すべてがFになる―THE PERFECT INSIDER/森博嗣



 なんだこれっ!?
 始めはそんな印象でした。今まで読んできた活字とは全く違う文章。
 バイトの先輩からゲームにもなってると薦められたので、分厚い本だから一気に読もうと休日を使って読むと、異常なほどにのめりこんだ。

 いわゆるS&Mシリーズ第一弾。萌絵と犀川の会話、萌絵と四季との会話、犀川と四季との邂逅。どれをとっても異常だった。今まで考えたことも無い会話で、これが何年も前に書かれたものだと思うとゾッとするのは私だけだろうか。

 読み終わり、一番の感想としては「あぁ、面白かったぁ」である。
 二番目に考えたことが「考えさせられたなぁ」だった。
 はっきり言ってこの文章を受け入れられない人は多いだろう。難解な文章、一度読んだだけでは理解できないことも多い。一応ミステリー(森博嗣の言葉では『ミステリィ』)であるこの小説。当然トリックの解明などにも力を入れている。
 以下、完全にネタバレの為反転。
 すべてがFになるの最初の死人、真賀田四季――と誰もが思った。最後の最後までトリックが読めないでいた私は、四季じゃないはずだとずっと思い、それ以外考えられなかった。そして、あの死体は四季でなく、四季の娘であったことにどれだけ驚いたか。
 四季が少しでも凡人だったら、復讐なんだろうなと予想はしていた。恐らく人形は自分自身で、それを持っていたのはあの叔父だろうとは思っていた。
 だが、完全に四季が天才であったから、私の中でこの小説は異常になった。
 自分を殺せない、凡人の娘。その娘を殺すに至るまで。そして復讐ではない動機。
 ひどくゾッとした。感動した。面白かった。考えた。
 そして、犀川の多面性に驚く。萌絵の非凡でありながら普通な面。どちらも合わさってこの小説は完成したのではないかと思う。

 どう世間に評価されても(良い評価を得ていると思うが)私がオススメできる一冊である。

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