19 笑えてる 

 

ガイアのパイロットがステラだった。
ディオキアであんなに“死ぬ”という言葉を怖がっていたのに、あんなに優しく笑っていた少女だったのに。

どうして?

ミネルバの医務室にステラはいる。
暴れないように全身を拘束されて、見ていて痛々しい。
呼吸は弱々しく、衰弱していると素人が見ても分かる状態だ。

それでも、何も出来ない。

そんな自分が悔しくて、でもステラに会いに行く事はやめなかった。
自分の姿を見つけると、ステラは弱々しく微笑んでくれるから。
それがシンにとって救いだった。
まだ彼女は生きてる、自分の姿を見て安心してくれている。
だから自分も笑ってステラを安心させなくてはいけない。
でも、ちゃんと笑えているかどうかが、心配だった。

笑って、安心させて、大丈夫だからと、伝えなくては。

「ステラ」
「…シ…ン?…」

「俺…笑えてるかな?」

苦しんでいる彼女にこんな事を聞くのはどうかしている。
なんて馬鹿なんだろう、と自己嫌悪に陥る。

「ごめんステラ、変な事を聞いて…!」
「…シ…ン」
「何?ステラ」

必死にステラが笑おうとしているのが分かった、苦しいはずなのに。
守るっ言ったのに。

「…ステ…ラ、シンの…笑った顔、好き…だから…」

途切れながらゆっくりと話すステラの言葉をしっかりとシンは聞く。

「シンが…笑って…ると、ステラ…嬉しい…」

目頭が熱い。
泣いてしまったらステラを不安にさせてしまう。
シンはステラに見えないように俯く。
でも知らないうちにシンの中にあった自己嫌悪は消えていた。

「…ありがとう、ステラ」

君が不安にならないように、ずっと笑っているから。


シンはステラの手を強く握り締めた。

 

 


シンステはどうしても儚くなる。