明日はどうしよう




夜叉と刺し違えた朱央は水の底へと静かに沈んでいった…。 小凛は水底まで、見えなくなるまで見届けた。……

彼の姿が見えなくなった途端、大きな水飛沫が上がった。そこにはまごうことなき自分の母がいた。
「私は湖の精です。…麗しき悩める少年よ、 貴方が落としたのはタチ朱央とネコ朱央、どちらかしら?」
いきなり問い掛ける。
「はっ…母上?!何故ここに!?」
「お黙んなさい!今は湖の精なのよ」
「…はあ。」どうみてもいつもと変わらないが。

「さあ、どちらを選ぶのかしら?」
「私は、…た、たた…たち…いや!どちらも違います!」かぶりをふって否定する。
「朱央は生きてるのですか。ならば本物の朱央を返して下さい!」
「ふふふふ…正直な子ね…いいわ。どちらも差し上げる。」
「どうも有難うございます…って違うわッッ!!  どちらもいりませんよ!ってか、本物の朱央を返して下さい!!」
「ほほほほ…さらばじゃ!アディオス・ア・ミーゴ!」女は高笑いと供に消えた。
「ちょっと待て―――――――っ」
いつの間にやらネコ朱央が傍らにおり、袖を引いた。
「小凛、俺じゃ不満なのか?」
「い、いや、そういう訳では…(あ、可愛い…)」心ならずもときめく。
小凛は一人ではなかった。片側にもう一人いたのだ。タチ朱央がキリリとした涼やかな眼差しを向ける。
「小凛そろそろ行こう。その怪我では歩けぬだろう。俺が背負うから乗れ。」
(ああ…頼りがいのある朱央だな…なんとも頼もしい)
「蜜法師様の来る前に高飛びせねばな…」(タチ朱央)
「あぁ!! そしたら今度は3Pだな…」(ネコ朱央)
二人とも頷く。…
  ぷちッッ。
「おまえら私を何だと思っているのだ!!」
(タチ&ネコ)声を合わせて「大丈夫だ、たくさん可愛がってやるからな!!!」
「違あうっ!!」
「いいノリツッコミだぞ!だがもう少し手をこう、…」
「ああもう!うるさい!本物の朱央はどこにいるのだ!?」


三人が立ち去った後、湖では。
取り残された朱央(本物)が一人サメザメと泣いていましたとさ。
「…小凛に置いていかれた…」丁度その頃蜜法師が追いつきました。
「何じゃお主か。」
「!!!…ここであったが1000年目!成敗してくれる!!覚悟!!」
隙を突き、懐に入りこみ、蜜法師の鳩尾を着いた。すると体からひゅるりんこ、と悪霊が出てきた。
「兄ちゃん何すんネン!」
「おまえは蜜法師に生まれながらにとりついていた悪霊だな!! …おまえが取り付いていたから蜜法師は あんな変態だったのだな!!ほら、この飴玉をやるから大人しく出て行け!」
「甘いで、兄ちゃん!ワシはそんな安ぅないで。ハーゲンダッツ一箱ないとここを動きまへんで!」
「(安っ!!!ってゆーか悪霊がアイスって…)わかった。これだけあれば足りるだろう。」朱央は懐からお金を出した。
「もうちょい欲しいわ〜何とかならへん?これじゃフライドチキンの皮しか買えんわ〜」
「ううむ、ならこれくらいで…」
朱央、以外と交渉がうまい。とんとん話が進んでいく。
「兄ちゃんおおきに〜これでしばらく食費浮くわ〜!  ほな、サイナラ」
悪霊は去った。
気を失っていた蜜法師は目を覚ました。

「私はどうしていたのだ?なんだかずっと悪い夢をみていたようだ…」
「ああ!生まれながら取り付いていた悪霊が抜けて普通になったのですね!!ヒャッホーーイ!」
「………」あからさまに嫌な顔をするザ・凡人、蜜法師。
「…今まですまなかったな、朱央殿。小凛殿にも謝らねば。」
悪霊の抜けた蜜法師は小凛に勝るとも劣らない楚々とした美しさだった。

キュピイイイイイーーーーーン。あぁ綺麗だ…

ザバーーー またいきなり湖の精が現れた。
「ほほほほほ…朱央殿、浮気は許しませんよ?」
「あ、小凛の母君!浮気なんて滅相もありません!………ってゆーか、 あんたがあの時水から引上げてそのまま小凛にあわせてくれれば こんなことにはならなかったのに!!」
「ほほほほ…ほほほほ…うほほほほ。…げほっごほっごほっ!」むせたようだ。
「まあ奇跡的にたすかったのですからいいではありませんか。 朱央殿の気持ちもわかったことですし、そろそろ帰りましょうか」
朱央、蜜法師、小凛の母は都に帰った。

帰ってみたら案の定(?)、小凛は朱央二人にからかわれていましたとさ。
その後、蜜法師からも解放され、 本物の朱央と偽者の朱央、小凛の四人は中睦まじく末永く暮らしました。



めでたしめでたし。


朱央「めでたしじゃない!はやく俺のニセモノを消さないか!」
湖の精「ほほほほっほ。まだまだ青いのう…」










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