浪費型オリンピックのウラオモテ9−1018(NO.73) 都民の目線で見れば2020年の再立候補などありえない ●次の立候補を言い出せるのか? 10月2日コペンハーゲンでのIOC総会で2016年オリンピック開催都市がリオに決定し、東京が第3位で落選してから、石原知事の去就と共に関心を呼んでいる話題のひとつが、2020年開催都市への東京の再立候補がありうるかという問題です。 ●注目される26日のオリンピック特別委員会 この点について10月26日に予定されている都議会の「オリンピック招致特別委員会」での石原知事側の4年間の招致活動の総括報告と、これに対する各党の質疑が注目されます。 おそらく石原知事は出席を避け、都側の報告・答弁でも、次回2020年への態度表明は保留されると思われます。 しかし、都議会で招致を推進してきた自民・公明・民主の各党は、これまでの推進の立場を正当化するため、とくに自・公は20年にも立候補すべきと主張する可能性が高いと思います。ただし民主は、これを機に招致レースからのリタイアを打ち出すかもしれません。 いずれにしても、オリンピックを呼ぶことの是非は別として、これまでの招致運動のやり方が適切だったかどうかは厳しく総括されるべきで、その責任からは民主も免れません。 ●2020年を阻む最大のネックはIOCの東京への評価 私は、2020年への再立候補を石原知事も考えていたと思います。また儀礼にせよIOCからも次の立候補を推奨する見解も出ています。 しかし知事もJOCも落選後、次回立候補への明言を避け、極めて慎重なのは、IOC総会やコペンハーゲンでの、東京への応援ムードがあまりに低く、とても「次回を目指す」といえる状況でなかったことが挙げられます。 ●東京代表のホテル会場は閑散 「東京招致に異議あり!」の運動を代表して現地を訪問した新日本スポーツ連盟の井上さんによると、リオやマドリード代表の滞在したホテルは、サポーターや日本や海外のメディアで連日大賑わいだったのに比べ、東京招致委員会のホテルには取材もまばらでJOCが記者会見をしても閑古鳥が鳴いていたそうで、むしろ反対派の街頭アピールのほうにメディアが集まったそうです。 日本のマスコミ記者は「もう東京の落選は決りですから、あさってからは我われも思い切り叩きますよ」などと語ったそうで、何でもっと早くから批判報道できないかとがっかりさせられます。 ●IOCの冷たい評価は”身から出たさび” 当日、最後のプレゼンを見た方はお気づきのように、東京のプレゼンに対し会場から、新設競技場が申請より多すぎる問題や、お台場の水質汚染や、選手村の狭さなど核心を突くいくつかの質問があり、特に「東京都民の支持の実態は3割程度だと聞いたが、どうなのか」との辛らつな問いかけに、知事もJOCもまともに答えられませんでした。 この様子を見る限り、東京へのIOC委員全体の冷たい評価は、リオその他のライバル側が影で根回ししたというより、東京の市民世論が盛り上がらないのを無理な招致キャンペーンでごまかしたり、都合の悪い部分を粉飾して申請するような、石原都政の不誠実な態度を見透かされた結果ではないかと感じます。(写真は臨海開発の用地に建てられた選手村の看板。07年10月撮影) ●広島・長崎立候補で国内でさえ危うい さらに国内では、早くも来年の国内候補都市決定を見越して広島長崎が、平和都市の共同開催で名乗りを上げました。 両市長が「オリンピックの平和理念と合致」とか「これを機に被爆の実相を知ってもらえる」などとコメントしているのを聞いて、純粋にスポーツ選手に全力を出せる舞台を提供し、世界のスポーツ愛好者と交流するということ自体が平和の象徴なのであって、被爆都市のアピールということに偏りすぎている印象に首をかしげたのは、私だけではないと思います。 ただし、それでも明白なのは、知事の座に居座ったままの石原知事が2020年の候補に手を挙げても、広島・長崎にさえ勝てないだろうということです。 ●反省なき石原知事に勝ち目はない 最後に、招致経費の150億円(うち都の税金100億円)の実態についてこれから本格的に追及が行なわれ、石原知事や都議会推進派の都民を欺く招致活動の実態が明るみに出てくるでしょう。 オリンピック招致関連経費は、150億円どころか私の推測では実質200億円を超えており、中身も都内自治体へのばらまきや「電通」丸もうけの委託事業など、ひどいものでした。 しかし石原知事などは、百億円など都にとって痛くも痒くもないと言い放ったとおり、おそらく何の反省も謝罪もしないでしょうし、彼のその姿勢が変らない以上、何度立候補しようが惨めな敗北が待っていることは確実です。 ●四千億円溜め込み続行ねらった立候補など許されない 今後論議の焦点になるのは「オリンピック準備基金」四千億円のためこみをどう活用するかでしょう。 この基金はオリンピック開催に関連した都市インフラ整備に使うことになっており、オリンピック開催という目標がなくなれば、基金条例を廃止して他に振替えるしかないことになります。 そうなれば二度と大型開発や高速道路に使えなくなるおそれがあるので、石原知事や都議会の取り巻き連中は、何としても基金のためこみを続け、外郭環状道路などにまわす狙いのために、負けを承知で2020年に向けてオリンピックの看板を掲げ続けようとすることが十分考えられます。 もし彼らがそこに踏み出すなら、これほど姑息なやり方はありません。四千億円の基金は、断固たる世論と運動で、都民要望実現の貴重な財源として活用させようではありませんか。 |