太陽視直径の測定


1.目的  
2.方法の概要  
3.観測方法と視直径の求め方  
4.計算と補正
5.観測結果及び計算結果 太陽視直径データ
6.考察 太陽師直径グラフ

目的

 朝霞高校の地学部では年間を通して太陽の視直径の測定を行っている。天文の観測・測定の練習ということがメインの目的であるが、太陽活動が不活発で黒点観測の出来ない(張り合いに欠ける)時期の重要な部活動の一部という意味もある。観測を始めて数年になるが、データがかなり蓄積されたので、今回はそれ等の観測の精度のチェックを目的とし、地球の離心率を求めてみた。

方法の概要

 ケプラーの法則によれば、地球の公転軌道は楕円で、太陽がその焦点の一つに位置している。そのため、公転する地球は1年を周期として毎日少しずつ太陽に近づいたり遠ざかったりしている。1月の初旬に地球は近日点を通過して太陽に最も近づくので、太陽が見かけ上一番大きく見える。一方、7月初旬に地球は遠日点を通過し、太陽から最も離れるので太陽が最も小さく見える。これらの見かけの大きさの大小は太陽地球間の距離と反比例の関係にあるので、その大小を角度(視直径という)で測定して、その比から、遠日点距離(Q)と近日点距離(q)の比に置き換え、離心率(e)を求める。

(視直径の最大値)/(視直径の最小値)

=Q/q=(1+e)/(1−e)



観測方法と視直径の求め方

望遠鏡に太陽を入れて、投影させる。投影された太陽は日周運動によって東から西に移動する。太陽が移動する方向に直角な南北の線を引き、その線を太陽の西端が通過し、東端が通過するまでの時間を測る。この線を12本引いて12本分の通過時間の平均を取り、平均経過時間 ΔT とする。
 太陽が日周運動するのは、地球が自転しているからであり、この地球の自転周期は正確に分かっているので、日周運動による太陽の移動の角速度も正確に分かっている。
 そこで、太陽の投影像が直線を通過するのに要した時間と上記太陽の移動の角速度をかけたものが太陽の視直径となる。

  

計算と補正

計算
 地球の正確な自転周期は 23時間56分4.09秒(86164.09秒)なので、太陽の移動の角速度は  

   

360(゜)×3600(")÷86164.09(秒) = 15.041068"/秒
= (1.002738)×15"/秒

である。したがって、  

太陽視直径 = ΔT×(1.002738)×15"

となる。 

補正  

その1
 太陽は春分点秋分点以外は天の赤道から離れているので、天球上での日周運動による太陽の動きは遅くなる。そこで、天の赤道上での動きに換算する必要があるが、これはcosδをかけることで補正できる。ここでδは太陽の赤緯である。  

 太陽視直径 = ΔT×(1.002738)×15"×cosδ



その2
 地球は公転しているので、見かけ上太陽は天球上を西から東へ1年(1恒星 年:365.2564日)かかって1周している。これは1日当たりでは約1°になるが、正確には1秒間当たり 0.041067" 動いていることになる。
 ΔT(平均経過時間)秒間には  ΔT×0.041067" だけ太陽が東に移動していることになり、その分だけ太陽の視直径を大きく測定している。そこで、その分を差し引く必要がある。
 太陽の年周運動は、天の赤道に対して23°26′傾いているので、上記のずれは、天の赤道方向の成分のみを補正すればよい。太陽の赤緯が δ のときの補正値は

ΔT×0.041067"×cos(23°26′)÷cosδ

となり、これを差し引けばよい。  

視直径 = ΔT×(1.002738)×15"×cosδ-ΔT×0.041067"×cos(23°26′)÷cosδ

  

※観測時間は、昼休みを原則としているが、3時ごろに観測する場合もある。その場合、大気差によって投影像が歪むことが考えられる。しかし、実験の結果から誤差は極微であることがわかったので、この誤差は考えないものとする。また、地球の公転速度は一様ではないが、そのことも微少であるので無視する。

観測結果及び計算結果

観測結果及び計算結果は表1に示す。
観測は通常は昼休み(午後1時前後)に行った。太陽赤緯は午前9時のものを天文年鑑より拾い。観測した時刻の赤緯に換算した。

考察

グラフにしてわかることは、データのばらつきがまだまだおおきいことである。
観測は主に1年生が担当し、天文の測定に慣れていないこと。また数人で担当しているので、観測の癖などの個人差 も影響しているものと思われる。
・近日点及び遠日点における視直径をそれぞれグラフから以下のように読みとった。

    近日点 視直径 1955"  遠日点 視直径 1890"

 近日点距離を q 、遠日点距離を Q 、地球の軌道の離心率を e とすれば、  

1955/1890 = Q/q = (1+e)/(1-e)
e = 0.01691

 天文年鑑によれば、地球軌道の離心率は 0.01671 であり、誤差は0.0002(1.2%)で、必ずしも満足できる結果ではない。観測に習熟し、更に精度の向上を工夫する必要がある。

 おわり


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データ - 太陽視直径

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