「―――私はあなたを支えに来たのよ。あなたのそばで、王としてあなたが立つのを支えるために。」 そう言い切った、真っ直ぐな瞳。 「余は・・・いや、私は ―― そう、藍・・・楸瑛という。」 貴妃であるなら、あの男、藍 楸瑛に会わないわけはないだろう。 それほどまでに頻繁に、彼は後宮に顔を出している。 おそらくすぐに察しただろう自分の正体を知ってさえ、彼女の態度は全くといっていいほど変わらなかった。 あの、邵可の娘―――。 いつだって、大切なものはこの手からすり抜けてきた。 ずっと、そういうものだと思っていた。 それでも失いたくなかったもの・・・・清苑兄上。 その為に賭けをした自分。 すなわち、ぎりぎりまで昏君でいることで、 誰かが、今もどこかで生きているはずの清苑兄上を担ぎ出すのを待つ・・・ということ。 自分には精一杯の抵抗だった。 そうやって待つことでかろうじて自分というものを支えられた。 いや、支えるべき自分自身すら、もう見失いかけていたのかもしれない。 ただ、目の前の現実から目をそらすことしかできなかった自分。 だけど、彼女はそんな自分を支えるといってくれた。 格好つける必要なんてないから、一緒に頑張ろうと。 ・・・・・・嬉しかった。 心の底から、本当に、嬉しかった。 王としての形ばかりの自分ではなく、本当の紫 劉輝としての自分を見てくれた。 本当の自分を見てくれる人はいつだってそばにはいなかったから。 ―――ただ、一人を除いては。 ”清苑兄上” 誰よりも、誰よりも逢いたい、人。 だけど、そこにもう一人、もしかしたら加わるかもしれない存在。 ―貴妃である彼女は、王でなくば手に入れることはできない。― 清苑兄上・・・私は長い時間を待ちました。 これからもきっとそれは変わらないでしょう。 でも、兄上。 私は兄上以外に初めて、共に在りたいと思える人を見つけたのです・・・・。 それは彼の一縷の望みであり、切なる願いであり。 |