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2000年11月14日厚生委員会
介護保険実施後の特養ホームの実態、シルバーパス有料化の影響を追及

◯曽根委員 今、介護保険の現状について大体わかったというようなお話もあったんですが、今まで余り質問が出ておりませんでした施設の介護の問題について、私の方から何点か聞いておきたいと思います。  東京都もご存じだと思うんですが、我が党は、八月の中旬から九月にかけて、都内にある都の直営の二施設等を除くちょうど三百、ことしの夏の時点で存在する都内の特別養護老人ホームの全施設を対象として調査を行いました。郵送で調査用紙を送りまして、その後、地元の都議会議員がいるところはすべて各地元の施設を回りまして、いろいろ聞き取りもしてまいりました。回答は百六十を超え、これは発表してから後もふえておりますが、過半数の施設から回答が寄せられております。  その中で特徴的なことは、介護保険導入で、特別養護老人ホームの運営について聞けば、これは大変厳しくなったと、運営が厳しくなったという回答が八九%に上っております。それから、都の加算事業が廃止されたことについて、この影響は大変大きいという回答も七九%でほぼ同等の数字で、大半の施設が、介護保険の導入と、またそれを一つの理由として都の加算事業も廃止になったわけですが、このことの影響は非常に大きいということを訴えておりました。
 現に、数字の問題ですが、収入については、七四%の施設が減収したと回答しています。影響額についても回答をもらったんですが、これはまだはっきり出ている施設と出ていない施設がありましたが、回答のあった百余りの施設の金額を計算してみますと、いろいろばらつきはありますけれども、飛び抜けて多かったり少なかったりするものを除けば、大体六、七%程度の減収が、ことしの五月段階で、昨年に比べて収入が落ちているということが、各施設長さんからの回答の中であらわれました。これは、百億円の経営支援事業が行われていることがもちろん前提であります。  先日、十月になってから、東社協の役員の皆さんとの懇談があったんですが、その際、ある施設長さんは、とりわけ特養の中でも小規模の特養が経営が厳しいと。経営支援事業がなかったら、半分ぐらいはつぶれていただろうという大変衝撃的な発言をされました。我が党の調査の結果に照らしてみても、この発言は非常に実感のこもったものだというふうに思っております。  そこでお聞きしたいんですが、我が党のこの調査で、実際に各施設、七割方の施設が収入が減っているという事実について、東京都の方ではこの問題についてはどのようにとらえているのか、実際に調査を行っているのか、その点お聞きします。

◯若林保健福祉部長 特養ホームに対する経営支援事業は、平成十二年度の四月から実施しているところでございますが、本事業を実施するに当たりまして、特養ホームの代表者と、昨年から一年かけて十分な討議を続けてきたところでございます。  その中で、特養ホームの代表者からは、全施設が施設経営全般にわたる改革を行い、とりわけ職員体制、給与体系の見直し並びに諸経費の節減等を図り、より効率的かつ安定的な経営を目指すと、こういうような意見表明がございました。これを受けまして、都としても、民間企業はもとより、多くの団体等で厳しい見直しをしている現状を踏まえまして、経営支援事業の補助額の積算に当たりましては、これまでの都加算、公私格差を含めまして、その合算額の五%に相当する額を支援事業の額から外しまして、九五%という形で経営努力をお願いするということで、経営支援事業を立ち上げたところでございます。  その結果、介護保険制度の、介護保険収入を受けて、四月の時点でございますけれども、粗い数字でございますけれども、これまでの措置費、公私格差、都加算と、今回入金するであろう介護報酬との比較をしたところ、約七十数%の施設がマイナスになるという数字は私どもも出ております。それは、あくまでも経営努力をするという前提での単純な比較で出したものでございます。

◯曽根委員 大変私たちの調査と細かい点でも一致しているので、ちょっと今驚いたんですが、もともと都の加算事業で経営を支えてきた部分があって、それを、東京都の姿勢として加算事業廃止ということを各施設に方針を示してやってきたわけですから、施設の方は、経営を何とかしなきゃならないということで態度表明もあったでしょうが、その計算がほぼ実際に起こっていると。マイナス五%、実際にはそれよりも下がっているというふうに私たちは見ているんですが、起こっているということについて、これはやっぱり重大なことだと思うんです。確かにいろいろ努力はされていると思いますが、その後その経営状態が改善されているというふうには私たちは聞いておりません。
 しかも、四月、五月段階は、保険請求に不備があって、国保連との関係でいいますと、介護報酬が九割分しか支給されていない施設もかなりあるわけですよね。
 ではそれが戻ってくるのかというと、必ずしも戻ってくるという状況じゃなくて、むしろ減らされる場合もあると。さらに、精算すると、最終決算では介護報酬をさらに返さなければならないということもあり得るというような話がありました。  それで、この都加算の廃止の具体的影響について、多くの施設からどういうふうにその影響をしのいでいるのかということについて回答があったんですが、利用者のサービスの中で、例えば食事の予算を減らさなければならないというのが二割近くありましたし、旅行だとか外に出る行事は実際減らさなければならない、施設の中だけで何とかしなければならないという状態になっているという施設が六割ぐらいに及びましたが、こういう状況はつかんでいるでしょうか。

◯若林保健福祉部長 私ども、特養ホームに対しては、東京都の立場で、これまでも、介護保険制度に移行後の特養ホームの指導検査を実施してきているところでございます。また、先ほど申し上げましたように、特養ホームの代表者とも、五月、八月、さらに十月と、継続して協議を続けているところでございます。  この二つをあわせて、ただいま利用者サービスの面でのご指摘がございましたけれども、検査の面から見ましても、食事について内容を悪くしているというところは報告が来ておりません。また、特養ホームの代表者からは、これから選ばれる施設としてサービスをもっともっとよくしていかなければならないという点から見ても、食事に手をつけるということは考えられない、こういうことをいっております。さらに、入浴等のサービスについても、きちんとこれまでどおりサービスを提供しているという報告を受けております。  さらに、外出、レクリエーション等についてのご指摘がございましたけれども、これについては、確かに大きな外出という形での行事は見直しているところが多くありますけれども、それにかわる方法として、職員が心のこもった手づくりの行事を園内でやって利用者と一緒に楽しんでいるという形で、行事の中身を転換しながらサービスを落とさないようにしている、そういう報告をもらっているところでございます。

◯曽根委員 お年寄りを外に出してあげるということがいかに大切なことかというのは私がいうまでもないんですけれども、それを園内の施設行事に切りかえたと、それでサービスを落としていないんだということ自体が、やっぱり施設介護の実態をわかっていないと思うんです。  この特養ホームというのは、一たんできてしまえば、後は人間が人間をお世話して介護しているわけですから、ほとんどが人件費とサービスの費用なんですよ。その五%マイナス、もしくはそれ以上のマイナスが出た場合どこにしわ寄せするかといったら、職員にしわ寄せするか、サービス内容でどこかの予算を削るかしか、ほとんどそれしかないわけなんです。  したがって、外に出る行事ができなくなったというのは、私は、特別養護老人ホーム、特に地方のように、敷地がゆとりを持ってとれるような土地代が安い施設じゃなくて、都内の、しかも身近なところにということで、最近は二十三区でも狭い敷地をうまく活用してやっているわけですが、そういうお年寄りを外に出してあげるという行事ができなくなったことのサービスの水準、これは低下ではないのかと。  この制度が始まる前に、東京都は、加算事業を廃止しても介護サービスの水準は落とさないということを盛んにおっしゃっていましたが、これは低下でないというふうにいい切れるのでしょうかね。

◯若林保健福祉部長 利用者の処遇につきましては、いろいろな角度から見る必要があるというふうに思います。大きな行事という形で、観光バス等を使って遠くまで外出をするということが即サービスがよくて、きめ細かいサービスを身近にやるというのがサービスでどうなんだという点では、サービスについてはいろいろな角度から問われるというふうに思っております。  私どもさきに答弁申し上げましたように、特養ホームの代表者からは、サービスというのは、いろいろな形で、その利用者お一人お一人に合ったサービスを提供していけばいいのであって、外出を全部とめているとかそういうことでは一切なくて、周辺に出かけたりとか、そういうのはきちんと継続してやってきているわけでございまして、私どもは、これまで得ている情報では、そう先生がご指摘になるような大きなサービスの低下はされていない、そういう認識をしております。

◯曽根委員 そういうふうにおっしゃるので、一つだけ簡潔に実例を紹介しますが、これは練馬の五十人規模の、小規模なんで厳しいところなんですが、特養の施設長さんで、この方は、区の職員だった方が退職して施設長になっているんですよ。だから、必ずしも福祉の専門家じゃないんです。その方が、最近十月に地元の議員が訪ねましたが、とにかく外に出られなくなったと。出してあげられなくなって、二十四時間三百六十五日閉じ込めっ放しだと。自分がそういう立場に立ったら大変やり切れない。ここで最期を迎える人が多いので、もう少しゆとりを持って最期を終わらせたいんだが、残念ながらそれはできないと。私だったら、この現状では特養に入りたくないというふうにおっしゃったそうです。  その施設長さんが巡回しまして、その日誌を見ても、とにかく毎日毎日何をやっているかというと、食事をさせ、排せつをさせ、週に二回入浴させてあげる。それの繰り返しだと。変化がないと。今年度に入ってから、室内のお楽しみ会でさえ一回もできていないと。前は隔月で、二カ月に一回はやってあげられたのに、それすらもできていない。それは、単に外に出られないだけじゃなくて、施設の中の行事も削らざるを得なくなっているということなんですね。それがつらいというふうにおっしゃっていたそうです。  これは、決して専門家じゃなくて、志を持って特養の施設長になった方が、やっぱり見ていてつらいといわざるを得ない現状が、特に小規模特養にはあるということなんですよ。これはやっぱり受けとめるべきだと思いますよ、私は。表向きのきれいごとだけで終わらせてもらいたくないんです、こういう問題は、本当に。  それで、百億円の支援事業が今年度行われていると。これは三年後に見直しですよね。来年度、その翌年度、三年後というふうに、どういうふうになっていくんでしょうか。

◯若林保健福祉部長 百億円の経営支援事業につきましては、先ほども申し上げましたとおり、特養ホームの代表者と十分協議をし、また全施設の実態調査をやった上で、案をつくって実施をしている事業でございます。  今年度百億円の事業につきましては、事業の中身としまして、利用者のサービス維持向上のための経費が三十三億円、それから、円滑に介護保険制度に移行するための経費が四十二億円、その他周辺環境の整備として二十五億円、合わせて百億円の事業でございますが、来年度は一五%の見直しをするということで協議が調っておりますので、利用者のサービスを維持向上する経費は、三十三億円はそのまま残します、円滑に移行するための経費については二十二億円とします、さらに環境整備につきましては、本年度の執行を見込むことによって、来年度どうしても取り組まなきゃいけないという事業を残しますと、合わせて六十億円ということで来年度予算要求をしたところでございます。
 十四年度についてのお尋ねもございましたので、十四年度につきましては、同じように、まだ今の推計、これは十四年度の予算要求はしていないわけでございますが、予定といたしましては、円滑に移行するための経費を十二億円ということで計上しますので、今の推計値としては五十億円、こういうことで予定をしているところでございます。  三カ年で本事業を見直す、あるいは廃止をするということで協議が調っておりますので、十五年度につきましては、円滑に移行するための経費はゼロにする、そうして、サービスの維持向上のための経費は内容についてさらに見直しを図る、こういうことでございます。

◯曽根委員 三年後は、よくて三十三億が残るかどうかと。それも見直しなんですよね。  現状、特別養護老人ホームの経営をよほど大転換して、職員は常勤をもう一切なくして非常勤ばっかりにするとか、よほどの荒療治をしないと、これは、例えば七十億円が削減されるとすれば、今のマイナス、都の試算で五%、我々の調査で六、七%が、一〇%を超えるでしょう、減収額が。これは、本当に倒産、福祉法人の解散が出かねない事態になっていくと思うんです。  多くの施設長は、私たちの調査に対しても、加算制度を復活してほしいという意見もありますし、そうでないまでも、やはり今の規模で経営支援事業を続けてほしいと、これをなくすのはやめてほしいと、時限立法はやめてくれという要望がもうかなり来ているわけですね。ここの点については、私は、率直に実態を見れば──国の制度がよほど改善されれば別ですよ。しかし、今の実態からすれば、期限つきはやめて、見直すべきじゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。

◯若林保健福祉部長 先生、倒産ということをお話しになりましたけれども、私どもの試算に使った数字というのは、本事業を立ち上げるという意味でございまして、平成十一年の、昨年の十月の時点での介護報酬の収入額を想定しまして、それで十二年度支援事業を立ち上げていくということで予算要求したものでございます。時期的にそういう仕組みだったものでございますから……。  その後、要介護度が相当上がっております。それから、中身についても経営改善をいろいろ図ってきております。そういう意味では、私としては、先生がご指摘するような事態というのは当たらないのではないか、そんなふうに考えております。特養ホームの代表者との協議の中でも、決してそのようなお話は出ていないところでございます。
 本事業の継続についてのお話でございますけれども、前から何回もお話をさせていただいておりますけれども、介護保険という社会保険制度の中に措置制度から移ったということで、都加算及び介護報酬を廃止したものでございます。その経過的な措置として、団体の代表と協議の上、また都議会での十分な審議をいただいた上で、三カ年の事業という形で補助事業としての立ち上げを行ったところでございます。  なお、現在、特養ホームの代表者と協議を続けているところでございますので、引き続いてまたご意見をお聞きしながら、また理解と協力を求めていきたい、そんなふうに考えております。

◯曽根委員 私は、関係団体といわれている例えば東社協の役員の皆さんとも懇談して、そこで経営支援事業を何とか続けてほしいという声を実際に聞いているから申し上げているので、全くそういう声が聞こえていないとすれば、もうちょっと話し合った方がいいんじゃないでしょうかね。  それから、これからも、少なくとも五年計画で、東京都は毎年一千床以上の特養をふやしていかなきゃならないことになっていますよね。私たちはそれでも十分だとは思っていませんが、それでも、百人規模のものを十カ所ぐらいずつはつくっていかなきゃならない。今のところ特養は社会福祉法人ですから、そういうものに意欲を持って出てくるようにするためには、こういう経営危機が蔓延しているという状態ではまずいわけですよ。まずいと思うんですよ、本当に出てくる意欲をそいでしまうわけですから。本当に対策を検討せざるを得ない状況じゃないかというふうに思いますが、この点を改めて強く求めておきたいと思います。  で、介護報酬の今の収入の仕組みだけで、経営支援事業も基本的になくなるとした場合、なぜ特養の経営がこんなに厳しくなるのかということは、特養の収入が、身体介護については介護報酬で入りますけれども、お年寄りがあそこで生活をしているという、身体介護以外の部分ですね、例えば食事の収入部分はありますけれども、それ以外については基本的に見ていない、欠落していることが、介護以外の生活の部分についてのサービスをやろうとすれば、そこはもう施設が赤字になってしまうという最大の原因だと思うんです。これは、人間らしい、何とか暮らしにゆとりを持たせようとしている施設ほど、良心的な施設ほど、例えばその部分は別途に費用を徴収しなきゃならないということになってしまうと。  極端な例ですけれども、先ほどいいましたけれども、旅行会をやっていたところで、ことしから実費に切りかえたら、今まではぐあいの悪い人以外は全員参加していたものが、ことしは四人しか参加できないということになって、行った人も寂しいし、行けなかった人もつらいと。帰ってきてからも、その旅行会の写真ももう張れないと、四人しか行っていないんですから。そういう状態が生まれたという施設、これは新宿のある特養の例ですけれども、そういうことが起きているんですね。  ちょっと例は変わりますけれども、分野は変わりますけれども、例えば学校でいいますと、修学援助という制度があって、修学旅行の費用とか卒業アルバムのように、その学校で共同生活を送っている子どもたちならばだれもが参加してもらわなければならないような、そういう行事であるけれども、費用が一定かかるものについては、一定の制度のもとに、負担できない、負担が困難な世帯に援助をするという制度があるわけですよ。  こういう特養ホームについても、ある程度所得制限がつくとしても、生活で共同で暮らしていて、やっぱりみんなが一緒に参加したいという行事について、またはいろんなサービスについて補助する制度というのは、国の方で本来考えるべきじゃないかというふうに思うんですが、そういう点についてのお考えはあるでしょうか。

◯若林保健福祉部長 先生から、施設における処遇の件で再度ご指摘がございましたけれども、介護を要する高齢者が生活する特別養護老人ホームでの処遇というのは、それぞれの人に応じた処遇こそ望まれるんだというふうに思います。先ほど先生おっしゃるような形で、画一的に何かをやって、画一的に写真を張って、みんなで見てもらうという形は、決して特養ホームでは望まれていないというふうに私は思っております。また、そのような意見も多く聞いているところでございます。  いずれにしましても、介護保険制度で負担されない部分につきましては、制度上ご本人の負担という仕組みになっているものでございますので、そのことにつきましては、制度的にやはりきちんと本人に負担をしていただくということで経営が成り立つ、そういう仕組みになっているので、ぜひご理解をいただきたいというふうに思います。

◯曽根委員 これからはいろんな人が特別養護老人ホームに入りますから、それは自分だけの生活を送りたいという人もいるかもしれませんが、少なくとも特別養護老人ホームというのは、今の場合、やっぱり共同生活ですよね。マンションなんかとはやっぱり違うわけで、みんなで一緒にやることはいっぱいあるわけですよね。それが全く個別の対応でいいんだといえば、私は、逆にサービスが非常に煩雑になり、大変になってしまうと思うんですよ。だから、共同生活のよさを生かすということは大いに考えなきゃならない。これは意見として申し上げておきます。
 もう一方で、人が人の面倒を見ているわけですから、利用者のサービスを削りたくなければ、職員の方が犠牲になるしかないというのがもう片方の問題です。それで、今私の聞いているところでも、大体二つの方法に分かれます、職員に対するしわ寄せは。
 一つは、給料の一割カットとか、そういうふうに実際に支給する給与を減らすという方法です。月々の給料を減らさないまでも、ボーナスは大幅にカットとか。これは、ほとんどの施設でそういうことは検討されたりやられたりしています。そうでなければ、常勤者を減らして非常勤に切りかえるということですね。  しかし、ある施設の施設長さんがいっていましたが、この制度になって、高齢者のサービスのために職員が公休もとれないと。健康を損ね退職していく状況をもっと調査してほしい。介護保険が導入されたことで職員にとってよくなったことは何もないという現実を踏まえて将来の見通しを示してくれないと、この仕事をする人はいなくなると。これは現場の声ですよ。こういう声はほかにもいっぱいあります。  実際、公務員の皆さんの給与に比べて、半分以下ですよ。それで頭打ち。そこで、もう何歳になってもずっと、勤続何十年たっても、同じになっちゃうというんですね。これでは、本当に希望を持って、たとえ生きがいのある仕事であっても、やりがいのある仕事であっても、やっぱり家族を養い、自分も自立した社会人として一人前の仕事をやっていくという保障になりませんよ。  この点については、やっぱり考えなきゃならない問題があるんじゃないでしょうか。今後、特養をふやしていく、また福祉の人材を育てていくという観点に立って、検討の余地があるんじゃないでしょうか。いかがでしょうか。

◯若林保健福祉部長 職員処遇についてのお尋ねがございましたけれども、先ほども利用者処遇のところで答弁申し上げましたように、私ども、職員が指導検査で現地に行っております。また、先ほど来申し上げているように、特養ホームの代表者とも協議をずっと続けてきております。こうした中で、共通して説明を受けていることは、多くの施設において給与規程が見直されております。また、退職時の欠員の補充に、正規職員のかわりに、常勤から非常勤職員に切りかえていると、こういう実態はきちんと報告を聞いております。  ただ、そのことで利用者の処遇が即大きな影響を受けているということではなくて、冒頭の答弁で申し上げましたように、厳しい見直しをしながらよりよい処遇に努めていると、こういうふうに私は理解しております。

◯曽根委員 給与を減らされたり非常勤に切りかえられて、即お年寄りのサービスが落ちるような施設はもう失格です、それは。人間、そんなに単純なものじゃないですよ。自分が犠牲になってもやっぱり処遇だけは守ろうという、これは当然の気概だと思いますよ。しかし、それにおんぶにだっこして、いつまでも続くのかということなんですよ、この状態がね。職員だって、その分野で働こうと思って志を持って来ているわけだから、やっぱりその職業意識にこたえるだけの社会的身分を保障するということは、これは国の問題もありますけれども、本当に考えなければならない。これは、私ずっとこの福祉の分野については思っていたので、この際ちょっといっておきたいと思います。
 関連して、デイサービスのことについて一、二聞いておきます。  特養の併設もありますし、単独施設もありますが、デイサービスセンターが特養以上に経営が厳しいと。実際、職員も、資料をいただきましたが、以前の制度よりも運転手その他減らされますし、今までと同じスペースで、定数の変化を見ても、平均して二・五倍に定数をふやさなきゃペイできないと。しかも、出来高払いですから、雨が降ったり、風邪がはやったりしてお年寄りが来なくなれば、その日の収入がダウンしちゃうと。大変厳しい経営環境に置かれていることは間違いないと思います。  しかも、今まで都加算がついていたんですが、これは経営支援事業もないので、そっくり都加算は落ちてしまって、ゼロです。多くの施設から、これではとてもやっていけないという声がたくさん上がってきております。  それで、この都加算の問題については、私は、やっぱりそれにかわる何らかの方策を考えて、デイサービス施設については、特に今まで社会福祉法人で頑張ってきたところについては支援が必要だと思うんですが、東京都としての何らかの支援策ということの検討はされているのでしょうか。

◯若林保健福祉部長 デイサービスセンターについてのお尋ねでございますが、私ども、十一年度まで、都の補助方式で、事業の実施主体は区市町村でございますので、区市町村に対して補助をするという仕組みで補助をしてきたわけでございます。ただ、当然のことながら、介護保険制度に移行するということはもう十分わかっておりましたので、十一年度からは補助方式を変更しまして、介護報酬と同じような形で事業費補助方式と、定額的な補助じゃなくて、事業費補助方式ということに切りかえて、利用者処遇、利用者をふやす、処遇内容を変える、さらには介護保険の対象外の人まで受け入れると、こういうご努力をしていただくようにお願いしたわけです。  あわせて、リニューアル事業という形で一年間取り組んでまいりました。三施設別に取り組んでまいりました。その報告書を見ましても、やはりそれぞれの施設からきちんとした報告をいただいています。つまり、自分たちで自主的な努力をすれば十分経営は可能であるというような意見も、リニューアル事業の報告書として私ども受け取っております。
 先生がお話の代表者との協議も、デイサービスの業者との話し合いも私どもやっておりますけれども、そうした中でも、決して画一的に全部が赤字ということで非常に厳しいということではなくて、非常に運営をうまくしている事業所もありますし、一方では先生がご指摘のようなところも生じているということで、決して一律ではないと、そんなふうに受けとめております。  私どもとしては、本事業が介護保険制度による運営ということでございますので、基本的には都加算という形での事業の復活は考えていないわけでございます。

◯曽根委員 区市町村事業であり、介護保険の枠内に入った事業ですから、それはやり方は今までと同じというわけにはいかないかもしれませんが、何にもないということでいいのかと、手をこまねいていていいのかというふうに疑問に思うんですが、少なくともかなりの数の施設で赤字が出ていて、かなり厳しいと、このままではもう手放したいと、もうここで打ち切りにしたいというところも出ているというふうに聞いていますが、そういうことについて何も考えていないんですか。

◯若林保健福祉部長 先ほど来何回か答弁申し上げましたけれども、基本的には、デイサービスセンターで、いろいろ処遇の中身、利用者をふやすこととか、介護保険対象外の人を受け入れるとか、そういうご努力をしていただくということを考えておりますが、そうした条件を満たせない施設も中にはございます。
 例えば、男子のトイレに比較して女子のトイレが少ないであるとか、間仕切りを少し直さなきゃいけないとか、そういうハード面での整備を、条件面での整備をし直さなければいけないという視点もデイサービスセンターの代表からいただいておりますので、高齢者施策推進室としましては、来年度十三年度の予算に向けて、高齢者在宅サービスセンター緊急整備支援事業という形で五億一千万の予算要求をしているところでございます。

◯曽根委員 設備改修ということならできるかという一つの方策だと思いますが、私は、まだ極めて不十分だと思うんです。現在の介護報酬単価だけではデイサービスの経営は困難だというのは、共通の声です。したがって、これは、制度の見直しなど国にも働きかける必要があると思いますし、地元の自治体の仕事だからということでそこに押しつけるだけじゃなくて、都が率先して、やっぱりもう少し援助を検討すべきだということを申し上げておきます。  最後に、シルバーパスについて。  先ほどもちょっと質疑がありましたが、シルバーパスの発行枚数が昨年より十二万枚ぐらい減ったというようなお話だったんですが、これは母数がちょっと違っていまして、昨年は百十四万人強の七十歳以上の人口だったんですが、ことしは百十九万人を超えていますよね。したがって、五万人ぐらい七十歳以上の高齢者はふえているわけですから、割合でいうと、やっぱり二割ぐらい落ちているわけですね。  これの利用が減ったということは、東京都にいわせたら予算が浮いたということになるかもしれませんが、私は、やっぱりお年寄りの社会参加のために意義ある事業だと。しかし、民間に事業を移した方がいろいろサービスの拡充ができるかのような話もいろいろありましたけれども、実際に利用が減っちゃったんですから、この点は、やっぱり民間に移したこと、有料化したことの影響はマイナスに出たというふうにいわざるを得ないと思うんですが、いかがですか。

◯若林保健福祉部長 シルバーパスの十二万人の減の内容についてのお尋ねでございますけれども、私どもとしましては、これまでも、シルバーパスを本当に利用しない人まで、自宅配送方式、自宅郵送方式ということをとっておりました関係で、真に利用しない人までシルバーパスが交付されている事実があるということは、区市町村からも聞いていたところでございますし、ことしにつきましては、区市町村から連絡するに当たって、寝たきり等で使わないということを確認した上で発行の通知を差し上げたりとか、そういうこともしておりますし、また、外へ出てパスを利用していただくということから、交付場所まで来ていただくという仕組みに変えましたので、そういう意味からは、シルバーパスを、私ども、この十二万人につきましては、推計するには、真に必要な方が真に交付を受けに来られた数字であるということで受けとめているところでございます。

◯曽根委員 寝たきりの方やなんかには、実質使わないから発行しないというやり方の制度変更といいますか、中身の運用変更は、二年前にもやっているんですよ。それから、希望をちゃんととるということも、もう制度変更されているんです。その上で、今回二割落ちているんですよね。
 つまり、これは、自分が必要だと希望する人がその分減ったわけですから、これは、有料化、特に私が思うには、今まで無料だった方が五千円になっていますよね。来年間違いなく一万円になるという方は、先ほどちょっと割合が出ていましたけれども、間違いなく割合はがくっと落ちていますよ。これはやっぱり大幅な値上げになりますからね。  それで、しかも、民間に事業を移して、そのサービスが、どこか身近なところにとりに行けるというような話もありましたが、それは今まで有料だった方はとりに行かなければならなかったから、いろいろとりに行ける場所がふえたでしょう。しかし、無料の方は、郵送だったり、民生委員が配っていたりした。それが拡充ではないことは明らかで、それでも、ことしは一斉通知があったわけですよね。九月までは、区や市町村の事業として条例があったからね。しかし、来年はもう条例がないわけですよ。そうすると、私の印象では、自治体はもう来年は一斉通知はできないし、する根拠はないと思うんですが、いかがでしょうか。

◯若林保健福祉部長 シルバーパスの発行につきましては、ことしから東京バス協会の事業としたものでございますので、先生ご指摘のように、来年の一斉更新時に当たっての、今後も含めましてですけれども、地元の区市町村からご本人に通知をするという形はとりません。ただ、新しく七十歳になられる方につきましては、誕生日を迎えられる方につきましては、PR等をしまして、ご利用いただけるような仕組みになってきております。  また、ご本人お一人お一人への更新の通知につきましては、今、バス協会と今後に向けて協議をしていくということで、来年度の一斉更新までまだ少し時間がありますので、協議をしていくところでございます。

◯曽根委員 これは、たしか私の記憶では、民間のバス協会に事業が移っても、サービスは落とさない、不便をかけないようにしたいという約束がありましたよね。個別通知には、例えばあなたはどこにとりに行ってくださいとか、それから、これはもうできないんでしょうけれども、あなたは幾らのパスになりますよとかいうことがいろいろ書かれている。それはそれで、これがなくなると、来年から、自分の更新時期が来たことも場合によっては気がつかない。どこにとりに行っていいかわからない。それから、自分は幾らのパスになるかも、自分で介護保険の通知ですか、それを見て、自分は介護保険の保険料が幾らだからこれは千円だとか一万円だとかというふうになるということでいえば、やっぱり一斉通知というのは、非常に利便性を守っていく上では決定的なものだと思うんですよ。ですから、東京都としては、バス協会にお願いしてもいいんじゃないですか。

◯若林保健福祉部長 シルバーパスの発行につきまして、新たに今後七十歳になられる方につきましては、老人医療受給証などを送付することがございますので、その機会にシルバーパスのお知らせを同封して送っていただくということで、お一人お一人にシルバーパスのことがわかるように通知を差し上げるということを予定しております。
 また、一斉通知につきましてでございますけれども、東京都はバス協会と話し合いをずっと続けてきておりまして、来年度一斉更新のときに、現在更新をした方の記録を把握しておりますので、それらをもとに、来年度、それぞれ一斉更新に向けてのお一人お一人への発送ができるような準備も、今協議の中で進めているところでございます。

◯曽根委員 これは協議中だということなので、せめてこれぐらいはバス協会にやってもらうような方法を考えてくださいよ。じゃないと、せっかく民間でいろんなことが、サービスが何か柔軟にできるようなことをいっておきながら、何にもいいところがないというふうになっちゃう。有料化された上に、その通知も来ないと。とりに行かなきゃならないと。そして、それもどこの場所かわからないのではね。  もう一つ、これは対象は限られていますけれども、お年寄りで、シルバーパス利用者で、かつ身体障害者の方については、今まではシルバーパスにマル介のマークを入れてもらって、身体障害者がパスを出さなくても、介助者の割引も一緒にできたという制度がありましたよね。これがことしの春からないようなんですけれども、どういう理由で打ち切ったんでしょうか。

◯若林保健福祉部長 シルバーパスにマル介というスタンプを押す制度のことでございますが、これはすべての交通機関を利用する方々のものではございませんで、都営交通、都営地下鉄、都バスを利用する際に、マル介の判を押された方については、介護者について二分の一を適用するということでこれまでやってきたところでございますが、いろいろ事務の煩雑さ、トラブル等が現場で起こりまして、交通局におきましては、ことしの十二年四月以降はそういうマル介という表示は行わない、こういうことでお話がございました。そして、十二年九月以降の新しいシルバーパスの中にも、当然そういうことは表示をしていないわけでございます。  ただし、全部制度がなくなったわけではございませんで、障害者手帳あるいは愛の手帳を携行することによって、それをシルバーパスと同時に見せることによって、介護者についてはこれまでどおり二分の一の適用を受けると、こういうことで交通局は対応するということになっておりますので、私どもの方としてはそのような受けとめ方をしているところでございます。

◯曽根委員 今までやってきたささやかなサービスを、それも民間の事業に移したらもうできなくなるだろうと見越して、その手前で、東京都の事業であるうちに切っていくというのは、私は本当にこそくなやり方だと思うんですよ。これ、東京バス協会の事業になったら、基本的にできなくなっちゃうでしょう、このマル介なんかはやろうとしたって。東京都の事業のうちに切ったわけですよね、ことしの四月から。まだ東京都の事業なんだから。  私、確かに民間の事業でいろいろきめ細かくサービスが充実していくんなら、それはそれなりに評価したいと思うんですよ。先ほどちょっとカード方式という話がありましたけれども、あれも、カード方式は、結局その分の予算を東京都が出してやるんだったら、何で東京都の事業のうちにやらなかったんだということになると思うんですよ。  せめて障害者などが活用している私鉄やJRの半額制度を、これは国の関係がありますが、やっぱりシルバーパスでも使えるようにするとか、モノレールなどに、東京都が出資している第三セクターなんですから、使えるように働きかけるとか、そういうことはせめて今後検討していかなくちゃいけないと思うんですが、いかがでしょうか。

◯若林保健福祉部長 シルバーパスの利用できる交通機関の拡大ということでございますけれども、これまでも、モノレール以外にも、「ゆりかもめ」、JR、私鉄等、こういった交通機関についてはシルバーパスの適用をしてきていないところでございます。現行のバス協会に対する補助方式ということでは、これ以上の拡大はできないというふうに考えております。

◯曽根委員 できない。制度上できないんじゃなくて、制度上は、やろうと思えばできますよね、その事業者との協議で調えばね。やる気がないわけですよね。だから、はっきりいって、民間の事業に投げたら東京都の責任がなくなるものだから、そういうことの意欲もなくなっていくというのは、本当にまずいと思うんです。  私ども、せめて制度の適用範囲を広げるというぐらいのことを、まだ東京都の条例事業なんですから、そういう意味ではちゃんと検討すべきだということを申し上げて、質問を終わります。

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