2007年11月8日財政委員会事務事業質疑(会計管理局) 複式簿記導入を具体化した会計管理局に簿記導入の実態と限界を問う ○曽根委員 私からも、今回初めて決算参考書の中に財務諸表が複式簿記・発生主義会計によって出されましたので、これの活用という問題について幾つか質問したいと思いますが、先ほどの質疑を聞いていて、国の総務省の基準モデルと東京都め考え方に大きな違いがあると。 改めて確認をしたいんですが、一つは、税金収入について、何でも総務省のモデルでは出資の中に入ってくるというふうに聞いたんですが、それが確かかどうかということと、それから先ほども土地の評価について、事業用地については公正価値ですか、いわば十定の期間に変動する地価評価なども含めたものと思いますけれども、そういう変動するものを取り込む、これは企業会計でもやっているのかどうかわかりませんが、そういう考え方が国の方にあると。これが大変な実務負担になるという話がありましたが、この二点について改めて確認をしたいんですけれども。 ○安藤参事 まず一点日の出資かどうかというお話でございますけれども、出資という項目になるというよりも、住民の皆様からいただきました税金につきまして、それは株主に対する普通の会社の出資と同じような考え方で貸借対照表の純資産の方に入れていくということでございます。一点目はそういったことになります。 それから二点目の公正価値というのは、学問的な用語でございますけれども、ここで申し上げてもいるのは、いわゆる公正価値といういい方をして時価評価をした方がいいというのが基準法での考え方の基本になっていると思います。 ○曽根委員 私自身、昨年でしたか、この会計がスタートするという際に、その時点での認識として束京都のほとんどの会計、つまり一般会計などの各事業については、複式簿記の公会計制度はふさわしくないという認識を示しましたが、ただ一つ、東京都が行っている事業の中で企業的な部分、とりわけ再開発事業ですね、第二種。東京都が直接土地を買収し販売するというこの事業についてはこの公会計制度が使えるかもしれない。というのは、ご存じのとおり、第二種再開発事業は、一千五百億円という莫大な赤字が明らかになるのは十年以上たってからだったんですね。その時点ではもう取り返しがつかない赤字ができちゃっている、そういうことがあったものですから、毎年出されるこの会計の中に、そのときの土地の評価額が動いていくというものをしっかりつかまれるような仕組みができるんであれば、それは一定の意味があるんじゃないかということを申し上げました。 今のお話ですと、土地の評価について変動の指標を取りこむという考え方や、都民の税金を、これは一般の事業では考えにくいんですげど、再開発事業の場合には土地を買うために使うわけですから、一種の出資と考えると。そして土地を売却すれば再開発事業では収入になりますよね、これと一緒にしないと、税金の存在をね。という点では、再開発事業に関しては国の総務省モデルの方が実態に−−これに限ってですよ、合っているのかなという印象を受けたんですね。 実際には、総務省モデルを使った場合にはどういう点で問題があるのか、もしくはメリットがあるのか、お伺いします。 ○安藤参事 おっしやったのは総務省の基準モデルだと思いますが、総務省の基準モデルにつきましては、我々は、国際公会計基準とも大きく異なる非常に独特な考えに基づいて、難解で実務的には対応が困難なものと考えてございます。それから、いろんなものの評価につきまして、非常に難解な上に、細部のきめ細かな、いわゆる実務に落とせるような内容がまだ示されてなくて、それについては我々は採用できないと考えております。 ○曽根委員 比較するにも、まだ総務省のモデル自体も細かい点はあいまいな状態だということはわかりました。 それじゃ、東京都のつくったこの複式簿記の会計制度に基づく財務諸表で、再開発事業についてどういうことが新たに明らかにできたのか、今後されていくのかということをお聞きします。 ○安藤参事 開発事業に関しまして、貸借対照表の資産の部において、区画整理事業における保留地や再開発事業における保留床などの資産額が明らかになるとともに、負債の部において、都債や他会計借入金などの額が明らかになったと思っております。 ○曽根委員 そうすると、例えば、ある年度に開発事業で−たん買収した土地を事業者に保留床を売却するといった場合、買ったときの値段よりも低うい価格で売らざるを得なかった、そこから赤字が出てくるわけですが、その赤字というのはどういう部分に出てくるんですか。 ○安藤参事 いわゆる行政コスト計算書上でございますが、その他行政収入、その他行政費用という項目がございまして、そこのところで、いわゆる損、益両方出てございます。 ○曽根委員 確かに毎年決算の形で、前年度に行った土地の売却もしくは買い入れ、その結果として損害になったのか収益になったのかが毎年出てくれば、もしこれが債務超過状態などに陥れば、それが結果として出てくるでしょうから、そこは一歩前進なのかもしれませんが、これは結果論であって、じや残っている資産、抱えている土地、これが簿価で載っているわけですよね。買い入れ価格状態で載っていると。しかしそれがあのバブルの当時、買ったものが日々下がっていくという状態だったときに、一体どれぐらいの残り資産の価値があるのか、今幾らで売れるのかというようなことを知りたいときには変動的な数値が取り入れられるということは有効じゃないかというふうな印象を受けるんですが、どうですか。 ○安藤参事 民間企業においては、土地や建物について取得原価主義による資産評価を採用していると思います。都の会計基準でも、資産の評価について取得原価を基準として算定するということをしております。したがって、貸借対照表においては、土地の取得に要した金額を計上しまして、土地の価格の変動については表示いたしません。 実際に土地の売却を行った場合には、売却額と資産額との差額である売却損益について、行政コスト計算書において表示するということにしております。 ○曽根委員 なるほどと思いました。つまり、私、この企業会計を新たに取り入れる際に一定の期待もあったんですね。確かに年度ごとに、結果としては売却益が出たのか売却損になったのかは出るでしょう。しかし、企業があの時期に不良債権をたくさん抱えながら、なかなかその実態が世間に出なかったというのは、やっぱり企業会計のこういう点での限界があるんだと思うんです。東京都の再開発事業についても、この複式簿記会計を取り入れても、こうした企業会計の限界は、やはりそれも含めてあるだろうというふうなことで、幻想を持つことはできないと思います。 こういう点を強調するのは、実は、私の地元の北区の赤羽北再開発事業というのは、面積でいえばわずか三・八ヘクタールで、第二種再開発の中で面積的にはごくごく百分の一以下の面積だったんですが、一千五百億円うちの二百五十億の赤字がここから出ているわけで、一平方メートル当たり七十万から八十万円の赤字になりました。 これはもうひとえに、八五年に計画された後に、バブルに乗って、買い入れのときにはものすごい金額が上がったわけです、土地が。売るときにはばあっと下がったと。この時期に開発をかけることがいかに誤りだったかということが後にならなきゃ出てこなかった。こういう実態をリアルにとらえるという点では、この会計でもやはり限界があるということをいわざるを得ないと思います。 この開発に巻き込まれて、地権者の方、またはそこで借家で営業していた方、数十軒の商店街もニ、三軒しか残らない、あとはみんなもう出て行かざるをえなかったんですが、その住民をまとめていた方も、結局最後は追い詰められて自分で命を絶つというようなこともありました。こういう悲劇を生まないためにも、公共が行う開発事業については、企業会計以上に厳しい目で見なきゃならないということを私、特に痛感してきたんです。 ですから、この点での行政コスト計算書や、この問題で言えば貸借対照表でしょうか、そういうものだけによりかかっていたのでは、こうした問題は見えないということで、もし、これを本当に分析するのであれば、再開発事業などは、もっと土地評価の動きなどもふくめた新たな分析が要るということを強調しておきたいと思います。 以上で質問を終わります。 |