小さなリスを飼うとき |
春はペットショップで小さくて愛くるしい子リスたちが売られる時期です。それは同時に、小さなリスたちが死んでいく時期であると言ってしまってもいいかもしれません。悲しいことですが。
ショップにいる、体長が10センチくらい、シッポもまだ7,8センチくらいしかない、頭でっかちな子リスたちは、本来ならまだ離乳していない子どもたちです。シマリスは生後30日くらいで目がやっと開き、離乳を開始し、巣穴から姿を見せるようになるのは生後60日くらいになってからです。
しかし、ショップにいるちっちゃな子リスたちは、おそらく生後40〜50日程度しか経っていないでしょう。本来なら、地下の巣穴の中、母リスの庇護のもと、同腹の子どもたちと温かくくっつきあって、オッパイを飲んだり、少しづつ固形物を食べたりし始めているはずの時期です。
それどころか、まだ目が開いていないようなのすら売られるようになっています(2002年春の感想)
そうした子リスたちを連れて帰って飼うのは、本当に大変です。かわいいからってうっかり飼っても、そりゃいいんですけど(というか他人がとやかく言うことではないからねえ)、それならそれで、その命を守りきってあげてほしい。いや、努力してもダメな可能性は高いかもしれないんだけど、ともかく努力してほしい。それができないなら、飼わないであげて。そのままショップにいたほうが、環境の変化が避けられるという意味では、元気に大きくなれる可能性は高いだろうから。
本当は、あんな小さなリス売っちゃいけないです。でも「小さいほうがかわいい」「小さいほうが馴れる」なんて言う理由なんでしょう。需要があるから、中国のどこかから、お母さんリスのもとから、むんずと取り上げられてきてしまう。それでも、ペットショップの店頭に並んだ子は元気なんだから(それまでに死んでる子がどのくらいいるか…)、まだ生命力が強いってことなんだろうな。
まあ、でもぐちっていてもしかたないので、もし参考になればということで、子リスの飼い方についてわかる範囲で書いてみます。一例ですし、これを参考にするかどうかはほかの書籍などと照らし合わせたうえで、読んでおられるあなたの責任においてお願いします。
なおこれはチビチビな子リスが対象ですので、それなりの大きさになってる子リスの場合には、保温にはチビリスほど神経質にならなくてもいいかも、とか、エサはもう普通のエサで大丈夫、とか扱いが違ってきますのでよろしく。
ついでにいえば、子どもが「子リスほしい〜」って言っても「ほいほい」って買わないでね、おとうさんおかあさん。「とーってもたいへんなのだよ」ということをよく言ってあげてほしいし、子どもに世話をさせるにせよ、いつでもおとうさんおかあさんが、観察しててね。リスが病気になったからって、ちゃんと診てくれる動物病院は、かなり少ないです。だから、病気になったら病院いけばいい、ではなくって、「病気にしない」ように飼う覚悟が必要ですよ。あ、あと、けっこうワイルドで子どもの手におえなくなることがあるとゆーことも忘れずに(^^;)
この時期さえ乗り越え、元気に大人リスになり、あとはまともな環境でまともなエサをあげてれば、シマリスってば意外とじょーぶな動物なんじゃないかと思います。うちには数種の動物がいますが、一番丈夫なのはリスです(病気がちなのは、離乳が早すぎ、とかあると思うっす)。あなたが子リスのおかあさんです。がんばってください。
覚悟を決めよう。チビチビ子リスがやってくる
チビっこい子がやってくることになったときには、あるいみ「病気のリスがやってくる」くらいの覚悟をしていたほうがいいかもしれない。ショップでの環境がどんなに劣悪でも(すごくよくても)、家に連れて来るということは環境が変わることにほかならないの。やってきてしばらくの間は、さんざん気を使いましょう。
やってきたとたんに本当の病気になる子も多いんだ。たぶん、コクシジウムあたりと、肺炎とかの呼吸器系疾患が多いような。症状としては前者は下痢、後者はクシャミハナミズという感じではないかと。可能なら(近所にリスをちゃんと診ていただける動物病院があるのなら)、すぐに先生と相談をして、ウンチの検査なんかもしてもらっておくといいんじゃないかしら、と思います。
保温
さきに書いたように、ともかくほんとなら温かいところでぬくぬくしているハズで、ショップでも他の子たちとくっついているのですが、おうちに連れてかえったとたんに寒くては、とてもまずいのです。
小さな子のうちは(基準が難しいんだけど…)プラスチック水槽で飼ったほうがいいですね。ある程度大きくなったらケージがいいんですが、10センチちょっと越えるくらいの体長(シッポ除く)なら、まだプラケかな。プラケのフタに付いている小さいフタは、スライド開閉式のほうが、たぶん便利。そこに、新聞紙でも敷いてください。オシッコなどで濡れたらすぐ交換しないと、体を冷やしてしまいます。その点を考えると、新聞紙のほうが便利かな。牧草などでもいいんでしょうが、針葉樹のチップはやめてね、アレルギーを起こすことがあるようです。巣箱も入れるといいですね。木製やつぼ巣などのほうが「ひんやり」感がなくていいかな。この時期はまだ小さいもので十分でしょうし。
で、保温ですが、シマリスの体温が38度("MANUAL OF EXOTIC PETS"より)ということからすれば、やっぱ高めがいいんでしょうねえ。といっても暑いのはダメ。(だから子リスって難しいんだよお)。25度くらいかなあ? 激チビだったら30度くらいあってもいいかも。温度計は絶対に水槽のそばに置いておきましょうね。水槽の中の温度ももちろん計ってみましょう。ただし入れっぱなしにしておくとかじったり、シッコかけたりして困るので、見てるときにね。水槽自体を置く場所も、あまり温度変化がないところがいいね。もちろんうるさくないところ。
湿度もむろん必要なわけですが、子リスの体を濡らさないようには気を付けてください。
急に寒い日とか、朝晩は寒かったりする時期なのですが、そういった時に体調崩しちゃったりするようです。部屋自体を暖かくできるならいいけど(人がいない時にもだよ。人がいなくてもリスがいるんだからね)、それが無理ならペットヒーターを使うといいかも。ただしこれも両刃の剣で、オーバーヒートも怖いんです。犬用かなんかのでかいペットヒーターの上にプラケごと乗せる、なあんてことしちゃダメです。逃げ場がありません。プラケの中の一ヶ所が暖かくなるように(暑かったらそこを避けられるように)なってるといいですね。ヒーターは使う前に、試し運転してみてね。表面が死ぬほど熱いのもありますぜ。
飲み水
とーぜん、水分は必要。でも、お皿かなんかに水を入れたのを水槽の中に入れてしまうと…べちゃべちゃにして、体濡らしてしまうことが考えられるよねえ。給水ボトルがうまく使えれば(水槽にうまく付けられれば)いいでしょうし、あと小鳥用の水飲み容器(かまくら、っていうの?)も、いいかなあ。まあ、エサの水分で足りていればそんなに飲まないかも。エサによるけど。
エサ
ちびっこいリスの主食はおかあさんのおっぱいなの。代用としてはペットミルクということになります。(人間用の牛乳はあげないでね。お腹こわす危険が。)ペットミルクを正しい量で溶いたものとか、もうそれ以外のものも食べるようになってはいるので、パンをペットミルクにひたしたものもいいんじゃないでしょうか。ブドウ糖の添加、ポポンSの添加もしておくといいかもしれません。ただ添加しすぎはよくないと思うので、適用量、もしくはちびっとね。
ちなみにペットショップで売ってる、小動物用のビタミン剤とやらは、あげても意味があるのかどうかわかりませんので、私はおすすめしません。てゆーか、やめたほうが。嗜好性がいいように甘すぎたりするのもあるんじゃないかな。話ずれますが、ペットショップに売ってるものが動物たちにすべて適しているわけではないという悲しい(なさけない)事実も知っておこう。
カステラor粟玉+ペットミルク+乳児用ポポンS、は子リスを飼い始めたときにやりました(それほどチビリスではなかったけど。なおこれは過去のわが家の例。ふつうはペットミルクにパンでいってください)。こうしたものは人肌くらいの暖かさのをあげるといいね。それ以外に、適当に砕いた(粉にするんじゃないわよ)ペレットとか、野菜や果物を小さく切ったものとかをいつも食べられるように用意しておいたらどうでしょう。チビのうちから、大人のちゃんとしたエサにも馴れさせておいたほうがいい。偏食に育てるとあとが大変よ。
栄養補助剤として「スタミノン」(犬猫用です)というものも、これは本当に補助的に、たまーにほんのちょびっとあげとくといいかも。多くのリスたちには好物なので、味を覚えさせておけば脱走時の「釣り餌」(^^;)として使えるか?
かまいすぎ禁止
チビリスってばむちゃくちゃかわいいです。無邪気な様子、たまんないっす。でも、「かわいいよー」ってあんまし触りまくらないでくださいね。せめて、おうちにきてしばらくして、元気に育ちそうだな、という感じがするまでは、かまいすぎ禁止。それくらいのことでもチビっ子にはストレスです。
脱走注意
エサをあげてるときとか、掃除してるときとか、ムシのようにピョンピョンしている子リスを逃がさないようにしましょうね。ちょっとした隙間でももぐり込んで逃げまっせえ。しかし逃げたとしても、焦って追いかけて踏んづけるとか、シッポつかんで切ったとか、にならないように。子リスが外なんかに逃げたら、10中9.99くらいはもうダメでしょうから、絶対に逃がさないように。
水槽からケージへ
水槽じゃあもう狭くて、エサをあげる時とかに出ようとしちゃってどうしようもない頃になったら、そろそろケージに移動でしょうね。むろん、ケージにしてからも、保温には十分気を付けてあげましょう。ここからあとの注意事項は、『リスクラブ』(誠文堂新光社)や「アニファ」、アニファの別冊「リス」などを見てね。
2006.3.25補足:参考書籍として『ザ・リス』(誠文堂新光社)を追加します。
ええとあとそれから、不幸にも子リスを飼ったけど亡くしてしまった、というとき、どういう店で(環境)、どのくらいの大きさの子を飼って、どうやって飼ってて、どのくらいの期間たって、どういう理由で亡くなったのか(ホントは原因を追究してほしーんだけど、まあそれはアレなんで)、そうしたことを教えてもらえれば、って思っています。それらを検討することで、少しでも子リスたちの生存率を上げる手助けができたらとても嬉しいので。このページも、頂戴したメールを読ませていただきつつ、補足修正しております。もちろん私は獣医療にはシロートですから、先生がたにもいろいろ聞いて、よりよい子リス飼育を考えていければいいと、考えています。
1級愛玩動物飼養管理士 大野瑞絵
このページ参考文献は本文中記載以外は『リスクラブ』「アニファ」
background by Angelique