「知っております」 
 
ミュウの女神は呟いた。
「なんで…?」
今までの想いが爆発したようなものだったから、もしやあの告白が思念で艦内中に伝わってしまったのだろうか…そんな不安が一気に押し寄せてきたが彼女の言葉でその不安は消えた。
「先日、そこの階段を踏外してしまうのではないか…というぐらい浮かれたソルジャーがやって参りましたの」
その時の様子でも思い出したのか、フィシスは細い手で口を隠し、小さく笑った。
フィシスの思いだし笑いで、もしや階段を踏外して転んでしまったのだろうか、とジョミーは心配になったがそれを目の前に座る女神が否定する。
「大丈夫、踏外してなんかいませんわ、安心なさって
「僕、思念が漏れていた?」
「いいえ、顔に出ておりましたから」
ジョミーは感情豊かですからね、とフィシスが優しく笑う。その笑みを真正面から受け、ジョミーは照れ隠しに頬を掻いた。
「ありがとう、ジョミー」
「え?
「何も聞かず、お礼を言わせてください」
 
−あの人に笑顔を、幸せを与えてくれてありがとう
 
「理由が分からないのにお礼を言われると困るよ、フィシス」
「ふふ、分からなくて結構ですわ」
 
天体の間に二人の小さな笑い声が響いた。