15 泣けない
悲しくても、嬉しくても、痛くても、涙は出ない。
きっと人が死んでも泣けないんだろう。
「大丈夫か?コレット」
「うん。だいじょぶだよ」
皆が寝静まった夜、少し離れた場所でロイドとコレットは静かに話をする。
コレットの秘密を知っているのはロイドただ一人だから。
「…ロイド、ロイドは寝てもいいんだよ?眠いでしょ」
「いいんだよ、まだ眠たくないし。気にすんなって!」
コレットは睡眠が消えてしまった日から全く眠っていない。
長い夜を一人で、何もする事なく過ごしている。
どんな気持ちなのだろう、ロイドには想像もつかない。
「あのね、昨日ずっと空を眺めてたの。そしたら流れ星を6つも見つけたんだよ」
嬉しそうにコレットは言う。
「すげー!!いいなぁーコレット〜俺も見たかったぜ〜」
「今日は流れないかなぁ?」
二人で夜空を見上げ、流れ星を探す。
ふと、思いだしたようにロイドはコレットに話しかけた。
「そういえばさ、昔…俺とコレットとジーニアスの三人で流れ星を探したよな」
「うん!そだね〜ロイドの家で夜遅くまで起きてて」
まだ3人が幼かった日の思い出。
「そうそう、それで結局流れ星は一つしか見つけられなくてさ…親父には怒られるし、でもお前はその流れ星に感動して泣いてたよな…あ、ごめん」
「ロイドが謝る事ないよ〜」
コレットはたいして気にしてはおらず、笑っている。
「…泣けないのは天使になる為の試練だもん、だいじょぶだよ。…でも、ね」
「でも?」
「もしも、ロイドが死んじゃっても、私…泣けない。悲しくても泣けない、ごめんねロイド」
世界再生の旅、神子を邪魔だと思う者達から狙われ、魔物と遭遇する事だってある。
命を落としてしまう事だってあるかもしれない、世界再生の旅は危険な旅であった。
今にも泣き出しそうなコレットの目から涙が溢れることはない。
しかし、その表情からは深い悲しみが伝わってくる。
「コレットが謝る事ないだろ〜!!それに俺は絶対に死なないし、お前だって守ってやるんだからな!!」
「えへへ、ありがと…ロイド…」
「ほら!流れ星探しの続きやるぞ?そうだ、場所変えたら見つかるかも」
そう言うとロイドは立ち上がり歩いて行った、その後をコレットが続く。
「…封印を解放して、天使になって、そして…そのとき、ロイドは喜んでくれるかな、泣いてくれるかな…?」
コレットの呟きは誰にも聞こえることなく、夜の静寂に消えていった。
コレットが天使になったら怒ったよ、ロイド。