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2002・6・25 文書質問
「教育について」

    (1)都立高校入試における自己PRカードについて

 私は東京都の教育行政に関連して質問します。
 知事は所信表明で「来年度から学区制が撤廃され、都立高校は選択と競争の時代を迎える」と述べています。また都教委は、来年の受験生から自己PRカードを提出させることを決定しました。

 私は、これによって十五の春を泣かせる事態がいっそうすすむ危険があることを率直に指摘したいと思います。
 第1に、来年からの学区全廃ですが、以前から専門高校や新しいタイプの高校は学区がありませんし普通科高校も一定割合で他学区からの受験を受け入れています。
 その中で、普通科高校の他学区からの受験人数は、ほとんど受け入れ枠の範囲内で収まっており、大多数の都立校では学区制を撤廃する理由はないのです。影響があるとすれば、ごく一部の進学校が成績優秀な生徒を東京中から集めやすくなることです。

 しかしその一方では、家庭の事情でどうしても都立高校に進学しなければならない生徒が重大な影響をうけるのです。学区廃止で二三区に偏っている進学校に多摩からより多く受験するようになれば、二三区の中卒生が、逆に多摩の高校を受験せざるを得なくなります。
 その背景として、かつてグループ選抜方式を採用していた当時は、第一志望校に合格できなくても、同じ学区の中で別の都立校に入学できる道があったにもかかわらず、単独選抜に切り替えて以後は、1次募集で不合格なら2次募集では島部を含めて千人ほどの募集定員に、都内全域から二千人以上が集中するというしくみになり、都立高校を志望する生徒にとっては、深刻な不安と動揺かかえざるをえない状況があります。
 すでに今年の入試では、統廃合対象で募集停止が近い水元高校や稲城高校に受験生が集中して高倍率になるという現象も起きています。
 学区制撤廃は、こうした混乱に拍車をかけ、ひとにぎりのエリート校の進学競争のために、地元の都立高校を希望する大多数の受験生に不安と動揺を与えるだけです。

Q1・来年度からの学区制撤廃は凍結し、専門家や都民参加による公開の検討の場を設けて、これまでの単独選抜や他学区受験の経過とその受験生への影響を十分調査しながら学区廃止路線を再検討すべきと考えますが、どうか。答弁を求めます。

 第2に、都教委が来年から導入しようとしている、自己PRカードについてですが、このカードは「その高校に入学したい理由と入学してしたいこと」、「中学の学習活動で自分が特にPRしたいこと」「中学生活で学級や生徒会や学校行事、部活動、ボランティア、資格検定など自分が特にPRしたいこと」の三つの自己推薦を書き込むようになっています。

 都教委は、これで受験者の意欲や活動を多面的に評価するとしていますが、一五歳といえば自己を客観的に評価し表現すること自体が困難な年代です。しかもその生徒を知らない高校側が、本人の自己評価の文章を学科テスト並みに採点するというのは、まさに主観的なものを主観的に点数化するもので、およそ客観的な評価にほど遠いと言わねばなりません。そしてこれが結果として合否を分けることになりかねないのです。

 ある中学校の受験指導の先生は、「このカードが、百点もしくは、それ以上の点数が配点されるとなれば、受験生本人まかせには絶対できない。とりわけはっきり差がつく生徒会やクラブ活動の役員歴については、役員の任期を短くして可能な限り多くの生徒に経験させることも検討しなければならない。しかしこれで生徒に何を競わせようとしているのか・・」と、疑問の声を上げています。

 何人かの中学生に自己PRカードの感想を聞くと、みな一様に「正直に書いたら合格しそうにないけど、うそは書きたくないし、親か先生に言われたとおり書くしかない」などと話していました。これで本当に子ども自身の自己PRとして機能するのかは甚だ疑問です。

Q2・自己PRカードは撤回して、中学校の受験指導教員や、子ども達自身の意見も反映させて、選抜方式のあり方全体を抜本的に再検討すべきです。答弁願います。

(2)都内の小・中・高校に30人学級を!

 今、都が本腰を入れて取り組むべきは、小・中・高校の学級定数を30人に改善する課題です。

 文部科学省が、国が行うべき学級定数の改善を、地方自治体に責任を押しつけてきたのに対して、全国の多くの道府県では、政府に対し引き続き要望を行うことはもちろん、それにとどまらず厳しい地方財政のもとでも30人学級など、独自の学級定数の改善に踏み出す動きが広がり、全国で二一道府県、二政令市に及び、いまや都道府県の半数を越えていく勢いです。

 都内でも、「30人学級を1日も早く」と、あらゆる地域で運動が進められ、一四七万人以上の署名が都議会に寄せられています。

 こうした中で、都内二一の区市町村議会が都に対して、国が実施するまでの間、都が独自に30人学級に踏み出すこと、もしくは区市町村が実施しようとする時、それを承認するとともに財政支援することを決断するよう強く求める意見書を採択しています。

Q3・都は来年度から、小・中・高校における30人学級の実現へ、年次計画を立て独自に踏み出すこと。また当面、区市町村が都に先行して実施に踏み切る場合、都として財政支援を行うべきですが、答弁を求めます。

質問事項への回答
 一 教育について

1・来年度からの学区制撤廃は凍結し、専門家や都民参加による公開の討論の場を設けて、これまでの単独選抜や他学区受験の経過とその受験生への影響を十分調査しながら、学区制廃止路線を再検討すべきだが、見解を伺う。

回    答

 都教育委員会は、学区制度について見直しを行うため、平成11年度に学識経験者、PTA代表等外部委員を含めた「都立高等学校学区制度検討委員会」を設置し、平成13年度に同検討委員会から、生徒の学校選択幅の拡大や学校の個性化・特色化を推進するため、学区を廃止すべきとの答申を受けました。    
  この答申を踏まえ、都教育委員会は、平成13年9月に平成15年度入学者選抜から学区を廃止することを決定し、区市町村教育委員会、中学校及び高等学校をはじめ広く都民へ周知してきたところです。


質 問 事 項

 一の2 来年度から導入しようとしている自己PRカードは、客観的な評価にほど遠いと言わねばならない。自己PRカードは撤回し、中学絞の受験指導教員や子ども達の意見も反映させて、選抜方式のあり方全体を抜本的に再検討すべきだが、見解を伺う。

回    答

 本年度から実施されている中学校学習指導要領では、選択教科の拡充や総合的な学習の時間の実施とともに、自己を表現するカなどの生きる力をはぐくむことが重視されています。
 都教育委員会は、学習指導要領のこうした改訂に対応するとともに、受験者が中学絞での努力や成果を自ら志望校に伝え、それらを都立高等学校が多面的に評価できるようにするため、自己P Rカードを平成15年度入学者選抜から導入することを決定しました。
 自己PRカードの導入の趣旨や記入の方法、都立高等学校での評価の仕方等については、区市町村教育委員会、中学校及び高等学校にリーフレットを配布するなどして、その周知に努めているところです。


質 問 事 項

 一の3 都内21の区市町村議会が、都に対し、学級改善についての意見書を採択している。都は来年度から、小・中・高等学校における30人学級の実現へ、年次計画を立て独自に踏み出すこと。また、当面、区市町村が実施に踏み切る場合、財政支援を行うべきだが、見解を伺う。

回    答

  都教育委員会への意見書採択状況は承知していますが、都教育委員会としては、児童・生徒が社会性を養うための教育効果の観点から、生活集団としての学級には一定の規模が必要と考えています。

 一方、基礎学力などの向上に配慮し、きめこまやかな指導を行っていくには、学級とは異なる少人数の学習集団を編制し指導していくことが、より効果的であると考えており、教科等の特性に応じた少人数による指導の拡充に努めています。

なお、区市町村が自らの責任で独自の学級編制を実施したいとする場合でも、全都的な視点で検討する必要があると考えております。

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