桜の季節。周囲がお花見、宴会と騒ぎ立てている中。
全ての始まりはいつもの追いかけっこ。
迷い込んだのは人気もない桜並木道
運命の歯車
「いたぞ!こっちだ!!」
バタバタバタ―――――…
聞こえてくる多数の足跡。何とか人ごみに出ようと試みたが幾分人数が多くてそれもでき
そうにない。残った道は――
「――っ!久保ちゃん!!」
「そだね。ヤるしかないねぇ」
取り囲まれた状態にありながらもお互い目で合図をしながらもお互いに背を向け臨戦態勢に入る。
桜並木道には似ても似つかわしくない銃声が響き渡る。
「久保ちゃん!危ねぇ!!」
――――ガウンッ !―――
「時任!!」
ふと油断した時、久保田の背後から熱いものが押し付けられた。今はそれを気にしている所ではない。
「ちっ!一旦引くぞ!!」
「……久保ちゃん、平気か…?」
「なんとか」
そう答えたが、地面に赤いものが混ざり合い滴り落ちていく。
「しつこかったなー。今日の奴ら」
「そだね」
ちょっと休まね?
桜の木の下に寝転がる。どうやらもう持ちそうにないことが、人間の勘なのか。何となくだけど判る。
「夜桜だねぇ」
「そういえば、夜桜見物って始めてだったな」
「うん。ね、時任…」
「何?………っ」
呼ばれついでに顔だけ振り向けば。久保田の唇に自分のを塞がれる。
「んぅ…っ」
苦しくなってシャツを掴むと、久保田が笑った気がした。
「ねぇ。シていい?」
「え!?」
こんな状況でか!?と聞こうとしたが再び口を塞がれてしまったせいで言う事ができなかったが、最後だと思うと「まぁいいか」と考えなおし、素直に応じる事にする。その最中でも舞い落ちる桜が綺麗だなとおぼろげに思う
さくら さくら 今咲き誇る 刹那に散り行く 運命と知って
さらば 友よ 旅立ちの刻 変わらない思いを 今
情事の後、お互い抱き合いながら仰向けに寝転がる
「久保ちゃん…なンか寒くね?」
「そだね。桜綺麗だねぇ」
「そだな。俺らも桜と同じく潔く逝きますかぁ……でも。もしまた会えたら次はもっとのんびりしてぇな」
「うん」
「なぁ」
「ん?」
「眠くなってきた…寝ていい?」
「いいよ」
俺も…と再びだるい体を動かしてきつく抱き合う
「お休み…久保ちゃん」
「お休み…時任」
段々聞こえなくなっていく呼吸。
さくら さくら ただ舞い落ちる いつか生まれ変わる 瞬間を信じ
泣くな 友よ 今惜別の時 飾らない あの笑顔で さあ
そして静けさが訪れる。それを見計らったように風が強く吹き荒れ、桜吹雪が舞い上がった
ねぇ。時任?俺達が逝くのは運命なのかな?
でも。生まれ変わったらまた会いたいね。そしたら、また「愛してる」と何度でも…
死が2人を別つまで…とは言ってたけど。死しても絶対別れてやらない。
だからまた近いうちにね?絶対また出会えるから。
さくら さくら いざ舞い上がれ 永遠にさんざめく 光を浴びて
さらば 友よ また この場所で会おう
さくら舞い散る道の
さくら舞い散る道の上で
――――あれから数年の月日が流れた―――――
「皆様、ご入学おめでとうございます。只今から、荒磯高等学校の入学式を開催いたします」
体育館にアナウンスが流れる。
時任は暇になって桜の木に寄りかかっていた。
「あら。お宅もサボり?」
目の前に現れたのほほんとした男に声をかけられ顔を上げる
「まぁな。退屈なンだもんよ」
「右に同じ」
「ってかさ。俺らどっかで会わなかったか?」
「うん?会ったっけ?」
「何か初対面って感じがじねぇ」
「あら。俺も。所で名前なんてーの?」
「あ?時任!時任稔!宜しくな!」
「宜しく。時任か。俺は久保田っての。久保田誠」
「んじゃ久保ちゃんか」
「桜…綺麗だねぇ」
「そだな」
そう言うと2人して寝っ転がる。そのまま視線を上に向けると桜が舞い落ちてくる
「なぁ。前にもこんな事なかったか?」
「んー。俺もそんな気がする」
「初対面なのになんでだろーな」
「もしかして、デ・ジャヴュ?」
「そうかもな」
―――そうして学校生活が始まった
「執行部!こっちだ!!」
「はいはい」
「どーも。毎度お馴染」
「「生徒会執行部でーっす」」
彼らの運命の歯車は再び回りだした。桜と共に…
END
遺 書
いつかは書きたいと思っていた死にネタ。こんなのでいいのだろうか…。