8 なんとなく

 

「なんとなく」

つい口から出た言葉を言うと、横に座っていた彼は溜め息をこぼした。

「いや本当になんとなく、なんだよ」



オペレーターである熱斗からしばらく出掛けてもいいよ、と言われた。
今現在、熱斗は学校で居残り中。
熱斗が終わるまでの自由時間は待っているだけでは暇だ。
突然やってきた暇な時間にどうしようかと思案する。

しばらく考えた後、ロックマンはある場所へとワープした。



「何の用だ」

素っ気ない態度、しかも顔はこちらに向いておらず作業を続けている。

「なんとなく」

つい口から出た言葉を聞いて、横に座っていた彼は溜め息をこぼした。

「いや本当になんとなく、なんだよ」

それに、とロックマンは続ける。

「僕がここにいれば熱斗くんも遠慮せずに来れるでしょ?」
「口実を作ってやった、という訳か…」
「そうそう!僕がここにいると知ったら、大急ぎで来るはずだし」

僕って熱斗くん思いの本当に良いナビだよねー、と言った事は聞かなかったことにして。
現実世界ではロックマン達の会話を聞いた紅いナビのオペレーターがなるほど、と呟いたとか。

「さっそく、熱斗くんに僕の居場所を教えなきゃ!」

極上の笑みを浮かべるロックマンとは正反対に、隣に立つブルースは再び溜息をこぼす。
遊びに来るのは構わないのだが、なんとなくという理由で来られても困る。
そんなブルースの考えを見抜いたのか、ロックマンが近寄って小声で呟いた。

「なんとなくっていうのはね、特に意識しないで何かをすることを表わす事なんだよ?」
「…それがどうした」

分かってないなぁ、と今度はロックマンが溜息をつき、もう一歩だけブルースに寄った。

「特に意識しないでここに来たって事は、それだけブルースの存在が大きいって事でしょ?」

真顔で言われると、こちらも反応に困る。

「これって愛?」
「…好きにしてくれ」

きっと赤くなっている顔を隠す為に、ブルースはその場に座り込んだ。

 

 


ヘタレブル目指した。