17 もう少し頑張ろう

 

まさかこんな事になるなんて、最初は誰も思っていなかっただろう。

「うぅ〜…疲れた〜!!」

先頭を歩いていたアニスが大声で叫んだ。
しかし誰も何も言わず歩き続けている。

「ぶーぶー!みんなアニスちゃんの事は無視〜?ガイ〜抱っこして〜?」

甘えた声と上目遣いで後ろを振り替えればガイの姿はいつの間にか最後尾にある。

「いつ見てもガイの動きはすげーよな」
「そうね、あれだけ俊敏に動けばかなり高い確率で任務は成功するわ」
「お前ら…人事だと思って」
「もう!四人とも!遊んでないで出口を探してくださいませ!!アイテムだって残り少ないんですのよ!!」

現在、ルーク達がいるのはとある森。
次の目的地に行くには、この森を横切れば近道になるんじゃないか?誰が言ったか分からないが、この発言でルークらは森を彷徨っている。
誰も迷うなんて思っていなかった、ジェイドでさえも。

「しかし困りましたね〜、これ以上奥に進むのは少々危険な感じがしますが…」

辺りを見渡しても生い茂る樹々で光が遮断され薄暗く、気味の悪い雰囲気が漂っている。
ここで野宿は考えたくない、それに先程から何度もモンスターと戦闘をしていた。

「マジでこの状況はヤバいよな…」

やっと状況の悪さを実感したのか、ルークが腕を組み空を見上げて…

「あぁぁ!!?」

大声を出したのは座り込んでいたアニスだ。

「おやおや、この状況に耐えきれずおかしくなってしまいましたか?」

冗談なのか本気なのか、ジェイドがいつもの調子でアニスをからかう。

「大佐〜!!アニスちゃんにもうそんな態度がとれなくなります〜?」

アニスの表情が変わる、先程まで絶望の淵にいたよな顔をしていたのに。
今やカジノで大当たりでもしたような浮かれぶりだ。

「アニスちゃんは思い付いたんですよ〜!!ここから脱出する方法が…」
「ミュウウイングで空を飛び出口を探す、という方法は使えませんよ?」
「そんなに高く飛べないですの〜」

ジェイドとミュウに言われ、アニスは再び座り込む。
もはや再起不能のようだ。
全員に不安の色が見えはじめ、誰一人、口を開かなくなる。

「みんな!しっかりしろよ!!こんな事で落ち込むなって!まだ時間はあるんだぜ」

ルークが沈んでいた場の雰囲気に終わりを告げた。

「ほら、諦めるなって。もう少し頑張ろう?」
「…そうだな、ルークの言うとおりだ。よし、先に進んでみよう」

ルークに続きガイが、ティアとナタリアも笑顔で頷く。

「みなさん若いですね〜まぁ、私も諦めるなんて真似はしたくありませんし。一番若いアニスはどうするんですか?」
「勿論諦めるつもりなんてありませよ〜だ!!」

全員の気持ちが一つになり、再び歩きだそうとした時、甲高い笑い声が上空から聞こえてきた。
その人物の第一声は、予想通りで。

「見つけましたよ、ジェイド〜!私と勝負しなさ〜い!!」

六神将の一人、ディストが叫びながら降りて来たのだ。

「カモがネギを背負ってやって来る、とはこの事ですね」
「おぉ旦那、珍しく意見があったな。俺も似たような事を考えてたよ」

ガイは腰の剣へ手を伸ばし、ジェイドは詠唱を始める。
アニスのトクナガは既にに臨戦態勢で、ティアとナタリアも準備は万端らしい。
理解出来ていないルークはただ一人、呆然としていた。

「みんな…何してんの?」
「ディストに森の出口を教えてもらうんだよ、優しいディストにね!」
「抵抗されたら力ずくになりますが、それは仕方ありませんわ」

ニコリと笑ってアニスとナタリア、いざとなると女性は怖い。

「ちょっ…あなたたち!?多勢に無勢で…」



森の中にディストの悲鳴が木霊した。
人は命が関わると何をするか分からない。

  

 


可哀相なディスト、でも彼はそんなキャラだと思うんですよ。