要注意!!

今回には激しくと言って良いほどゲームのネタがばれています。

それが嫌だという方は直ぐに戻ってください!!








俺は走った、走った、走って走って走って!!走りまくった。

もうとっくの昔に息も上がり、足も痛くてたまらない。

しかし俺は走らないとならなかった。

何故なら・・・

咄嗟に本能で危険を悟った俺は、直角に曲がり左に進路をとった。

次の瞬間、ほんの0.5秒前まで俺の後頭部のあった空間に矢が数本見事に通過する。

「ライルさん!!おとなしく捕まりなさい!!そうすれば楽にして差し上げますから!!」

後ろからフィリスの怒鳴り声が聞こえる。

その言葉回しに不吉なものを感じたのは俺だけではないだろう。

更に、

「兄貴ぃぃ!!見つけたっすよーーーーー!!」

「ひええええ!!」

目の前に現れたリサが突進をかましてきた為、今度は右に進路を取る。

「兄貴!!!逃げるのは卑怯っすよ!!」

リサの声に振り向きもせず俺はただ逃げる。

冗談ではない。

俺にリサと正面きって喧嘩を売る度胸は無い。

「ラァァァァイィィィルゥゥゥゥ!!!」

「うげ!!今度はモニカ!!」

今度はモンスターも真っ青の形相のモニカが正面に現れ、手に持つロッドを野球のバットの様に構え、フルスイングで俺を打ち込もうとするがその瞬間、スライディングを敢行、第三波を回避した。

しかし、起き上がろうとした所に今度はジャスティンと、瑞穂が現れすでに戦闘態勢に入っている。

更に後ろから他の皆も到着した様だ。

しかし・・・皆、揃いも揃って俺を仲間・・・いや下手をすれば人間・・・とは思っていない様だった。

「ライル・・・覚悟はいいかい!!」

「ライルさん、この場で観念して数刻生き永らえるか?それとも今ここで私の刀の錆となるか?お好きな方をお選び下さい!」

見るとジャスティンはナイフを構え(無論本物)、瑞穂は既に刀の鯉口をきっている。

洒落になっていない。

どちらを選んでも俺に未来は無い。

ならば足掻くだけ足掻いてやろうではないか!!

「・・・とうっ!!」

俺は咄嗟に左の茂みに飛び込む。

ライトの魔法を眼晦ましにして。

「はあ・・・はあ・・・なんだって俺がこんな眼に合わなくちゃならないんだおい!」

ライトの眼晦ましに右往左往している皆を尻目に俺は逃走を再開していた。

そう・・・俺は今パーティの仲間である筈のモニカ・リサ・ジャスティン・フィリス・瑞穂の五人に追われていた。

と言うのも・・・






「ライル君、ちょっと良いかしら?」

「はい?なんですか?マリオン先生」

午後の授業も終わり講義室から出た所、突然黒魔法の教師であるマリオン先生に呼び止められた。

「これから直ぐ学長室に来てくれない?」

「えっ?学長室に?学長先生が何か?」

「ええ、ちょっと君に聴きたい事があるのよ・・・ロレッタ先生との事で」

「!!!」

その言葉に俺の背筋は一瞬にして凍りついた。

そうだ・・・先日俺は、薬の所為と言う事もあったのだが、事実としてロレッタ先生と肉体関係を結んでしまったのだ。

その後ロレッタ先生からは事故と言う事で、お互い納得をしたのだが・・・

俺の真っ青になった顔を見てマリオン先生は苦笑しながら、

「大丈夫よ、ライル君。おおよその事情はロレッタ先生から聞いているわ。ただ他の先生方が君にも事情を聞きたいって言うだけだから」

「そ、そうですか・・・」

俺は一旦ほっとしたのだが、ふと周囲から微妙に冷たい視線を感じる。

当然だろう。

百面相の様に変わる俺の表情、学長先生からの直接の出頭要請。

何かやったのかと、勘繰られても仕方の無い事だった。

「とりあえず学長室に行きましょうか?」

「・・・はい、お願いします」








その後、学長室を訪れた俺は、結果として先生方から軽い注意を受けただけで、事無きを得た。

しかし、学長室に入った時、学長先生を始めとして先生全員がいた事にはかなりびびった。

それでも全員事情は知っているのか、学長先生・ギルバート先生・アーウィン先生・マリオン先生は俺に降りかかった災難を同情するように笑っていた。

ロレッタ先生は俺を申し訳なさそうに見ている。

唯一の例外は龍道先生で俺に対してかなり複雑な視線を向けている。

「ライル君ご免なさいね。こんな事になっちゃって」

「ロレッタ先生、いえ、俺の方も大変ご迷惑をおかけしました。それとありがとうございます。先生のおかげでそんな重い処分にならずに済みましたから」

「良いのよ。あの時も言ったけど私の不注意でこうなっちゃったんだから」

学長室から出てきた俺にロレッタ先生はそんな事を言って謝って来た。

「一先ず部屋に戻ります。お手数をお掛けしました」

「ええ、じゃあまたねライル君」

そう言いながら俺は学長室を後にした。

この先に待つ正真正銘の災難を知る事も無く・・・







何故だろうか?俺と通りすがる女子生徒達の視線がとてつもなく冷たい。

以前、覗きの容疑をかけられた時にも、かなりきつい視線を浴びせられたが今回は前回の比ではない。

まるで極悪人を見るような視線だ。

とりあえず何か飲み物でもと思い、ロビーに向かった。

(ラウンジにしようとも思ったのだが、あの視線に耐え切れる自信が無かった)

幸いロビーにはこの時間には珍しく、誰もいない。

ひとまず清涼飲料を自販機で購入して自販機の裏で飲んでいると、誰かが来た様だ。

このまま顔を出しても良かったのだが、なぜか俺はこのままの体勢でその話に聞き耳を立ててみた。

どうやらモニカ達の様だ。

「・・・あんの腐れ外道・・・遂に行くところまで行った訳ね・・・」

??なんだ、随分と穏やかな話じゃなさそうだが・・・

「リサ、兄貴を兄貴と呼んでいたのが恥ずかしいっすよ!」

お、俺?俺が何かしたのか?

「本当に許せないよ!!」

あの温厚なジャスティンまで??

「よりにもよって・・・」

え?ええええ?フィリス、何を怒っているんだ?

「ロレッタ先生を襲って乱暴を働くとは・・・同じ女性として断固許す訳には行きません!!」

な、何ぃ!!!

俺が?ロレッタ先生を?

どうやらあの事件、他の奴にはかなり歪曲されて伝わっているようだ。

しかも・・・最悪な事にモニカ達が本気で信じて怒り心頭に達している。

咄嗟に弁解をしようとも思ったのだが、今の頭に血の登った五人に話が通用するとは到底思えない。

それどころか今、姿を出せばこの五人によって瞬殺される可能性すら存在する。

となれば・・・今は逃げるしかない。

今は逃げて、先生達に相談しよう。

それしか俺が生き残る道は無い。

そう思った瞬間、アルミ缶の潰れる音が静かなロビーに響き渡った。

ああ、なんと言う間抜けな事を・・・右手には先程まで飲んでいたジュースの缶が見事に凹んでいる。

しかし、俺には自分の間抜けさを呪う暇すらも与えられそうも無かった。

次の瞬間俺は見事に五人に囲まれた。

「よ、よう・・・皆して・・・随分と物々しいけど・・・な、ななななな何かあったのか?」

ここはあえてフレンドリーに声を掛けようとしたのだが、あまりにも大きい殺気とプレッシャーに声が震えている。

「「「「「・・・・・・」」」」」

しかし、全員ニコリともせず、親の敵の様に俺を凝視している。

やがて、モニカが地の底から響くような低い声で

「・・・あんたが一番良くわかっているんじゃないの?ライル・・・」

なんか、死刑執行を待つ囚人の気分が良くわかる・・・

「兄貴・・・本当に見損なったっすよ・・・」

同じ口調でリサが言葉を繋ぐ。

「ライル・・・君って奴は・・・」

そのナイフは本物?ジャスティン・・・

「・・・ライルさん・・・貴方が、そんな事をするなんて・・・」

フィリスの視線が冷たすぎる・・・

「覚悟はよろしいでしょうか?・・・ライルさん」

瑞穂のその言葉と共に全員手に得物を持ち、構える。

やばい、全員俺を殺す気でいる。

こうなれば・・・

「あっ!!先生!!」

「「「「「えっ?」」」」」

俺の声に全員の注意がテラスに惹かれた瞬間、何の迷いも無く、俺は逃走を開始していた。

「あーーーーっ!!」

「兄貴!!!卑怯っすよーーーー!!」

「待てーーー!!ライル」

「逃げると言う事は・・・」

「やはり事実でしたか!!許せません!!」

この瞬間より俺の命を賭けた(正真正銘の)サバイバルレースが開幕となった。







そんなこんなで俺は、校舎内を駆け回り遂には外に出て森の中で逃亡を続けていた。

「はあ・・・はあ・・・はあ・・・」

俺はようやく皆を撒き、茂みに身を隠して休息を取っていた。

「このままじゃあ・・・俺は本当に殺される・・・かと言って校舎に戻ろうにも、そのルートは完全に固められているし・・・」

俺の最後の希望は先生達に助けを求める事しかなかった。

幸いにも学長先生を初めとした全ての先生が事情を知っている。

先生達(特にロレッタ先生)の説明を聞けば皆わかってくれる筈だ。

その為にも俺は、何とか学園に帰還しないといけなかった。

しかし、その道に皆が配置されている為迂闊に動けばあっという間に捕まってしまう。

この際頭に血の上った五人に捕まる事は死ぬという事と同意語であった。

「何とかして・・・帰還しないと・・・」

「よう、ライルじゃないか?」

突然後ろから声を掛けられまじでびびった。

「ひぃっ!・・・なんだ・・・ジェイルか・・・」

俺がおそるおそる振り返るとそこには、ジェイルが俺を呆れた様に見ていた。

「なんだじゃねえだろ」

「ああ、悪い」

「どうしたんだ?お前こんな所で?」

「ああそれが・・・」

その時

「ラーーーイーーールーーーー!!!!」
「ひぃ!!き、来た!!」

「へっ?なんだ?」

「いいからお前も隠れろ!!!」

「お、おい!!」

彼方から聞こえる声に俺は慌てて、ジェイルもろとも茂みの中に隠れる

(お、おい!!ライル!何だって俺が!!)

(頼む!!暫く静かにしていてくれ!!)

(ま、まあいいけどな・・・)

最初文句を言っていたジェイルも俺の形相に引いたのであろう結局黙って俺と隠れてくれた。

そうこうする内に、

「リサ、ライルは?」

「だめっす!!まだ見つからないっす!!」

「あんの腐れ外道何処に行った!!」

モニカ・・・年頃の女の子がそんな言葉使いみっともないよ・・・

「モニカ姉さん!!リサ兄貴を見つけたら思いっきりぼこぼこにしてもいいっすか!!!」

「ええ!!もちろん思いっきりやっちゃって良いわよ!!!」

リサ・・・忘れたのか?お前の手で俺は一度ご臨終寸前まで行ったんだぞ・・・

「モニカさん!!リサ!!」

「あっジャスティン!!」

「見つかったっすか?」

「ううん、僕の方もまだ見付からない」

「あいつの事だからどこかに隠れているのよ!!」

モニカ正解。

現に俺は今ここにいます。

「それでフィリスと瑞穂は?」

「それぞれ別ルートで捜索を続けてもらっている。でもまずいよ時間が・・・」

そう言いながら自分の腕時計を二人に見せる。

「わわ!!もう夕食の時間じゃないの!!」

「そう、このままじゃあ夜になっちゃう」

「確かにライルがこのままモンスターの餌食になるのは当然の報いだけど・・・」

「ご飯が食べられなくなるのはまずいっすね」

俺の命にはそれ位の価値しかないのかおい・・・

「ともかくもう少し探してそれで戻るとしよう」

「うん」

「わかったっす!!」

そう言い、この場から離れていく三人・・・

そして気配が完全に無くなったと見た俺はようやく茂みから抜け出した。

「ふう・・・危なかった・・・」

「・・・おいライル・・・」

ジェイルが蒼白な顔で俺に聞く。

「あれはお前の仲間だろ?何でまた追われているんだ?下手なモンスターより恐ろしかったぞ・・・」

「まあ・・・それは色々事情があるが・・・ともかく悪かったな巻き込んで・・・」

「取り敢えず・・・強く生きろよ・・・」

俺は不吉な台詞を吐くジェイルを背にして再び逃走を再開した。







「はあ・・・はあ・・・ここまで来れば・・・」

俺は静かに息を整える。

俺は最後の手段としてここ古代遺跡に身を隠していた。

辺りも暗くなり始めている。

まさか皆もここまでは来ないだろう。

「取り敢えず・・・夕食抜きになりそうだが、もう少したら学園に戻ろう」

そして後は先生達に助けを求めて、それで大丈夫の筈・・・

「・・・へえ・・・で、戻ったらどうする気なの?」

「それは決まっている。先生達の所に避難して・・・事の収拾・・・を・・・」

背筋が寒くなってきた。

俺は静かに・・・静かに・・・そして、錆びたドアの様にゆっくりと後ろを振り向くと其処には・・・

「ふふふ・・・ライル・・・」

「兄貴・・・見つけたっすよ・・・・」

「ライル・・・もう逃げられないよ・・・」

「袋のネズミですね・・・ライルさん」

「年貢の納め時ですよ・・・」

入り口を塞ぐ形で五人全員揃っていた。

「み、皆・・・ど、ど、どどどどどどどうして・・・」

「あらお忘れですか?ライルさん、私の能力の事を・・・」

し、しまった!!

そうだ瑞穂は動物に変身出来る能力があったんだった。

おそらく猫の姿で俺を発見して追跡していたのだろう・・・

なんという無様な・・・

「さてと・・・ライル・・・覚悟は出来ているわよねえ・・・」

「モ、モニカ・・・お、落ち着け・・・」

「兄貴言い訳なんて・・・男らしくないっすよ・・・」

「い、いやリサ・・・これは言い訳じゃあなくてだな・・・」

「ライル・・・今の僕達に何を言っても無駄だよ・・・」

「ジャ、ジャスティン・・・た、頼むから話を・・・」

「命乞いでしたら時既に遅いです」

「フィ・・・フィリス・・・そうじゃなくて・・・」

「殿方でしたら最期の時くらい潔くなされたらどうですか!!」

「だから!俺は・・・」

「「「「「問答無用(っす)!!!天誅!!!!」」」」」
「うぎゃああああああああああああああああああ!!!!!!!」








「ううううう・・・よく生きていたな・・・俺・・・」

翌日俺は学園の保健室で全身包帯を巻かれ、即席ミイラと化していた。

ギルバート先生の診断結果は全身打撲、裂傷、両腕骨折、両肩脱臼エトセトラ・エトセトラ・・・で全治四・五ヶ月との事である。

あの後モニカ達五人は俺を徹底的に容赦無く攻撃を加え俺は瀕死状態・・・というか死亡同然・・・にまで行った(冗談抜きで)。

気のせいかその時三途の川を半分渡ったような気もするが・・・

そしてモニカ達が止めを刺そうとしていた所、他の生徒から聞いたのか先生方がぎりぎりで間に合い俺は一命を取り留めた・・・らしい。

その時にはもう意識が無くなっていたのだから当然と言えば当然だろう。

ちなみに今その五人はと言うと・・・

「まったく!!モニカ!お前はライル君を殺す気か!!」

「あう・・・」

「リサ!!俺はお前にこんな事をさせる為に格闘を教えた訳じゃないぞ!!!」

「うう・・・申し訳ないっす・・・」

「ジャスティン!!幾らなんでも、やり過ぎよ!!もう少しでライル君が死ぬ所だったのよ!!」

「ごめんなさい・・・」

「フィリス!!!!あなた、ライル君が本当にそんな事をする人だとでも思ったの!!!!」

「その・・・ついかっとなって・・・」

「瑞穂君!もう少し状況を判断しないと駄目だろう!!」

「はい・・・申し訳ありません」

と先生方から真相を聞きそのまま延々二・三時間お説教を食らっていた。

「あ、あの・・・先生・・・もう良いですよ・・・一応俺も生きて帰ってこれましたし・・・」

さすがに"許します"とは言い難いが、さすがに皆が気の毒になってきたので俺がそう言うと、先生達の表情が複雑なものとなった。

「いや、俺達はいいんだが・・・」

「学長先生に言われているのよ。"しっかりとモニカさん達にお説教して下さいって"」

ギルバート先生と、マリオン先生が言葉を繋ぐ。

「学長先生が?」

「そういう事。取り敢えず、ひとまず言う事は言い終わったから皆、解散して」

「あ、あの〜あたし達ここで・・・」

「それと、これは学長先生からの通達でライル君の怪我が完治するまで、君達は面会謝絶との事だ」

思いがけないギルバート先生の言葉に皆肩を落とす。

「うう・・・それはひどいっす・・・」

「諦めろ、リサ。処分だと思ってな」

「じゃあ、その間ライルの看護は誰が見るの?」

「主には学長先生が行う事が決まっています」

「あと勉強はどうするんですか?」

「それも学長先生が見て下さるわ」

「それに冒険のパーティーはどうされるのでしょうか?」

「ライル君がある程度完治したらリハビリを兼ねて僕達が暫く組む事になっているから」

「「「「「・・・あうぅ〜」」」」」

ことごとく提案を蹴られて、しょんぼりしながら部屋を後にする皆。

これにはかなり気の毒となり、

「先生、あそこまでは言わなくても良かったのでは・・・」

「まあ、俺達も気の毒とは思ったんだが・・・」

「あれでも軽い方よ。本来だったら、退学処分が出ていてもおかしくないわ」

「今回は私が原因とも言える訳だし、学長先生にお願いしてここまでに落としてもらったのよ」

「それにしてもライル君、本当に君は度量が大きいな」

「確かに瀕死にまでにした相手に"許す"なんてそうそう言えないからね」

「まあ・・それは相手がモニカ達ですから・・・」

そこまで言った時だった。

俺の腹の虫が盛大な音を響かせた。

「は、はははは・・・」

「ははは、そう恥ずかしがるものじゃないぞライル君」

「そうそう、お腹が空いたって事は元気な証拠なんだから」

「少し待ってね。そろそろご飯が来ると思うから」

「??来る?」

その奇妙な言い回しに俺が首を傾げると、

コンコン・・・誰かが来たのか医務室のドアをノックしてきた。

「おっ来たか」

そう言いながらギルバート先生が開けるとそこには・・・

「!!!が、学長先生!!」

学長先生が、お盆を持って入って来た。

「ナイスタイミングでしたよ。ちょうどライル君もお腹が減ったみたいですから」

「あら、そうですか・・・ところでモニカさん達のお説教は?」

「みっちり行いましたから心配ありません」

「じゃあ私達も食事に行って来ますから後はごゆっくり」

「え、ええええ??」

何が何だかわからない内に先生達も出て行き、後に残ったのは俺と学長先生だけとなった。

「さてと・・・じゃあライル君、ご飯にしましょうか?」

「はい・・・」

何故だか嬉しそうな学長先生は俺の枕元の席に座るとスープをスプーンで一口分掬うと、おもむろに俺の口元に持って来た。

「・・・あ、あの・・・学長先生・・・これは・・・」

「はいライル君、あーん」

「だ、大丈夫ですよこれ位・・・」

「駄目よライル君。ギルバート先生に言われているでしょう?『暫くは腕を使ってはいけません』って」

確かにそれは言われた。

けど・・・

これってめちゃくちゃ恥ずかしいぞ!!

何故かわからないけどそう思った・・・

「はい、あーん」

だけど学長先生の

「あーん」

本当に嬉しそうな顔を見ていると

「あーん」

そんな恥ずかしい気持ちも薄れていき

「あーん」

遂に俺は観念して

「・・・あーん」

ぱくりとスープを学長先生の手で食べさせてもらったのだった。

ちなみにこれは俺が完治した後も暫く続いた為、他の女子生徒から奇異の視線で見られて、モニカ達も俺に冷たい視線を向けてギクシャクしたものが続いたのであった・・・

頼む・・・教えてくれ・・・俺が一体何をしたと言うんだ・・・








(余談)

「どう?ギルバート?」

「やってるよ・・・あららミリアムの奴うれしそうな顔しちゃって・・・」

「それにしても・・・少しやり過ぎでしたよロレッタ先生、あんな噂まで出しちゃうなんて、ライル君本当に災難でしたよ」

「そうね・・・でも、アーウィン先生だって結構乗り気だったじゃないの」

「おいおい、なんだかんだ言って皆乗り気だったくせに」

「そうね・・・うふふ」

「おまけに瑞穂君たちには、内容を少し変えて流すんですからかなり悪質ですよね」

「誤算はそれをリサ達が本気で信じて、ライル君を殺す気で攻撃を仕掛けたところだな」

「まったくだよ。本来の計算だと軽くこずかれる筈だったんだが・・・あそこまでやるとは・・・」

「それだけあの子達がライル君を好きだって事でしょう?」

「すごく情熱的な娘さんを持ちましたね。ギルバート先生」

「まあ、それでも最終的には計画通りに行きましたからそれで良しとするか」

医務室の外で、教師達のそんな会話が行われた事をライルは知る由も無い。

灯台下暗し・・・獅子身中の虫とはよく言ったものである。







後書き

   一番最初にも言いましたが、激しくネタばれがあります。

   わからない人は何だ?と言う内容だと思います。

   一番の解決案は一回ゲームをやる事ですが・・・

   あと反省としては・・・

   「慣れない事はするものじゃない!!!」

   その一言に尽きます。

   次回はまたいつもの調子に戻るでしょうが、お見捨て無いようよろしくお願いします。

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