 USRT)x1基
空気熱源ヒートポンプ給湯チラーユニット 60kw x1基
貯湯槽            10m3  x1基

4、 深夜電力、プール加温システム

 プール本体は歩行性・施工性などからFRP製としている。断熱性能が良いというFRPの特徴を生かし、深夜電力による加温システムを採用した。
年間を通じて使用される「温水プール」は、水槽の加温とプール室暖房の必要な時期が一年の3/4以上を占める。
あるプール施設を例にとると、冬期にはプール加温に全エネルギーの1/3、プール室暖房1/3、と施設全エネルギー使用量の大半がプール室の維持費用いられている。
温水プール施設は加熱エネルギーの維持費用が大きいことから、エネルギー源によるコスト比較を行った。
1)空調と合わせた年間ランニングコストの試算では、ガス熱源・灯油熱源に比べて電気熱源システムが優位である。
2)電気熱源システムは、維持管理・保守体制・日常操作などの人的要素において格段に有利である。
3)電気熱源システムは、エネルギー源が安定して供給され、地球環境にも優しい。    
などから、深夜電力を利用した、プール加温システムとした。
本施設のランニングコスト(試算)・プール/風呂の負荷内訳(試算)を図-1に示す。 
プール水温は一般競技用では25℃前後であるが、リハビリ用では28℃から30℃前後である。
室内暖房は夏季を除いて水温+2℃程度に保ち、盛夏は自然換気による冷却で外気温+5℃以内と計画している。
夜間のナイトカバー使用とFRP断熱の効果によって
プールの放熱は軽減され、効率的な蓄熱が可能である。
プールの放熱は構造体からによるもの、水面からの蒸発によるもの、使用者によるものなどに大別されるが、その大半は使用中の水分蒸発のための潜熱によるものである。よって室温の適正な設定がプール水温維持のためにも重要である。
図-1 プール・風呂の負荷内訳
写真-2 温水プール全景
図-1 プール・風呂の負荷内訳
写真-2 温水プール全景

5、 プール浄化システム

 近年、各地の施設でレジオネラ症感染の事故が伝えられ、あらためて浴場施設等における衛生管理の大切さが見直されている。レジオネラ症は、レジオネラ属菌を含むエアロゾルを吸い込むことによって発症する。レジオネラ症の発症予防には、給水では水温を20℃以下に保ち、給湯では水栓から常に50℃以上の湯が得られるように維持管理することが必要であるとされる。*1
本施設では、給湯チラーは65℃の加熱が出来、貯湯槽を60℃以上に保つことが出来るように、専用の追い炊きヒートポンプチラーを設置している。
浴槽等の維持管理は、厚生労働省の指導にも有るように「残留塩素濃度の維持」「ろ過機等の定期的な殺菌」「定期的な完全換水」が基本である。
残留塩素濃度を維持し、「安全」かつ「塩素薬剤による刺激臭」の無い快適なプール・浴室を提供するために、プール・浴槽循環ろ過系に「電気分解による電解次亜塩素酸処理システム」を導入した。(図-2)
電解次亜塩素酸を含む電解水とは、0.1〜1%程度の希薄食塩水を電気分解して得られる水溶液の総称であり,効用として食中毒菌・カンジダ菌などまでの幅広い抗菌スペクトルを有し,多種類の微生物に対して強い殺菌力を持っていること。
この殺菌力の主体は、塩素やヒドロキシラジカルであるとされるが、これらは電気分解によって生成される、超活性状態の次亜塩素酸から派生したものである。
したがって殺菌の主体は“次亜塩素酸”となるが、これは従来から利用されている“次亜塩素酸ソーダ“に比べ、1/10以下の有効塩素濃度で幅広い殺菌力を示し、しかも有害物であるトリハロメタンの生成がはるかに少ないという特長がある。
又、殺菌剤として塩素系薬剤を使う場合、その臭いが1つの課題となる。塩素臭は通常、有機物(アンモニア等)と結合して生成される結合塩素(クロラミン)が主要因といわれているが、電解次亜塩素酸はこの結合塩素を分解する作用も有し,その結果として塩素臭が少なくなるという利点がある。
図-2 プール浄化システムフロー
図-2 プール浄化システムフロー
写真-3 可動床プール
写真-4 熱源機器
写真-5 電化厨房
写真-3 可動床プール
写真-4 熱源機器
写真-5 電化厨房

6、電化厨房

 デイサービスの利用者(約80名を想定)を対象と想定して、厨房は安全で作業環境が良好な「全電化厨房」とした。(写真-5)
加熱調理室・盛り付け室は完全ドライシステムとし、シンク・作業台などはドライ方式の構造板金で仕上げている。
10段のスチームコンベクションを始めとして、大型万能回転釜/1・2連電磁調理器/フライヤー/3段炊飯器などを装備している。特に炊飯器はお粥が炊けることも選定の大きな理由である。
食器消毒保管庫はパススルー型とするなど、「作業区域」相互の干渉が無い、HACCP思想に準拠した厨房器具の配置とした。

7、おわりに
 6ヶ月の短い工期でしたが、無事平成15年4月に竣工を迎えました。関係各位のひとかたならぬご協力の賜物と感謝しております。
最後に、多大なご協力を賜りました施主・工事関係者のみなさまに、心より御礼申し上げます。

*1:(財)建築技術普及センター発行、平成14年度建築設備士更新講習テキスト、P92

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