21 思い出した昨日

 

海に行った、大好きな海に。
でも気がつくと海の中を沈んでいた。
冷たくて苦しくて、ひたすら何か掴むように彷徨っていた手は何かを掴んだ。

「俺が君を守るから!!」

確かにそう言われた、死なないよって。
とても安心したの。
あなたは誰?靄がかかったように思い出せない、掴んだはずの手には何もない。
あの時みたいに私を助けて、怪我をしてしまった足にハンカチを巻いてくれた優しい人。

その人は心配そうに私を見ていた、あれは…?


「……し…ん」

そう、あの人の名前はシン。
ベッドから飛起きたステラは靴も履かずに部屋を出た、その部屋では物音に気付いたスティングがゆっくりと体を起こしている。

「ネオ!ネオ!!」
「ステラ?どうしたんだ、こんな早くに…」
「ステラのハンカチは!?シンに巻いてもらったハンカチ!」

「ハンカチ…?まさか、思い出したというのか…?」

消したはずの記憶、余計な出来事。

「…大丈夫だ、ちゃんとある。汚れていたから綺麗にしないと駄目だったんだ、だから少しの間ステラから借りたんだ、すまない」

ハンカチの行方を聞いて少し安心したのかステラの表情が和らいだ。

「あとで持ってくるから、先に戻っているんだ」

言い聞かせるように頭を撫でてやる。
ステラは頷いて、やって来た通路を戻って行った。

「…すまない、ステラ」


彼女の昨日はまた消える。

 


何でシンステはこう暗くなるかなぁ…?
今度こそ明るい内容に!