――ちょっと、キスぐらいさせてくれたっていいじゃないのよぉ。



 可愛いあの子にくちづけを



 ――酷いと思わない?
 ムード満点の部屋でさ、もう完全に甘えるか甘えられるかって言う雰囲気だったわけよ。しかも夜! もう当然のようにキスの体勢に入ろうとするのは当然でしょ?
 それなのにあいつはぁ……。
 よりにもよってあとちょっとってところでよ、後数センチってところで顔をそらしやがったのよ。……最初ショックで後からだんだん頭にきてさ。明日の朝ご飯なしだぞ、って言ったらちょっとだけ寄り添って来たから反省はしたのかしらね。

 え? 香水かなんかの匂いでだめだったんじゃって?

 そんなことないわよ。お風呂にはいったばっかりだったし、あいつが嫌いになりそうなのを私がつけるわけ無いじゃない。
 まぁ、あいつはいつも気まぐれなとこがあるから、仕方がなかったのかもしれないけどさー。

 結局あいてはだれか?

 あれ、言ってなかったっけ? ……あはは、ごめんごめん。
 あ、よかったらこの間ムービー撮らせてもらったから、みる?
 ちょっと待ってね……はい、再生するよー。



 にゃー、にゃぁぁーん。



「まったく、お前は本当に最近猫に夢中なんだな」
「わ、悪かったわねー。こっちだって貴方が出張でいないから寂しかったのよっ」
「……ふむ。じゃぁ今日は、甘えてきな」
「あ、ん……」

 そして彼は、部屋の電気を消した。

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