里見は荒々しくホテルのドアを開ける。
ユカリとはそれぞれに部屋を取っているが、当然のようにユカリは里見の部屋でくつろいでいた。
「あら・・・早かったのね・・・」
「・・・・ああ」
ネクタイを緩めながら、里見は返事をする。
スーツの上着を脱ぐと、ユカリがそれを受け取り、ハンガーへとかける。
「・・・・ご機嫌斜めのようね。うまくいかなかったのかしら?」
「・・・・なにがだ」
「あら・・・・あたしに隠すことなんかないのに・・・。女と会っていたんでしょ? 利用できる人間は味方につけないとねぇ」
「・・ふっ」
里見は自嘲気味に笑う。
「・・・お前は今日はどんな男と寝てきたんだ?」
「あら・・・・やぶへびだったかしら? 」
「お前の身体からは、いつも以上にフェロモンが溢れているからな。すぐにわかるさ」
「いやねぇ・・・」
そう言いながらユカリは里見が座っているソファの背後から里見の肩に抱きつく。
「今日はちょっとしたつまみ食い程度のおぼっちゃんよ。まだ19だって言ってたかしら。欲望と回数は多くともテクニックはまだまだよ」
「・・・ほう」
そう言いながら里見は首に回っているユカリの腕をはずし、ユカリを自分の前に誘導する。
自然とユカリは里見の膝の上に乗り、里見の胸にしなだれかかる。
「やっぱり男は・・・知性と経験と能力に溢れた大人の男じゃなくちゃだめだわ・・んふふ」
「・・・言ってはおくが、俺はそれほど経験豊富じゃないぞ」
「・・・・んふふ。本当にそうかしら?」
「・・・・ああ」
そのまま里見はユカリの赤い唇に唇を合わせる。
里見はゆっくりと舌をうねらせながらユカリの舌を追いかける。
二人の舌が絡み合いながら、ゆるやかにひるがえる。
そのまま里見の唇がユカリの首筋に移ったとき、ユカリが身体を離そうとした。
「あたし・・今夜はもう疲れちゃったのよ・・」
里見はその言葉に鼻で笑って言った。
「・・・・嘘だろう。お前の身体はまだ男が欲しそうな気配でいっぱいだ。それに、40前後の女の性欲と10代後半の男の性欲は同じくらいだと聞いたことがある。独りとしてきたくらいでは、お前も満足できないだろう?」
そのままユカリを抱え上げ、寝室まで運ぶ。
「あら・・・いやだわ。それにしても、いつから修二は私とのSEXが好きになったのかしらね?」
里見に抱きかかえられ、首にしがみつきながらユカリは笑う。
「・・・・・今夜はたまたまだ・・」
そう言いながら、少し乱暴にユカリをベッドへ落とす。
「あん・・・もう少し優しくしてちょーだい」
「・・・・そんなこと望んでいないくせにな・・」
里見はメガネをはずし、ワイシャツを脱ぎながら吐き捨てるように言った。
「お前は乱暴なほうが好きなんだろう?」
言いながらユカリのスーツを、下着を、剥ぎ取っていく。
ユカリも笑いながら、その作業の手助けをするように身体をくねる。
そして、ガーターベルトとハイヒールをつけたまま、まだ崩れていない美しい裸体を露わにした。
ほのかにユカリの身体からは、ソープの香りと余熱が漂ってくる。
ユカリの豊かな胸を揉みしだく。乳房は掌にずしりと重く、その掌でうねるようにして形を変えていく。
すでに固くなっている蕾を口に含み舌で転がすと、ユカリは声をあげ、うわずった。
そのまま片手をユカリの下半身へと伸ばすと、そこはすでにうるんで熱を帯びていた。
「・・・前戯もそれほどいらないようだな・・・」
「・・・・・はぁ。なんだか今日の修二は意地悪ね・・・」
「・・・・・・・」
里見は黙ってベルトを外しにかかる。
そこでユカリが起き上がると、黙って里見のズボンに手を伸ばした。
ジッパーを下ろし、ズボンと下着を押し下げ、脱がす。
ユカリはそのまま拝む形にして唇をかぶせてきた。すぐに舌がまとわりついてきた。
「・・・・つっ・・・」
里見から吐息が漏れる。
薄く目を閉じたユカリの表情も、唇も舌もこのうえなく妖艶に見える。
それでいて、その美しさからは毒々しい花のようなどす黒さも感じる。
里見は腰を引くとユカリの行為をやめさせた。
ユカリはそのまま里見の腰をまたぐ恰好で、腰を落とす。
里見のその部分が、垂直にユカリに侵入していく。
ユカリは上に乗るのが好きらしい。
最初は違う体位であっても、最後は必ず上に跨る。
男への征服欲・・・・そういった本性がこういった場合にも現れるらしい。
すぐにユカリは腰を動かしだした。
したままのパールのネックレスがカチャカチャと音をさせながら揺らいでいる。
里見もその動きに合わせて腰を突き上げる。
揺れる乳房を掴みながら、時々、強く突き上げるたびにユカリは白い喉元を里見に見せつけて、のけぞる。
すぐにじんわりと汗をおびてくる。
ユカリの内部は熱く、まるでイソギンチャクのように里見自身に吸い付いてくる。
里見の眉間に皺が寄る・・・。
ユカリはますます激しく腰を動かす。
無意識なのだろうか、荒々しく首を振り出す。
首を振り髪を乱すという行為は、ユカリの裸身に浮き出た汗を散乱させた。
そして、ユカリの抑揚した声が更に激しくなっていく。
「修二・・・・あたし・・・」
その声を合図にでもするように、里見の動きも激しくなる。
そして、まるで美しい花が咲き開く一瞬のように、身体をのけぞるとユカリは長い痙攣を起こした。
それに続くように、里見の動きも止まる・・・。
ユカリはそのままベッドにうつ伏せになり、余韻を楽しんでいる。
里見はタバコをくねらせる。
行為の最中だけ未来を忘れ、行為が終わると未来を思う・・・。
そんな自分に自嘲する里見であった。
ユカリをそのままにバスルームに里見は向かう。
熱い湯を顔面に受けながら、里見は毒にまみれた自分から、流れ出る赤い血潮を見た気がした。
蜃気楼へ続く
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