家族計画 (D.O.) 批評と考察

全力でネタバレしております。ネタバレなしの「家族計画」紹介ページはこちらです。

さて、相当の文章量があった家族計画なのだが、それでも疑問点は多々残っていた。この批評と考察のページでは、その辺りの疑問をすべて解決するつもりで書いていきたいと思う。

※長くなるので、先に総論をまとめて、それからシナリオの流れを追いつつ各キャラクターの考察を入れていく構成にした。まずは総論だけ読んでもらって、悪くないと思ってもらえたら続きも読んでもらえるといいと思う。


家族計画 総論


@高屋敷一家は、シナリオ中(ファンディスクまで含めても)
「俺たち家族になれたー!わーい!」という幸せ一杯の状況にはならなかった。
なれなかった。

この作品に関するコメントをこれまでいくつもいただいている(ありがたいことだ。もっとください)が、否定的な意見のほとんどは、家族計画は「家族から話を逸らして誤魔化した」と結論していたようだった。
なるほど、読んだ瞬間、「そうかな・・・」と感じる面があることは否定できない。確かに、物語を締めるために全ルートで家が燃える必要はないし、それは私自身も感じていた。叩かれても仕方のない部分だと思う。

しかし、「家族から話を逸らして誤魔化した」は、本当にそうだろうか、いや違う。

他人同士が家族になる、という絵空事の終着地点は、どうしても
「他人ではない、まるで家族のような友人たち」
に落ち着いて最良とならざるを得なかったのではないだろうか。後に示すリンク先での出来事のように、人間関係とはそれほど甘いものではない。それ以上を求めるのならば、それはどうしても幻想じみた「ぬるい」結末となって一笑に付されたことだろう。


Aちなみに、「そもそも家族計画をする必要性がない」という批判もなぜか多いのだが、これはストーリーを読み違えている。家族計画は末莉が司に無理矢理了承させたカタチで始まったのだ。共同生活が家族計画である「必要性」は春花を偽装で守るということ以外には最初からない。
ただ、家族計画の面白さは、それがあたかも「必要であるかのように」説明し、推し進めたことにある。条件をかき集めて、「みんなで高屋敷に居なければいけない」ようにし、簡単には脱退できないように枠組みを作った。それが寛のねらいだったわけだ。

Bさらに、「ちょっと暮らしただけで家族愛なんて芽生えるか!」という批判は一見、的を射ていそうだ。だが、これも読み違えている。作品に対して向けられるべき意見ではないからだ。

家族計画で芽生えたのは、言うなれば同じ苦しみを味わい、理解し合える者たちの「静かな絆・友情」、あるいは「信頼・許し」といった、激しくはないが細く永く続いていくものであって、「愛」というほど他の参加者全員に対して情熱を燃やしたのは基本的に末莉だけだ。「家族愛」というキーワードはおそらくタイトルから連想されやすかったに違いないが、期待先行で読んだ結果、激しい家族愛を感じなかった。そのギャップに対する不満のように思われる。(最近確認したのだが、大手通販サイトの(サイト公式だが第3者による)商品説明で「家族愛がテーマ」だと書いているものがある。どうもこれが多数の人に家族愛がテーマだと思わせてしまった勘違いの大本らしい)

司は、「家族計画が大事なわけじゃない。ただ俺たちのような社会的弱者はいつも煮え湯を飲まされて、何度でも飲まされて、それがたまらなく悔しい」ということを非常に重要な場面で吐露している。この言葉が上の批判の答えにもなる。

「・・・がこうあるべきだ。そうでなければおかしい」という考え方は家族計画において一貫して登場人物たちを苦しめ続けた考え方である。
自分が正しいと妄信して疑わず他者を侵すようになってしまった、あの良太一家の絶望的な不愉快さを思い出してみてほしい。あれはただ醜悪だったというのではない、その心は私を含む誰の心の中にも巣くっている、自分が一番正しいという厚顔な悪魔の具現だったことに気付かされる。


長い時間を経て、再び高屋敷に集合する仲間たち。
彼らをまたそこに呼び寄せたものは、一体なんだったのか。

それはおそらく、「戦友」とでも言うべき感慨だったのではないか。

人生で1番厳しい時代を共に駆け抜けた。
ぶつかり合いながら、サイズの合わない高屋敷という箱になんとか収まろうと四苦八苦した。その奮闘を、窮屈さを、楽しさを、後にどうしようもなく懐かしく思える気持ちが彼らの中で育まれていたからなのではないだろうか。


[補足]
さて、メインの総論「家族計画はなぜ成功したのか?」については、
以前の日記・「家族計画」計画考察にまとめた。また長くなるので、ここではリンクだけ挙げておくが、良ければ参照してみてほしい。(実はこのページは後付けで作ったページなのである)



シナリオとキャラクター考察


まず最初に、
司がどうしてあんなに簡単に春花の所持していた薬を口に入れてしまったか。
ラベルのない薬のビンをビタミン剤と勘違いしていたとはいえ、あまりに警戒が足りないと、引っかかりを覚えた方は多かろう。

しかし、処方箋に「1日1回2錠」と書いてあったら、「とりあえず4錠飲んでみる」というような薬に対してまるで警戒感がない人もこの世にはときたま存在する。
こういうタイプの人は、総じてケガ以外の病気を経験したことがなく、自分の身体と健康にひたすら自信を持っているのだが、そう考えると、理由としては弱いが納得できないこともない。司は身体が最も充実する年齢であり、かつ自信を伺わせる台詞もいくつかある。
個人的には色々考えた結果、そう解釈した。


ということで、序盤を乗り越え、7人が集合。いままさに始まろうとする家族計画。

余興として、まずは各キャラクターの特徴を、RPGっぽくまとめてみた。

真純 青葉 春花 末莉
計画へ
の提供
発案 家事 / 節約 高屋敷家 知識 ムード 雑務全般 男手
連結の要
特性 既知外 ドジ/母性 排他/魔女 口べた/守銭奴 明朗/行動力 従属/押し強 短気
能力 秘密兵器 台所担当
おふくろの味
毒舌
トラブルメーカー
機転
サポート
(司の)鎮静剤
台所補欠
台所担当
計画推進の
切り込み隊長
ツッコミ
台所補欠
弱点 - 結婚詐欺 禁断症状 養護施設 不法入国 年齢 借金
備考 奇怪な行動
高い戦闘技術
英検3級
キレると強い
「やることは」若い
劇薬を所持
意固地
長女
金銭に熟達
不器用
大食
高い身体能力
よく転ぶ
独白も敬語
真面目
烏と会話



開始当初から、すでに春花・末莉・真純は仲良しになっていた。
その他は思い切りギクシャクしながら、真純の美味しい朝食にジッと感動する司。


☆個別キャラクター考察・三女「高屋敷 春花」--------------

異常にも感じる早さで日本語を習得する春花。

しかし、これにはそれなりに筋が通っているのだ。(確かに覚えは早すぎるが)

人は第1言語、母語を両親が自分に話しかけるのを聴いて覚えていく。
つまり赤ん坊は自分が1番興味のある存在を模倣することで基礎言語を習得するのだが、実はこれは、第2言語以降の外国語にも当てはまるのだ。

つまり、自分の好きな人が外国語を話す場合だ。
その場合、授業を受けたり、駅前留学をすることなんかよりも遥かに早く!(春花だけに)外国語が習得できる。
「なになに勉強法」だとか、外国語の習得ノウハウは市場にゴマンとあるけども、結局のところ人を強く突き動かすのは、方法よりも感情だというわけだ。


準が駅で待ち合わせした男と楽しげに歩いていくのを偶然見てしまい、知らずイラつきが外に出てしまう司。

それを見て、走ってソフトクリームを買いに行った春花。
息を切らせながら、満面の笑顔で溶けかかったソフトクリームを差し出しだして、

「ツカサ、はい!おいしいよ」


こんなもん楽に泣ける!!


うぉぉぉん、やさしいよぉ、春花〜。 (CV.寛)
春花の温かさと、行動力は人として本当に魅力的だ。

身元の保証がない不法入国者。
言葉は話せるようにはなったが、読めない書けない異国の地。自分1人では身を守る術が一切なく、本当は不安で不安で仕方がないのに、それでも皆の前ではいつも笑顔でいる春花。特に、準シナリオでの春花の「許し」は、滂沱たる涙を誘った。


「ごめんね。私・・・司を利用しようとしてた」

人間というものは、他者を利用しないでは生きられない。
親にすべてを与えて貰い、大人になれば市場で利を奪い合い、貪り食う一方で他方が餓死しようとも、だれもそのことを振り返らない。
あるものは振り返る余裕がなく、あるものは見えているのに思考しない。
私たちはそういう矛盾を常に抱えて生きている。

そんな中で懺悔する人間は、ただ優しいのだ。
高屋敷のムード担当は、もはや尊敬の念すら抱くほどに、本当に素敵な子なのだ。

春花
別名 ミス・フラワー
計画への提供 ムード
特性 明朗/行動力
真性 天真
能力 (司の)鎮静剤 / 台所補欠
弱点 不法入国
備考 大食/
高い運動能力/
「お腹空いてるからイライラするよ」

危険も顧みず、母親に会いたい、その一念だけで不法入国してきた行動力。
「捕まったら殺されるなー」と思いながら逃亡するという思いつきを実行に移す瞬発力。
自身の感情をストレートに行動へ転換する春花の真性(性格の本質)は「天真」という言葉が相応しい。

備考のひと言は特に名言というわけではないが、個人的に印象深い台詞だった。
難問にぶち当たって、暗い考えばかりが頭に浮かんでくるとき、この言葉がフッと思い出されて、考えてみると、昨日の昼から何も口にしていなかったりする。食事すると多少なりとも冷静になることができて、そんな時、春花に助けられたな、と感じることがあるのだ。人間の思考は複雑だが、結論はほとんどの場合単純に導き出される。春花はそんなことも教えてくれた。

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とにかく生活を落ち着かせるため、
ギクシャクした雰囲気に抵抗しつつ、ぶつかり合い、なだめ合い、少しずつ皆の妥協点を探っていく。そうやって過ぎていく序盤。

そして、シナリオは中盤にさしかかる頃。

高屋敷一家でホストクラブをご訪問。
この場面の面白さはどうにもたまらん。単純に笑えるのもいいし、全員揃っての最初で最後の外出の場面というのもすごくいい。家族が揃って美味い酒を飲んで酔う。それはとても素敵なことだ。

その後、準が食卓に参加するようになり、青葉の角がほんの少しとれてきた頃、司もなんとなく家族計画に馴染むようになってくる。
(直接的な描写はまったくないのに、そう感じさせるところが本当に上手いと思う)

「屋根があれば、それでめいっぱい幸せです」という末莉。
でもそれは、「頑張らなければ居場所がなくなってしまう」という強迫観念から来ている発想でもあって。司は胸の奥の方に、何か濁ったものが沈殿している感覚を覚えていた。


☆個別キャラクター考察・四女「高屋敷 末莉」--------------

5年前に初めて家族計画をプレイして、末莉ルートに進んだ。それから1週間、何も手に付かなくなるほどのスピリチュアル・ダメージを与えてくれた末莉。

普段は気弱なのに、家族計画のことになると目茶苦茶押しが強い末莉。これはおそらく末莉の性格どうこうよりも、家族への飢えと、生存にかける必死さから来ているのだろう。

子どもの心に善悪の区別はない。
上手に服を着られた時、手伝いをして褒められた時。かまってもらえた。愛情を感じられた。そういった感情に突き動かされて、子どもは「よい子」であることの価値を学んでいく。
だから末莉は努力した。いつだったか、彼女の親たちが気まぐれに与えたかもしれない愛情の記憶が、彼女を突き動かし続けた。

子どもにとって、親が与えるものが世界の全てなのである。そうして、常に限界近くまで頑張って「いらん子」になることを避けようとする人格が作られていったのだ。

だけど、いくら努力してもダメなことも、あった。
ある時、そんな末莉にチャンスが訪れた。

家族計画。

血のつながらない他人にその希望をみたのは、子どもだから、なのかもしれない。しかし、彼女のように裏切られてなお人を信頼しようとする心に、司は段々と心を動かされていく。
彼女のもっているものは、司がなにかを切り捨てて得た強さとは対極にあるもので、そして本当は司が欲しながらも諦めてきたものだったから。

末莉
別名 人気801系小説サイト
管理人(兼小説家)
計画への提供 雑務全般
特性 従属 / 押し強
真性 愛嬌
能力 台所担当
計画推進の切り込み隊長
弱点 年齢
備考 よく転ぶ
独白も敬語
高屋敷末莉のほーもぺーじ

「愛嬌」の他に、「信頼」あるいは「魔性」という言葉も浮かんでいたのだが、流石に末莉には強烈すぎる言葉なのでやめた。

家族計画に発案当初から寛以上に傾倒し、要である司を引き込みガッシリと中心に固定した末莉は計画におけるボンドのような役割を担っている。赤ん坊がその可愛らしさで両親の保護欲をかき立てるように、甲斐甲斐しく、そして一生懸命に家族のために働く末莉を誰が嫌うことができようか。(青葉だけが末莉を忌避する理由は後述する)

作中ではそれを末莉の「魔力」と表現しているが、もし末莉が家族計画に参加しなければ、それはいつか本当の「魔性」として末莉の内に毒の花を咲かせたのかもしれない。

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青葉が部屋で倒れた。
薬の禁断症状だという。ひたすらに強く見えた青葉が見せた意外な一面。

準が無理して食べた朝食を、洗面台に戻してしまった。
フォローしようと尋ねた司。薬に逃げていた準。怒って薬をトイレに流した司と修羅場の様相を呈し、仲直りはしたものの、スッと出されたメモに20万円の請求あり。

真純さんの前に再び現れた、結婚詐欺師。


生活が落ち着きを見せる始めると、今度は各々の問題が表面化してきた。

末莉と青葉の徹底的なソリの合わなさが、亀裂を再び開かせていく。
突き放す青葉と、必死に追いすがる末莉。

ことさらに「他人」を協調する青葉。
分かっている。だから最近は皆あえて言わないでいたこと。


いつの間にか、雨が、降り出していた。

青葉は、末莉を見ているとイライラするという。
ちょっとでも隙を見せると近寄ってきて、ごまをすって、自分の心にまで踏み込んでこようとする。そのことに、もう我慢できないのだと。

敵意をもって親族をかなぐり捨ててきた青葉と、生きるためには他者にすり寄っていくしかない末莉。両者は完全な対極に位置していた。


☆個別キャラクター考察・長女「高屋敷 青葉」--------------

自室で倒れたとき、青葉は高屋敷に到着してからは薬はやめていると言った。
つまり、それは到着するまでは使用していたということでもある。

直接の描写はないが、このことがカギとなって青葉の謎の扉を1つ開けている。

つまり、これまで青葉は薬によって精神を強制的に上向かせることで、親族の横暴に対抗し、身ひとつで出奔し、旅を続けてきたということだ。

絵を描く人はよく知っていると思うが、絵というのは、現在の自分の精神を自動的に反映する。健康な心で絵を描けば健康な絵が。不健康なら、不健康な絵が描き上がるわけだ。

推測でしかないが、青葉の描く魔物のような絵は、青葉の精神、あるいは薬が切れたときに見える幻覚症状の影響を受けていたのではないか。幻覚には想像を絶して気が狂うほどのおぞましいものが見えるのだという。


政略結婚まで強いられ、まるで物扱いされ続けた青葉の半生。

それに抗うため、青葉は世界を自分のものであると定め、自分へ干渉するものすべてを振り切り、無茶苦茶に振り回すことで自由を得た。

青葉の対外的な性格はそういう過干渉の仲で育ってしまったものだ。これは末莉を育んだ環境とは真逆である。共通しているのは、それがどちらも過度だったということだけ。

なぜ青葉が末莉にどうしようもなくイラつくのか。
自分の心に踏み込まれるのを、なぜ青葉が嫌悪するかというと、それは、祖父との思い出が大切だから――言い換えると、祖父との思い出に匹敵する大切なものを作りたくないからである。


青葉は、末莉が自分が求めてもとめて、しかし、ずっと得られないで来たもの。ただありのままの自分をそのまま受け入れようとする末莉の心に気付いていたのだろう。

それは、実は青葉にとって、あまりに魅力的過ぎた。

直感的に、青葉は自分が末莉を好きになることを予見していたのだ。だから、突き飛ばすように無視するという感情的な態度を取らざるを得なくなっていった。

このことから、青葉は外面からは想像もできないほど一本気で純粋な性格が見えてくる。そのことは、
「衣服から線香の香りがする」
「浮気は死」
「汗(不潔なもの)が苦手」
「下ネタに嫌悪感を示す」
「司の好意は受け入れられないと最初に断じたこと」
「盟約」
等のキーワードや言動からもすべて読み取れる。これらはすべて「大切だと決めたものを絶対に傷付けない、美しいままに絶対に汚さない」という青葉らしさへ繋がっていく。

つまり青葉は0か1しかないような、まさに高潔を絵に描いたような女なのだ。

青葉
別名 死髑髏菩薩
計画への提供
特性 排他/魔女
真性 高潔
能力 毒舌/
トラブルメーカー
弱点 禁断症状
備考 劇薬を所持/
意固地/
長女

まず、ドクロと菩薩をくっつけないでくれ!と司に代わって突っこんでおきたい。
備考に青葉だけ長女と着けたのは、なんだかんだ言って、いざというときに格別に長女らしい一面を見せる青葉があまりにも「らしい」ので、あえて。

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「生まれてきたから、生きて何が悪い?」
「生まれちまったら、生きるしかないだろうが!!」

そう強く末莉に、自分に言い聞かせる司。

他人の集まり、家族計画。
確かに他人、だけど、同じ目的のために集まった同志。
俺たちは―――仲間。


地主から電話があった。土地を買い取ってくれと。
都心から少し離れた住宅街。具体的には二千万円弱らしい。職場で何事か考え込む司を目敏く看破し、金を貸そうかと申し出るラウ。

「金で解決できるならそうしたまえ。後で未練になるよりさ」

これはラウの格言だと思う。
金というのは不思議だ。何でも手にはいるかのようで、時に欲するもの何一つ買えず。
なければ何をおいても手に入れなければならず、いざ大量に手にしてみれば死後の世界には1円も持って行けないことに気付いたりする。


次の日の夕方、末莉が屋根の修理をしていた。

青葉はそれを庭からジッと見上げていた。

こんなボロ家、やるだけ無駄な気もする、という司に末莉は、この家が大好きだと言った。
青葉はそれも聞いていた。屋根の上で話すうちに、司はついに末莉に「おにーさん」と呼ぶことを許可する。嬉しいと大泣きする末莉。

青葉はそれもしっかり見ていた。
それどころか、高屋敷家全員が庭から屋根を見上げていた。

寛がその様子を激写ボーイしていたせいで、夕食の席は戦闘で破壊された。
カップラーメンの夕食となる。カロリーメイトを準が200円で売ってくれた。末莉にはタダだった。準は末莉好き。かつて自分のいた境遇と似ていて感じるところがあるのだろう。


事業を始めるために借金していた寛。ひよひよファクトリー。
悲鳴を上げる末莉。頭痛がしてきた青葉と司。すでに寝た春花。もう部屋に帰りたいと準。そして、真純はちゃぶ台に突っ伏してグロッキーになっていた。

とにかく、家族計画はもう破綻寸前まで来ていた。

金、理不尽、憎しみ、仲違い、裏切り、決別。そういうものに俺たちはいつも煮え湯を飲まされて、何度でも飲まされて、それが悔しいと、司は言った。

そんな司に、真純は母親の形見である300万円の通帳を手渡して、「あ・げ・る♪」と恥ずかしそうに笑ったのだった。


☆個別キャラクター考察・母「高屋敷 真純」--------------

本編中、ずっと見事な良妻ぶりを見せてくれる真純。
彼女の与えてくれる「安心感」は家族計画には欠かせなかったと思う。ささくれ立つ高屋敷一家を優しく包み込んでくれた。

形見の通帳を盗ってしまおうかと考えた司を少しも咎めることなく受け入れてしまうところなど、もう言葉にならない気持ちにさせてくれる。

真純
別名 ますみん
計画への提供 買い出し / 節約
特性 ドジ / 母性
真性 慈愛
能力 台所担当
おふくろの味
弱点 結婚詐欺
備考 キレると強い
「やることは」10代

ひとりではダメダメ。なのに家族の中で、突如として大きな役割を担い始める真純。
愛することで真価を発揮する真純の真性は「慈愛」。これしかあるまい。

ちなみに、FDの「そしてまた家族計画を」において、真純の台詞はたったひと言だけなのだが、その台詞から司に借金していたことがわかる。

というやりとりがあったことが容易に推測できる。

だが、末莉を救ったときの300万。
母親の形見でもあったそのお金を、当時なにも持っていなかった自分をまるごと信頼して、託してくれたことを、司は生涯忘れなかったに違いない。

そして真純の苦労も一緒に背負うことになるのだが、それを司がためらうことなど、きっとありはしなかった。それほどに真純の気持ちは深かったから。

足りなくなって、初めて分かる、お金の大切さ。お金がないことの苦しみ。

それを「あ・げ・る♪」なんて、そんな馬鹿なことを言えてしまう真純さんのような人に出会えたら、本当に、幸せだと思う。

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準と地主さんの相談の結果。
準は、現状の打破は・・・やはり無理だと、はっきり告げてきた。

「司はもう一人になったほうがいい。このままでは押しつぶされちゃうよ?」
「俺はお前とはちがう!」
「・・・私はダメだった。2つのことを同時に追えるほど器用じゃないんだ・・・」

学生の頃、売春をしている噂を聞いてそれをやめさせたかった司。
喧嘩あげく、契約の破棄。
それからバイトで稼いだ札束を突きつけて、再契約を迫った。

準は、泣きそうな顔をして、受け取らなかった。
次の日から準は学校に来なくなり、そのまま退学したのだった。

人の作った料理が食べられない。
誰にも触れてほしくない。自分でも認めたくない。
自分が欠陥を抱えた存在であること。
見たくない、見られたくない。それが準に強固な障壁を張らせていた。

☆個別キャラクター考察・次女「高屋敷 準」--------------

人間は依存しなければ生きられない。

生きられないことはないかもしれないが、非常に苦しい。
心理学ではこれを「甘えの構造」といったりするのだが、日本人は存外文化的に甘え方が上手いと言われている。助け合いなどといって、依存がさりげなくうまくできる人が多い。個よりも集団を大事にする性質には孤独を抑える副次的な効果があるのだ。

西洋では文化的に依存が下手、いや、依存する人格そのものが否定されている。

だから、麻薬がはびこる。止まらない。

依存する何かを探す手が、最終的に掴むのが麻薬だったりするわけだ。
彼らは大いなる依存の対象として昔から「神」を用意していたが、近代科学の発達に反比例して、全力で宗教に傾倒できない人も増えてきたという背景がある。
このあたりを知っていると、家族計画の登場人物たちへの理解は一気に進むと思われる。

それは家族でなくてもいい。
しかし、人には例えそれがどんな相手であっても、

自分がただそこにいることを許していてくれる人が必要なのだ。
だから人は家族を、友人を――誰かを求めずにはいられない。

また児童擁護施設については、準が在籍していたところのような状況は、(リアルな話)特に珍しくはないようだ。誕生日にプレゼントがないのは当たり前。とにかく物がない。金がない。中古の家具でも何か余ってるものがあれば何でもください。寄付いただきますよろこんで!というような状況は多いのだという。これは2009年現在においてもまったく変わっていない。
もしこの話に何か感じた方がおられたら、養護施設についてちょろっと検索してみたりするとよろしかろう。おそらくは手作り感の溢れる(明らかに金がかかってない)ページが出てくることだろう。話が脱線するのでここまでにしておくが。そこにある本当の意味での社会的弱者である子ども達を想像してみると、準がなぜ彼らを誰よりも優先し続けたのか、背負っていたものがどれほど大きかったのか、その点に考えが至ることと思われる。

別名 JUN
計画への提供 知識
特性 口べた / 守銭奴
真性
能力 機転
サポート
弱点 養護施設
備考 金銭の熟達者
不器用

「義」とはつまり、利害を捨てて条理に従い、人道のために尽くすこと。
哲学的な命題になってしまうので、ここで「正しさ」について論じることは避けるが、準が首尾一貫していた自分の「家」を守りたいということ。自分のすべてをかなぐり捨てて、準は金を作ってきた。
学歴もない、体力もない、誰かと食事することもできず、健やかな人間関係を構築できない。そんな彼女が大金を稼ぎ出す方法は、自ずと限られていた。それが非合法な手段であっても、背に腹は代えられなかったのだろう。

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青葉が、家族との距離を急速にあけ始める。会話に応じることもなく、ただ皆を空気のように扱い、なにかを探している。

施設が潰れる。準は司と春花が庭に埋めた薬を掘り起こし、売ってしまった。
翌朝、家を出て行く準。振り返ると司がいた。
また助けを借りられるか、と問う司に、準は初めて笑顔を見せたのだった。

家の外に大量の煙草の吸い殻、監視が付いた様子。


・春花の母親が見つかった→(実は見てきただけで会っていない・ルートでわかる)
春花の身元が本格的にマフィアに知られ始める。

楓から今すぐ逃げろと電話。間髪おかず襲撃があったがその前に離脱できた。
寛がマフィアを撃退。ショックで既知外の状態から復帰した。

自分の本当の家族の大切を思いだした寛。
どうかしていた、家族計画などと。出ていくかどうか、考えていた。




☆個別キャラクター考察・父「高屋敷 寛」--------------

寛について、現在間違いなく問題になる点は、

ギャグが古い

ということだろう。「当たり前田のクラッカー」あたりは、私もギリギリだった。今でもよく分からないギャグもある。(元ネタは検索かけると面白いぞ)

だがしかし、寛は「お父さん」なのだ。
寛が「お父さんは時代遅れのくだらないギャグを言って家族に溜め息をつかせる」という典型的なお父さん像を目指していたのは疑いない。ギャグについてはこれ以上寛を弁護できそうにないが、できれば温かい目でギャグは流してやるべきだ。

別名 幸福太郎
計画への提供 発案
特性 既知外
真性 理性
能力 秘密兵器
弱点 -
備考 奇怪な行動
無尽蔵の体力・知識・戦闘技術
英検3級

これはもう説明するまでもなかろう。豊富な人生経験により鍛え上げられた知識と判断力。
狂気から脱した寛の真性。それは「理性」。
真純が与える母性が「包む」役割を果たすとき、寛の父性が為すのは「切る」役割である。
できること、できないこと。善、悪。そう言ったものを家族の先頭に立ち、明確に区別する。そして最後にその責任を負う。寛はその役割をしっかりと果たしてくれた。

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☆個別キャラクター考察・長男「高屋敷 司」--------------

学生時代の司の準へのこだわり方は、あれは別に初めての恋人だから、というだけではないと思われる。
恋愛の相手に対して人は「両親に満たされなかったものを満たしてもらおう」という気持ちを持ってしまう。この気持ちは(若い頃は特に)強く、理性でまったく制御できない場合も多々ある。(経験のある人は多かろう)

学生時代に不良少年や不良少女の性体験が平均よりも早くなりがちなのも同じ理由だ。
つまり、不良をやるのは親が子どもの何かを満たしてやれていないからで、親が満たしてくれなかった一体感のような原始的なものを恋人に求めた結果、性行為に辿り着く。

もちろん、不良が悪くて真面目がいいとは限らないので、その辺は本当に個々別々であるのだが、人間はどこかでバランスをとっていくらしい。

別名 淫行学生
計画への提供 男手/連結の要
特性 短気
真性
能力 ツッコミ
台所補欠
弱点 借金
備考 真面目
たまに鳥と会話

家族なんて・・・と言いながらも、寛と戦い、青葉をなだめ、末莉を甘やかし、春花と遊び、準を気遣い、真純に尻フィンガーしている司は、最終的にまったく高屋敷の長男である。
司の真性は、ロリコンお兄ちゃん。高屋敷のキーマンだ。

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> 俺を絶望の淵から引き上げた糸は、今もこの手にある。
> それは、ただもたらされるだけのものじゃない。時には奪われ、途切れ、絡まるものだった。
>
> 糸。
> 人はその糸にすがらずにはいられない。
> だからなくしてしまうともう半狂乱で、絶望し、憎悪し、狂っていく。
>
> しかしそれは、紡ぐことができた。
> 無数の小さな接触が、よりをかけて糸を丈夫に育んでいくのだった。(抜粋)




悲しみだとか、不安、みじめさ。
いつ何時容赦なく与えられる苦痛に立ち向かっていこうとするとき、
真実の自分を受け入れ、認めてくれる仲間が、家族がいたなら、
打ちのめされそうになる自分はどんなに力強く、それに真向かえるだろう。

気が狂いそうなほど苦しい、悲しい。
そんなことばかりの世の中で、世を恨み、人を恨み、自分さえ醜いと、恨みながら生きてきて、
そんなあなたに寄り添う仲間が、家族がいたならば、どんなに、どんなに――――。


あとがき

さてさて、おそらく日本で一番長いかもしれない家族計画の批評と考察にお付き合いいただき、ありがとうございました。

家族計画のレビューにあまり良いものが見つからないと感じたのは数ヶ月前。リライトをしていて感じたのは、なるほど、ということでした。この作品は考えれば考えるほど、嫌な現実を突きつけられるような要素を多分に含んでいるからです。夢見心地で書ききることができません。

でもだからこそ、この作品をいつまでも大事にしていける人もいるのではないかなと。
発売から8年にもなる家族計画ですが、今でも時折、巡回しているサイト様などで「末莉が〜」などの言葉を見ることがあります。そんなのを見ると、「ああ、やっぱりこの人の心にも家族計画が刺さり続けてるんだな」と感じて嬉しく思います。

そして、どうやら家族計画の批評と考察はここまでのようです。
長らくお疲れさまでした。このページだけでも相当長いですが、実際に書いた量はこの5倍は余裕で超えました。アホです。アホな量です。それでもなんとかまとまったのは、このページを日々訪れてくれる方々がいたからです。力をいただきました。
今日ここを訪れてくれたあなたにも、ありがとう。そして、

本当にありがとう。家族計画。


(2004/05/19アップロード・2009/10/04リライト完了)
※もうちょっと追記と修正する予定。最終更新10月23日。

(あさぎ月夜 > レビューページ > 家族計画 批評と考察)

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