ご主人様はとてもおやさしいです。
屋敷のみなからも慕われていて、私はここにご奉公にあがって良かったと思っています。


「瑞希〜、瑞希はいる?」



さして広くもないお屋敷……………っていったら語弊がありますね?なにせご主人様の声はインターフォンから聞こえてきますから。
庭は東京ドームぐらい広さがあります。ふと思いましたけど……………なんで、一般のテレビでは『東京ドーム○個分』とか言うんでしょう。
地域が変わったら『福岡ドーム○個分』とかになるんでしょうか?……………などと人様には言えない様な事を考えながら返事をします。


「はい、ご主人様。只今参ります」



急いでドアを開けながらお部屋へと向かいます。頭につけた飾り………………………『カチューシャ』と呼ばれる物。ほかの言い方もあるそうですが(ヘッドドレスでしたか?)とにかくその飾りが頭の上でゆれています。
私のいでたちはいたってシンプルなメイド服です。髪の毛は、短くそろえてありますからこの服装に合っているかは見ている方次第と思います。
ここのお屋敷はとても珍しいです。ご主人様のご家族様が決めた事ですが使用人にも一人一部屋が与えられています。
それだけならさしたる事ではないのですが……………実はご主人様達が住んでおられる部屋とグレードが一緒なんです。つまり使用人ならざる部屋に住んでいるのです。使用人は『階段の下の部屋』が寝床だという昔の話をしたらご主人様に「あなたいつの人間よ?」と笑われてしまいました。
私としてはもう少し垣根をキチンとなされた方が宜しいかと思うのですが……………まぁ、私達の喜びはご主人様と供にある事ですから。
あら、ご主人様がドアの前に立っていらっしゃいます。きっと待ちきれなかったんですね。


「瑞希〜!遅いわよ〜!」



今、目の前に立たれているのが静神 加奈絵様(しずがみ かなえ)16歳……………私のご主人様です。え?男の人じゃないの?ですか?
ご主人様がすべて男の人だと思っている貴方は漫画の読みすぎです。ちなみにご主人様のご家族にも一人一人使用人が付いています。


「申し訳ありません。ご主人様」


私がお答えするとヘンな顔をなされてため息を吐きました。


「本当に瑞希ったら、昔からそうね……………。変に生真面目っていうか」


そんな言葉に私は苦笑を返す。


「性分なのでこればかりは直せといわれても」



先の言葉にある通り、加奈絵様と私のお付き合いは長いです。私がこのお屋敷に来るようになったのが3歳の頃でした。
私は良く覚えていませんが、知り合いの子供だった私の両親が事故で亡くなりこの屋敷に引き取られたそうです。それからは、ご一緒に遊び、学校も通わせて頂きました。しかし私はお世話になっているばかりではと思い、加奈絵様のご両親様にここで働くことをお伝えしました。
散々反対されたのですが譲歩の結果、加奈絵様の使用人としてならという事で納得していただきました。今までお世話になった分しっかりと働きご恩を返したいと思っていますが……………ちょっと困った点が一点ありまして。


「ところで、加奈絵様?その手に持っていらっしゃるのは一体なんですか(汗)」


見るとご主人様の手には薄緑色の袖の長いワンピースやカットソー。ドレスの様相を呈したフレアスカートまであります。


「え?これ?言われるまでもないでしょ?」


そうおっしゃってニッコリされるお姿に私の背中を嫌な汗がつたいます。


「もちろんあなたに着て貰うのよ」


にじり寄る加奈絵様に私は後ずさりながら……………


「そ、それだけはご勘弁願えませんか?」
「だーめ、きちんと着てもらうから♪」


その言葉に私は目の前が真っ黒になった。


「加奈絵様、私は男ですよ〜(泣)」


そう、私、高部 瑞希(こうぶ みずき)……………実は男なんです。



☆1000HIT記念SS☆



ご主人様と休日の日常




「あ、これなんかもいいわね♪」



結局、私は加奈絵様の着せ替え人形になっています。はぁ、これも契約のときにつけられた条件の一つです。我慢しましょうか。 そうなんです。
男なのにメイドの格好をしたり(喜んでません!誰ですか?そんな事を言っているのは!)こうやって着せ替え人形になるのも、私が勤めにあがる為の条件なんです。
最初、私の話を聞いて一番反対したのが加奈絵様でした。もぅ、それは物凄い勢いでみていたこちらが思わず引いてしまうほどでした。

ふふっ、あれほど怒ったのを私は見たことが在りません…………………………あれは4年も前になりますか



人が集まりさえすればパーティーも出来そうな広いリビングで加奈絵ちゃんの大きな声がこだました。
「だから、何でなの!?何で、みーちゃんが働かなくてはいけないの?」
「加奈絵ちゃん……………」
「今までの生活のどこかが不満なの?もし私の態度が気に入らないなら直すから!だから……………」

泣きそうになる彼女を前に僕は首を横に振って答えた

「加奈絵ちゃんが嫌いとかそういうのじゃないんだ。ただ僕自身が甘えたままじゃなんだか許せないんだ。そりゃ、今の生活は楽しいし。義母さんも義父さんも加奈絵ちゃんだって本当の家族だと思ってる。学校へ通わせてもらって行けば友達がいるしなんといってもそばには香……………」


あれ、これって、告白と一緒ではないか……………(汗)

慌てて横を見るとそこには期待で目をキラキラさせた加奈絵ちゃんがいた。なんかにじり寄って来てます。situgenn………じゃなかった失言。



「ね?ね?『そばには香………』その後はなんて言おうとしたの?ね♪ね♪」
「と、とにかく!これは譲れないから!」

そこまで強く言うと

「そう、そこまで言うのなら止めないわ。でもね、みーちゃんの家族は私達だけなんだから。他の人と区別つけてしまうからここでは雇えな いわよ?どうするつもり?」

いかにも勝ち誇った顔で言ってくれる。ふふん、実はちゃんと裏工作でここに雇って貰える事になってるんだ。その手は効かないぞ。

「そしたらここを出て行くしかないさ。悲しいけどね……………」

とたんに彼女の顔色が変わる。よっしゃ!これで僕の勝ちだ。ん?なんか様子が……………?
突然、顔を青ざめさせた加奈絵ちゃんが僕にぶつかって来る。震えている。

「…………嘘。みーちゃんが…………ヒック、いなく………な、うぐっ、な……………や……………」

え?ええっ?加奈絵ちゃん?泣いて……………

「瑞希!お前は加奈絵の気持ちを少しは考えているのか!」
「今のは、ちょっと酷いですよ。瑞希」

今までやり取りを黙っている見ているだけだった、義父さんや義母さんも怒っている。

「か、加奈絵ちゃん、今のは言葉の勢いだよ。僕は何処にも出て行かないよ!ここに勤めるって決まってるんだから!」
「え………えっ………うぐっ…………ほんとに?」
「ほ、ほんとだよ!」
「そ!なら良かった!じゃぁ、瑞希は私を泣かせた罰として私専属の使用人よ!ねっ!お父様、それで良いでしょ?」
「ああ、加奈絵をここまで泣かせたんだ。それなりの事をやって貰わんとね(ニヤリ)」

……………ちょっとマッテクダサイ。イマ、ナイテイタンジャナイデスカ。カナエサン?お義父さんと加奈絵ちゃん何故にハイタッチをかわしてるんだ? で、その手に持っている目薬らしきものはナンデショウ?
これは一般にいう騙されたってヤツデスカ。ソウデスカ。ソウナンデスネ……………


だまされたぁ!!!



…………………………
……………………
……………
………




「……………はぁ」

「なによぉ。瑞希。そんなに私といるのが退屈なわけぇ?」

あ、ご主人様ほったらかして考え事してしまいました(汗)

「い、いえ、そんなわけでは……………」


じとー。

じとーーー。

ジトーーーーー。


「ヴッ……………」
「買い物付き合ってね♪」
「はい……………(泣)」

結局、私は女の子の格好をしたまま外へ連れ出されてしまいました。今の私の格好はちょっとふわっとした感じのうすいピンクのレギュラーシャツ、中には違和感がない様にこれまた薄い紫のT−シャツ、下はフレアースカートです。
しかし、こんな格好でいつ知り合いに会うかと思うととっても不安です。

「瑞希、そんなにキョロキョロしてるといかにも私は変ですって、言っている様なものよ?それにね歩き方がおかしくなってるわよ」
「え?そうですか?気を付けているつもりなんですが……………」
「なってないわよ。女の子は急いでいても、大股では歩かないものよ。なるべく歩幅を小さく、脚の内側をすり合わせて歩くようにしなさいな。そうすれば女の子らしく見えるから。あなたは外見は女の子と区別つかないんだから頑張んなさい」
「加奈絵様〜(汗)嬉しくないですよ」
そりゃ、私は女顔ですよ。ええ、そうですとも!自他共に認めてます。
だからと言ってこんな天下の往来ではっきり言わなくてもいいじゃないですか。誰かに聞かれたらどうするんですか?もう私泣きたいです。
グスッ……………なんか最近、女装に違和感がなくなってきた気が………………ま、末期かも(汗)

それ程大きくない街、都会にありながら時間がゆっくりと流れるこの地域は、春の兆しが感じられ街路樹はそろそろつぼみを付け始める。そんな季節。私と加奈絵様はそんな風に話しながら穏やかな日差しを浴びてゆっくりと散歩を楽しみます。これは、習慣になりつつあります。


「あっ?」


加奈絵様がふと声を上げられました。


「どうしました?」


私のかけた声を気にせず、走っていったのは一軒のファンシーショップでした。見ると店頭にはさまざまな形をしたグッズが並んでいます。 加奈絵様の後ろから覗き込んでみると、そこには静かに陽の光に反射するシルバーのイルカのペンダントがありました。しかもペアです。しばらく見ていたのですが気付くと加奈絵様は財布を取り出して値札を見ながら唸っています。後ろから値段を見てみると飛び込んできたのは『6万円(税込み)』の文字。た、高い……………

「う〜。しょうがない。あきらめるか……………さ、行くわよ?」

そういってつぶやくとまた私を引っ張り出しました。しばらくして日もたかくなりちょっと暑くなってきたので私達は近くのカフェに入りました。
ここにはテラスがあり自然の風がとても心地いいです。この時私はある事を決めていました。

「加奈絵様、私、ひとつ買い物をしなくてはいけないのを忘れてました。ここで待ってていただけますか?」
「そう?それなら私も一緒に……………」
「いえ、すぐ済みますので。それに暑い中歩かせていては加奈絵様のお義父様にも申し訳が立ちません」

その言葉にちょっと悲しそうな顔をなさる加奈絵様……………う、ここは我慢です。

「……はぁ。判ったわよ。いるわよ、ここに」
「すいません」


そう言い残すと、私は外へ踏み出しました。さて、早く買いに行かなければ……………。
目標は先程のファンシーショップ。狙うは、あのイルカさんです。結構可愛い品だったので売れてないか心配です。考え方も女の子に近くなっています。大丈夫かな?私…………
しばらく歩くとやっと着きました。店頭の品を一つ一つ確かめていきます……………ないです。売れてしまったのでしょうか?
私はあせる気持ちを抑えながら、中に入り店員さんらしき人に尋ねました。

「あ、あの店の前に飾ってあった、あのペンダントは……………」
「あ、先程、売れてしまったんですよ。御免なさい」
……………売れてしまったんですね。どうしましょう。頭の中に加奈絵様の悲しい姿が浮かんできました。あんまりにも途方にくれた顔をしていたんでしょう。中から店長らしき女性が出てきました。
「ねぇ、そこの貴女。いいものが在るんだけど見ない?」

ちょっと『あなた』のニュアンスが気になりますがとりあえずほっぽっておきましょう。

「……………いいものですか?」
「そう、これ」

そういって見せて頂いたのは先程のイルカでした。でも、なんか違います。違和感?みたいなモノがあります。

「なんか違う風に見えますけど先程のイルカですね」
「そうこれは、あの商品のオリジナルなのよ。この『幸運を呼ぶイルカ』のね」
「……………なんか、うさんくさいですね」
「そんな事言うのはこの口かしら(怒)」
痛い、痛い、口が伸びますぅ〜。
「ふ、ふそでふ。こうぇんまふぁーい(う、うそです。御免なさい)」
「……………まあいいわ。それでこれは結構な数の願いを叶えてるのよ。私を含めてね。これを譲ってあげるわ。ま、信じるのはあなたの自由だけど?」

確かに言葉では、そう言ったものの、私はすでにそのペンダントに惹かれていました。

「ううっ、痛いです。でも、そんな大切なものを譲っていただくわけにはいかないです。それに純銀製ですか?そんな感じがするんですが」
「そうよ純銀製よ。でもこれは、貴女だから譲ろうと思ったの。ま、あなたの建前もあるだろうからさっきと同じ値段でいいわよ」
「有難うございます。大事にします」
「いいのよ。彼氏大事にしなさいよ♪」

その言葉に私は苦笑いしながら店を後にした。私ってもう女の子にしか見えないんですね………シクシク
カフェテラスに戻ると加奈絵様が待ち疲れていました。

「お待たせしました。加奈絵様」
「瑞希〜。おーそーいー!それに買い忘れたにしては荷物なんか持っていないじゃない」

う、するどい

「荷物はお屋敷のほうへ送って頂く様、手配しました。加奈絵様のお荷物があるのに流石にこれ以上運べません」
「……………それもそうね」

なんとか誤魔化せましたね
それから私たちはカフェでたわいもない話をしながら時間を潰しました。カフェを出る頃には日も傾き待ちは夕暮れに包まれていました。
帰り道。私たちの影が長く伸びてまるで世界に二人きりになってしまった感じを受けます。しばらく沈黙していた加奈絵様は突然話し出しました。

「所で、瑞希の買い物ってなんだったの?送るほど大きいらしいけど……………」

その言葉に私は足を止め、荷物をいったん降ろしました。不思議そうにみている加奈絵様にさっき譲って頂いた『幸運のイルカ』を取り出しその首にかけて差し上げました。もちろん二つ。

「これは……………あの店にあった……」
「そのオリジナル『幸運のイルカ』です。店長さんが譲ってくれたんです。このオリジナルは願い事を叶えてくれるそうですよ?私からのプレゼントです。大事にしてくださいね……っと」
「……………ありがとう。絶対大事にする」


突然抱きついて目に涙を浮かべて言う加奈絵様。ちょっとぐっと来るものがありますね。私はそっと抱きしめて言いました。

「……………いつも一緒にいて頂いて有難うございます」
「そんなことない。私は自分のやりたいようにしているだけ」

私達はお互い見つめあうと笑っていました。

「さ、帰りましょう?加奈絵様」
「ええ、でも、ふたつもペンダントかけてるのは変ね」
「そんなこともないと思いますが?」
「そうね。どうしましょうか?」

返事をする私をおいていきなり考え込む

「ふむ。瑞希ちょっと屈んで?」
「?……………こうですか?」

少し屈むと加奈絵様は二つかけていたイルカのペンダントの片方を掛けて下さいました。

「これでよし。おそろいね?さ、帰りましょうか」

後姿を見ながら私は改めてご主人様と共に在る事を誓いました。


ね?私のご主人様♪








お屋敷に帰った後
「瑞希♪」
「ご勘弁して下さい。それは加奈絵様のために買ったものでしょう?」
「あ〜ら、いつ私のっていったの?さ、諦めて着なさい!」

今日の買い物は私の女装用の洋服でした。加奈絵様のばか〜!









〜あとがきという名を借りた言い訳〜



まめ:と言うわけで1000hit記念SSをここにお届けします。

スピカ:ちょっと……………

まめ:2000hitも近くなってからこのSSを出す遅さで申し訳ありませんが少しでもお楽しみいただければと思います。

スピカ:……………ていっ!!!!

ガイン!!!

まめ:痛ッ!な、何を!するんですかぁ……………って、ははっ、怒ってます?もしかして

スピカ:2000hitも近いってのにさんざ待たせてこの程度?(怒)文章も短いし。

まめ:あ、はは。ど、どうやら私は長い文章がかけない体質らしく。暫くはこんな感じになりそうかと。

スピカ:開き直っているんじゃない!で?何故に女装メイドさん?ほのぼのは嫌いじゃないからいいけど。

まめ:書いて見たかったから……………って、待て!早まるな!まあ、メイドさんってどうしても女性ってイメージがあるじゃない?

スピカ:まぁ、そうね。男があんな格好したらちょおと引いちゃうわね(汗)

まめ:でも、実質、メイドさんって豪華版ハウスキーパーだって思ってる。つまりはお手伝いさんだね。だったら男がメイドさんでもおかしくないじゃない?

スピカ:それでこれなわけね。? だったら女装は?

まめ:だって、男の服装書いてもつまんないもの。

スピカ:……………


ゲシッ!!!


まめ:おまっぐぁ……………

スピカ:作者がどうやら寝てしまった様なので終わります。あ、あと感想が頂けたらいいなぁなんて思っています。
感想は掲示板メールにお願いしますね。では!





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