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2005年12月9日都議会財政委員会

原宿の巨大留置場と警察署を民間企業任せのPFIで建設してよいのか

〇曽根委員 私からも、神宮前一丁目の民活再生プロジェクトの問題で、ダブらないようにしながら、何点かお聞きしたいと思います。
 PFI方式で警察施設をつくるというのは、東京都にとっても初めてですし、全国の自治体でも、恐らく例は今までないと思います。それだけに、非常に慎重でなければならない問題が幾つかあると思います。
 その一つはコストの問題なんですが、前の方もいろいろ聞いていますので、私からはまず、東京都はPFI法に基づいて、これを今までと同じように入札でもって、指名発注ですか、今は一般競争入札ですか−−にかける場合と、このPFI方式でつくる場合とで、コスト面でどちらが有利なのかというのを比較検討して、PFI方式が有利だという場合に、その方式に進むという原則になっていると思うんですが、都の方で当初予想した、PFIにかければ、どれぐらいコストが、建設費が縮減できるということでの縮減率というのは、どれぐらいだったのでしょうか。

〇塚本調整担当部長 本事業をPFI事業として行うことを決定した時点での計算によりますと、都が直接行った場合に比べて、八・八%程度財政が縮減できるという計算でございました。

〇曽根委員 実際には、これは先ほどあったように、五七%程度で落札されたと。その中で、これは当初にかかる建設のコストと、それから十五年間ですか、契約期間の維持管理コストが入っているわけですが、建設費に当たる部分では、当初の想定よりどれぐらい縮減されたのでしょうか。

〇塚本調整担当部長 建設にかかる費用につきましては、入札予定総額九十九億八千八百五十六万八千円のうち約八十九億円を予定していましたところ、落札者の提案では約四十八億円ということになりまして、予定総額の五四%程度になりました。その差額は約四十一億円ということでございます。

〇曽根委員 この四十八億円余りの中には、入札でやる場合には入っていない設計費なんかも入っていますよね。それも除くと、これはお聞きした話では、大体四十二億円程度で直接の建設工事費は、事業費は予定しているというふうに聞いております。
 そこで、今までの警察署の建設と比べてみたいんですが、先ほどもちょっとお話ありましたが、ことしの二定で決定された臨港警察署、ここの落札価格と、落札価格が予定価格よりもどれぐらいだったのかという落札率ですね、これはいかがでしょうか。

〇塚本調整担当部長 臨港警察署庁舎新築工事におきましては、予定価格四十一億三千五百三十八万三千円に対しまして、落札金額四十億四千二百五十万円、落札率は九七・八%となっております。

〇曽根委員 臨港警察署は、お聞きすると、地下一階、地上九階、原宿の場合には地下二階、地上十五階ということで、床面積も、先ほどちょっとありましたが一・七倍。それが、四十億円ちょっとのほぼ同じ程度の金額で、これだけ規模の違う建物が建設できるということは、常識ではなかなか信じがたいことです。
 そこで、警察署のような大体四十億程度の規模の工事を発注する場合、一般競争入札になっているというお話ですが、余りに低い落札率のところが落札した場合は、これは本当にできるのかということで、東京都の側から調査をする、そういう制度があるというふうに聞いていますが、その内容と、臨港警察の場合、例えばどれぐらいの落札予定価格を下回ると、それが調査に入るということになる予定だったのかということをお聞きします。

〇塚本調整担当部長 今のお話は、低入札価格調査制度についてのお話だろうと思いますが、低入札価格調査制度は、入札価格があらかじめ設定した価格を下回った場合、当該契約の内容に適合した履行が可能かどうかを調査いたしまして、可能と判断した場合に契約を締結する制度でございます。
 予定価格が建築工事五億円以上、土木工事四億円以上、設備工事一億二千万円以上の工事案件に現在適用しているところでございます。
 なお、調査基準価格につきましては、予定価格の十分の八から三分の二の範囲で設定しているところでございます。

〇曽根委員 当該のプロジェクトの場合には、明らかに三分の二を大きく下回って、建設工事だけを見ると五割を切っているということですので、そういう点では、一般の入札であれば、これは大丈夫かということで調査をする対象になったものだと思います。それにかわるPFIの方式の中での、やはり本当にこれでできるのか、維持管理も含めて十五年間任せるわけですから、事業者の信頼という問題についての審査を厳密にやる必要がもちろんあるわけですが、どういうやり方でそれが担保されていたのか。
 それから、その中で事業者側からは、これだけのコストを下げたということについての説明はさっきお聞きしましたが、都側から見て、これならば下げたのは当然だというふうに納得できる理由はあったんでしょうか。

〇塚本調整担当部長 今回のPFI事業では、総合評価一般競争入札で落札者を決定しております。この総合評価一般競争入札におきましては、価格だけではなく、建築計画や維持管理運営業務の内容、事業実施体制や長期収支、リスク管理などの事業計画全般にわたりまして審査を行っております。
 また、この審査は、各分野の学識経験者で構成いたします審査委員会で審議をしているものでございます。
 したがいまして、本事業におきましても、低入札価格調査制度と同じか、それ以上の審査を行った結果、落札者を決定しているところでございます。
 また、お話がありました低くなった理由については先ほどご説明したところでございますけれども、今回のPFI事業で財政縮減効果、落札率ではなくて財政縮減効果は四四%となっております。
 PFI事業は、その内容によりまして単純な比較はできませんが、今回の事業に類似したような他の事例、建物の建設が大きくて、維持管理があと幾らかあるというようなものを見てみますと、例えば千葉県警察本部のPFI事業におきます財政縮減率は三九%、国と千代田区の合同庁舎でございます九段第三合同庁舎・千代田区役所本庁舎整備等事業におけます財政縮減効果は三七%となっておりまして、この私どもの事業の四四%が特段突出して低いというわけではございません。
 さらに、先ほども申し上げましたように、本事業におきましては、附帯事業として同一敷地内に民間施設の建設をあわせて行うことになっておりまして、これに伴う共通仮設費ですとか現場管理費などの軽減、あるいは資材の一括発注などによりますスケールメリットというようなものは、本プロジェクト特有の削減効果として見込めるものでございまして、こういうものを勘案しますれば、決してできない数字ではない、このように考えているところでございます。

〇曽根委員 今のお答えの中で、千葉県の警察本部がPFIを既にやっているという話、私、知らなかったものですから失礼しました。(「勉強になってよかったね」と呼ぶ者あり)勉強になりましたね。
 ただ、今のお話なんですが、私も建設関係の知り合いに聞いてみたんですが、建設コストで大きいのは資材と人件費だというんですよね。その知り合いの人によると、たとえ開発のほかの部分があって、あわせて大量に資材を発注したり、それから一般の入札に比べれば期間がある程度見えるといいますか、見通しが立つということによるコストダウンができることはあるけれども、せいぜい二割程度じゃないか、とても半分近いコストダウンはできようがない、だれかが泣くことになるんじゃないかということを、その人はいっていました。
 先ほどもありましたので繰り返しませんが、もしこの建設工事の過程で下請に赤字単価が押しつけられたり、必要な人員がそろえられなかったにもかかわらず、工事が無理に推し進められるようなことがあっては絶対にならないというふうに思いますし、その点で、本当に納得できる説明が行われているというふうには私は思えないんです。もしこれが正当なコストでできるんだとすれば、今までの警察署の入札は何だったのかということにならざるを得ません。九七・八%の落札率も含めてですね。そういう問題点を指摘しておきたいと思います。

●機密事項でいっぱいの警察の中を民間事業者まかせでよいのか

 もう一つ、警察署ならではのいろいろな機密を持っている施設ですので、それの維持管理に当たってのリスクがあると思います。契約書を見させていただきましたが、その中で清掃や設備の維持管理業務、それから、これは毎年、何か調整があるようですけど、給食も一部入ってくるようですね。そういう日常的に業者が出入りすることになる、これを一括してこの事業者がやるわけですね。責任を持つわけですね。
 これまではどうしていたのかと警視庁の方に聞いたら、ほとんど一般の警察署では、掃除は用務員さんがやってきたと。今度は事業者がそれを、業者を入れるわけですよね。それが、作業員など警察から見てふさわしくない人がある場合には、これは警察の側から必ずしも理由を明らかにできない場合もあると思いますが、それも含めて交代をさせるということができるんでしょうか。

〇塚本調整担当部長 警察施設の維持管理を担当します業者につきましては、あらかじめ業者名を当局に届けていただきまして、承認を得た上でやっていただくということになっております。
 また、その作業に従事する人間につきましても、同じようにあらかじめ名簿を出していただきまして、その承認を得た上で実際の作業に取りかかっていただく、そういう形にもなっておりますし、さらに作業の実施体制を、人も含めまして、だれが責任者で、だれが実際に作業をやる人だということを含めて、すべて事前に出していただいた上でやっていただく、そういう形になっております。
 また、維持管理期間におきましても、先ほどもお話ししたように、モニタリングを行いまして、実際の作業の実施状況はどうか、適切に実施されているかということを確認していくことになっております。業務が適切に実施されてないと判断された場合には、事業契約に定めますさまざまな是正措置をとるという形ができることになっております。

〇曽根委員 確かに作業員だとか日常的に入る方すべてについて、登録をきちっとやるということになっているわけですが、これは当然ですけれども、私が見た限りでは、一般的なPFIに基づく維持管理業務の契約書以上のもの、大きくそれを上回るものではないなという印象を受けました。
 事は区役所でもなく、また、一般の庁舎ではなく警察署ですので、そういう点でのもう少しグレードアップしたものがないと、本当の意味で大丈夫なのかなというふうに思います。
 それで、一番私が心配な点をお聞きしておきたいんですが、例えば業務上知り得た秘密、これについての扱いが八十七条で書かれておりまして、この場合、業務上知り得た秘密については、事業者とその出資者の範囲以外に漏らしてはならないというふうに八十七条で書いてありました。
 原宿の杜守の出資者は何社かありますけれども、これ、それぞれ大企業ですよね。そうすると、相当程度広い範囲の人が、十五年間という長期にわたって、業務上知り得た秘密を共有できるということになっちゃうんですね、契約書の範囲だけでいえば、目いっぱい考えれば。これはやはり警察署という非常に特殊な施設、捜査上の秘密や犯罪者の情報などが集まっているところの秘密の保持という点では、ちょっとこれは一般的な契約じゃ済まない問題があるんじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。

〇塚本調整担当部長 今回、PFI事業で民間事業者に委託します警察施設の維持管理運営業務の範囲につきましては、庁舎設備の保守管理、清掃、被留置者に対する給食及び日用品の提供業務、職員食堂の運営業務でございまして、これらにつきましては、現在でも民間に委託している業務でございます。
 したがいまして、現在委託している業務と同じ内容の業務を委託するということでございますので、今回の事業が特段リスクが高くなるというふうには考えてございません。

〇曽根委員 そういうところに、落とし穴があると思うんですよ。今度の施設は、今までだって警察署の清掃は、私は聞いたんだけど、その聞いた方の経験でいうと、最近の警察には、規模の大きいものは確かに業者が施設に入っている場合もあるが、ほとんど用務員さん、つまり公務員の一部で、その清掃や何かは中でやっていたわけですね。それが今度、外から入ると。それから給食についても、何食出すかということで、中の動きが見えるという面もあるわけですよね。
 そういう点からいうと、今回は大規模な勾留施設もつくる予定ですし、警察官の独身寮も入ると。銃器類も多数保管することになるわけですね、警察署ですから当然。それにしては、この契約の中身、形式、余りにも安易じゃないかと。財務局の方は、警察署というものの特殊な業務の性格は、そんなに詳しくは知らないのはある意味では当然なので、その範囲でこのプロジェクトの、PFIの契約の形をつくったんだと思いますが、私は、本当に都としては初めてなんですから、相当慎重な検討をした上で、こういったものの契約関係については結ばないといけないと、こういう点でも−−私たちも、PFIを全面的に否定はしないんですけれども、特にこの問題については心配な点が多いので、問題点を指摘させていただいて、質問を終わりたいと思います。

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