「…ん!あぁ…!!」
スプリングが軋みシーツが擦れる音と激しい息遣い、快楽に流される喘ぎだけがまるで何かの旋律のように響き渡っていた。
だが、いつものようにお互いを貪るように求め合い、熱く激しい雰囲気など微塵も感じられなかった。
 
7.八つ当たり
 
「はッ…!い…ッた」
「…まだ痛いかもしれないね、今日はそこまで慣らしてはいないから」
いつもなら必要以上に気遣ってくれるはずの人に、こんなことを平然と言われ驚く。
自分の足を抱え上げて見下ろしてくるブルーの姿は逆光で、しかも涙で潤んでしまっているジョミーの瞳にはっきりと映りこむ事はなかったが、
こんなにも激しく揺さ振ってくる人物が誰かなんて今更見えなくても分かるので不安になることはなかったが、こんな仕打ちをしてくる理由がわからなくて困惑してしまう。
朝の挨拶を交わす為に青の間へ訪れた時は普段を変わらず、ジョミーの大好きな笑顔で挨拶をしてくれた。
昼間は顔を合わす事はなかったがこっそり思念で様子を伺っていたのに気付いて叱ったけど、それに怒ってしまった様子はなかったはずだ。
それ以降はブルーと接する暇がなく、やっと全ての作業をおえて足早に青の間へと足を踏み入れた先程、気付けばベッドへ引きずり込まれ今に至るのだ。
乱暴に、とは言わないが強引に服を脱がされ制止の声も聞いてはくれない。
自分のせいでこんな行動に出たのであれば何が原因だったのかを知りたい、もし自分に非があるのならそれを聞いたうえで
謝りたい、と思っているのだがその合間さえも与えてはくれない相手に少しずつ苛立ちが募っていく。
まるで八つ当たりのようにただ与えられる大きく、焦らされるような快楽を素直に受け入れる事が出来ずに
ジョミーは息も絶え絶えに荒い呼吸を繰り返すだけだった。
内股を唇で吸われる、ちゅっ、とわざと大きく音を立て鬱血した部分を舌で舐められ身体が震えた。
「はッ…ぁ…っ、あっ…ァう」
「慣らしてはいなかったけど、だいぶ慣れてきたかな、すごく締まる…ッ」
「ぶ、るー…!おねが、いだから、もっ…うごいて…」
ブルーの性器は完全に自分の後孔に少しの隙間も残さず収まっているのだが、ただ挿れてるだけの状態が続き
もっと欲しいという強い欲求に普段ならば言わない言葉も口走ったがブルーは聞いているのかいないのか片手で
ジョミーの性器を上下に抜きながらトロトロと零れてくる白濁のそれを丹念に舐め取っていた。
全て舐め取れず零れていく白濁の液はブルーの手を伝いながら金色の茂るそこをより艶かしく彩った。
ジョミーの上達した思念のコントロールは普段の生活で思考が漏れる事はなくなっていたが、身体が繋がる
この行為の時だけ気付いた瞬間には所々に綻びが生じて虫食い穴のようになってしまう。
いつもなら綻んだ小さな穴から漏れてしまう思考を卑猥な言葉でからかわれてしまうのだが、そんな茶化した態度すらもなく
本当に今セックスという行為に及んでいるのかさえも分からなくなりそうになるが、彼の性器をしっかりと根本まで咥えこんでいる部分に
ぐっと力を入れる小さなと声とブルーの薄紅色に色付いた頬が目に入り、辛うじて自分が彼に抱かれているのだ、と実感した。
引きちぎれるものなら引きちぎってやりたい、思わず内側で言葉にする。
どうせ思念で読み取られてしまうのだ、今さら隠す必要なんてない。
「恐ろしいことを考えるものじゃ、ないよ…っ」
「…はっァ…考えたくも、なるんですけど…こんな、強引な…ァ」
「ッ…、…八つ当たり、なんだ…すまない…」
もっと文句を言ってやろうと思い、逸らしていた視線をブルーに合わせた途端、すぐそこまで出掛かっていた言葉は消えていった。
苦しいのはこっちなのに、そんな悲しい顔をするのは卑怯だと、口にする事が出来ない。
「昼間に荷物を運んでいただろう?それから一緒にいた彼らとシャワーブースへ行って、汗を流した…」
「…んァ…っ、それぐらい普通でしょ、う…汗かいて気持ち悪かったし、ベトベトしたまま講義を受けたくなかった…ん!」
「僕だって出来ることならば、君と一緒にシャワーを浴びたかった」
「…?え、だって、浴びてるじゃないですか…、そりゃ毎日は無理だけど…」
ジョミーが意識を失わない限り、中に出したものを処理する名目で一緒に入浴するのに
何故今更一緒にシャワーを浴びたい、などと言うのだろうか。
「シャワーを浴びるまでに至る過程だよ…皆と楽しそうに作業してたね」
「は?はぁ…?」
「僕だって叶うなら君と共に艦内で力仕事に勤しんで一緒にシャワー浴びて、そのまま食堂に行き、ご飯の取り合いをしてみたい」
「あ?」
そういえば、汗を流したあとは丁度いい時間帯だったのでそのまま食堂に流れ、それぞれ好きなメニューを
注文しお互いの好みの品を交換しながら夜の食事を終えた事を思い出した。
全く意識していなかったので気付けなかったが、あの場に思念体で隠れたブルーがいた事を知る、ということは…
「つまりは…ヤキモチからくる八つ当たり、という事ですか…?」
「可愛さ余って憎さ百倍、と言った方がいいかな」
ようやく笑ってくれたその表情も、今では憎たらしいものにしか見えない。
でもヤキモチの理由も八つ当たりの理由も、ブルーの勝手な理由ではあるが自分にあるわけで
納得出来ない部分の方が多いが、思考は呆れと脱力感でいっぱいであった。
なんか、本当どうしようもない人だ…と思いながら、ジョミーはため息をつくしかないのだが…
「…そんな貴方も嫌いじゃないです」
 
仕返しだ、と言わんばかりに肩を思い切り噛み付かれ、くっきりと出来たジョミーの歯型さえも愛しくなった。
 
 

ただのエロ話