■初めての想い


「―――私はあなたを支えに来たのよ。あなたのそばで、王としてあなたが立つのを支えるために。」

そう言い切った、真っ直ぐな瞳。

「余は・・・いや、私は ―― そう、藍・・・楸瑛という。」

貴妃であるなら、あの男、藍 楸瑛に会わないわけはないだろう。
それほどまでに頻繁に、彼は後宮に顔を出している。
おそらくすぐに察しただろう自分の正体を知ってさえ、彼女の態度は全くといっていいほど変わらなかった。
あの、邵可の娘―――。

いつだって、大切なものはこの手からすり抜けてきた。
ずっと、そういうものだと思っていた。

それでも失いたくなかったもの・・・・清苑兄上。
その為に賭けをした自分。
すなわち、ぎりぎりまで昏君でいることで、
誰かが、今もどこかで生きているはずの清苑兄上を担ぎ出すのを待つ・・・ということ。

自分には精一杯の抵抗だった。
そうやって待つことでかろうじて自分というものを支えられた。
いや、支えるべき自分自身すら、もう見失いかけていたのかもしれない。
ただ、目の前の現実から目をそらすことしかできなかった自分。

だけど、彼女はそんな自分を支えるといってくれた。
格好つける必要なんてないから、一緒に頑張ろうと。

・・・・・・嬉しかった。
心の底から、本当に、嬉しかった。

王としての形ばかりの自分ではなく、本当の紫 劉輝としての自分を見てくれた。
本当の自分を見てくれる人はいつだってそばにはいなかったから。
―――ただ、一人を除いては。

”清苑兄上”

誰よりも、誰よりも逢いたい、人。
だけど、そこにもう一人、もしかしたら加わるかもしれない存在。


―貴妃である彼女は、王でなくば手に入れることはできない。―


清苑兄上・・・私は長い時間を待ちました。
これからもきっとそれは変わらないでしょう。

でも、兄上。
私は兄上以外に初めて、共に在りたいと思える人を見つけたのです・・・・。















それは彼の一縷の望みであり、切なる願いであり。
きっと、王ではない一人の紫 劉輝という人間が受け入れた、初めての想いだったのかなと。

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