2001.10.22 : 平成12年度_公営企業会計決算特別委員会第1分科会 本文
◯曽根委員 同じく、移転問題について質問します。
今まで、移転先にありき、豊洲先にありきだったんじゃないかとか、環境や安全の点で豊洲の場所はどうなのか、それから、時代の流れと市場の役割などについての議論がありました。
それらの点については省きまして、まず第一点目に、関係業界との合意についてお聞きしたいと思いますが、この移転の話が出たのは九八年四月、業界団体から移転の可能性について問い合わせがあった。それの最初の東京都の返答は、要するに関係六団体で合意が前提ですよということでした。しかし、実際には、つい最近まで六団体中二団体が団体としては反対しているというにもかかわらず、移転すべきというゴーサインが審議会で出た。それによる混乱ももちろん起きているということです。
したがって、この四月に移転すべきという結論を出した経過の中で、私、少なくとも六団体において完全に賛成できる、合意ができるという何らかの大きな見通しでもない限り、当初の約束に対する大きな逸脱になってしまうんじゃないかと思うんですが、特に大きな東京魚市場卸売協同組合、略称東卸、この組合との協議を行ったのか、そこでの状況はどうだったかについてお聞きしたい。
◯小山参事 東卸組合との協議というお話でございます。豊洲移転に関する市場協議会との協議は、築地市場の全業界団体の代表者と都で構成する築地市場再整備推進協議会を公式な協議機関としてございます。しかしながら、移転について、より一層の理解と協力を得るために、個々の団体に対しましても、都の説明を聞く場や都との意見交換の場を設けていただくよう働きかけております。
お尋ねの東卸組合につきましては、平成十二年十一月に同組合理事会に出席いたしまして、移転問題についての都の方針や用地確保の交渉の進捗状況を説明させていただきました。都といたしましては、このような働きかけを通じまして、移転問題に対する同組合との論議が深まるよう努めてまいりました。今後とも、また機会がある限り努めてまいりたいというふうに考えております。同組合が作成いたしました移転反対のビラが築地市場内には張られておりますが、このような努力の結果といたしまして、現在、徐々にそのビラの貼付が少なくなってきているという事実がございます。
なお、四団体賛成、二団体反対というお話がございましたが、現在は五団体賛成、一団体反対、機関決定上はそういうふうになってございます。
◯曽根委員 反対の組合が最近一団体、理事長さんの交代によって変更になったと。私、つい最近までは二団体だったというふうに先ほど申し上げた。
それで、東卸ですけれども、今、お話の中で反対のビラが減ってきたと。しかし、理事会にご報告されたけれども、組合としての反対の意向を撤回されたわけではないわけですね。そういう点では、関係者の合意はできていないということは、もう明確な事実であります。
同時に、中央区区議会、区長こぞっての反対の会もつくっての運動があり、つい最近も、私どもの会派で中央区議会で質問したんですが、区長自身から出している東京都に対する疑問に対しても誠実な答えはないという答弁が来ており、中央区としても反対の意思は明確という状況が続いています。そういう中で、移転先の江東区との話し合いに入っているというのも、私、非常に何か不明朗な話だなというふうに思います。
特に、私は関係業界、特に大きな位置を占めている東卸組合の中での実情、ここから見ますと、このままの状態で移転を推し進めていくならば、必ず落ちこぼれると。それも一割二割が落ちこぼれる程度じゃ済まない、半分以上、場合によっては移転できないで、ついていけないというところが出る可能性があると思います。これは、公式に聞いても東京都としては関与していないと思いますが、東卸組合自身が巨額の負債を抱えていて、この返済そのものの見通しが極めて厳しいという状況にあり、確かに一定数の若手の社長さんにかわったところとか、やる気のあるところは移転して心機一転やろうじゃないかという声があるのは事実ですが、大半のところはなかなか厳しくて、しかもこの不況の中ですから、もう移転が決まったらついていけないという声が率直に私たちにも聞こえております。
それで、築地市場が移転によって将来性が見えているのかという問題なんですけれども、築地市場の水産、青果、それぞれのこの間の取引高の推移はどういうふうになっているのか。それから、移転後を見通して、東京都としていろいろシミュレーションもやっているかもしれませんが、この先の築地市場としての取引の見通し、上向く可能性があるのかどうか、この点はいかがでしょうか。
◯内村事業部長 まず、第一点目の築地市場におきます水産、青果の取扱高の推移でございますが、水産物につきましては、ここ数年、数量、金額ともに減少傾向にございまして、平成十二年は取引金額が引き続き減少したものの、取扱数量は前年と同様、わずか増加したという状況でございます。また、青果物でございますが、同様にここ数年、数量、金額とも減少傾向にありまして、ただし平成十年は、天候不順の影響から数量減、金額増となりました。このような状況でございます。
また、二点目の市場業界の経営問題でございますけども、近年、市場を取り巻く流通環境が大きく変化する中で、景気の低迷が長引き、先生ご指摘のように市場関係業者の経営は大変厳しくなっております。特に、築地の水産仲卸業界、大変厳しくなっておりまして、水産は平成十一年で見ますと五六%程度が赤字業者となってございます。
基本的に、業者の経営の健全化といったものは経営者自身の責任で行うものであると考えますが、出荷者や買い出し人に安心して都の中央市場を利用してもらうためには、市場業者の信用力の確保と経営基盤の強化が大変重要であると、このように考えてございます。
◯小山参事 先生のご質問に、今後取扱高が大きく上回るのか、そういう可能性があるのかというご質問がございました。二〇〇七年をピークといたしまして、我が国の人口は減少に向かうと考えられております。一人当たりの食糧消費量も頭打ちという現状でございまして、市場取扱高が右肩上がりで上昇するという時代は、私ども、もう終わったというふうに認識してございます。
しかし、市場間競争の激化や流通効率化の動きが加速する中で、築地市場を初めとする大都市拠点市場が市場流通に占める割合は高まってきている、こういう実情もございます。取引と物流の効率化や情報化、温度帯別の商品管理や衛生対策の向上など、出荷者や買い出し人のニーズにこたえる基幹市場づくりを豊洲で行っていけば、築地市場は現在の取扱高をやや上回る水準で推移する可能性はあるものというふうに考えております。
◯曽根委員 私の実感とも、都の今のお話は非常に共通したものが多いと思います。
それで、確かに仲卸さん、中に入っているとはいっても、個々の営業については自分たちが本当にやる気を持ってやってもらわなきゃならない、そこまで東京都がおんぶにだっこするわけにいかないと、これはそのとおりだと思います。しかし、東京都がいわば主導して市場を移転させるとか、もしくは再整備をするとかいうことをやる以上は、少なくともその業者の方々が働く器についていえば、最大限その業者の方々が仕事がしやすい場所にしなければならない、これは東京都の責任だと思うんですよね。
そういう点から、東卸を含めて今非常に厳しい、半分以上が赤字という現状にある市場関係業者の方々の営業を土台で支えていくという責任は、東京都には明確にあると思うんですが、これは簡潔にお答えいただきたい。その責任を踏まえて、この再整備問題を考えていくということでよろしいんでしょうか。
◯小山参事 場内で働く業者の方々が使いやすい市場にするということは、どこの市場においても開設者の責任の一つでございます。豊洲市場においては、今まで以上に使いやすいオペレーション、こういったようなものを実現していく方向で考えております。
◯曽根委員 私、これは単に新しいものをつくったときの中身の問題だけじゃないと思っています。やはりシチュエーションの問題があるということです。そして、ホームページで新市場基本コンセプト懇談会ニュースというのが公開されていますので、私も見させていただいたんですが、ここに、先ほどお話のあったように、非常に厳しい、時代も変わってきている、この中で今後取引高が若干でも上向いていくという可能性があるとすれば、二つだというふうに議論をされているんですね。
その一つは、集散市場への積極的な対応だと。つまり、競りとそれから相対取引が、今はもう同格になっていますよね。競りを中心に今まで頑張ってきた築地市場ですが、入荷と出荷で通過場所として使うというやり方に積極的に是認を与えるべきだ、そういう意見がある。そうすれば取扱量は間違いなくふえますよね。しかし、そのときには、このままでは市場関係業者の利益にはならないと、ただ通過していくだけなんですから。大手に場所をとられるだけだという意見はもちろんあって、本当にそれでいいのかという問題がある。
もう一つは、ほかの市場との市場間競争に勝ち抜けば、地方市場が今軒並み厳しい、つぶれる可能性ももちろんある、そういうもののいわば受け皿として大都市拠点市場の役割は出てくるだろう、高まるだろうという話もある。この二つなんですね。
どちらも、ある意味ではほかのものが、ほかのところがつぶれたり何かしたときにこっちが上向くという話であり、片方は、いわば中の業者の方の、今の段階では利益にならない場所提供というふうな形に市場がされてしまう可能性、危険性を含んでいる。私、どちらも築地市場が目指すべき方向とは違うんじゃないかというふうに、この中の議論を見た限りは思わざるを得なかった。
私はむしろ、先ほどどなたかもお話がありましたけど、新しい築地市場の方向性としては、今までは競りもしくは相対取引、つまり卸売業者、それから仲卸、小売業者の間での取引が中心であった市場ですけれども、もう一般消費者もどんどん入ってきているし、場外市場も含めれば、いわば一般消費者への直接サービスも含めた時代への多様な対応が求められるんじゃないか。そこが、これからの時代の市場のあり方としては考えていかなければならない一つの方向じゃないかと思うんです。
そういう点で、今の築地の場所、大江戸線も開通して駅前の一等地になった。それと豊洲と比べてみた場合、どちらにこれからの時代に発展していける──スペースにはもちろん差がありますよ、二倍ぐらい違うと思うのです。しかし、シチュエーションとしては、私は築地の現在地の可能性というのは極めて捨てがたいものがあると思うんですが、いかがでしょうか。
◯小山参事 先生ご指摘のとおり、ただいま市場の物流、市場に買い出しに見えられる方、さまざま多様化しております。出荷者や買い出し人等の多様化が進んでいる。したがって、市場としては、その人々のニーズに対応した物流、情報システムの革新や保管、加工、商品開発の強化などの新たなシステムの施設を導入していく必要があるというふうに考えております。
そのように考えた場合に、現在の築地市場は、慢性的な市場周辺路上での駐車や荷さばき、物流コストの増嵩、都民の消費ニーズの変化に対応できる商品開発力や商品管理能力の向上におくれている、こういった問題に直面しているわけでございまして、これらに対応する機能を導入することは、現在の築地市場では私ども、狭小に過ぎる、不可能であるというふうに考えております。
したがいまして、シチュエーションとしては、むしろ築地市場が豊洲に移転することによって初めてこういった問題に対応していける、そういったことができるというふうに考えております。
◯曽根委員 確かにスペースは、今いろいろ議論されている対象としては四十ヘクタールぐらい、現在地が二十三ヘクタールですから、大きく広がる。移転のメリットとすれば、そこが最大のものだと思います。しかし、同時に都心からは、今の場所から二・五キロ離れて、しかも現在予定されているアクセスは道路一本、環二だけですので、そういう点で考えた場合、本当に量的拡大が大きく望めないとするならば、質的強化という点で、どちらの場所がいいのかは、私はまだまだ大いに議論すべき余地があるというふうに思うのです。
したがって、審議会の結論は、業界との先ほど申し上げました合意という点でももちろん、環境問題、安全問題、それから移転がいつ決まったのかという不明朗な部分、中央区の反対なども含めて、同時に市場のあり方という点でも、まだまだきちんと議論されなきゃならない問題が残っているというふうに指摘をしたいと思います。
さて、その問題はそれとしまして、現在の場所でも、どちらにしても対策をとらなきゃならない緊急問題があります。特に私が聞いているのでは、場内の車両の改善、それから冷蔵庫の更新です。冷蔵庫は民間の持ち物が大半なので、東京都が資金援助をするとかいう関係ではないにしても、働いている労働者の話では、アンモニアガスが漏れるのはしょっちゅうのことで、もう耐用年数ぎりぎりに来ていると。移転まで十何年ですか、予定どおり移転したとしても。再整備したとしても、どちらも時間がかかる。どちらになるにしても改善が急がれている、何らかの対策を打ってほしいという要望が聞こえております。
こうした問題についての必要な対策を検討し、できるところからどんどんやっていくべきだと思うんですが、いかがでしょうか。
◯小山参事 整備待ちにならずに、必要な対策をどんどん講ずるべきだという趣旨のご質問だろうというふうに思います。
都では現在、今年度を初年度とする第七次卸売市場整備計画を策定中でございます。本年四月に卸売市場審議会から、その基本となる整備方針の答申をいただいたところでございます。
その方針の中で、移転までの間、現在地の市場の機能を維持し、流通の変化に対応するための整備が必要であるとしてございます。都ではこの答申を踏まえ、既に築地市場暫定整備案を業界の方に提示をいたしております。
その内容の主なところは、再整備工事用種地の開放や、卸売場の再配置等によりまして、駐車場及び場内交通動線の確保と物流の効率化を進める、二番目に、生鮮食料品の鮮度保持、品質管理の向上のための低温卸売場等の整備、三番目に、老朽化した施設設備の保全と機能維持ということでございます。
場内搬送の車両につきまして、電動化は既に補助制度を設けて、従来から取り組んでいるところでございます。
また、民間冷蔵庫につきましては、所有者による設備の更新等が既に実施されてございます。
◯曽根委員 現状で一番大きいのは、だれがどう責任を持ってやるのかはともかくとして、すぐ解決ができる冷蔵庫の問題だと思うんです。大きな地震が来れば、本当に危ない。もし大きな事故があった場合には、全体の市場を運営している東京都の責任も免れませんので、業界との話し合いを含めて、対策を講じていただきたいと要望しておきます。
次に、その財源の問題なんですけれども、たしか九六年、平成八年度に市場会計から四百億円の一般会計の貸し付けが行われ、その後、昨年度、この決算年度では二千億円の貸し付けがさらに行われています。この返済がもう間もなく始まっていくと思うんですが、それぞれいつから返済が始まるのか、返済が最終的に終わるのはいつなのか、教えてください。
◯長尾管理部長 まず初めに、平成八年度に貸し付けました四百億円ですが、これは平成十五年度で一括償還される予定になっております。
それから、平成十二年度に貸し付けを行いました二千億円ですが、平成十七年度から償還が始まり、平成二十一年度までに返済される予定になっております。
◯曽根委員 これは、私が聞いたうわさの範囲ということにしておきますが、この二千四百億円はもう返ってこない、だから移転して、築地の土地、豊洲の土地に比べればはるかに値がいい、売れば財源ができるじゃないかという話が、まことしやかにというか、私はそれなりの根拠があると思うんだが、聞こえてくる。もうあきらめているんじゃないかという声が聞こえてきたので、改めて確認をしておきたい。これらは、きちっと返済させる見通しと決意がおありかどうか。
◯長尾管理部長 返済されると確信しております。
◯曽根委員 市場のお金ですから、市場の会計として適切に処置していくべきなんですね。この問題があるから、事態が推移していけば後でだんだんわかってくるんでしょうけれども、移転に拘束されていく、移転じゃなければできなくなっていくというようなことがないように、これは申し上げておきたい。
市場会計については、昨年度、決算年度では、このほかに食肉市場の北側棟の改築も行っているわけで、これは要望の範囲にしておきますが、私たちは、と場関係については、同和業者が入り込んで、かつて特命随契ということで、入札もしないで莫大な事業を発注した経緯があって、そういった企業については、指名停止にして入札に入れるなということを厳しくいってきたんですが、残念ながら北側棟には銭高組が入ってしまいました。入札ではありますけれども、私たちはこの点は厳しく意見を当時申し上げました。
また、この北側棟の建設は、食肉市場のいわば事務部門、そしてPR部門がありますので、この間起きている狂牛病の問題やO157問題など、消費者に対して、または関係者に対して、十分正確な情報を伝えられるような施設の充実もぜひ行っていただきたいということを最後に申し上げて、終わります。
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