18弁当

 

「兄さん、やっぱりカレー弁当にしようよ」
「駄目だよ、カレーだと冷めたら美味しくないし…」


ある晴れた日曜日、お揃いのエプロンを着た双子の兄弟がキッチンに立っていた。
母親は少し離れた位置から二人を優しく見守っている。

「パパ驚くだろうな〜」

弟の熱斗は大人用の弁当箱を取り出しながら笑っている、その横では兄である彩斗が冷蔵庫から卵を取り出した。

「日曜まで仕事なんて大変だよね、お弁当…お昼までに間に合うかな?」
「俺と兄さんで作るんだから大丈夫だって」

日曜まで仕事の父の為に弁当を作る事にした彩斗と熱斗は内緒で届けるんだと大張り切りだ。
実際、父親が家を出るまで熱斗は顔が緩みっぱなしで始終にこにこしていた。

「あ〜兄さん!俺も!!俺も卵割りたい!!」
「んー…熱斗に割れるの?」
「まっかせろ!!」

不安な視線で卵を渡す、熱斗は器用なのだが料理になると少し違った。
学校でも調理実習では幼馴染のメイルに『熱斗はそこに座ってて!!』と言われるぐらい。
熱斗は卵を片手に意気込むが、肝心の卵は変な形で割れ落ちてしまいボールの中に入る事はなかった。

「…熱斗」
「あ、はは…おかしいな…はは…ごめんなさい」

彩斗は布巾を取り熱斗の卵まみれな手を拭いてやる。

「力を入れすぎなんだよ、熱斗は。見ててごらん」

冷蔵庫からもう一つ卵を取り出すと、彩斗の手にあった卵はコツリと小さな音で綺麗にボールへと落ちていった。

「ふぇ〜さすが…彩斗兄さん」
「熱斗だって練習すれば出来るようになるよ。ほら関心してないで動く動く!」
「は〜い」

キッチンで楽しそうに調理する兄弟を見て、奥で見守っていた母もついに我慢できなくなり椅子から立ち上がった。

「彩斗〜熱斗〜ママも仲間にいれて〜!」

彩り鮮やかな、たくさんの幸せをお弁当に詰め込みましょう。
大好きだと想いを込めて。



何とか昼までに間に合ったお弁当は科学省にちゃんと届いていた。
その日の昼食を泣いて喜ぶ光博士の姿が目撃されていた、と後に名人が語っていたとか。

 

 


光家は最高だよね。