index     2007年12月8日 更新 

木下夕爾 きのしたゆうじ

詩人

広島県深安郡上岩成 生まれ (現 広島県福山市御幸町上岩成)

1914〜1965

本名 : 優二

■ 発行された書籍  

『田園の食卓』 詩集   詩文研究会  昭和14年

『生まれた家』 詩集   詩文研究会  昭和15年

『昔の歌』 詩集   ちまた書房  昭和?年

『晩夏』 詩集   浮城書房  昭和24年?

『児童詩集』 詩集   木靴発行所  昭和30年

『南風妙』 句集   昭和31年

『笛を吹くひと』 詩集   的場書房  昭和33年1月5日発行 定価250円

『遠雷』 詩集   昭和34年

『定本木下夕爾句集』   牧羊社  昭和41年

『定本木下夕爾詩集』   牧羊社  昭和41年

『定本木下夕爾全集』   牧羊社  昭和47年

『小倉朗/歌曲集 声楽ライブラリー』
   作詞者/木下夕爾  全音楽譜出版社  1973年4月25日

『菜の花いろの風景 木下夕爾の詩と俳句』
   朔多恭/著 牧羊社 1981年12月

『Treelike. The Poetry of Kinoshita Yuji 英訳&日本語』
   英訳/ロバート・エップ Robert Epp 序文/大岡信 Katydid Books  1982年

『your selection Kinoshita Yuji 』 Twayne's World Authors Series
   Twayne Publishers  1982年

『田舎の食卓 木下夕爾詩集』  葦陽文化研究会 1983年2月

『Treelike: The Poetry of Kinoshita Yuji Asian Poetry in Translation. Japan #4』
   Katydid Books  1990年2月 英訳ペーパーバッグ版

『木下夕爾の俳句』   朔多恭/著  牧羊社   1991年5月

『木下夕爾』   朔多恭/著  蝸牛社 蝸牛俳句文庫 1993年 

『Twisted Memories: Collected Poetry of Kinoshita Yuji 英訳版』
   英訳/ロバート・エップ Robert Epp 序文/大岡信 1993年11月

『菜の花集 木下夕爾句集』 成瀬桜桃子/著 ふらんす堂 ふらんす堂文庫 1994年

『木下夕爾』   花神社 花神コレクション  1995年10月 

『ひばりのす 木下夕爾児童詩集』   光書房  1998年6月

『木下夕爾ノ−ト 望都と優情』 市川速男/著 講談社出版サ−ビスセンタ− 1998年10月

『露けき夕顔の花詩と俳句 木下夕爾の生涯』 栗谷川虹/著 みさご発行所 2000年6月

『木下夕爾の俳句』 新版   朔多恭/著 北溟社   2001年

『新版 児童詩集』 福山文学館所蔵シリーズ 2002年発行

『詩集 青くさをしく』 福山文学館所蔵シリーズ 2007年発行

『木下夕爾詩集』  牧羊社  発行年不明


僕は樹木のように  木下夕爾


僕は樹木のように自然で安定した傾斜をもつ

僕は自分を踏みしめそして縛りつけるためのふかい根をもつ

僕は熱くも冷たくもならないためのかたい樹皮をもつ


僕は仲間と触れ合うための枝と

笑い揺らぐためのみどりの葉をもつ


僕は午後の恋人たちにやわらかな影のマットをつくり

夕方それをしまいこむための太い幹と

彼らが僕から遠のいていくのを見送るための不変の高さをもつ


朝方駆け込んでくる若い駿馬のような風を馴らすための

かぐわしい空気と草花と光る湖水とをもつ


僕は夢見るための青空と

考えるための夜の星と

内部だけで抱くための年輪をもつ


僕は何ものももたないためにすべてをもつ


僕は孤りであるために全体をもつ




内部    木下夕爾


その窓は閉ざされたままだった

中には誰もいなかった


机の上はきちんと片付いていた


読みさしの本が置いてあり

インクの壺はからからに乾いていた


これから何かがはじまるようにみえた

もう終わったあとかもしれなかった


とにかくひっそりかんとしていた


壁には古びた人物像の

眼だけが大きくかがやいていた


それに追い立てられるように

窓枠のすきまから覗いていたてんとう虫は

向きをかえ背中を二つに割って

燃える光の中へ飛び去った




帰来  木下夕爾


僕はいる さまざまの場所に

昔のままのやさしい手に

責められたり 抱かれたりしながら


僕はそこにもいる

酸っぱいスカンポの茎のなかに

それを折るときのうつろな音のなかに


僕はそこにもいる

柿若葉の下かげに

陽のあたる石の上に

トカゲみたいに臆病そうに


僕はそこにもいる

ながれのほとりの草の上に

とらえそこねた幸福のように

魚の光る水の中に


僕はそこにもいる  

土蔵のかげ 桑の葉かげに

アイヌ人みたいに

口のほとりに桑の実の汁の刺青をして


僕はそこにもいる

小鳥が巣を編む樹の梢に

屋根の上に

謀略の眼を光らせて


僕はそこにもいる

しその葉のいろのたそがれのなかに

遠くから草笛の聞こえる道ばたに

人なつかしくネルの着物きて


ああ僕はそこにもいる

井戸ばたのほのぐらいユスラウメの木の下に

人を憎んで

ナイフなんかを研ぎながら


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2000年8月20日ページ作成