13買い物
「ティア〜私、シフォンケーキ食べたいな〜♪」
「…お店を見つけたらおごるわ…」
確かティアが見ていた物はこれだったはず。
ルークはソレをまじまじと見つめ、目を細めた。
「可愛い…?」
それはブウサギの小さな人形。
先程この店でティアが見ていたものだ、実際ティアが見ていたのは横にある大きいブウサギの人形なのだが。
「可愛いのか…?これ…」
どうもルークには理解出来ない。
以前アニスにこれ可愛いでしょ?、と問われた時に曖昧な返事しか出来なかった気がする。
「…すいませーん!」
そんな事を思い出しながらルークは人形を手に取った。
宿屋の廊下を歩くあの長い髪はティアだ。
「ティアー」
「ルーク?」
長い髪を颯爽と翻しティアがこちらを向いた。
本当は食事の時でもよかったのだが、皆がいると何を言われるか分からないのでタイミングを狙っていたのだ。
「どうしたの?」
「いや…あのさ、あ〜これ」
言葉を濁しながら、しかも視線は泳いでいる。
それでも出された右手。
その右手は何かを握り締めているように見える。
「なに?」
「いいから手ぇ出せよ…!」
ぶっきらぼうに言われるが、その顔には小さな照れが見える。
不思議に思いながらもティアはルークに両手を差し出した。
ルークの右手から転がり落ちたのは、あの人形。
あの店で、可愛らしいと思ってて、そこをアニスに見つかってしまって。
大きさは違うがそれが何故、しかもルークの手から?
「昼間アニスと見てたろ?」
「えっ…?別にアニスと見ていたわけじゃ…」
「あぁ?だって二人して店の前にいたじゃん」
まさかルークにまで見られていたとは…ティアは軽い眩暈を感じた。
しかしルークの口振りからして話の内容までは聞かれていないようだ。
「買うのかなーと思ったけど、そのまま店から離れるし…」
ルークにも口止めをするべきかを悩み、俯く。
「それ、やるよ」
ルークから出た一番意外な言葉。
何を言われたのか一瞬では理解出来なかった。
「え…」
思わず顔を上げて、ルークと目が合う。
「特訓とか付き合ってもらってるし。欲しかったんだろ?」
「えっ…えぇ!?」
「可愛いのかどうか、俺には分かんないけどさ」
頭の中が真っ白になる、目をぱちぱちさせてルークを見上げた。
「違ったのか?」
きょとんとしてルークがティアの手に乗る人形を見つめた。
それに気付いたティアは慌てて首を振る。
「ちっ違うの!そんな事ない…!!」
「そぉか?ならいいけど…じゃあ、また明日な」
ルークは軽く手を上げて自分の部屋へと戻って行く。
「あっ…ルーク!!」
「んー?」
顔だけをティアへ向けた、少しの間。
「ありがとう、ルーク」
それは綺麗な微笑みで。
「…どーいたしまして」
お互いの顔は真っ赤だったとか。
「何やらいい感じですわね〜」
「ナニナニ?何の話〜」
「そうですの〜」
後ろ方では扉に隠れた二人と一匹。
あのスキットってブウサギだったよね…?
というかこの頃のルークとティアはこんなに仲が良かったっけ?
疑問だらけ(滝汗)