夜の真っ暗な路地裏。そこには、その場所には似つかわしくない制服姿の女の子がいた。

「何度か戦ってるのに、遠野君、まったく気づいてくれない…。」
彼女の名は弓塚さつき、通称さっちん。幸薄、というより不幸の星に生まれてきた少女である。

「幸せになるもん!」
ほう、だったらまず日の光を克服することだな。

「くっ!」
ああ、言い忘れていたが彼女は吸血鬼の中でも真祖の次に高位な死徒である。本来死徒になるには数十年以上の時を必要とするうえに、なれるのはごく一部だけなのだが、彼女は死者、グール、リビングデッドの過程を無視してわずか一日ほどで死徒になった才能溢れる女子高生吸血鬼なのだ。

「あまりうれしくないけどね…。」
何を言う、一日で死徒になったうえに固有結界を所持しているくせにうれしくないだと!謝れ、全世界の落ちこぼれ吸血鬼に謝れ!
「当たり前でしょ!?吸血鬼にならなかったら、今までのように遠野君をストーキングできたのに、なっちゃったせいでできなくなったんだよ!?」

いや、ストーキングは犯罪だろ。よかったじゃないか、犯罪者として警察に捕まる前にやめられて。ああ、そういえばストーカーといえば志貴がこの間シャツとお気に入りのトランクスが盗まれたんだと。大方琥珀がシエルやアルクェドや秋葉あたりに高額で売っ「あっ、それ私。」はっ?

「だから、盗んだの私。」
反省してないのかよ!?というかむしろパワーアップしとる!?
「だって、ストーキングできなくなって志貴君を見れる時間があまりないんだもん。だから、せめて遠野君のぬくもりだけでもって。」
いや、そんな大胆なことができるんだったら、人間時代に告白したらよかったじゃないか。
「人間のときはそんな勇気なかったよ…。…今でもだけど。これらだって吸血鬼の身体能力を使っても命からがらで盗ってきたんだから。遠野君家のセキュリティシステム、並じゃなかったよ。アルクェドさんやシエル先輩を犠牲にしてもたくさん残ってて大変だったよ…。」
(幼い顔立ちして中々黒いことするな、こいつ。)
「まぁ、このことに関してだけは、吸血鬼になったことを感謝してるかな?」
志貴、最近さらに精神的にまいってるんだから返してあげな。(殺してしまったと思っていた少女がこんなことをしていると知ったら、志貴、色々壊れるかも。)
「えー、遠野君を感じられるものがこれしかないんだよ〜。」

…志貴がこのこと知ったらお前を幻滅すると思うな。

「返してきます、サー!」
「返してきました。」
ごくろうさ…その手に持っているのは何だ?

「遠野君の眼鏡。」
うおーい!?なんてもん盗って来てるんだ、お前は!?

「だって、遠野君を感じられるものを返したらもう志貴君を感じられないじゃない?だから、かわりにこの眼鏡を…。」

返して来い!志貴が壊れちゃうだろ!
「なんで?」
説明不要!さっさと返して来い!
「?」
ホントびっくりしたよ。まさかあれを盗ってくるなんて。

「なんなの?いったい。」
説明する気は…ところで眼鏡を盗ってこれたということは志貴の部屋に入ったってことだよな?
「?そうだよ」

なんもせんかったの?
「あっ。」
(まぬけがいる)

「しまった〜!?トラップをかわすことに精一杯できづかなかったよ〜!?」
(吸血鬼が必死になってかわすトラップってどんなだろ?)まあ、どんまいだな。
「あああああああああああ…」
…なんかあまりに哀れになってきたから特別に明日の夜、志貴に会えるようにしてやるよ。

「マジで!?」
キャラが壊れてるぞ。顔が怖いぞ、おい。おい、うれしいのはわかるがそんなみだらな妄想をしているのが容易にわかる顔をすんな。全国のさっちんファンに怒られるだろ。
「ホントに遠野君に合わせてくれるの!?」
マジマジ。会わせてやるって。神(作者)なめんなよ。
「やったー!」
じゃあ、明日の深夜に公園に来い。(志貴に会わせてやるよ。志貴に、な。)
「まだかな〜、志貴君。」
(いつの間にか名前で呼んでやがる。)あと少し…おっ、噂をすれば。
「!志貴君!」
「よお、吸血鬼。」
「えっ!?えっ!?殺人鬼さん!?だましたの!?」
騙してないぞ。言ったろ、{志貴}に会わせてやるって。
「さ、詐欺だーーーーーーーー!」
「運が良いな、お前。大凶を引くなんて選ばれた証だよ。」
「い、いやーーーー!なしっ!なしだよ、こんなのーー!」
却下。
「うわーん!」
「逃がすか!」
…逝っちまったか。これで更生してくれたら良いんだがな。
「何してるんですか?こんなところで。」
ああ、シエルか。いやなに、道を外したやつの更生を、な。
「外れまくっているあなたがですか?」
ゲフッ!?い、痛いことを…。
「まあ、どうでもいいんですけど。」
んっ?なにげに上機嫌だな?なんかあったか?
「ええ、ちょっと」
ほう、それはよかったな。いったいどんな…その手に握っているのは?
「遠野君のシャツです。」
おまえもかーーーーーーーーー!
                                おわり
あとがき
どうも、MHPです。携帯が使えないのでパソコンから投稿です。今回の話はギャグです、レベルは低いですがギャグです。好きなキャラであるさっちんを出しました。シエルの次に好きです。というか槙久以外皆好きです、月姫。さっちんいいですねー、不幸なところとか、不幸なところとか。まあ、型月キャラ全体で言えばまだ不幸のレベルはマシだと思う気がしますが。さっちんは才能があるので日の光も流水もすぐ克服できると思います。そして好きだからこそこういう配役。愛ですよ、愛。じゃあ、今回はこの辺で。MHPでした。




管理人より
   久々のギャグ投稿ありがとうございます。
   さっちんいい感じで壊れていますね〜
   報いとは言え七夜に会わせるとは哀れでもあるような・・・

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