14 聞いてて、幸せ
忙しい毎日、繰り返される同じ作業、別に何も変わらない。
苦ではない、と言えば嘘になるが昔からしている事なので気にはならない。
しかし、嫌気がさしてきたのは確かなわけで。
「疲れた」
別に誰かに言ったわけではない、でも独り言のように無意識に言葉が出てしまうのだ。
普段なら真っ先に心配してくるであろうナビもただ今、インターネットシティへ向かわせた、もちろん仕事で。
カタカタ、と意味もなくパソコンのエンターキーを押してカーソルを下げていく。
こんな見るからに意味のない行動をするほど自分は疲れているのか。
それとも、どこかの誰かさんに感化されてしまったのか。
昔ならどれだけ疲労を感じても口に出さなかったし、無意味な行動だってした事はなかった。
やはりこれは誰かさんの影響なんだと、改めて思う。
ぼんやりとPETを見つめ自分のナビの帰宅を待った。
今日はここまでにしよう、今の調子では進む仕事も進まない、急ぐ内容でもない。
するとPETに反応があった、ブルースではない。
これはオート電話だ、発信者は…
『光熱斗』
まさかこの名前が出るとは思わなかったので慌てた炎山はボタン操作を誤りそうになったが、いつもしている操作だ、間違える事はなかった。
「も、もしもし!」
『…お、炎山?なぁに慌ててんだよ〜』
いつもの笑顔、いつもの声。
何故だか分からないが、ほっとする。
「どうした…?」
『そうそう!聞いてくれよ!さっきさぁ〜』
熱斗は今日あった出来ごとを次から次へと話していく。
たまにあるのだ、熱斗からの今日の報告。
大抵が学校であった面白い話。
聞いてくれよ、と炎山が仕事中でもお構いなしに話だす。
ブルースは仕事中だからと、あまりいい顔をしないが炎山にとっては嬉しい事だった。
先程までの重たい気持ちはどこへ行ったのでしょうか?
たわいもない話なのに聞いてて幸せになれるのは…
きっと、君の声が聞けるから。
とにかく言いたくて仕方のない熱斗と、とにかく熱斗に会いたい炎山様。