■君と歩む道のり






・・・心に、穴があいてしまったようなんだ。
あの二人が旅立ってからは―――。




いつも胸に残る喪失感。



風が吹き抜けていくような感じなんだ。



・・・これをどうやって埋めればいい?



どうやったら、消えるんだろう




僕の問いを黙ってきいていたエドストレームが静かに答えた。



―――貴方も、得がたい人を得て、幸せをつかむのです。陛下。
・・・目を閉じて、今の心で。会いたい方を思い浮かべなさい。




”・・・・・・!”









まだ肌寒い風が木々を揺らし、駿馬の駆ける蹄(ひづめ)の音が静かな森の中に高く響いている。
森の景色が速度を上げて、僕の両脇をすり抜けていく。

早春のロリマーへの道のりは、大河沿いに続く道を下る割合に平坦な道だ。
急いで駆けるには都合がよく、またすぐに着くほど近いわけでもない。



誰もがあの戦いで、沢山のものを失った。
誰もが心の奥に深い傷を負い、それを抱えこみながら生きていく。

それらを共に分かち合い、乗り越え、そして同じ先を見つめることが出来たなら。



――確かめたい。彼女が僕にとってそうなのかを。







・・・何か、楽しそうね

手際よく乳鉢で薬草を合わせているローラントに、シェンドラが声をかけた。

そうだな。城で王様やっているより、いい感じかもしれない

久々に生きているという感じがする―――。
こんな感じは久しぶりだ。

心が水のように澄んで、自然に言葉を繰り出した。





僕ら、結婚しようか


「・・・・・!」


そう告げた時の君の瞳を忘れない。
自らの父や、母が、祖国が犯した罪の大きさを知っているが故に、
君自身、許すことの出来ない気持ちを覆い隠そうと一生懸命で。





言っていい冗談と、そうでないのがあるのよ!


――そう。冗談、なんかじゃない。



父や母や、周りのしがらみも関係なく・・・僕は君に目を向けずにはいられない。
その一途なくらいの真っ直ぐさと、聡明さ。そしてそれらを素直に出せない高い矜持と不器用さに。


元々、僕たちは父や母やローリィ、周囲に見守られて幸せになるはずだった。

陰謀や復讐に焦燥感。
それら全てが死の神と共に、僕たちが受け取るべき幸福をも絡め取っていったのだとしたら・・・。

僕はその歪められた人生に背を向けるためにも、
他ならぬ君のそばに居ることにもう少しこだわっていいのかもしれない。





君と歩む、この人生に。





む、無茶苦茶ね、アルトディアスの双子は・・・!


・・・そう、無茶苦茶だ。
 でも、退屈はしないよ―――きっと。





君と共に生きていく喜びや楽しみを見つけ、哀しみを分かち合い生きていくことが出来たなら。
・・・君となら、退屈なんかしない面白い人生が歩めそうだから。

いつも素直になれない君だけど、
一途で真っ直ぐで、時には激しい気持ちもあふれているのがわかる。

それを受け止めてみるのも面白いと思うんだ。




君と歩む人生は、きっと、とてもエキサイティングで楽しいものに違いない。





僕は君と一緒に、この国の、この世界の将来をながめていたい。
―――君と二人で同じ地平を見つめてみたい。

そして時折、あの二人の話をしよう。
彼らが二人・・・どこかで幸せに寄り添っていることを願いながら。


















おわり


ローラント独り語りとゆーか、ほぼ読んだ時点での私の妄想です。今回の話のアテレコ脳内補完。
 あと、ネタとして果ての塔の時の自分と重ねたりとか、なんか台詞に触発されてそうとか色々あったのですが
 あんまりいじるのもどうかと思ったので・・・。ここは違うだろとか、皆さんの感想があれば伺いたいです。


 
 

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