都議会財政委員会2008年10月30日議事録 都税事務所の偽装請負の抜本的な是正を求めて質問 公契約の改善をさらに追求すべきと訴え ○曽根委員 私は、三月十四日の予算特別委員会の古館議員の質問に続きまして、同じ日に行われました本委員会で、都税事務所が年度末に業務委託している国税事務所での確定申告書類から個人事業税対象分の文書を抜き取りコピー作業をする、この作業が実際上、偽装請負になっているという疑惑についてただしましたが、この間、国からの是正指導が出されたとお聞きしましたので、改めて質問いたします。 私たち日本共産党は、全国に蔓延している大企業を初めとする違法な派遣労働や偽装請負問題を、国会でも、都議会のような地方議会でも一貫してただしてまいりました。それは、この問題が、第一には日本社会に貧困や格差を広げる最大の要因の一つになっている。 特に二十年来の労働関係法の相次ぐ改悪、とりわけ派遣労働の原則自由化、この流れが、やはり貧困と格差社会を加速していること。もう一つは、企業でも官庁でも、本来直接雇用でやるべき仕事をどんどんアウトソーシングしていくという流れの中で、若者を中心に非正規不安定雇用と、ワーキングプアといわれる年収二百万円以下という所得階層を大きく広げる温床になってきたというふうに考えているからです。 特に今回の偽装請負というのが問題になるのは、企業でも官庁でも、ある業務を業務委託で外注する場合に、これは法律上でいえば請負契約に当たるわけですが、請け負った企業が必ずその業務で働く労働者について、賃金はもちろん出退勤の管理や業務上の指示など、法律上も実態の上でも、すべてに委託を受けた会社が責任を持たなければならないのに、実際は多くの場合、労働者が雇い主でない企業や官庁の現場で雇用関係のない人の指揮監督のもとに入り、時には労働条件まで変えられるということが起きている。 このことは労働者の無権利状態を広げてしまうということから、職業安定法第四十四条で、これは労働者供給として全面禁止をされているものです。だからこそ、法違反として私は重大だと思います。 この都税事務所のコピー業務というのは、作業自体は単純なコピー作業ですが、その中身は、納税者から国の税務署に提出された確定申告の生の書類から東京都の個人事業税に当たる人の書類だけを抜き出し、それをコピーして都税の申告書類のかわりに使うという、納税者の二度手間を省く便利な制度である反面、扱っているのは都税の課税の大もとになる文書であって、納税者のプライバシー保護の上で最も守秘義務が問われる文書である。 このことから、本来、都の直接雇用職員が担うべきだと考えますが、しかし、これが委託ということで民間企業に発注されているところに問題の根源があるというふうに考えております。 実際の作業も、今ちょっとお話がありましたが、都の職員が委託企業の労働者に直接指示を与えるものとなっています。 したがって、私は、公共サービスを通じて都民利益を守るべき東京都の仕事を安易に民間への外注に出して、個人情報など都民利益を大きく損なう危険を冒しているという点でも問題だし、また一方で、そこで働く労働者の無権利状態を拡大しているという点でも、私は東京都の職場からこういう問題を一掃していくべきだという立場で質問をしたいと思います。 また、これは主税局だけの問題ではなくて、都庁全体にあり得る問題だ、起きている問題だというふうに考えておりますので、私ども、午前中に主税局長にも申し入れを行いましたが、総務局長あてにも全庁的な点検と見直しを求める申し入れをしてまいりました。 以下、質問したいんですが、この問題で先ほども話のありました東京労働局が調査の上、都に対して是正指導の文書をよこしていると思いますが、いつこれが通知され、どういう内容なのかを紹介していただきたいと思います。 ○長谷川課税部長 東京労働局の指導文書についてでございますけれども、九月の二十九日に東京労働局に呼ばれまして、文書で指導を受けたものでございます。その内容につきましては、先ほどもご説明をさせていただきましたけれども、課税資料の複写サイズについて、A3はどうするんだと質問されたときに、A3はA4にしてください、そういうふうなことを答えたことが直接業務遂行指示に当たると。 それと、お昼時間になったときに、お昼にしましょうというふうな休憩時間の声かけや、きょうはこれで終わりですというふうな会話をしたことが時間管理と見なされたと。こうした我々は日常会話の範疇に入るのかなと考えていたことが、そうではなくて指揮監督に当たり、職業安定法の四十四条に違反するというふうな指摘でございました。 ○曽根委員 部長、文書の内容は変えないで欲しいんです。 ここで指摘されている違反事項というのは、二点指摘をされていますよね。ちょっと読み上げますよ、私。 東京都主税局都税事務所が、フジスタッフの派遣労働者に対して直接業務遂行の指示を行っていたこと、これが一つですね。二点目は、東京都主税局都税事務所が、フジスタッフの派遣労働者の終業時刻、休憩時間等に関する時間管理を行っていたこと。この二点になっているわけですね。今のようにA3打のA4だのということは書いておりません、ここには。 この点については後でただしたいと思いますが、この指導文書に基づいて東京都主税局としては、どのようなコピー作業についての見直しを行う、もしくは行う予定なのか、教えてください。 ○長谷川課税部長 コピー作業の見直しでございますけれども、閲覧業務の契約形態を見直しまして、平成二十一年の閲覧業務より、これまでの委託契約から派遣会社からの労働者派遣、複写機の賃借、複写用紙の購入、成果品の配送と、細分化した契約に変更していく予定でございます。 見直す理由としては、年々閲覧業務に要する期間が長期化しまして、なかなか年度内に終了することがほとんど不可能になっていることや、現在単価契約でございますけれども、なかなか単価契約では業者の採算の見きわめが困難であることから、契約が難しくなっております。また、税務署内という狭い限られたところで作業を行うことから、委託契約では適正な履行を確保することが難しい等の事情があるために見直しをしていきたいと思っております。 ○曽根委員 今、契約内容を変更する、派遣に切りかえるというようなお話でしたが、これはコピー作業を行う労働者について、派遣労働者を今後は使っていく、その部分については請負契約ではなく派遣契約にするということですか。もう一度確認します。 ○長谷川課税部長 今までのような請負委託契約ではなくて、労働者の派遣契約にするということでございます。 ○曽根委員 先ほど来、法律違反の事項について、コピーサイズについての指示をしたとか、休憩の声かけをしたとか、そういう、ある意味では常識的な範囲、墳末な問題というふうに聞こえるようないい方をされていますが、それだけが違法ということであれば、コピーの機械の導入や、その他の紙の導入なんかは請負で残しておいて、コピー作業だけを派遣労働に切りかえるという理由にはならないと思うんです。ただ声かけを注意すれば済む問題ですから。派遣労働にわざわざかえなければならなかったということは、直接指示がこういう墳末な問題だけではないということを示しているわけですよ。 私たちはその点が重要なので、東京労働局の担当者に聞いて、直接この問題を私たちに告発していただいた方と一緒に行って確認をしました。 そうすると、私たちが三月に指摘したとおり、これはコピーのサイズ云々だけではなく、それも恐らく違法なんでしょうけれども、一番大事な委託契約の仕様書に書かれていた委託内容として、東京都の職員が指示する個人事業税に関する資料をプリントする際の補助作業、ここに東京都の職員が指示する文書をコピーする作業と、都の職員が作業員に対して直接指示するという内容が委託契約に書かれてしまっているということは、これは違反じゃないんですかと確認したんですよ。 これは違反ですと、はっきり労働局の職員はおっしゃいました。 この指示がなければ、このコピー作業は成り立ちません。なぜなら、都の職員しか、どの文書を抜き取ってコピーすべきかはわからないからです。コピーの作業員は全くこの問題では素人ですから、 どの文書をコピーするのかは、都の職員が指示しなければできないわけでしょう。そこが違法だというふうにいっているんです。したがって、これは請負では成り立たない作業だと。だから派遣労働にかえるんじゃないですか。 そのことと、もう一つ、出退勤の管理をしているというのは、単に声をかけているだけじゃなくて、私たちも、これも告発の方からお借りしましたが、出退勤名簿に都の職員の方が判こまで押しているんですよ。途中までやっていて、私たちが三月十四日にこの委員会や予算特別委員会で追及したら、途端にその業務委託を受けている会社の責任者が判こを押すようになった。ここで急に切りかわっているんですよ。明らかにそれまでは都の職員に出退勤を管理させていたんですよ。このことが違法だということなんでしょうといったら、そのとおりだと労働局の方はいいましたよ。 こういう根本的な問題が指摘されているのを、労働局の職員が東京都の職員の方に何をいったかは知りませんよ。私たち、見てないんだから、その場は。 しかし、私たちは確認してきました。これはやっぱり請負ではできない内容だということは、改めて確認してください。 ○長谷川課税部長 今ほど曽根理事がおっしゃいました点でございますけれども、私どもが東京労働局に呼ばれて文書で指導書をいただいたときに聞いたお話を具体的に、先ほどはさせていただきましたけれども、今ほど曽根理事がおっしゃったようなお話については、我々は聞かされておりません。 出退勤については、確かに話はありませんでしたけれども、現場に聞いてみたら、受託業者から頼まれて、数日間、出勤確認の判こは押していたということは報告は受けてございます。 ○熊野主税局長 まず、先生、契約というのは、これは釈迦に説法になりますけれども、その契約書は私どもと請負業者の間の契約なんですよ。だから、東京都の職員が指示するというのは請負業者に対する指示なんですよ。その業者が集めた職員に対する指示なんて、そんな契約書は読めません。それが一点目。 それから、出勤簿に対しては、私が報告を受けたのは、請負業者である東芝から都庁のほうでも職員の出退勤について確認してほしいので印鑑を下さいというふうにいわれて印鑑を押して、途中でやめたのは、誤解を生じるといけないのでやめましょうということでやめただけの話であって、そういう事実について東京労働局から私どもには指摘はございません。 ○曽根委員 指摘がなぜ主税局の方になかったのかは、私たちは関知できません、これは。その場にいなかったんだから。口頭でしょう、しかも。 しかし、私たちは直接確認をしてきたんです。担当者も、この問題を担当した方に直接聞いたんです。 それで、局長の一番目のご答弁ですね。契約書類上の指示というのは会社との関係なんだというのが、もし仮にそうだとしても、現場で都の職員が、この文書をコピーするように指示を与えていること、このことが違法なんですねと確認したら、そうだというふうに確認されたので、契約書だけではないんですよ。現場の、文書を抜き出して、これをコピーしなさいという、これが言葉をいおうがいうまいが、事実上の指示なんだということは確認されましたので、違法だということが確認されましたので、そのことは申し上げておきたい。 それから、後の判この問題ですけれども、はっきりいいまして、私たちが指摘する前に変更していたんだったら、まだ言い訳できますよ。だけど、これは日付でいえば、変更したのは十九日からですよ。私たちが予特と本委員会で取り上げたのは十四日なんですから。つまり、委員会で指摘された後に変更しているんです。 そういう点でも、私はそういういいわけめいたやり方は不適切だと思いますし、私が指摘したように、現場で職員が文書を指示してコピーさせているということがなしには成り立たない作業なんですから、やっぱり請負ではできないということが実態なんじゃないか。ここは率直に東京労働局の是 正指導を真聾に受けとめて、今後、少なくともそういう違法はないようにするように対処していただきたいということが一点。 もう一つは、派遣労働に置きかえるということについては、先ほどらい、私たちいっていますように、この問題は、自分が雇用されていないだれかのところで、その指揮命令系統に入って仕事をしている労働者の立場というのは極めて不安定なんです。自分の賃金や労働条件を決めているのは雇用主ですが、職場にいるのは全く自分が雇用関係のない相手なんですよ。派遣労働もその中身は変わりませんよ。そこから労働者が労働する問題について、労働条件などについて交渉する相手が目の前にいないという、極めて権利上損なわれかねない事態が広範に生まれているから、だから今派遣労働の見直しがかかりつつあるわけですよ。特に日雇い派遣。毎日毎日行く職場が違うとか、短期の派遣。この場合だって、派遣労働に置きかえたって、一カ月単位の短期の派遣になってしまいます。これだって、非常に不安定になるわけですよ、雇用形態としては。 これはやはり一九九九年に派遣労働法が事実上派遣が自由化された前に、私たちは戻すべきだ、基本的に正規労働に切りかえていく方向で是正すべきなんだということを申し上げておりますので、これは局長に決意をお伺いしたいんですが、やっぱり労働局から指摘されたことについては真聾に受けとめて是正することと、派遣労働は避けて、直接雇用でこの仕事は行っていくというふうに考えるべきだと思いますが、いかがでしょうか。 ○熊野主税局長 何回も申し上げますが、出勤簿は、ご指摘いただいて誤解が生じたら困るということでやめたんで、別に日付がその後であるから実態を隠すためにやめたということではございませんし、また、東京労働局が共産党の調査に対してそういう事実があったということを認めて、私どもに連絡がないというのは非常に不可解な話でございまして、それは調査の上で、いい分が違って事実確認できなかったから、私どもには通知がなかったと。私どもが通知を受けたのは、あくまでもコピー用紙をどうするかという話と、それから、お昼にしましょうよというふうな日常的な、ごくごく人間的な会話が、私どもとはちょっと解釈が違いましたけれども、それが業務指導というふうにとられたというふうに理解をしてございます。 いずれにしても、私どもが東京労働局から指導を受けたのは、先ほど来申し上げている二点のみでございまして、これにつきましては、現場の実情を軽視された形式的な判断で非常に残念な思いもしますけれども、ただ、東京労働局さんがそこまでご判断なさったということでは、私どももそれに基づいて今後是正を図っていきたいとは思います。 しかしながら、東京都の職員で賄えというのはいかにも無理な話でございまして、一時的な作業でございますので、そのために常勤の職員を張りつけるというのは、これはまさに税金のむだ遣いでございますので、そういったことはできないということで、私どもでは中でもできるだけ効率的な運用に、今後努めてまいりたいと思います。 それから、ちょっとご紹介申し上げたいのは、いろいろ偽装請負につきましては議論がなされているわけですけれども、基本的には労働者の保護という視点がなければ、この議論は成り立たないわけでございます。そういった意味で、我々、この件ということではございませんけれども、風潮として、いろいろ、直接業務指導がなされたかどうかとか、あるいは労務管理が直接なされたかどうかということだけに議論の焦点が当たって、なかなか労働者の保護という視点が欠落しているケースも、間々ある。 実は、ちょっとご紹介したいのは、大阪大学のある先生が、問題は行政が現場の実情に合わない硬直的な条件に基づいて適正な請負と偽装請負を区分していることだというふうな意見も述べておりますけれども、いずれにいたしましても、今後労働者の保護という視点に基づいた議論がなされることを望んでおります。 ○曽根委員 労働者の保護の立場から問題の解決に当たっていただくということは、大いに歓迎します。 労働者の保護という中には、私は、今、全国的に広がっている派遣労働、これは法律で認められているものでも、余りにも悪質で、それを派遣している企業が業務停止や廃業に追い込まれている例が多々出ているわけですので、法律を守っているから、派遣労働だからいいんだというだけでは済まない問題にまで発展してきているということを指摘したいと思います。 それから、自治体における偽装請負の例というのは、これまでは、例えば私たちは昨年、兵庫県の二つの市の問題を国会で取り上げた経緯がありますが、まだ小さい規模でした。 その後、新潟県でも、県レベルで偽装請負が労働局の指摘がありましたが、これも大した大きさじゃないんですよ。今度の東京都の規模は、やっぱり百人規模になるわけですね、偽装請負の対象となっている人数が。東京都としてももちろん初めてでしょうし、大都市の自治体としてこういうことはやはり二度とあってはならない。墳末な問題では絶対にありません。 したがって、東京都のあらゆる全庁的な仕事の中からこういう問題を二度と起こさない、一掃するという決意で取り組んでいただきたいことを申し上げて、質問を終わります。 ●財務局に、公共工事など公契約のさらなる改善を提案 ○曽根委員 私からは、まず最初に、契約制度の改善について質問をしたいと思います。 契約制度の最初は、公共工事の契約のあり方について。 六月に発足しましたこの問題での研究会が答申を最近出しまして、これに基づいて都が実施方針も出しております。この中で、例えば、提言で出されたことにこたえて、主要資材の単価を毎月調査し、一定以上の価格変動があれば直ちに改正を行うこととか、また、施工条件に変更が生じた場合の取り扱いについてガイドライン等を作成するとか、契約制度、工事実態に関して意見交換等を行う機会を業界との間でも設けていく。また、工事発注前倒しなどにより工事施工時期の平準化を図る。また、監理技術者の確認を入札時に変更する。また、最低制限価格を八五%に引き上げなどなど、改善に向けて努力の跡が見られるし、研究会の答申にこたえて全体として前向きの方針が出たなというふうに思っております。 ただ、これですべて契約に伴う、今抱えている問題が解決するかどうかというのは、今後の実際の実施を見なければなりませんが、現段階で私が若干懸念をしている問題について幾つか聞いていきたいと思います。また、もう少し前向きに業界との協議等の場を活用していろんな問題を解決していくという上で、提案も含めて質問したいと思います。 まず第一に、最低制限価格を八五%に引き上げたということは、これは、業界からも少なからぬ前進ということで評価をされているようです。これによって、国の新しい基準なんでしょうか、算出基準でローアーリミットを割り出したときに、現時点でいえば八五%以下におさまるわけですから、今までのように、それを超える制限価格が全部八○%に張りついてしまうというふうなことはなくなるだろう。そうすると、まじめに積算したときに最低制限価格が八五%以下のどの辺になるかが、やっぱり積算しているかしていないかで違いが出てくるということで、これを見きわめて入札に参加することができるというふうなことがいわれているわけです。 そこで、これで本当に入札不調が一掃できるのか。八五%の制限価格にまた張りついたりしないのか・・。例えば、資材の値動きが非常に激しく、かつ、多くの企業が大変な建設不況のもとでこれ以上のリスクを抱えられないという状況の中で、入札不調が今後ふえていかないかどうかというのはまだ読めない部分があると思うんです。 もう一つは、国の算出基準も、今回新たな算出基準を出したようですが、時代とともに不変ではないだろう。もし今後、実施する中で入札不調が起きたり、また張りつきによるくじ引きが生まれるようなことがあれば、制限価格の上限を再引き上げすることも今後検討課題とすることがあってしかるべきだと思いますが、いかがでしょうか。 ○竹本契約調整担当部長 最低制限価格、コスト調査に基づいて設定された基準によって算定され、その額は一般的な工事における平均的な採算ラインとされております。 今回、都における直近の工事を抽出して最低制限価格の基準額を試算し、その範囲を検証したところ、ほぼすべての工事が予定価格の八五%以下になるということから、今回、適用範囲の上限を八五%としたものでございまして、引き上げの必要はないと考えております。 ○曽根委員 八○%から八五%に改善したばかりですから、現時点ではそういう都の考え方になろうかと思いますが、ただ、もうとにかく建設不況が日々悪化しているという中で、入札予定額は発表している、したがって、本当の入札による勝負のラインというのはどうしても、最低制限価格のところを積算して読み切って、それ以下のところで入札に応札する。しかし、それは、それぞれの企業が最大限の、赤字ぎりぎりの努力をしての上での勝負なんですよね。そういう勝負、入札が、いつまでもできるような状態に、特に中小の建設業界がなっているかどうかということが、私、心配があると思うんです。本当に大変なリスクをみんな抱えてやっているわけで、これで公共工事入札不調がまたばたばたと出れば、やっぱり制度というのは今後考えていかなければならないということを申し上げておきたいと思うんです。これは、今後の様子もまた私たちも見ていきたいと思います。 それから、今回、国や業界から求められておりました事前公表制の見直しについて、都は、これは必要ないという態度をとっているわけですが、その理由、根拠について教えていただきたいと思います。 ○竹本契約調整担当部長 予定価格の事前公表ですけれども、平成十四年度から工事の予定価格を事前公表しておりますが、これは、予定価格を探る行為などの不正行為を防止し、入札手続の透明性を確保するという点で大きな意義があると考えて実施したものです。積算能力のない事業者の落札というご懸念を防止するという視点で、予定価格の事前公表の導入とあわせて入札参加者の全員に積算内訳書の作成を義務づけ、工事の品質確保も図っております。 過度な低価格とか、くじとか、先ほど来、先生おっしゃっていますけれども、こういったことの抑制を図るために、先般の研究会の第一次提言に基づいて策定いたしました当面の改善策の実施方針におきまして、総合評価方式を適用する工事の拡大、また、ただいまご質問もいただきました最低制限価格の上限の見直しを行うことにしたものです。 事前公表をめぐりましては、お話しのような国や業界団体からの見直しのような指摘があることは承知しておりますが、都といたしましては、こうした対策による効果を今後検証し、その効果を踏まえで慎重に対応していくこととしております。 ○曽根委員 絶対だめというよりは慎重に対応というお話だったんですが、私、あの実情をぜひちょっと知っていただきたいな。これは今後、懇談会などでも業界から出ると思うんですけれども、公平な競争、積算能力のないところが、ローアーリミットで張りつくだろうからということで、スポンと入れちゃう、それを防ぐ。それはわかりますが、中小企業の、中小建設業者の方の積算能力というのには、はっきりいって相当な限界があるんです。ですから、工事の規模が小さい場合、中規模以下の場合、お互いに積算能力に限界のある者同士の入札で争っているんですね。 積算には資格を持った専門家がいるんだそうですけれども、専門家というのでそういう仕事を現にやっている方というのは都内でも驚くほど少ないというふうに私も聞いています。大体の中小建設業の方は、現場監督の方が忙しい業務の合間に、出された資料をもとに電卓をたたいたりして何とか計算して、ここぐらいかということで出しているのが実態だというふうに聞いています。 そこで、事前公表制を続けるのであれば、その資料として、今参考に、例えば生コンの数量とか鉄筋の数量とかつけていますよね、参考資料に数量を。この中身をもう少し中小企業向けには親切にしていいんじゃないか。例えば、設計でいう基礎の部分やフロアの部分ごとにどれぐらい使うというふうに、内訳ですね、生コンなら生コン、鉄筋なら鉄筋など、そういうものを出してやることによって、もう少し中小企業でも積算が、電卓たたいても何とか見えてくるようにしても、これはお互いにとって不利益にはならないんじゃないか。正当な積算をいわば都の側でもできる条件を保障するということで、私は双方にメリットがあるのではないかというふうに思っております。 それから、やっぱり現場で長年頑張ってきているのは、小さい企業であっても現場を踏んでいるという強みがあるわけですよ。それは積算能力とは別に、例えば、地盤面が入札している間に大雨でも降れば、がっと下がるとか、GL、グラウンドラインが下がってしまうとか、そういったことが現場ではちょくちょく起きて、設計とのずれが生じるということがあるわけです。そういったことについてやっぱり現場は強い。 それから、鉄筋の周りの空間、これが二・五センチを割り込むと生コンが回らなくなるわけです、鉄筋の周りに。そういったことも、実際設計をやっていて見えにくいところも、質問を出す制度があ るそうなんですけれども、そういうことも現場で強いからこそ見える部分があるんですよ。 そうすると、もう少し詳しい資料を出してやると、本当にいい建物を建てるという上で現場の業者の方の意見も出しやすくなる。場合によっては、変更が必要な部分が見えてくるということもあると思います。そういう点の改善を、これは私が一方的にいってもなんなので、やっぱり業界との懇談の場などを生かして、率直な声を聞いて、くみ上げていただきたいということをお願いしておきたいと思います。 今いった点について、もしお考えがありましたら、部長のお考えをお聞きしたいと思います。 ○山本技術管理担当部長 建築工事の契約に際してでございますが、数量内訳書を参考資料として事前公表しております。この数量内訳書は発注者が予定価格を算定する際に用いたものでございまして、これより詳細な内訳書は作成してございません。入札のための総価を算定するには十分なものと認識しております。 ○曽根委員 そういうことなんですよね、現状は。そこをよく建設業界の声を聞いていただきたい。 私は、大きいところは、ゼネコンさんなんかはみんな、たくさんの積算の専門家を抱えていますので余り心配はしないんですが、家族プラスアルファ程度で頑張っている中小の建設業の方でも、本当にまじめに頑張っているところが報われるような制度の改善をお願いしたいと思います。 それから、公共工事で最後なんですが、下請労働者が結局は低価格入札になった場合の最終的なしわ寄せを最も受けやすい人件費の問題なんですね。私は、これを何とか打開していく上で、今、制度上は余り考えておられないようですが、最終的に現場で働いている労働者のところに都が設計した労務単価相当分がちゃんと支給されるというふうな何らかの方策を今後考えてもいいんじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。 ○竹本契約調整担当部長 工事の受注者が工事の施工に当たって、みずからの従業員にどのような賃金水準で労働条件を定めているかということにつきましては、これは受注者さんの経営上の問題でございますので、東京都が契約条件を通じて関与することは適当ではないと考えています。 また、下請さんとの関係ですが、元下関係は民民関係でございますので、このことに東京都が幾らの賃金を払うべきというようなことも適当ではないと考えております。 ○曽根委員 ずばりこのことを聞くとそういうお答えになってしまうんですが、ただ、東京都も、元請から下請に仕事を発注していく場合の配慮については、研究会でも検討されているし、何らかの改善も考えていきたいということですので、その中の一つとして、やっぱり現場に行くと、最終的には人件費というのは一番しわ寄せしやすい分野になってしまっているので、働いている方の犠牲によって何とか公共工事がペイしているというふうなことのないようにしていただきたいということを重ねて要望しておきたいと思います。 ●庁舎管理などの契約にも制限価格や総合評価制度で労働者の犠牲を防ぐべき それから、もう一つの契約の問題として、庁舎の管理、清掃委託の問題で、これは既に昨年、私、この委員会で取り上げておりますので、ちょっと繰り返しの面もあるかもしれませんが、清掃委託の契約金額というのが、庁舎管理のさまざまな委託の金額、五年分出していただいたんですが、その中でも特に削減傾向が、低下傾向が大きいんじゃないか。 例えば、一番卑近な例として、この都議会議事堂の清掃委託は、平成十六年度、受注者が東京都弘済会、四千四百十万円だったのが、これは二ページに載っていますが、資料の後ろのほうの一○ページに今年度のがあるんですけれども、今年度はワールドクリンアップ株式会社で、金額は三千三十四万五千円ということで約七割に下がっている。わずか四年間で下がっているということであります。 この金額が下がっていく中で、庁舎を初めとした議事堂などの清掃業者の大半が、正規雇用ではなく、実際はアルバイト雇用というふうになってしまっている実態が私は見られると思うんですが、これについて、東京都はこういう状況を把握しているのか。もし把握しているとすれば、どういう認識でいるのかについてお聞きしたいと思います。 ○山藤参事 清掃業務などの委託業務契約は、委託者が求めるサービスの内容を、受託者が契約に沿いまして確実に提供することを目的とするというものでございます。 現在、都庁舎の清掃業務は主に十本に分かれて行われておりますが、いずれも、仕様書等で定めた 内容について適切に業務が履行されております。 委託契約におきましては、委託業務の内容をどのように実現するかは、例えば、業務の完成のために何名の職員を充てるとか、またはどのような資機材を用いるかなどについて、すべて受託者の責任と判断にゆだねられております。従業員の雇用形態につきましても、同様に受託者側に属することでございまして、委託者でございます都が把握する立場にはございません。 ○曽根委員 昨年の質疑でもちょっと紹介したんですが、この資料に載っている平成十六年度の時点で議事堂の清掃の委託を受けていた東京都弘済会、ここがその後、入札で敗れまして、平成二十年度は、今、別の会社になっております。 敗れた弘済会はその後、ビル管理部門から全面的に撤退をして、百五十人の清掃作業員が解雇、もしくは、それまでの正規労働から非正規のアルバイト雇用の清掃会社に移らざるを得ませんでした。 東京都弘済会の理事者自身が、都庁のビル清掃は、自分たちのような正規労働者による常用雇用の 企業ではもう入札に太刀打ちできないというふうに話しております。 私は、これはやっぱり東京都の、都民の税金による委託ですから当然効率的であるべきですが、働いている労働者が非正規にならざるを得ないほどの低い金額に下がっていく、いわば過当競争ともいうべき事態は避けなければならないだろうというふうに思うんです。 その点で、今後、例えば、低価格入札を防ぐような制限価格をこの分野にも設けるとか、それから、契約額がどんどん低くなっているような清掃などの部門に限ってでも、入札企業に対して、いきなり正規雇用は無理だとしても、少なくとも違法な雇用形態にはならないようにとか、時給を例えば千円以上に引き上げるなどの条件を付すとか、もしくは、こうした内容を含む総合評価による入札の導入を検討すべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。 ○竹本契約調整担当部長 基準を定めるとか、最低の何か、ローアーリミットとかというお話ですけれども、そもそも最低限価格というのは、当該契約内容の適切かつ確実な履行を確保するために、特に必要がある場合に設定するものでございまして、清掃委託は、日々の履行に当たって、随時その状況を確認し、必要な指示を行うことによりまして契約内容の履行が確保できておりますので、最低制限価格のようなものを導入する必要はないと考えております。 また、違法な雇用形態というお話がございますけれども、違法な雇用形態があれば、それは所管する労働行政等々で摘発等をしていくことでございまして、受託者が委託内容の履行に当たって、みずからの従業員の雇用形態や賃金水準などの労働条件をどう定めるかは、先ほども申しましたけれども、受託者の経営上の問題でございますので、発注者である都が、契約条件ですとか総合評価の評価項目などを通じて関与することは適当ではないと考えております。 ○曽根委員 この点は冷たいお答えなんですけれども、ただ、私、関西の方をちょっと調べていまして、この間も紹介しましたが、大阪府その他で既にこうした管理清掃部門に総合評価の導入というのは始まっておりますので、ぜひ東京都も参考にしていただきたいということだけ申し上げておきます。 ●多摩の市町村の重い負担となっている都有地賃貸料の大幅増額 最後に、簡単に、東京都が多摩の市町村に貸し付けている土地の賃借料について、ここ数年の間に非常に値が上がっているということで、多摩の方の市の方から、市議会や市長などがこぞって、これはひど過ぎるんじゃないかという声を上げているのを聞いておりますので、都のお考えをちょっとただしておきたいと思います。 具体的にいいますと、調布市と府中市の福祉施設が置かれている立川の基地跡地の都有地です。これは二つの経過が私はあると思うんですが、一つは、基地跡地の総合的な開発の中で六者協というのがつくられて、減額措置がとられているというのは聞いています。 四分の三の減額がされている。だから、十分な減額じゃないかというふうな見解だと思いますが、ただ、これについては、やっぱり時代の流れの中で見直すべきものは見直すということがあってしかるべきですし、何年か前には現地の市長さんからも、減額率の増額という要望も出たことがあるというふうに聞いております。 そこで、こうした市町村に都の普通財産を貸す場合の減額の根拠と、それから、この場所について減額率の見直しということが今後検討できないかどうかについての見解をお聞きしたいと思います。 ○松本財産運用部長 市町村に対します普通財産の貸付料の減額は、財産の交換、譲与、無償貸付等に関する条例第四条第一項第一号で、地方公共団体その他公共団体において、公用または公共用に供するとき、時価より低い貸付料で貸し付けることができる旨規定しているところを根拠としております。 また、減額率の見直しでございますけれども、当該施設等の貸し付けております土地の減額につきましては、施設の設置目的、そこで行われる事業目的等を踏まえまして、公有財産管理運用委員会の審議を経て決定しているものでございます。減額率を改定する考えはございません。 ○曽根委員 根拠の規定には減額率についての細かい規定はないようですので、これはやっぱり現地の自治体との話し合いというのがあってしかるべきじゃないかということで、ぜひ検討をお願いしておきたいと思うんです。 地元の市議会で議論の様子を聞いてみますと、もう一つ、非常に都のやり方について不満の声が出ていたのは、土地価格の基準となる地価の算定についてなんですね。現在、都は貸し付けるに当たって、基準地価をもとにするのではなく、取引事例を何点か選んで、その時点時点での近傍の取引事例をもとに地価の算定をし、それに基づいて賃借料を決めているということです。 それがこの三年間で、賃借料がこの場所では四割上がったんですが、基準地価でいうと二割しか上がっていない。にもかかわらず、都が選んだ取引事例は全部マンションの建設関係で、非常に三年間の間にばあっと上がったところが選ばれていて、そのために、そこから割り出した賃借料は四割上がっちゃった。 しかし、これは、ある意味では、市の側から見れば、都が取引事例を選ぶわけですから、都の財産価格審議会が選ぶわけですから、ちょっとブラックボックスじゃないか。もっと公平な基準地価、国の公示地価などをもとに算定すべきじゃないかという意見があるんですが、いかがでしょうか。 ○松本財産運用部長 地方自治法第二百三十七条第二項は、適正な対価なくして普通公共団体の財産を貸し付けてはならないと規定しており、これを受けまして、東京都公有財産規則第四十七条第一項では、この適正な対価を時価により設定する額と定めております。 お話しの案件等につきましても、近隣の取引事例による比較により、貸付地の周辺環境等を踏まえた上で適正な時価を算出し、貸付料を決定したものでございまして、お話しのような基準地価、路線価の変動率のみに基づきました算定は採用していないところでございます。 なお、こうした算定方法につきましていろいろ声があるということでございますけれども、例えば、今回はかなり大きく上がったところでございますけれども、三年前の十七年度を見ますと、やはり近傍の地価等を反映いたしまして、五二%あるいは一六・八%というような下げ幅で貸付料を下げているというようなことにもなってございます。 ○曽根委員 今、下げるときは下げているんだというお話があったので、これは私の計算が間違っているかもしれませんが、お聞きしたところでは、調布の施設、幾つか年次を分けて建ってきていますけれども、最初が平成八年ごろですよね。そのころから借りている特別養護老人ホームの場合、平成十七年度に確かに下がりましたけれども、二割ぐらいなんですね、下がった幅は。ところが、この平成八年から十七年の間に基準地価は四割以上下がっているんですよ。したがって、基準地価が大きく下がっているときには余り下がらない。逆に、基準地価が二割しか上がっていないのに、上がるときは四割上がったというのがこの三年間の経過なんですよ。そこにやっぱり地元の方々の大きな不公平感があると思うんですね。 したがって、地元の皆さんは、福祉施設が集中的に建設している場所ですから、近傍とはいっても、マンションの地価と比べていいのかということも含めて、どちらを選ぶかは都と市の話し合いで、六者協なりで決めていくべき事柄ですから、やっぱり率直な話し合いをした方がいいんじゃないか。 このまま不公平感を残し、しかも、都にとっては大したお金じゃないかもしれませんが、市にとって一千万円規模の増額が今後また続くかもしれないと思うと、福祉施設の運営そのものも大変になるし、市の問題だけじゃなくて、これから多摩地域にも必要な福祉施設をつくっていく場合、仮に都有地を借りた場合にこういう事態が次々起こるとするならば、これは福祉事業にとっても大きな影響が出ますので、その点はぜひ検討していただきたい。 これは要望にとどめておきます。 以上で質問を終わります。 |