2003年2月25日文教委員会
●大学管理本部の予算質疑
なにが何でも国に合わせた都立大学統廃合・法人化を急ぐ都の姿勢を批判
○曽根委員 予定されている二〇〇五年度、平成十七年度の都立大学の統廃合と合わせた独立行政法人化の日捏が近づいてきているわけですが、根拠法を含めての事態は、私の見る限り大変おくれているように思います。
国立大学の独立法人化の法案は国会にまだ提出されていないと思いますが、どういう段階にありますか。
○久保調整担当部長 国立大学の法人化のための法整備の状況につきましては、現在のところ、文部科学省から正式な発表がございませんので、準備がどこまで進んでいるのか、都として正確には承知しておりません。
○曽根委員 私たちも、法案の要綱もまだ出ていないので、国会議員の方を通じて概要というものは手に入れたんですが、まだそういう段階なんですね。
一方で、大学関係者からは、国会提出をさせないという大きな世論が今広がつておりまして、たとえば昨日ですが、この「大学改革」に反対し国立大学法人法案の国会提出のとりやめなどを求めるアピールが、千三百人以上の賛同者のもとで出されたわけです。 この中には、もとの国立大学の学長十一人ぐらいが入っているのと同時に、映画監督の山田洋次氏とか、そのほか文化人、赤川次郎さんとか、いろんな方が入ってのアピールになっているようです。私も内容をまだ詳しくは知らない、きのうのことなんですが、こうした大学関係者だけではなく、かなり幅広い層に、文部科学省によるかなり強硬なスケジュールでの国立大学の法人化、また関係者の意見を無視した動きがいろいろあるということについても、疑問や不安が広がっている状況だと思います。
それで、国立大学が平成十六年度、二〇〇四年度にもし法人化された場合、今度高校三年になる生徒さんですよね。その人たちはもう二年生ぐらいから志望校を決めなきやならないという状況になっているはずなんですね。ところが、法人化の法案すらまだ出てないわけで、自分の受けようとする大学、もし国立大学を受けようと思えば、どういう大学の姿になっているのかがわからないまま、今、受験準備に入っているということですよね。この法案がもしおくれて、秋、さらには来年なんてことになるというのは、もうこれは絶対できないわけですよね。
こういう中で、いわば大学に法人化の準備を、法案ができる前から文部科学省によってこっそりさせている、いろいろな実務準備・・。こういう動きが起こって問題になっていたことはご存じですか。
○久保調整担当部長 この点につきましては、既に国において独立行政法人化ということで、国の検討組織から国立大学法人化についての報告が出ておりまして、詳細には、平成十四年三月に、「新しい国立大学法人像について」という報告書でございますが、これに基づいて各大学とも準備作業を進めているというふうに聞いているものでございます。
○曽根委員 ところが、そういう問題じゃないんですよ。つまり、国会で法律もまだ出ていない、もちろん通ってもいない状況で、その法律がなければできないような実務をもう既に準備を始めたということについて、昨年の五月に我が党の石井郁子議員が国会でただしたら、そんなものは指示してません、各大学が自主的にやってるんじゃないかと答えたわけですよ、担当局長は。
そうしたら間もなくして、その指示文書が出てきたわけですよ。全然指示してないといったのが指示してたんですね、もう公式の文書があるんですから。
それで、担当局長は陳謝するという事態になったわけですよ。
私ね、都立大学ももちろん国立大学のようなことと全く同じではありません。私は率直にいえば、国立に比べればはるかに大学関係者と東京都との間には話し合いの場があるということは知っています。しかし、東京都の場合であっても、独立法人にならなければ絶対あり得ないような実務について、それをもう大前提として、直接それにかかわる実務を準備する、この議会の中で条例もまだ形も見えない段階で、ということはやっぱりまずいと思うんですよね。議会軽視になってしまうと思います。
この点については、国の方の出来事を教訓として、やっぱり慎重に取り組んでいくということはあつてしかるべきだと思
いますが、この点についてはぜひ鎌形さんの方から考え方を示していただきたい。
○鎌形大学管理本部長 今の曽根先生の国会の質問を、私も議事録を読みまして、よく存じております。
法律が先か準備が先かというのがございますけれども、先ほど久保部長が話しましたように、私たちは私たち東京都としての大綱を発表しまして、それ
に基づいてそういった制度設計をお願いすると。先ほど冒頭でも申し上げましたように、国の方に、あの大綱に基づいてこういった大学をつくっていただきたい、つくれるような制度設計をお願いしたいということで、文科省、総務省双方にお話をさせていただいて、おおむねそういった方向で行けるんじゃないかという感触を得ているわけでございまして、その限りで、法を前提にした準備をすることについては一向に差し支えないというふうに考えております。
これは、法律ができなければ新しいものをつくっちゃいかぬかというと、そうじゃないわけでして、一般的にはその前にいろんな物事があって、それが法案となって、具体的に執行できる、実施できるのは法成立後ということでございますので、私どもは事前に、我々の考え方をもとにした準備をすることについては一向に差し支えないと。ただし、さっき久保部長がご説明申し上げましたように、法律がそのとおりになつてない場合は、それは当然法律に従うべきでございますので、その限りにおいては再度調整させていただくということでございます。
○曽根委員 私も、都立大学の大綱の範囲で考えられることを一定程度準備するということは、全くスケジュールがおくれるようなことをやれといっているわけじゃないので、ここで決まったことを実行するのは当然ですから。しかし、その範囲を超えてもう細かいことまで準備するということには慎重であってほしいと思うんです。ですから、先ほどお話のあったように、今度の予算で一定のキャンパスの中の施設をつくる、これは一定の年月がかかりますからね。だから、それを我々は否定しているわけじゃないんです。いろんなある程度の見通しを持ってやるということは当然だと思うんですよ。
問題は、法人化しなければできないような細々とした間題が、もう既に全部準備されている。国立大学なんか、相等やられているようなんですよね。国会で決まらないうちに全部決まっているみたいな、これはやはりまずいと思うんで、このことは申し上げておきたいと思います。
それで、地方大学の独立行政法人化の法案というのは、どうも国立大学と関連はするけれども、別法律になるようですね。どういう段階に来ているのか、法案の形というのはもう大体わかっているのか。それから、これについての国会への提出その他の日程というのはどういうふうに考えられているんでしょうか。
○久保調整担当部長 先ほどもご説明申しげましたとおり、仮に地方独立行政法人法案ということで仮称で申しげておりますが、この内容につきまして詳細をまだ公表されている段階ではございません。
ただ、法案を所管する総務省からは、今通常国会への法案提出に向けて準備作業を進めていると聞いておりまして、現段階で私どもが予定しております平成十七年度の開設、法人化には十分間に合うというお話を伺っております。
○曽根委員 これは文部科学省だけの間題ではなくて、聞くところによると、この地方大学の独立行政法人化というのは、例えば地方の公立の医療機関の法人化などとも抱き合わせで法案が準備されている。大学の間題もありますけれども、公立病院の独立行政法人化という、これまた関係者にとっては非常に大きな間題を抱えたのと一緒になっているわけですよね。
審議がどうなるのか、関係者の合意はできるのかという点では、これはかなり、国会に提出までももちろんですけれども、提出されたとしても議論を呼ぶ問題じゃないかと思うんですが、これは間違いなく十七年度に間に合っているというふうに、確実だというふうに保証がどこかあるんですかね。
○久保調整担当部長 これは国会のご論議にゆだねるべきものでございますから、私どもが保証するとか保証できないとかというものではないと理解しております。
しかしながら、私どもは、法案の成立のいかんにかかわらず、仮に法案が無事に法律として成立した場合のことを想定して、十七年度の予定に向けて着実に準備を進めていかなければならないだろう、かように考えているところでございます。
○曽根委員 随分自信のあるようなご答弁なんですけど。
では、全国に地方大学を持っている自治体などの団体が幾つあって、その中で、東京都のように期限を切って独立行政法人化を今検討している自治体というのは、幾つあるんですか。
○久保調整担当部長 法人化の検討を進めている自治体のお尋ねでございますが、全国公立大学設置団体協議会で昨年の四月に調査をしております。これでは、全国五十五あります設置団体のうち二十六団体が法人化の検討を進めているというふうに聞いております。
また、公立大学協会の方で昨年夏に行いました調査によりますと、六割強の公立大学で法人化の検討が進められているという結果になっております。それらのうち、具体的に平成十七年四月までに法人を設立するという形で表明しておりますのは、聞き及んでいる範囲では都を含めて四団体でございます。
○曽根委員 先ほど、東京都が引っ張るというようなお話も出されていましたが、大きいところでは東京都と大阪府ですよね、期限を切って今進めているのは。しかし、東京都や大阪府のように大きな自治体が、府立大学、都は都立の大学の統合と合わせた独立行政法人化、これが全国に及ぼす影響は非常に大きいわけですね。うまくいけばいいだろうというふうに思っているでしょうが、ミスリードということだってあり得るわけですよ。
特に国との関連でこれは非常に微妙な段階ですから、私はその点でも慎重であるべきだというふうに考えます。
で、恐らく独立行政法人化の法案は、地方自治体の分権化の時代ですから、この法案が通ったとしても、独立行政法人化をするかどうかは自治体の判断で決められるはずですよね。ですから、法人化の検討をしている団体が半分ぐらいしかないんだと思うんです。そういう点からも都は独自に判断を持って慎重に対処すべきだ、これは意見として申し上げておきます。
そういう中で、それでは東京都の内部検討、都立大学の内部での検討は今どういう段階に来ているかをお聞きしたいと思うんです。
前にもちょっとお聞きしたかと思うんですが、受験の要項などを再来年受験する受験生、今度二年生になるわけですが、その受験生の人たちに示すというのはいつごろになるんでしょうか。
〇久保調整担当部長 大学の概要を受験生に対して示すという間題は、ただいまの関連で申しますと、法人化の間題とどういう関連になるかというところの説明からさせていただきたいと存じますが、法律によりまして検討内容に影響が生じる可能性がございますのは、あくまでも法人化に伴う運営組織や人事制度などでございまして、新大学における入試や教育内容など、受験生に伝えるべき情報は法律に左右されることはないと考えております。
したがいまして、委員ご指摘のとおり、大変重要な事項であります新大学における入試やカリキュラムなどにつきましては、法律の成立する時期いかんにかかわらず、その内容が固まった時点で受験生に対して適切に周知を行いたいと考えております。
○曽根委員 聞いたことより聞いてないことの方が詳しく答えがあったんですけども、そんな先読みしないで、もう少し順序よく答えてほしいんです。
率直にいって、年度内という話でしたよね。私、前にしつこく聞いたんです。そうしたら、年度内には受験のための何らかの要項みたいのを出すという話だったんですよ。で、資料もお願いしたけれど、出なかったわけですよね、今回。いつごろになるんですか。
○菊地改革推進担当部長 十七年度入試の受験生に対します入試概要の公表につきましては、当初はご指摘のとおり年度内に実施する予定でございましたが、若干作業がおくれておりまして、現在、七月の大学説明会に向けて、六月上旬には公表できるよう準備を進めているところでございます。
○曽根委員 これはやはりいろいろ事情があるんでしょうけど、私はむしろ、
余り強引に急ぎ過ぎて、合意が形成されないうちに、どっと行けというふうなのはまずいと思うんです。慎重であっていいと思うんですよ。ただ、だとすると、七月には大学説明会、これは要するに今度二年生になる生徒さんですよね。受験志望校をもう二年の夏休みぐらいには選ばないと受験準備ができない、こういうことになりますよね。したがって、受験生に影響があるわけですよ。もちろん、それに間に合わせるおつもりなんでしょうが、そこで先ほどの久保さんのお答えの問題がなんですけど、法人化は、受験生が選ぶ上でも当然ひっかかってくる問題があると私は思うんです。さっきは関係ないとおっしゃったけれども、それは多くの受験生、本当に大学で何を学ぼうか、これからどういう道を進もうかとまじめに考えている受験生にとっては無関心ではあり得ないと思うんですよ。
例えば都立大学だって、大学四年卒業して大学院に残る学生さんは相当いるでしょう。半分以上じゃないですか。理科系なんかはかなり残りますよね。残ったうちのまた何割かは大学で研究室に入る人が出てくるわけですよ。そうすると、身分の問題が出てくるわけですね、大学の教員の一部になるわけだから。まさにかかわりがあるわけですよ。また、その将来を考えて都立大学を選んでくれるような学生さんが欲しいわけでしょう。そうですよね、違うんだったら話にならないんだけれども。都立大学をそこまで考えて選んでくれる受験生が欲しいわけですよね。だとすれば、法人になって教職員の身分がどうなるか、無関心でいられない間題ですよ。そう思いませんか。(「それが全員じゃないわけですよ」と呼ぶ
者あり)全員だなんていってないんだよ。そういうまじめな学生がいるって言ってるんだよ。
○久保調整担当部長 委員ご指摘のように、そのような学生もいるかとは存じますが、それとは別に、都立の新大学を希望する受験生すべてがそのような将来設計を持っているかどうかも現段階ではわかりませんし、これは先般来お答えしておりますとおり、法人化になりましても実質的に不利にならないように、身分については十分に教職員と話し合いを進めていくというご答弁を申し上げたところから趣旨をご理解いただきたいと思います。
〇曽根委員 その後半の話が、教職員との間でもう大体合意に達しているならいいですよ。
まだ全然でしょう、はっきりいって。そういう中で、再来年受ける、つまり受験校を選ばなきゃならない受験生に影響があるという問題は、一部か全部かはともかくとしても、そういうまじめな受験生にとっては大きな問題だと思いますよ。それは否定できませんよね。
それから、もう一つは授業料の問題ですね。これは聞いていらっしゃると思うんですけれども、もう既に国立大学の方では法人化は来年の春ですから、授業料をどうするかについての検討がやられている大学があるようですよね。今52万円ぐらいですか、年間。大体どういう考えで、それがどれぐらいになろうということが検討されているか、ご存じですか。これはまさに受験生に影響することなんですけれども、知っていたら教えてください。
○久保調整担当部長 申しわけございません。手元に資料等、情報がございませんので、承知しておりません。
○曽根委員 これは別に予定していなかったので、申し上げていなかったので、数字はいいです。後ほど調べてほしいんですけどね。これは本来なら知っていていいと思うんですよ。
例えば名古屋大学の組織改革検討委員会というところでは、学生納付金について、国からの運営費交付金の配分額が学校経費の五〇%になった場合、これはかなり可能性が高いんですけど、授業料を七十から八十万円程度に設定せざるを得ないというのを中間報告で出してるんです。同じように新潟大学でも検討専門委員会中間まとめというのを出して、ここは附属病院がありますが、附属病院を除いた八十六万円という額が出ている。さらに、ここでは、単位ごとに学費を設定することも検討されていて、医学系、歯学系は百三十六万円、自然科学系は八十三万円、教育学系四十八万円など、格差を設けるということも検討されている。
これはまさに受験生の入った後の負担の間穎ですよ。教育費の負担の問題は学問の内容とは別だぞと前におっしゃったけれども、しかし、そうはいったって、かすみを食って生きてるわけじゃない、学生だって、その家族もね。こういう厳しい世の中ですから、学費がどうなるのかということは、これはもうまさに無関心でいられない問題だ。
そういうことも含めて、六月ぐらいに出すというその受験の要項の中に、こういう問題はもちろん入ってこないでしょうけれども、それを前提に都立大学を選んでくれた学生に、そういうことで今後迷惑をかけないんだということをここできちんと保証すべきだと思うんですよね。
そういう決意を持たないと、これから大変なことになっていくのでね、形も中身も全部変わっていくとすれば、そういう点について、ぜひ今考えている点をお示しいただきたい。
○久保調整担当部長 授業料等につきましては、現在進められている考え方によりますと、いわゆるプライスキャップ制、上限方法を設定するということで検討が進んでいるやに聞いております。
この場合には、当然のことながら、地方自治体において設置しております公立大学につきましては、何らかの形で議会のご審議が必要となるのではないかというふうに理解をしております。
○曽根委員 もちろんそういうふうに議会にかけていただくようなものにしていただかなきゃ困ると思うんです、都立大学であることは間違いないんでしようから。しかし、国の方でいえば、設置者は国であるというふうにいっていたのが、今、法案になってみたら、もう国じゃなくて独立行政法人そのものが設置者になるというふうに、大学関係者に約束してきたことまで変わっていっちやっているわけですよ。それでまたひともめしているわけですけどね。そういう状態ですから、都立の大学の改革についても、この問題はどれだけ時間をかけてもかけ過ぎということはないので、根本にかかわることですから、十分慎重な検討を引き続きお願いしたいと思うんです。
それから最後に、今回、予算の中で負担増の問題としては、学生寮の値上げがあるんですね。説明の中では、もとが低いんだから、一・五倍になるんだけれども、勘弁してくださいという話がありました。勘弁じゃないか、認めてほしいんだという話がありました。
私は、月々の負担何千円の範囲で、それが学生の生活を脅かすとかいうことは、実態から見てそういえないと思います。しかし考え方は、つまり、今度のさまざまな東京都の関係する公共料金の考え方によると、要するに基本的には受益者負担、実費負担という原則に向けて、現在の料金から最大限でも一・五倍にするという考え方で今回やるわけですよね。既にほかの局のやっている料金改定の中では、これから繰り返し繰り返し一・五倍ずつ(改定を)やって、相当上げていくんだという説明までされているところもあるようです。そこまで露骨にやられればはっきりするんですけど。
だから、もとが低いから、そういう意味では一・五倍といってもそれほど大きな額になりませんが、これは今後、大学の授業料、もし新しくなったとすれば、その大学の授業料の考え方にも当然つながっていく問題だというふうに考えます。そういう点でいうと、実費負担、受益者負担の原則をどこまでも進めていくと、先日来私どもがいっておりますように、家計は苦しいけれども、負担能力は低いけれども、学問を志して頑張ろうという受験生にとっては非常につらいことになるというふうに思います。それを受け入れるのが公立大学の役割だという点からしても、学生寮の値上げについても、この考え方そのものを認めるわけにいかないということを申し上げておきたいと思うんです。
以上です。
|