2004/07/13(火) ローラースケート

今日仕事中にキックボードって言うんですか。アレに乗っているヤツを久しぶりに見たんですよ。パッと見30才くらいのアンちゃんなんですけど、カッターシャツにネクタイという服装で、車道を猛スピードで走り抜けて行きました。多分30kmくらい出てたんじゃないかな。蹴り足なんて、ザ・グレート・カブキのトラースキックばりに高く上がっていましたからね。きっと彼はブームが過ぎ去った今でも、キックボードを愛しているのでしょう。

この手の玩具のブームって、過ぎ去るのが非常に早いですよね。キックボードがエラく流行っていた3年ほど前は、我が職場の営業の若いヤツで駅から会社までキックボードで来ているヤツもいましたからね。バカじゃねーのか、本当に。ちなみに僕はこの頃、歩く事さえ困難なほどの肥満だったので、キックボードなんてビタイチ乗った事がありませんでした。

僕が子供の頃に同じ様な物で一世を風靡した玩具があります。それは「ローラースケート」。のちにローラーブレードとかいうまがい物が出回りましたが、そんな物はローラースケートのパクリでしかなく、地上を軽やかに滑れる本家本元といえばやはりローラースケートなのです。こいつのブームは僕が小学校4年位の頃に到来しました。

貧乏な家でしたので、僕がこのローラースケートを手にしたのはクラスの中でも最後の方でした。今でも鮮明に覚えています。当時僕が好きな色だった黄色を全体にあしらった配色で、靴でいう中敷に当たる部分がアジャスターになっていて前後に可変出来るヤツです。足が大きくなってもアジャスター部分を広げれば30cmくらいまで伸びるので、大人になっても使い続けられるという代物でした。そんな年齢になってまでローラースケートなんか乗るかって話ですけどね。

それでもやっと親父に買って貰った僕のローラースケート。クラスのみんなからは大分乗り遅れたけど、やっとこ手にする事が出来たマイローラースケート。今思えば何が楽しいんだか理解に苦しみますが、毎日毎日家の周りをグルグルグルグル回って遊んでいましたよ。もうバターになるんじゃねーの?って勢いで。遊び終わったら親父が指定したげた箱の下の瓶ビール入れを改造した箱に、兄貴のローラースケート「ラピュタ号」と仲良く並べてしまっていました。

そんなある日クラスの女の子から「今日学校が終わったあと皆で私の家の近くでローラースケートで遊ぼう」というお誘いを受けました。この女の子の名前は由香ちゃんと言い、半年ほど前に転校して来た子でした。家がとんでもなく金持ちらしいという噂の女の子で、ちょっと可愛い見た目から転校生にも関わらず、半年間でクラスの好きな子ランキングの上位に入賞した、そんな子だったのです。

ちょっと前の日記に出てきた、キモ系の僕と幼馴染の分際で超モテ系の三上君と一緒に由香ちゃんの家に行く事にしました。僕の家から由香ちゃんの家までは、自転車で20分ほどの場所にありました。そこで僕は何を思ったか、自宅からローラースケートに乗って行く事にしたのです。自転車ですら20分もかかるのに、競歩くらいしかスピードの出ないローラースケートで。

家から1分の位置にある三上君の家までローラースケートで行くと、三上君に「そんなもんで行ったら何時間かかるか分からないじゃん。俺の自転車で二人乗りして行こうぜ」とバカ丸出しでローラースケートで家までやって来た僕を諭す様に言い放ち、僕はシブシブ三上君の自転車のケツに乗り、二人乗りで由香ちゃんの家を目指すのでした。

由香ちゃんの家に着いてみるとそこは噂通りの金持ち豪邸。今から20年近く前の話なのに玄関はオートロックの暗証番号方式だし、何故か3階建てだしと貧乏人の息子の僕とはエライ違いに驚愕しました。「とりあえず上がって」と由香ちゃんが言うので僕たちはこの豪邸にお邪魔する事にしました。

しばらく由香ちゃんの家で3人で談笑していたんですが、僕は途中でおかしな事に気がつきました。皆でローラースケートをやって遊ぼう、と言われてやってきたのに他に誰も来ないのです。まぁ特に気にする必要もないかーと思って談笑を続けていたんですけど、不意にトイレに行きたくなったのでトイレを借りる事にしました。各階にトイレがあるにも関わらず「1階のトイレを使って」と言われたので、なんか大人の事情でもあるんだろ、と思ってテクテク1階のトイレまで行って用を済ませて由香ちゃんの部屋に戻りました。

すると丁度三上君が部屋から出てくるところでした。「ん、三上も便所か」と思ってすれ違おうとすると、彼の口からボソっと「俺先に帰るわ」という発言。え?なんで?と聞く間もなく彼はダーっと階段を降りて行ってしまいました。何だ何だ?と思って由香ちゃんの部屋を見ると




泣いてます

泣いてんだよ、マジで。状況が全然分かりません。僕がのんきに小便している3分ほどの間に何があったんでしょうか。と、ととととととにかく何で泣いているのか聞いてみよう。そう思った僕は由香ちゃんに声をかけます。

僕:ど、どうしたの?

由香ちゃん:帰って

僕:え?どうしたの?何があったの?

由香ちゃん:いいから帰ってよ!


訳がわかりません。何がなんやら分からないウチに僕は由香ちゃんの家を追い出されてしまいました。ローラースケート一丁で。

これは翌日判明したんですけど、由香ちゃんは三上君の事が好きだったそうです。僕を誘えば必ず彼と一緒に遊びに来る、そう考えた由香ちゃんのダシに僕は使われただけだったのです。僕を1階のトイレに追いやったその隙に、三上君に告白して振られてしまい、バツの悪くなった三上君は逃げるように帰ってしまった、とこういうわけでした。

何を思ったか三上の野郎は本当に先に帰ってしまい、僕は釈然としないまま10km近い道のりを、ローラースケートをガーガー言わせながら帰って行くのでした。家に帰るまで2時間近くかかったよ。死ぬかと思った。


体重:64.4kg  アブラースケート:16%

この事件からローラースケート熱がすっかり冷めた記憶があります。女の子に遊びに誘われて喜んでいたらただのマリオネットで、挙句の果てには1人で10km近い道のりをローラースケートで帰るハメになった、そんなイヤな思い出話でした。まぁ最初にローラースケートで行こうなんてバカな考えをしたのは自分なんだけどね。

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