■浅い眠り




わずかな物音に、ハッとしてリズは目覚めて体を起こした。
心の中に広がっていく漠然とした不安。
しかし、それを拭い去るかのように静かにエスターは眠っていた。

「―― 良かった。・・・エスター」
長い安堵のため息と共に、ゆっくりとリズは微笑み、
かたわらに眠る愛する男性の寝顔を嬉しそうにしてじっと見つめた。

そして、その無事を確認するかのように目を閉じて、その胸元へと頬を寄せる。
エスターはいつから気がついていたのか、そんなリズの肩に手を回し自らのほうへと軽く引き寄せた。

「愛しているわ、エスター・・・」
心からの愛の言葉をつぶやいて、リズはそのまま眠りについた。



彼女の寝息が規則正しくなり、伝わる心臓の鼓動が解け合って一つになるころ
今度はエスターの方が軽く眼をあけて、リズの寝顔をそっと見つめた。

先ほどとは少し不安の薄れた表情。
彼女は何かの不安を拭い去れないのだ。しかしそれは一体何なのか・・・。
エスターは抱き寄せているリズの額に、静かにそっと自分の頬を寄せた。

眼を伏せ、その感触を確認し、そしてそっと唇を落とす。


「愛している・・・リズ」

エスターの言葉はリズの心に届いたのかどうなのか、
リズの口元は柔らかく微笑み、眠っているリズの眼からはひとしずくの涙がこぼれた。





高く昇った月が蒼く幻想的に輝いて ――― とても静かな夜だった。















おわり


今書いている「竜達からの贈り物」のプロローグにあたる感じです。
何を悩んでいるのか、どーにもリズが不安定ですね。
でもエスターはリズのそばで静かに、そしてしっかりと彼女を見守っているのでしょう。
これを乗り越えて、二人はまた強く結ばれるのですよね・・・(妄想)


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